5月4日(月):
317ページ 所要時間 4:00 図書館
著者43歳(1964生まれ)。16歳の時「1980 アイコ十六歳」でデビュー。作家、心理学者(発達・教育心理学)、現在椙山女学園大学准教授。
著者は上からマナト(小3)、カイト(小1)、コトコ(2歳)と二男一女の母。夫は写真家小原玲、ふだん不在で飛び歩いてるので子供好きだが、日常の世話では頼りにならないというよりは、当てにならない。
次男のカイトが「自閉症」(途中で著者は「発達障害」を多用するようになる)であることが判明。夫婦で涙にくれるが、その後マナト、カイトのために仲間を増やしてやるつもりでコトコを生む。そして、当てにならない夫とともに著者の手探りの子育てが行われる。心無い言葉や態度に傷つけられることも多いが、「障害児」を抱えて、子どもたちに愛情を注ぎながら共働きを成立させることは、周囲の協力なくしては絶対不可能である。
著者は、役所や施設、学校、学童保育所他で、卑屈過ぎる、その卑屈さが障害者福祉のあり方を歪めるという批判があることも十分に承知の上で、「それでもやはり迷惑をかけてるのだし、力を借りるのだから」とあくまでも腰低く、頭を下げて、丁寧に、ときには愛護手帳(障害者手帳)を見せて「お願いします」「ありがとうございます」を徹底して繰り返す。それによってぎりぎりのところで意外と道が開かれてきた。
心無い子どもの差別的言葉に傷つきつつ、ママ友の無神経な善意にも傷つくが心にとどめて外に波風は立てない。自閉症のカイトくんは、動きのおとなしいタイプだが、知的には47程度。色々と問題を起こす。その度に、著者は息子と共に「ごめんなさい」を徹底する。
しかし、本書を読んでいて、あまりじめじめ感は感じない。「確かにつらいこともあるが、カイトの存在はやはりかわいくて仕方なく、三人の子どもたちと母一人での生活を紙一重で成立させて、それなりにフツーにたくましくからりと生きられている。敵を減らして、仲間を増やす戦略的・戦術的世間との関わり方が、過剰でも萎縮でもなく自然に行われている。
本書の全体を占めるトーンが、陰湿でなく、どことなくカラリとしていて発達障害のカイトくんの存在をむしろ楽しむゆとりを読者に感じさせてくれる。結局、発達障害の子どもがいたら、重くなる、暗くなるというのも誤解だな!と思えたのが、本書の値打ちだ。そういう子どもたちの存在を個性として楽しむ余裕を家族だけでなく社会全体が持てればいいと思う。
読み進む中で、たくましい母親になっていく著者と家族の姿が、前に読んだ戸部けいこ「光とともに…~自閉症児を抱えて~」のイメージと重なってきた。まんがの詳細な絵画的説得力とは異なる、障害のあるカイト君と兄、妹を見守り、育てる実際の母親の存在感による説得力が本書にはあった。どちらも良い作品である。
心が少し弱くなった時に読むと、「あまり思い詰めるなよ。大丈夫!だから」と伴走してくれる感じの本である。
【目次】はじめにー大丈夫じゃないけど大丈夫/1 子どもはみんな難しい/2 うちの子、変?と思ったら/3 受診までのハードル/4 「障害児」の家族になる/5 幼稚園・保育園を選ぶ・学校を選ぶ/6 下の子を、どうするの?/7 きょうだいの扱い/8 カミングアウトの壁/9 愛されなくちゃ/10 うちの子が何かしちゃったら/11 駄目でもともと/12 おとうさんの役割/13 手帳とか、パスとか/14 この子といる幸せ/あなたが大好き/終章 あなたが大好き/おわりに
・同じ、自閉の子を持つお母さんと話していると、「自閉の子って、、可愛いよねー」という話になります。それは、笑わないタイプの子でも。/それでも、寂しくなったり、不安になることはあるかもしれません。私だって、しょっちゅうですもん。こちらの言うことを、理解してくれないっていう、もう何百回も通ってきた道で、絶望したり、泣いたり、カイトにあたったり。/でも忘れないでください。/その子は、お母さんやお父さんを愛しています。/笑わないのは、抱きつかないのは、それがその子の愛の形だから、想いの質に、変わりはないのです。286~287ページ
・それを、伝えられる発達心理学者は、そうはいないと思って。/この先、私はカイトから、障害を持つ子と生きていくことが、どれだけ苦しくて楽しいか、たくさん教えてもらえると思います。楽しいことも一杯あるんだよ、と言い続けていけたら幸せです。/私達は、カイトが大好きですから。/あなたが大好き。/そう言える限りは、どんなに大丈夫じゃなさそうに見えても、大丈夫なんです。/もしも言えなくなったら、素直にSOSを出しましょう。誰かが受け止めてくれるまで。一人で我慢して、取り返しのつかないことになっては大変です。/一人ぼっちじゃありませんから。/子育て全般に関して、あなたの悩みは、思っているほどあなただけのものじゃありません。それは、発達障害と診断される子どもが増えている今、障害のある子に関しても同じなのです。312ページ
【内容情報】 子育てが大変なのは自閉症のせいじゃない。自閉症だから何もできないわけじゃない。作家であり心理学者であり母親である著者が自閉症の息子を含む三人の子どもを育てながら出会ったこと、乗り越えたこと、泣いたこと…。ふつうじゃなくても幸せになれるよー。子育てに悩むすべてのおかあさんに伝えたいメッセージがあります。
317ページ 所要時間 4:00 図書館
著者43歳(1964生まれ)。16歳の時「1980 アイコ十六歳」でデビュー。作家、心理学者(発達・教育心理学)、現在椙山女学園大学准教授。
著者は上からマナト(小3)、カイト(小1)、コトコ(2歳)と二男一女の母。夫は写真家小原玲、ふだん不在で飛び歩いてるので子供好きだが、日常の世話では頼りにならないというよりは、当てにならない。
次男のカイトが「自閉症」(途中で著者は「発達障害」を多用するようになる)であることが判明。夫婦で涙にくれるが、その後マナト、カイトのために仲間を増やしてやるつもりでコトコを生む。そして、当てにならない夫とともに著者の手探りの子育てが行われる。心無い言葉や態度に傷つけられることも多いが、「障害児」を抱えて、子どもたちに愛情を注ぎながら共働きを成立させることは、周囲の協力なくしては絶対不可能である。
著者は、役所や施設、学校、学童保育所他で、卑屈過ぎる、その卑屈さが障害者福祉のあり方を歪めるという批判があることも十分に承知の上で、「それでもやはり迷惑をかけてるのだし、力を借りるのだから」とあくまでも腰低く、頭を下げて、丁寧に、ときには愛護手帳(障害者手帳)を見せて「お願いします」「ありがとうございます」を徹底して繰り返す。それによってぎりぎりのところで意外と道が開かれてきた。
心無い子どもの差別的言葉に傷つきつつ、ママ友の無神経な善意にも傷つくが心にとどめて外に波風は立てない。自閉症のカイトくんは、動きのおとなしいタイプだが、知的には47程度。色々と問題を起こす。その度に、著者は息子と共に「ごめんなさい」を徹底する。
しかし、本書を読んでいて、あまりじめじめ感は感じない。「確かにつらいこともあるが、カイトの存在はやはりかわいくて仕方なく、三人の子どもたちと母一人での生活を紙一重で成立させて、それなりにフツーにたくましくからりと生きられている。敵を減らして、仲間を増やす戦略的・戦術的世間との関わり方が、過剰でも萎縮でもなく自然に行われている。
本書の全体を占めるトーンが、陰湿でなく、どことなくカラリとしていて発達障害のカイトくんの存在をむしろ楽しむゆとりを読者に感じさせてくれる。結局、発達障害の子どもがいたら、重くなる、暗くなるというのも誤解だな!と思えたのが、本書の値打ちだ。そういう子どもたちの存在を個性として楽しむ余裕を家族だけでなく社会全体が持てればいいと思う。
読み進む中で、たくましい母親になっていく著者と家族の姿が、前に読んだ戸部けいこ「光とともに…~自閉症児を抱えて~」のイメージと重なってきた。まんがの詳細な絵画的説得力とは異なる、障害のあるカイト君と兄、妹を見守り、育てる実際の母親の存在感による説得力が本書にはあった。どちらも良い作品である。
心が少し弱くなった時に読むと、「あまり思い詰めるなよ。大丈夫!だから」と伴走してくれる感じの本である。
【目次】はじめにー大丈夫じゃないけど大丈夫/1 子どもはみんな難しい/2 うちの子、変?と思ったら/3 受診までのハードル/4 「障害児」の家族になる/5 幼稚園・保育園を選ぶ・学校を選ぶ/6 下の子を、どうするの?/7 きょうだいの扱い/8 カミングアウトの壁/9 愛されなくちゃ/10 うちの子が何かしちゃったら/11 駄目でもともと/12 おとうさんの役割/13 手帳とか、パスとか/14 この子といる幸せ/あなたが大好き/終章 あなたが大好き/おわりに
・同じ、自閉の子を持つお母さんと話していると、「自閉の子って、、可愛いよねー」という話になります。それは、笑わないタイプの子でも。/それでも、寂しくなったり、不安になることはあるかもしれません。私だって、しょっちゅうですもん。こちらの言うことを、理解してくれないっていう、もう何百回も通ってきた道で、絶望したり、泣いたり、カイトにあたったり。/でも忘れないでください。/その子は、お母さんやお父さんを愛しています。/笑わないのは、抱きつかないのは、それがその子の愛の形だから、想いの質に、変わりはないのです。286~287ページ
・それを、伝えられる発達心理学者は、そうはいないと思って。/この先、私はカイトから、障害を持つ子と生きていくことが、どれだけ苦しくて楽しいか、たくさん教えてもらえると思います。楽しいことも一杯あるんだよ、と言い続けていけたら幸せです。/私達は、カイトが大好きですから。/あなたが大好き。/そう言える限りは、どんなに大丈夫じゃなさそうに見えても、大丈夫なんです。/もしも言えなくなったら、素直にSOSを出しましょう。誰かが受け止めてくれるまで。一人で我慢して、取り返しのつかないことになっては大変です。/一人ぼっちじゃありませんから。/子育て全般に関して、あなたの悩みは、思っているほどあなただけのものじゃありません。それは、発達障害と診断される子どもが増えている今、障害のある子に関しても同じなのです。312ページ
【内容情報】 子育てが大変なのは自閉症のせいじゃない。自閉症だから何もできないわけじゃない。作家であり心理学者であり母親である著者が自閉症の息子を含む三人の子どもを育てながら出会ったこと、乗り越えたこと、泣いたこと…。ふつうじゃなくても幸せになれるよー。子育てに悩むすべてのおかあさんに伝えたいメッセージがあります。