もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

63冊目 下川祐治著「日本を降りる若者たち」(講談社現代新書;2007) 評価4

2011年11月05日 05時01分52秒 | 一日一冊読書開始
11月4日(金):

221ページ  所要時間3:30

タイのバンコク、特にカオサン通りに集まる大勢の日本人の「外こもり」の生態を中心に描かれる。タイに引き寄せられるパターンを分類し、個別事例を紹介する形で報告がなされる。日本社会に生きて、傷つき、追い詰められ、生きづらさや恐怖を感じる大勢の日本人がいる事は、よく理解できる。俺もその一人だ。ただ、光と影の形で、日本社会の作り出す影として、これほど多くの日本人が、タイに癒され、魅かれ、引き寄せられている。タイで、何もしないまま長期滞在するために、日本で数ヶ月間懸命にバイトをして貯金をする。まるでタイで「外こもり」をするために、日本に出稼ぎに来る形の日本人が大勢いる。きっかけは、タイ旅行→タイが好きになる→とりあえず「タイで暮らす」ということ。また、語学を志し、中途半端な英語力しか身に付けられなかった若者の目にもタイは優しい国に映ってしまう。特にワーキングホリデーを著者は悪習として批判的に見ている。南国の「ゆるさ」「マイペンライ(何とかなるさ)」で、実際に何とかなってしまうところが日本との違いらしい。「日本で行き詰まった若者は、カオサンに流れる空気に一気に染まっていってしまう」。自殺するつもりで、バンコクに来て、「ゆるさ」の中で死ねなくなった女性。20歳代から40・50歳代まで。それとは別に、豊かな生活をめざす老人たちの年金を取り込もうと国家レベルのロングステイ誘致に積極的なタイ政府。一方で、同じバンコクでも、ラングナム通りに集まる前向きに「働くこと」をめざす若者たちの存在。でも、カオサンもラングナムも共通するのは、彼らが「タイが好きだから」は全く同じ。それほどに、タイは日本人を引き付けてやまないのだ。タイの洪水の報道を見て、タイにあれほどたくさんの日系企業が犇めいていることを、単に円高による海外工場移転としか捉えられなかったが、本当はもっと別に日本人を安心させ引付ける魅力が潜んでいたのだと思うことができるようになった。俺も、一度だけ、バンコクのカオサンから、チェンマイ、アユタヤ、Samet島と旅したことがあるが、その時には必死で、タイの「ゆるさ」「優しさ」までは理解できなかった。アジアはやはり好きだ。  ※ただ、以前『闇の子供たち(梁石日)』DVDで観た児童買春、児童臓器売買の舞台がタイであるのを、思い出せば、この本の中に出てくる「外こもり」連中のノー天気さは、許しがたいようにも思える。
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