もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

4 046 森達也「「自分の子どもが殺されても同じことを言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい」(2013) 感想4+

2015年02月15日 19時25分21秒 | 一日一冊読書開始
2月15日(土):ダイヤモンド社。副題「正義という共同幻想がもたらす本当の危機」

380ページ  所要時間 5:30   図書館

著者57歳(1956生まれ)。ドキュメンタリー映画監督。ノンフィクション作家。

 たまに間の抜けた論も交ざるので、5は付けられないが、時宜を得た「今まさに読まれるべき」良書・テキストである。著者のスタンスが、社会や政治と常に冷静に、批判的に一定の距離を取り(方法的懐疑)、あるべき良質な民主主義を模索する、という感じである。俺自身「著者のようでありたい」と思う、と同時に「けっこう、しんどい人生を選択して生きておられる」と尊敬している。

 不正義な選挙によってすら有権者の20%程度しか支持されていない自民党が衆議院で3分の1を超す圧倒的議席を占め、安倍晋三という極めて知的能力の低い、極右の信念と国民不信に凝り固まった<独裁者>が、新聞社・NHK他マスコミを総動員して、戦後日本の民主主義と平和主義を破壊するのを、野党がその機能を失い、国会が大政翼賛会化することで、テロの本質も見極めないまま、衆参両議院で「テロ非難決議」を挙げて、やり過ごすというお粗末さを見せつけられるのを全く手をこまねいて見過ごさざるを得ない状況が続いている。

 安倍晋三は、わざとイスラム国を挑発して、2人の邦人人質を見殺しにしておきながら、ありもしない「国難」を叫び、国民の誰も望んでいない「テロとの戦い」をでっちあげて、「従米軍国主義」体制を作り上げ、日本をアメリカの大義なき戦争の実戦部隊にしようとしている。それは、世界中の16億のイスラム教徒の信頼を一度に失うかもしれない愚挙の極みである。戦後日本が積み上げてきた「平和国家」、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教、いずれにも等距離を保つ努力をずっと、地道に続けてきた努力の積み重ねによってかち得てきた「イスラム世界」からの信用を踏みにじり、どぶに捨てようとしている。それがどれほど計り知れない「国益」の損失になるかを思えば、まさに気が遠くなる。

 戦後70年にして、一人の愚か者の料簡の狭い浅知恵によって、初めて日本人は世界でテロの対象として狙われ、身の危険に怯えねばならなくなった。愚か者の安倍がいくら「テロには屈しない」と叫んでも、この安全を確保することは、絶対に不可能なのだ。情けなくも惨めな状態である。

 愚か者によって「侮辱を受け続けている」状況下で、多くの国民・市民は、極度のストレスか、諦めの無関心状態にあると思う。今まさに目の前で信じられないほどの幼稚さ、杜撰さで進行する戦後民主主義の破壊、マスコミへの不信・絶望を深めるまともな知性を持つ人びとのきっとよすがになる本である。この本の内容が、時代遅れにならないということは非常に不幸な状況だが、今まさに時代の羅針盤(コンパス)として真価を発揮する内容になっている。

 安倍晋三が、低能でひどいということは誰でもわかることだが、我々の社会が如何に危険で恐ろしい心性・構造を持っているのか。そして決して「この道しかない!」などということはあり得ない。もっともっと「他の良い選択・良い道がある!」ということを示してくれる内容である。

 たくさんの付箋をしたし、書きだしたい内容はたくさんあるが、その元気がない。目次を掲載しておくので参考にして下さい。

目次:プロローグ「知らなかった。クマバチに謝らないと──多重で多面、多層的なこの世界」
第1章 「殺された被害者の人権はどうなる」このフレーズには決定的な錯誤がある
・「殺された被害者の人権はどうなる」このフレーズには決定的な錯誤がある /・「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい /・過熱する領土問題 譲渡することも1つの選択肢だ /・非国民で売国奴の僕は この国でますます居場所を失うだろう /・彼らは右翼ではない はびこる排他主義とレイシズム 
第2章 善意は否定しない、でも何かがおかしい
・「守らなければ」という思いが 結局、大切な人を殺してしまう /・目を背けてはいけない 多くの命が苦しみ、悶えている /・クジラを食べることは是か非か 「食と命」の問題を考える /・タイガーマスク騒動に見る 薄気味の悪い善意 /・この社会がハンセン病患者に強要した 無知で残酷な処置 /・メディアを媒介に広がる「がんばれ」 そのグロテスクさになぜ気づかない /・9・11後のアメリカの姿は 団結や統合を連呼するこの国の姿でもある /・安倍首相、ご厚意ありがとう でも歳も近いあなたに指導はされたくない
第3章 「奪われた想像力」がこの世界を変える
・どう考えてもおかしい スリッパを重ねる意味は何だろう /・本人がいて、運転免許証もある それなのになぜ印鑑が必要なのか /・この世界を滅ぼすのは 進化し続けたメディアかもしれない /・自分の首を絞めるなら勝手にやればいい でもテレビはあまりに影響力を持ちすぎた /・候補者の露出を自粛する メディアのいびつな公平性 /・“何となく無人島” イースター島とモアイの真実 /・かつて多くの人はメディアの発達が この世界から戦争をなくすと信じていた /・ごめんなさい 原子力安全神話は僕たちが形成した
第4章 厳罰化では解決できない この国を覆う「敵なき不安」
・毎日が「特別警戒」という矛盾 その弊害は深刻だ /・「叫びたし 寒満月の割れるほど」 獄中で読まれたあまりにも哀しい歌 /・今やボールペンを持っているだけで 逮捕されるかもしれない /・なぜ僕たちは刑事裁判に参加するのか その理由がわからない /・あの事件から16年 真相は解明されず不安だけが残った /・刑事罰を寛容化したノルウェー 治安が向上した理由は何か /・なぜ非当事者がこれほどまでに 居丈高になれるのか /・テロが起きても厳罰化や 死刑制度の復活を望まない国 /・とても屈折した言い方だけど 連合赤軍がうらやましい /・全国に300万台超 カメラに監視されて安心する人々
第5章 そして共同体は暴走する
・「テロとの戦い」、このフレーズを 何度耳にしてきたことだろう /・ナチスの最高幹部であるアイヒマン 彼はいったい誰の指示に従ったのか /・かけてもいい、国家に救われた命より 殺された命のほうがはるかに多い /・暴走する資本主義や民主主義が 実は多くの人を不幸にする /・日米同盟なる言葉が政治とメディアの 表舞台に現れたのはいつからか /・不安と恐怖に煽られて歯をむき出す犬に 石を投げつけてどうする /・元皇軍兵士の証言 日本軍は中国で何をしたのか /・オオカミが来たと言い続けた少年は 本当にオオカミが来たと思いこんでしまった /・過ちを検証するどころか認めもしない この国はまた同じことを繰り返すのか
エピローグ 九条の国、誇り高き痩せ我慢
あとがき

森 達也:  映画監督、作家。1956年、広島県呉市生まれ。テレビ・ドキュメンタリー作品を多く制作。98年、オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開、ベルリン映画祭に正式招待され、海外でも高い評価を受ける。2001年、映画「A2」を公開し、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞する。11年、『A3』(集英社インターナショナル)で講談社ノンフィクション賞を受賞。現在は映像・活字双方から独自の世界を構築している。明治大学情報コミュニケーション学部特任教授。 著書に『オカルト』(角川書店)、『虚実亭日乗』(紀伊國屋書店)、『A3』(集英社文庫)、『死刑』(角川文庫)、『東京番外地』(新潮文庫)、『ぼくの歌・みんなの歌』(講談社)など多数。.
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