5月13(水):
414ページ 所要時間8:40 蔵書
著者40歳(1923生まれ)。
昨日も今日も朝から夕方まで仕事に行っている。昨日3:20、今日5:20で一気に読み上げた。これは俺の努力ではなくて、作品の力である。速読にはならないが、本と向き合っているのが苦でないどころか、楽しいのだ。読みやすさもあって、ちょうどお気に入りのテレビ・ドラマを眺めているような気分というのか、こんな感覚はかなり珍しい。
文久2年(1862)の初め、土佐を脱藩した竜馬が京都に行き、島津久光の卒兵上京で起こった薩摩藩士同士の凄絶な寺田屋騒動に出遭う。出羽牢人清川八郎と江戸に下り、土佐藩邸そばの桶町千葉道場に逗留する。生麦事件の話、勝海舟のうわさなどを耳にしながら、やがて単純な尊王攘夷にかぶれた千葉重太郎と二人で勝海舟を斬りに氷川邸を訪ねていく。勝が語る話に魅了される。
斬りかかろうとする千葉重太郎の機先を制して竜馬が勝海舟に弟子入りをする。勝の口利きで夢にまで見た軍艦操練所に研究生として身を置く。そこで幕府教授方となっていた中浜万次郎にも出会う。万次郎も土佐の河田小竜(「漂巽紀略」)を通じて竜馬を知っていた。
勝の誘いで幕府艦船順堂丸に重太郎とともに乗船し、大阪に行き、そこで勝の警護を天下の千葉道場主の重太郎にやらせて、竜馬自身は京都に向かう。京都は、天誅の嵐とともに長州藩や土佐藩武市党がにわかに公家を掌握して京都政権の主導権を握りつつあった。一方で、面倒見の良い勝が、山内容堂に直談判して、盃を交わしながら竜馬の脱藩の罪を赦免する約束を取り付けてくれる。また、政治総裁職(幕閣の首相)松平春嶽にも竜馬を紹介してやる。
勝海舟との出会いで、急速に見えてきた竜馬独自の世の中(日本)を変える道、身分のない平らかな世をつくるために竜馬の私設海軍への第一歩、神戸海軍塾設立に京都・伏見や越前福井(殿様から5,000両を調達)、兵庫などを駆け回っていく。そんな中、京都で火事に会って家族離散の危機にあった”お竜(りょう)さん”に出会って電撃的恋に落ち、彼女の急場を助け、お竜さんを伏見の寺田屋のお登勢さんに預けたり、当時尊攘派の”人斬り”と恐れられた岡田以蔵に勝海舟の護衛をさせたり、と話題に事欠かない。。
いよいよ司馬さんが創り上げて、定着した<坂本竜馬伝説>の佳境が始まったのだ。事実に基づく創作だとわかっていても、司馬さんの紡ぎだす物語りは読んでいて実に爽快で楽しい。手元に歴史学研究会編「日本史年表」(岩波書店)を開きながら読んでいるのだが,400ページを超す本書一冊を読んでも文久3年(1863)の半ばであり、まだ長州藩の5月10日下関砲撃も、7月の薩英戦争も出てこない。残り5巻で文久3年(1863)半ば~慶応3年(1867)わずか5年弱が描き出されるのだ。まさに<竜馬伝説>ワールドのカーテンが揚がろうとしている。
ちなみに
ドラマ「JIN-仁1・2」の世界は「脱藩牢人の坂本龍馬」が活躍するこの第三巻以降と重なることになる。しかし、改めてこの本を読んで、坂本龍馬の忙しさを目の当たりにして、南方仁や花魁の野風らとあんなに濃厚な関係をむすぶ暇はとてもないと思ってしまうのだが……。と、つぶやくのも楽しみなのだ。
【内容紹介】
浪人となった竜馬は、幕府の要職にある勝海舟と運命的な出会いをする。勝との触れ合いによって、竜馬はどの勤王の志士ともちがう独自の道を歩き始める。生麦事件など攘夷論の高まる中で、竜馬は逆に日本は開国して、海外と交易しなければならないとひそかに考える。そのために「幕府を倒さねばならないのだ」とも。