3 107 広島大学「大学新入生に薦める新版101冊の本」（岩波書店；2009） 感想４＋

6月1日（日）：

268ページ　　所要時間 2:20　　　図書館

著者＝広島大学101冊の本委員会編。

図書館の返却日を過ぎており、１ページ30秒の縁結び読書をした。見開き2ページで1冊の本がまとめられ、関連書籍と一緒に紹介されている。この速度だと、内容を追いかけるのはきつかった。本の選択はバランスがとれていたし、紹介文もばらつきはあるが概ね適切で良かった。感想５をつけるつもりだったが、「第六章　本の買い方選び方」が、あまりにもつまらなかったので４＋にした。

いい歳をして、本を読むことに意味があるのか？とも思うが、たとえ頭に残りにくい縁結び読書であっても、本のページに目を這わせていると様々な言葉が入ってくるので、意識が活性化され、頭の中が耕されている気分になる。その感覚は、悪いものではない。

これらの真理の書を前にしていると、毎日、目の前で繰り広げられている日本の政治が如何に薄っぺらで、安っぽく欺瞞に満ちているかを思い知らされる。児戯に等しい政治屋たちの私利私欲の離合集散、アダルトチルドレン安倍晋三の知能の低さ、誰かに本当に「王様たちは裸だ！」と叫んで欲しくなる。日本は＜幼稚な国＞に堕してしまった。

目を這わせながら、面白そうだと思ったページには、付箋をしていった結果が、以下の通りである。既に読んでる本もたくさんある。

エンデ「モモ」／ラッセル「幸福論」(1930)／司馬遼太郎「この国のかたち」／田中克彦「ことばと国家」／辻邦生「安土往還記」／藤沢周平「蝉しぐれ」／小山内美智子「あなたは私の手になれますか―心地よいケアを受けるために」／「フランクリン自伝」(1818)／「チャップリン自伝」／「福翁自伝」（1899）／「高橋是清自伝」（1936）／遠藤周作「沈黙」／北岡伸一「増補版　清沢　洌―外交評論の運命」（1987）／高木仁三郎「市民科学者として生きる」(1999)／サイード「オリエンタリズム」(1978)／サイモン・シン「フェルマーの最終定理」(1997)／日本戦没学生記念会編「きけわだつみのこえ―日本戦没学生の手記」（1949）／大岡昇平「野火」／野坂昭如「アメリカひじき・火垂るの墓」／ユン・チアン「ワイルド・スワン」(1991)／フランクル「夜と霧」／ジョン・ダワー「敗北を抱きしめて」(1999)／今中哲二・原子力資料情報室「「チェルノブイリ」を見つめなおす―20年後のメッセージ」（2006）／「ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家」(1997)／黒柳徹子「トットちゃんとトットちゃんたち」（1997）／オーウェル「一九八四年」（1949）／板垣雄三「石の叫びに耳を澄ます―中東和平の探索」（1992）／ゲスト「アフリカ―苦悩する大陸」（2004）／スティグリッツ「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」（2006）／夏目漱石「私の個人主義」／ウォルフレン「人間を幸福にしない日本というシステム」（1994）／姜尚中「愛国の作法」（2006）

140601 斯くある「べき」「はずだ」論の危険性。与野党保守の集団的自衛権解釈改憲は現実が見えていない。

６月１日（日）

朝日朝刊「日曜に想う」で特別編集委員星浩の話が、心に響いたので、打ち直して掲載する。新聞記者の「本音」が聞こえてくる。俺も共感する。

「出動せよ」政治は言う資格あるか

略。そしていま、集団的自衛権の論争が続く。行使容認へ憲法解釈の変更を成し遂げたい安倍晋三首相だが、記者会見では「自衛隊が武力行使を目的として他国での戦闘に参加するようなことは決してない」とも強調した。自衛隊が戦闘行為に踏み出すのは、かなり限定されると言いたいのだろう。
　実際にはどうか。これまで停戦合意などを条件としていたＰＫＯや「非戦闘地域」に活動を限っていたイラクへの自衛隊派遣とは違う。集団的自衛権が認められれば、米国などへの攻撃を日本への攻撃と見なして反撃することができる。限定的とはいえ、これまで禁じられてきた「海外での武力行使」に道を開くことになる。自衛官が海外で危害を加えられたり、他国の人を殺傷したりする危険性が増すことは間違いない。
　それでも「出動せよ」と命じる政治の側に、どれほどの覚悟や見識、粘り強く説得する力があるのか。（公明党代表の）山口氏が感じたような、海外派遣への不安をぬぐい去ることはできるのだろうか。
　集団的自衛権は、法律解釈や外交の問題として論じられることが多いけれど、同時に自衛隊を派遣する「政治の質」も議論する必要がある。集団的自衛権が行使されるようになればいまの安倍首相だけでなく、将来のリーダーとなる中堅・若手議員の「質」も問われなければならない。
　　　　　―　―　―
　そうしたなか、結いの党の江田憲司代表が、政治の質と集団的自衛権について語っている。率直な人物評で知られる（だから、嫌われることも多い）江田氏の論理はこうだ。
　「いまの国会議員のほとんどは、外交・安全保障の知識がない。小選挙区制度の影響もあって、議員の多くは地元のことに時間を取られ、勉強不足でレベルは低い。だから、難しい問題では謙虚に抑制的に対応すべきだ。集団的自衛権の行使は許されないという見解を通してきた諸先輩の知恵に敬意を表するのも一つの選択だと思う」
　一方で、安倍首相の私的諮問機関の報告書をとりまとめた北岡伸一・国際大学長「集団的自衛権の最も重要な歯止めは政治家の判断だ」「間違った判断をして政権を失うのが政治家は最も怖い」と話す。行使に踏み切るかどうか、政治家は冷静に分析して懸命に判断できるはずだというのだ。
　「勉強不足でレベルが低い」のか「歯止め」となり得るのか。評価は難しいが、中曽根康弘、宮沢喜一、竹下登といった首相たちが、根を詰めて日本の将来を考え抜く姿を取材してきた身としては、いまの政治家が「立派な歯止めになる」と自信を持って言いきれないのが、悲しい現実である。　（以上）

安倍晋三の言葉の軽さは、もうお家芸のようなもので反応する気にもなれない。安倍は一日も早く引きずりおろすべしだ。一方で御用学者の北岡伸一が、自衛隊員の＜戦闘地域＞出動、殺し・殺されの現実を政治判断する根拠に、政治屋どもの選挙の勝ち負けで十全な判断ができるとしているのが、まったく納得がいかない。今の政治屋のレベルを見ていて、こんな無責任な詭弁を弄する学者を信用できない。

131210（昨年12月10日）に書いた記事で、安倍の言葉の軽さを復習しておく。

その２

ところで、特定秘密保護法案により「（国民の）生活が脅かされることは断じてありえない」という昨日の首相発言の耐えられない軽さにはマイッタ。これは福島原発汚染水問題を世界に向かって「アンダーコントロール」と宣言したのと同じだ。彼は、事態の深刻さ、自分の犯した選択の歴史的意味を全く理解できていないのだろう。

言葉は悪いが、バカ(知能が低くこらえ性が無い）だから、自分のやっていることが理解できないのだ。拙速な強行採決も、十分に政策や法案を理解できていないことに対する自信の無さ、後ろめたさの現れでしかない。また、十分な時間をかけて、国民と衆参両院議員を説得して見せる能力も自信もないし、内容変更に対する硬直性も自分自身の理解力・対応能力の無さに対する自信の無さの現れなのだと思う。

その結果、対抗勢力と厳しく強く切り結ぶことによって深い理解と共感に裏付けられた境地に到達できていない。だからこそ、彼の中では、重大な政策や問題に対する意識が深まらず、不十分で浅薄な言葉だけの熱弁となるのだろう。

汚染水問題も、特定秘密保護法も、安倍が首相を辞めたあと、ずっと継続していく。むしろそれが前提だ。法律は成立すると、どんどん独り歩きを始める危険性をはらむ。安倍には、そこへの自覚が無さ過ぎる。言葉の脇があまく、耐えられないほどに軽い。世襲のプライドばかりが強い愚か者を首相に担ぎあげざるをえない日本の社会構造は、問題だし、不幸であるとしか言いようがない。