11月8日(火):
205ページ 所要時間2:00
眺め読みでは難しいが、著者の考え方には基本的に同意である。『国家の品格』や『美しい国へ』など幼稚な情緒的愛国心の押し付け本がベストセラーになって、「もののあはれ」とか「郷土愛が国を愛する心につながる云々」が論じられる風潮に対する気持ち悪さが、少しは晴れた。愛国心がブームであるなら、せめて南原繁や司馬遼太郎、丸山真男のレベルをベースにして欲しい。言論の自由があるとはいへ、幼稚で無責任な愛国心談義は、ちょっと勘弁して欲しい。「愛郷」と「愛国」の間の断層を踏まえた上で、自民族中心主義の狭隘さで無く、アジアに開かれたものとして「愛国心」とは何かを論じて欲しい。勿論、私は『日本』を愛している。しかし、それが何に基づくのかは漠然としている。考えてみたいと思った。本書は全体的に、引用文が多すぎる感があるが、これは「在日コリアン」である著者が、客観性を担保するための方法だったのだろうか。石原都知事の「怪しげな外国人」という差別的誹謗中傷は許し難い。著者は、論うつもりは無いと言っているが、日本の社会で「パーリア」的存在は、決して「在日コリアン」だけではないですよと言っておきたい。被差別、アイヌ、沖縄、在日外国人(中国、南米、フィリピンなどコリアン系以外)、『障害』者(知的・身体、性同一)、ハンセン病患者、C型肝炎患者ほか難病患者、女性(!)他たくさん存在するし、近年の貧困や無縁社会の問題を考えれば、派遣や契約社員、アルバイトの労働者、ホームレス、独居老人など無数に存在するだろう。そういった社会的少数者・弱者への配慮が無いどころか、逆にそういった人々を差別し物笑いにしようとする自らも不安の中で生きている世間の人々の残酷な視線に迎合することで支持につなげようという都知事の言動は、絶対に容認すべきではない。石橋湛山の靖国廃止論については、正直びっくりした。戦前・戦後を通じて発言の独創性と勇気、戦後の出処進退の見事さを思い出した。もし、石橋内閣が長期政権となっていたら、中国(毛沢東の時代だが…)も含めた多面的外交・安全保障の枠組みができていただろうと夢想してしまう。それにしても、今の民主党は、どうしてリベラル保守になり切れなかったのだろう…。この本は、もう一度読もうと思う。
205ページ 所要時間2:00
眺め読みでは難しいが、著者の考え方には基本的に同意である。『国家の品格』や『美しい国へ』など幼稚な情緒的愛国心の押し付け本がベストセラーになって、「もののあはれ」とか「郷土愛が国を愛する心につながる云々」が論じられる風潮に対する気持ち悪さが、少しは晴れた。愛国心がブームであるなら、せめて南原繁や司馬遼太郎、丸山真男のレベルをベースにして欲しい。言論の自由があるとはいへ、幼稚で無責任な愛国心談義は、ちょっと勘弁して欲しい。「愛郷」と「愛国」の間の断層を踏まえた上で、自民族中心主義の狭隘さで無く、アジアに開かれたものとして「愛国心」とは何かを論じて欲しい。勿論、私は『日本』を愛している。しかし、それが何に基づくのかは漠然としている。考えてみたいと思った。本書は全体的に、引用文が多すぎる感があるが、これは「在日コリアン」である著者が、客観性を担保するための方法だったのだろうか。石原都知事の「怪しげな外国人」という差別的誹謗中傷は許し難い。著者は、論うつもりは無いと言っているが、日本の社会で「パーリア」的存在は、決して「在日コリアン」だけではないですよと言っておきたい。被差別、アイヌ、沖縄、在日外国人(中国、南米、フィリピンなどコリアン系以外)、『障害』者(知的・身体、性同一)、ハンセン病患者、C型肝炎患者ほか難病患者、女性(!)他たくさん存在するし、近年の貧困や無縁社会の問題を考えれば、派遣や契約社員、アルバイトの労働者、ホームレス、独居老人など無数に存在するだろう。そういった社会的少数者・弱者への配慮が無いどころか、逆にそういった人々を差別し物笑いにしようとする自らも不安の中で生きている世間の人々の残酷な視線に迎合することで支持につなげようという都知事の言動は、絶対に容認すべきではない。石橋湛山の靖国廃止論については、正直びっくりした。戦前・戦後を通じて発言の独創性と勇気、戦後の出処進退の見事さを思い出した。もし、石橋内閣が長期政権となっていたら、中国(毛沢東の時代だが…)も含めた多面的外交・安全保障の枠組みができていただろうと夢想してしまう。それにしても、今の民主党は、どうしてリベラル保守になり切れなかったのだろう…。この本は、もう一度読もうと思う。