もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

7 038 佐藤亮子「「灘→東大理III」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方」(角川書店:2014)感想5

2018年03月15日 01時21分55秒 | 一日一冊読書開始
3月14日(水):  

288ページ      所要時間5:20      古本市場750円+税

著者 年齢不明(53歳?1961生まれ?)。  奈良県在住。主婦。津田塾大学卒業後、大分県内の私立高校で英語教師として2年間教壇に立つ。その後結婚し、長男、次男、三男、長女の順で3男1女を出産。長男・次男・三男の3兄弟が全員、名門私立の灘中・高等学校に進学。3人それぞれが体育系のクラブに所属し青春を謳歌、ガリ勉とは無縁の学生生活を送る。高校では塾に通いつつも、高3の夏からようやく本格的な受験勉強を始めた。その後、3人とも日本最難関として有名な東京大学理科Ⅲ類(通称「東大理Ⅲ」)に合格。「灘&東大理Ⅲ3兄弟」という快挙を達成する。その秀才を育てる子育てノウハウや家庭の教育方針などがメディアにも注目され、「女性自身」(光文社)「週刊朝日」(朝日新聞出版)などでインタビュー記事が掲載される。また、親御さん向けの講演なども行ったこともある。今、最も注目されるお母さんの一人。

普段からパラパラと目を通していた本を気合を込めて一気読み、付箋と線引きをしまくってみた。内容的には2年半前に読んだ、本書の翌年に書かれた「5 003 佐藤亮子「受験は母親が9割 灘→東大理Ⅲに3兄弟が合格!」(朝日新聞出版:2015)感想4」と重なる部分が多いが、より粗削りな分だけ著者の熱意と真意が書き込まれている気がした。俺は著者の考え方・方法論のほぼすべてを信用にたるものとして支持できる。

本書の評価は、斜に構えればいくらでも下げることができるかもしれないが、そんなことをしても何の意味もない。本書の評価は非常に有効で実践的な事例として行われるべきである。俺は、素直に面白かったし、すごく参考になった。観念的な教育論も大切かもしれないが、一方で底辺・困難校の事例に注目するとともに、一方で本書のような上層の事例も見ておかないと教育の全体像は見えてこないだろう。

また、本書を読めば、単純に上層の事例としてではなく、教育における家庭の経済力・教育力が如何に大きな影響を持つのかを知ることができる。肯定・否定は別にしてこれを<現実>として押さえておくことは大事だ。
(※3月16日(金)追記:今週の週刊新潮の記事によれば「私立及び国立中高一貫校を受験するために必要な勉強は全く同じだ。サピックスや日能研や四谷大塚といった中学受験進学塾に小3の2月から通い、約3年間で準備する。特に小5の後半くらいからは、最難関校を目指す場合、受験勉強は過酷になりやすい。3年間の塾代の総額は200万~250万円になる。(おおたとしまさ)」)

著者に対して俺の評価は肯定的である。人間の「自立」に対する考え方など、相当な読書家でもある著者の人間や社会を見る目は哲学としても相当確かなものである(読めばわかる)。本書は、いま子育てをしていて、わが子の受験を何とか応援したいと考えている保護者にとっては大変参考になる内容を持つと言える。ただ言うまでもないことだが、「この道しかない!」訳ではない。本書の内容すべてをやらなければならないということではない。

あくまでも、できることを選んで実行する。共感できる部分を通して、子育ての考え方を深めるきっかけとする、と言うことである。鵜呑みがダメなのは当たり前であり、著者自身の子どもたちや読者へのスタンスも一人一人の個性や立場、状況を尊重して柔軟に、丁寧に対応するための参考にしてほしいというものである。

著者の真意は【おわりに】で記されている。要は、一番の前提として<子どもたちがかわいくて仕方がないお母さん>なのだ。
・わたしがこの本でお伝えしたかったのは、「子育ては楽しい!」と言うことです。略。私はとにかく子どもが楽しそうにしている顔を見るのが大好きでした。だから、そうなるような勉強法をたくさん考えたのです。二人三脚で勉強する時間は私自身とても楽しかったですし、子どもたちも「勉強はつらい」と思うことなくいられたのではないでしょうか。/せっかくできる、「お母さん」という経験。こんなに貴い仕事はありません。二度と訪れない子供との時間、背中ではなく顔を見せ、しっかりと寄り添って下さい。287ページ

【内容紹介】難関中&医学部。息子3人が「灘→東大理III」に合格! 「奈良のゴッドマザー」とも呼ばれる著者の幼児期の育て方から大学受験まで、すべてのノウハウを公開した、子育て本の決定版! 「子どもの可能性を広げたい」「勉強ができる子にしたい」お母さん・お父さん、必見の一冊です!

【本書の特徴】◎全12章、110の子育て法を収録。どれかひとつからでも始められます /◎生活編、勉強編に分け、日々の生活習慣から具体的な勉強法までを網羅 /◎参考書リストや、分かりにくい所の図解など、見やすく読みやすい /◎勉強編は「幼少期」「小学校」「中学受験」「中学・高校」「大学受験」と、お子さんの時期によって章分けしているので、わかりやすい /◎3兄弟の誰が実践したかをアイコンで表示

【目次より一部抜粋】Part1 生活編
第1章 お母さんの心得編 :・18歳までは子どもに関わるすべてが親の仕事 /・「ちょっと待ってね」はNGワード など
第2章 日常編 :・家の時計は20分早くする/ ・兄弟の年次にかかわらず絶対に公平にわける など
第3章 家庭のルール編 :・散らかすのは子ども、片付けはお母さん/ ・「お兄ちゃん」とは呼ばせない など
第4章 習い事編 :・何事もできるだけ早くプロに教わる/ ・習い事は親も一緒に始める など
第5章 家族編 :・子育ての責任を父母でシェアしない/ ・お父さんは子どもとお母さんにお茶を入れる など
Part2 勉強編
第6章 勉強の基本編 :・勉強の環境は整えなくていい/ ・参考書の整理は100円均一のボックス など
第7章 幼少教育編 :・何よりも読み・書き・そろばんから始める/ ・幼少期の勉強のキモは「先取り」にあり など
第8章 小学校編 :・算数のノートは「1ページ1問」/・集中力のない子には15分単位で科目を変える など
第9章 中学受験編 :・筆圧を見直すことで点数は伸びる/ ・不安を吹き飛ばす「佐藤家特製過去問」 など
第10章 中学・高校編 :・18歳まで子どもの勉強や進路に関わり続ける/ ・母がテスト期間のスケジュールを立てる など
第11章 科目別勉強法編 :・「英検」を英語の副教材として活用する/ ・歴史の導入はマンガに頼る など
第12章 大学受験編 :・「浪人してもいいよ」とは言わない/ ・3回間違えた問題は壁と天井に貼る など


5 003 佐藤亮子「受験は母親が9割 灘→東大理Ⅲに3兄弟が合格!」(朝日新聞出版:2015)感想4
                 2015年09月03日 22時50分58秒 | 一日一冊読書開始
(2015年)9月3日(木):   副題「〝プロママ〟のスーパーメソッド」  
             

255ページ    所要時間 4:05    蔵書(定価購入)

著者年齢不明(54歳?1961生まれ?)。どうして女性は歳を隠すのだろう? 津田塾大学卒業。郷里の大分で2年間、高校の英語教師を勤めた後、東大卒弁護士の夫と結婚、奈良県に住み、専業主婦として3男1女の子育てに取り組む。

専業主婦をしながら、必要な教育資金には全く糸目をつけないで済まされる裕福な家計、夫婦そろって高学歴、そして何よりも教育の「母親」限定など嫌味な目で見れば、いくらでも揚げ足はとれる。しかし、子供の「教育環境整備」の実践記録事例として、「母親」「父親」の別なく、有効な工夫や方法を参考にさせてもらおうと素直に思って読めば、なかなかの好著だと言える。現代の<孟母三遷の本だと思えばよい。

当然のことだが、はじめから東大理Ⅲに入れるための教育方法を目指したのではなく、我が子らの能力を精一杯伸ばしてやりたいという親の思いからの「教育環境整備」の試行錯誤の結果として息子3人が東大理Ⅲに進学したということ。それでも、まぐれで3人全員が東大理Ⅲに進学できるなどありえない(娘は高校生)。

紹介されてる「教育環境整備」方法は、若干の金遣いの荒さを除けば、読者が真似できるかは別にして、有効かつ説得力のある内容ばかりである。母親が子供にそそぐ愛情を前提に見れば、もっともな方法ばかりである。著者のすごさは、誰もがその気になれば思い付ける工夫・方法を実際の家族の中で貫徹・継続した事実にこそあるのだろうと思う。

人間は結局<環境の動物>である。もっとも近い肉親の親から全力で勉強の環境整備を受けた子供たちと貧困や親からのネグレクトを受けて生きるのがやっとの大勢の子供たちの格差を思えば、つくづくこの世は不公平だなと思う。しかも、政治屋に牛耳られた政府は解決に動くどころか、むしろ格差の助長に励んでいるのだ。戦後70年の日本社会がここでも音を立てて崩壊しつつあるのだ。

目次1 : 第1章 中学も高校も大学も、子どもを合格に導くのは、母であるあなたです!(私の原点―私が「受験を極めよう」と決心した理由/ 私の母親道―母親業の道は深い。やるべきことは無限にある ほか) / 第2章 子どもに身につけさせたい勉強のコツと姿勢、そして母がすべきこと(環境づくり―リビングに勉強机を置いて、生活の一部に勉強がある雰囲気を/ 息抜き対策―テレビ、ゲーム、漫画は「非日常」にしてメリハリを ほか) / 第3章 小学生時代の勉強のコツと中学受験対策(小学生の学習―基礎学力・難関中学に合格したいならやっぱり基礎学力が大事/ 小学生の学習・国語―お母さんの音読がとっても効果的 ほか) / 第4章 中学・高校時代の勉強のコツと東大受験対策(中学・高校・学校生活―中高一貫だから中学はのんびり。高校からギアを上げていく/ 中学・高校・参考書・問題集の選び方―参考書・問題集代はケチらない。母が選んで買ってくる ほか) / Q&A 佐藤ママに聞きたい!子どものこと、学校のこと、受験のこと(佐藤さんは教師の資格を持っているから子どもの指導ができたんじゃないですか?私は大学も出ていないし、勉強も苦手です。子どもを教える自信がありません。/ 中学受験を控え、塾に通い始めましたが、下のクラスで低迷しています。このまま通わせてもいいのでしょうか。また、志望校はいつ頃までに固めておく必要がありますか。 ほか)

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