Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「チェ・ゲバラ伝」三好 徹

2009-02-17 21:53:46 | book
チェ・ゲバラ伝
三好 徹
原書房

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増補してあるとはいえやや古い本なのだが、しかし内容はしっかりしていると思った。労作である。
チェ自身の著作・日記はもちろん、国内外の文献、関係者の日記、当時の各国のマスコミ記事などを丹念に調べているだけでなく、関係者のを訪れ証言を得たり、ゆかりの地を踏破して現地の感覚をも知るなど、足で丹念に集めたソースに基づくチェの伝記本である。有名なエピソードも複数の情報源に基づき真実はどうであったかを突き詰めようとする姿勢は感心できる。
基本、ゲバラの高潔な生き様に深い共感をもって書いているのだが、その書き方は情緒的な賛美ではなく真摯なジャーナリストのものだ。

チェについては、その高潔さに恐れ入るとともに、やっぱり一種スーパーマンであったのだと思う。
彼はまず医者であり、それだけでも十分人の一生をかけるに足ることなのに、そのうえゲリラ戦士になった。戦士だって滅多になれるもんでない。
革命後は国の指導者の一員となり工業相や国立銀行総裁をやったりする。それだってそうそう勤まるものではない。
のみならず、各国を歴訪して通商条約を取り付ける交渉を各国トップとしたりしてる。外交までやり、それなりの成果も得るのだ。
そしてその傍らで革命戦争回顧録などの文章を相当量残している。

とても一人の人間の伝記とは思えない。

なおかつキューバを去ったあとは、コンゴでのゲリラ活動を経たのち、ボリビアで革命軍戦士として落命する。
本書中に繰り返し書かれているが、世に革命家は多いけれど、革命が成就したのちに、再び異国の地の革命に身を投じたものはチェだけである、という。
ほんとうにチェだけかはわからないが、肝心なことは、彼は、虐げられる民衆のありかたを理不尽と思い、それをもたらしている帝国主義的権力にたいして心からの怒りを持って戦ったことだ。それは全く教条主義的な動機ではなく、腐敗政権やそのバックのアメリカ合衆国へむけられる彼の批判の眼差しは、共産主義でありながらもうひとつの帝国主義陣営とも言えるソ連にも同様に向けられる。

キューバ革命が成功したのだとするなら、きっとこのイデオロギー闘争に決して堕すことのない精神の高潔さが、カストロはじめゲリラ軍の根底に根付いていたからだと思う。

****

一方で、チェの武装闘争は、キューバでは成功したものの、コンゴやボリビアでは成果を上げることが出来なかった。
その理由を知りたい。
なにが問題であるのか。
それは武装闘争の限界なのか。
民衆の生活水準の問題なのか。
それともチェの方法論の問題なのか。



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コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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コメントありがとうございます! (mezzotint)
2009-02-18 00:55:44
manimaniさま、今晩は★☆
早速のコメントどうもありがとうございます。
チェのプロフィール、Wikipediaから拝借したもので(汗)あまり深く考えず記載してしまいました。申し訳ないです(ペコリ)ちょっと訂正しますね。manimaniさんも爆睡でしたか!何か
あの物語の展開にはどうも食い入るように観れませんでした。「チェ39歳の別れの手紙」は何故か?最後までしっかり観れたんです。どうしてなのか??そんなことでありがとうございました!ではまた記事書きますので、宜しくです。
ん? (manimani)
2009-02-18 21:31:07
☆mezzotintさま☆
どうも~
あれ?こんなお名前でしたかしら?(笑)

あ、いえいえ、こちらも軽い気持ちで違うだろ~なんて書いてしまってすみませんです。
もういちど「28歳」は観たいんですけど・・・また爆睡だとこまるのでDVD待ちにしようかと・・・^^;

またお越し下さい~

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