Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「それでも生きる子供たちへ」

2007-07-23 03:01:50 | cinema
それでも生きる子供たちへ


ALL THE INVISIBLE CHILDREN
2005イタリア/フランス


世界の子供たち、と聞くとすぐに、貧困、病気、飢餓、戦争、災害、とネガティヴワードばかりが連想されてしまうご時世だよなあ。
なので、この作品もそういう切り口で迫るドキュメンタリータッチのものかなあとなんとなく先入観をもって観にいった。(クストリッツァは例外でいつもの調子だろうとは思っていたが(笑))

で、観たら、確かにそういうキーワードであふれる作品群だったけれど、内容はあくまで子供目線のフィクション。フィクションの力、物語の力によって子供を取り巻く状況とその中を生きる子供たちの力を伝えようという立場のものだと感じた。

批評的ドキュメンタリーとするならば、たとえば貧困の問題はそもそもなぜ発生しているのかという、マクロな分析の視点も不可欠だろう。でもここにある作品たちはあくまで子供たちの身の周りに密着して語られる物語。
これは現代の民話だ。理性や知性でのアプローチとは違って、接する者の感性に訴え、心に沈みこみ、行動や考えの源泉となるような、そんな民話を準備したのだ。

なんて思ったよ。

***********************

『タンザ』 TANZA
監督/脚本:メディ・カレフ
撮影:フィリップ・ブレロー
出演:ビラ・アダマ / ハノウラ・カボレ

明示されないけれどゲリラ戦で山中を移動する小さなグループ。構成員は皆子供だ。身近な戦闘。身近な武器。身近な死。
ある小さな村に行き当たり、この村を襲うことになるが・・・

戦闘シーンなどが芝居的でまったくリアルでないところなど、独特の距離感で逆に子供の目線を感じさせる。なにがリアルかという選択には常にステレオタイプの再生産となる可能性が含まれているわけでね。そのへん、これは独創的な映画だと思うです。


『ブルー・ジプシー』 BLUE GYPSY
監督/製作:エミール・クストリッツァ
脚本:ストリボール・クストリッツァ
出演:ウロス・ミロヴァノヴィッチ

刑務所で模範囚な子供。出所するけれども出迎えるのは子供に盗みを働かせて稼ぐろくでもない親父。看守に守られ食事と仕事とベッドがある刑務所と、自由だけれど守る者のない外とどちらがいいか?

てなストーリーに全然回収されない細部の騒然としたポリフォニーがここでも炸裂するクストリッツァ。重苦しいテーマだけれど小気味よいコメディになっている。ああ、民話だなあ・・親父の盗賊ファミリーだってブラスバンドを率いてすごく楽しそうだし(笑)


『アメリカのイエスの子ら』 JESUS CHILDREN OF AMERICA
監督:スパイク・リー
脚本:サンキ・リー/ジョーイ・リー
製作:スパイク・リー/マイク・エリス
製作総指揮:サンキ・リー/ジョーイ・リー
出演:ロージー・ペレス/ハンナ・ホドソン/アンドレ・ロヨ

HIV感染者+麻薬常習者の両親を持つブランカ。自分もHIVに感染していたがそのことは両親からは知らされずに育った。あるとき親しいはずの友だちにエイズベイビーといじめられ、自分が感染者と知る。悩むブランカは・・・

ブランカの家庭は荒んだものでもなく、むしろ周囲の無理解と偏見(子供も大人も)のほうが熾烈である。でもそのような状況のなかで自分は生きなければならない、そのためにはどうすればいいかを、ブランカは無言で考え、歩き出す。思わず居住まいを正すような凛とした意志。


『ビルーとジョアン』 BILU E JOAO
監督/脚本:カティア・ルンド
出演:フランシスコ・アナウェイク・デ・フレルタス / ベラ・フェルナンデス

ブラジルのスラムで暮らす兄妹。空き缶や段ボールを拾い集めては換金する生活。高層ビルやハイウェイのスキマをぬって埃の中を淡々と生きる彼等の、こまごまとした出来事。

淡々としているがゆえに永遠に続いていきそうな生活。でも実際は成長してますます閉塞していくんだろう、という予感。スラムですらいつまであり続けるのかわからない、そういう予感へ導かれる。


『ジョナサン』 JONATHAN
監督:ジョーダン・スコット/リドリー・スコット
脚本:ジョーダン・スコット
出演:デヴィッド・シューリス / ケリー・マクドナルド / ジョーダン・クラーク / ジャック・トンプソン / ジョシュア・ライト

戦争カメラマン。自分はなにを成し遂げたのか。誰も救えない。無意味だ。悩み、フラッシュバックに苦しむ。外に出ると森の奥へ走る子供の姿が・・後を追ってみると・・・・・・・

リドリー印のポエジー溢れる小品。戦下の子供たちの生きる姿を見てかろうじて使命をとりもどす様は、今を生きる大人たちの責任の取り方を突き付けられているようです。


『チロ』 CIRO
監督:ステファノ・ヴィネルッソ
脚本:ディエゴ・デ・シルヴァ / ステファノ・ヴィネルッソ
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ
出演:ダニエリ・ヴィコリト / エマヌエーレ・ヴィコリト / マリア・グラッツィア・クチノッタ

街頭で盗みを働いては盗品を売りさばく少年たち。ナポリでは年々治安が悪くなっていると嘆く大人たち。少年チロが盗品の時計を売って、おまけに要求したものは・・・・

ロッセリーニの、パゾリーニの国の映画、という感じでした。アッカトーネはいまでは低年齢化して、先行きも一層怪しくなってきたようです。撮影はあのストラーロ。ラストを夜景にしたところなんかはフェリーニ的?


『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』 Song Song & Little Cat
監督:ジョン・ウー
脚本:リー・チアン
出演:ザオ・ツークン / チー・ルーイー / ジャン・ウェンリー / ワン・ビン / ヨウ・ヨン

桑桑は裕福だけれど諍いの耐えない家庭の子供。小猫は捨て子で貧乏なじいさんにひろわれたが愛情を注がれて育った子供。それぞれの思い、信念、威厳が、そっとすれ違い触れあう。

なんかこれが一番面白かったな。ジョン・ウーだし、間違いなく確信犯的な超童話タッチ。あざとさもわざとらしさも計算のうえ。大人たちよ、童話に学べ。子供たちこそ信念と威厳を教えてくれる存在なのだ~~


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2 コメント

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TBありがとうございました (OZAKU)
2007-07-23 23:41:36
こんばんわ~、トラバしてくださってたんですね。私からもお返しさせていただきます。

この映画を見て、うちの娘もこういう風にたくましく生きてほしい、と思いました。生きる力って言うんですか?それと、コミニュケーション能力があればどこでもなんとか生きていける気がします。・・・・私に一番欠けているものです。だからこそ娘には、なんて勝手に思ってます。ちょっと映画の感想からは離れてしまいましたが。
返信する
こんばんは (manimani)
2007-07-24 03:06:04
☆OZAKUさま☆
どうも~
日本はわりとコミニュケーションしなくてもなんとかなる社会なような気がして、それでかえって人間の人間力が低下しているように思えます。自分なんか人間力低下の見本のようなものですけど・・
子供にはたくましく生きて欲しいですね~
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