Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

「オリバー・ツイスト」ロマン・ポランスキ

2007-08-18 05:13:26 | cinema
オリバー・ツイスト [DVD]

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かねてから産業革命期のイギリスには住みたくないなあと思っていたりするわけですけど、ディキンズ原作のこの作品は産業革命もほぼ進行し尽くしたころのお話。極端な貧富の差で底辺ではろくでもない環境をそれこそ蠢くようにくらしているわけで、ああ、この時代に生まれていたらまちがいなく蠢く側にいただろうな・・などと想像するわけです。

いや、むしろ基本的に過去のどの時点にしろヨーロッパには住んでいたくないというべきでしょうか。歴史をひもとけばほぼ休む間もない暗黒の歴史と言えるわけで・・・それを乗り越えてこそのヨーロッパ文化でもあるわけですけどね。

それをいうならどの地域であっても血塗られた歴史のない土地はそうそうなく、なんだかんだ平和ボケの自分の過ごした時代をふがいなくも結構愛しているのでありまする。

***

と話がそれるわけですが、この作品、なんとなく(我々から見た)異国情緒豊かに貧民街やら富裕層の生活やらが描かれるので、どうにもおとぎ話的に見えてしまって。
というわけで文芸娯楽作品としてわくわくと楽しんでしまいましたね。
原作の含意にあるという、当時(1830年代)救貧法への批判とか、貧民を貧民たらしめている社会制度や風潮への批判という側面はあまり感じることはなかったです。(これはわたしの蒙昧さからくることのように思えますが)

むしろ悪党どもの最期が妙に人間臭いところとかに惹かれました。ビル・サイクスはいかにも根っからの悪党らしい死に方だし、実はオリバーに優しい気持ちで接していたフェイギンは恐怖のあまり錯乱し、なんとも哀れな最期を迎えるし。彼は盗賊団といっても孤児をあつめて富裕層から小銭をかすめて食わせていただけなわけで、ほんのわずかな金目のものを宝のように大事にするあわれな貧民なのです。

あわれといえばナンシーですねえ。悲惨な境遇のなかでも良心に従って行動し、そのために命を落としてしまう。

すべては社会のせいだ~と青臭いことを言ってみても、ここはいいような気がしましたね。

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街並みや屋敷や貧民窟や、そういった背景をかなり綿密に「再現」?しようとする意志は、舞台こそ違えど「戦場のピアニスト」に通じる強い意志を感じましたね。
ロンドンの街路から道なりに遠くまで見通す遠近法的ショットは、「戦場・・」でのユダヤ人街の場合と同じ視点です。

本作と「戦場・・」は、ポランスキによるヨーロッパ近代史の映画的可視化プロジェクトなのかもしれませんね。
(とか最近のはこの2作しか観てないんで適当なこと言ってますが)

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にしても実はオリバー自身はロンドンについてからは運命に翻弄されるがまま、ほとんど周りが勝手に物語を進めてしまいます。無垢で思わず周囲がやさしくしてしまうような存在、ということだけがとりえ?

この感覚を思いっきり誇張して抜き出したのが、キャロル・リードのミュージカル「オリバー!」だったでしょう。あれもなかなか面白いものでした。どうせ娯楽文芸作品になってしまうのなら、最初からノリノリでいっちまえということでしょうか。無垢を人間にしたようなマーク・レスターと、暗い陰のあるジャック・ワイルドの「小メロ」コンビは最高に娯楽していましたね。
オリバー!

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というわけで、ポランスキー版の核心はなにか?ということには全然触れることができないままこの記事は終わるわけです。あしからず。

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(DVDないのか?)




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コメント (4)
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