もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

3 096 和田竜「村上海賊の娘 下巻」(新潮社;2013) 感想5

2014年04月29日 21時29分14秒 | 一日一冊読書開始
4月29日(火):

503ページ  所要時間 6:35        図書館

著者44歳(1969生まれ)。

下巻になって、すごく面白くなった。読み上げるまで6時間35分、トイレにもたたず、一気呵成に読んだ。読ませられた。途中何度か、「ナウシカかよ!」「エンターテインメント過ぎる。」「長えなー、この戦(いくさ)、いつ終わるんだ。くどい、悪のりし過ぎ!」などと毒づきながら、実際には手に汗握る感じで、読むのを止められなかった。著者の作風には、いまひとつ深みを感じられないので、今回も感想4で行こうと思っていたのだが、ここまで一気に読ませられてしまうと、やはり感想5を付けざるを得なかった。

小早川隆景の命で派遣された毛利・村上連合の水軍1000隻(内、輸送船700隻、軍船300隻)が、淡路島東部に停泊し、木津川河口を封鎖する泉州水軍の長(おさ)真鍋七五三兵衛(しめのひょうえ)を中心にした織田方水軍300隻とにらみ合いが続く。戦機は越後の上杉謙信の出陣である。婚儀整い能島で兄弟や婿殿の帰りを待つ景(きょう)姫に父の村上武吉が、「上杉は動かず、戦は起こらず、毛利・村上水軍は無事に帰る。それは小早川隆景の読みである」と口を滑らせてしまう169ページ。本願寺門徒が見殺しになることに激怒した景姫は、突如戦場の淡路島へ身を投じる。それは村上武吉が放った<鬼手>と受け止められる。ここから物語りは、俄然面白くなる。帰り仕度を始める本隊を尻目に、景姫は織田方総大将真鍋七五三兵衛の安宅船に単身使者として降伏勧告に赴くが、はったりを見破られてしまう。本願寺への10万石の兵粮米輸送を諦めて、毛利本体が淡路島東部を引き上げはじめると、今度は、雑賀衆の頭目鈴木孫一を味方に引き込んで、わずか50隻に鉄砲打ちを乗せて、織田方に攻め込むが、数枚上手の泉州水軍真鍋七五三兵衛によって手玉に取られ完全な窮地に陥る。景姫の無謀な行動が知れると、能島・来島・因島村上水軍が理屈を超えた死兵となって景姫救出にとって返し、織田方泉州水軍と瀬戸内村上水軍の決戦・死闘が勃発する。ここからは木津川合戦の様子が延々300ページくらい書き続けられる。著者の文章は、大変映像的で読みながらなにか映画館で映画を見続けているような気分にさせられ、読み方も自然に一定の速度で眺め読みができるようになった。その中で、景姫が超人的な躍動を始めるのだが、今度は織田方の真鍋七五三兵衛が不死身で無敵のターミネーターような強さを発揮し始めて、あとは延々と海上でのいくさ、いくさ、いくさが続く。確かに著者は、木津川合戦の海賊同士の水上戦ををリアルに描くために相当勉強をしたのだと思う。とにかく手に汗握り、トイレにも立たず読み続けることになった。

読んでいて、岸和田あたりを彷彿とさせる活きのよい(ガラの悪い?)泉州弁が、当時の言葉は違うだろうと思いつつ、まあ風味づけになって良かった。村上海賊が主人公かと思って読んだが、泉州海賊の方が人物像的に生き生きと描かれていた。

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