Credo, quia absurdum.

旧「Mani_Mani」。ちょっと改名気分でしたので。主に映画、音楽、本について。ときどき日記。

ペンローズ・量子力学・ウェブ進化論・映画史・山田宏一

2007-06-24 01:23:51 | book
最近読んだ本について。

ペンローズの“量子脳”理論―心と意識の科学的基礎をもとめて

筑摩書房

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もちろんグレッグ・イーガンからの流れで手に取った本。
人間の意識は量子的プロセスなのではないかという(というとすごい語弊があるんだろうけど)考え方は非常に刺激的で、ようするにわくわくするのです。

で、その考えの急先鋒にペンローズという人がいるわけだけど、この本、肝心のペンローズによる論文部分はさっぱりわからん。チンプンカンプン。まいった。
本書は訳者による解説、ペンローズへのインタビュー、他人の論文などからなる寄せ集め構成なので、解説の部分をとりあえず楽しむ。



ペンローズはアルゴリズムの集積で意識や精神活動を完全にシミュレートできる、という「強い人工知能」派に対して否定的である。この考え方に対してはゲーデルの不確定性定理に基づいた論理的な批判が展開される。
ゲーデルの証明したことは、数学理論においては真だけれど証明不可能な命題が存在するということであり、これは計算不可能性といいかえてもよく、要は世の中にはコンピュータでも計算できないことがあるということなのだ。

ところが人間の意識は、真だけれど証明できない命題を「真である」と知ることができる。意識は計算の積み重ね以上のこと、非計算的プロセスに関わっているのである。
ペンローズがいうには、ゲーデルが証明したことは「私たちは常に新しいタイプの理屈を探し続けなければならず、ある一定の固定したルールの集合に頼ることはできない」ということなのだ、とか。

じゃあ意識は非物質的プロセスなのか?というとペンローズはそうは考えない。意識もあくまで自然科学的プロセスであり物質的基礎をもち、数学的に記述可能なものなのだと考える。(決定論的)

となると意識はどういうプロセスなのか?ペンローズはそこに量子力学が関わっていると考える。

○意識は非計算的プロセスである
○量子力学の波動関数の収縮のプロセスには計算不可能なプロセスが含まれている可能性があり、現在非計算的プロセスを含む理論は量子力学オンリー。
○ならば計算不可能なプロセスが関わる意識には量子力学が関わっていなければならない。(決定論的かつ非計算的)

ということらしい。

ということのほかにも、意識には量子的振る舞いを示す特質があって、たとえば非局所性。脳においてはその活動は非局所的、つまり部分が機能しているのではなく、全体で総体のプロセスを処理しているようなところがある。らしい。脳の一部が損なわれて機能不全に陥っても、しばらく訓練すると脳の他の部位が損なわれた部位の機能を肩代わりするようになる、という話を聞いたことがあるな。
CDの記録面もそういう構造であるらしく、面の一部に傷がついても全体として再生が可能だったりするのはそういう非局所的記録方法だからだそうです。

話がそれたが、じゃあ脳ではなにがおきているのか?超ミクロの世界での量子力学的現象が脳細胞というマクロな世界のプロセスにどう関わっているのか?
ということについては、突如具体的に、細胞内のマイクロチューブルという組織が量子的プロセスを司っている可能性がある、と言う話なのだ。
で、そのことについての論文が収録されているのだがチンプン。

ペンローズは物理学者なので、こういう生物学的なことに口を出したことで非常に旗色が悪いらしい。
ニューロンの活動はあくまでマクロなレベルのプロセスなのだから古典物理学レベルですべて記述可能である、という根本的な反論もある。

ただ、ペンローズ自身も量子力学によって意識が完全に説明できると考えているようではないようだ。量子力学自体がいまだ不完全な理論であるという認識にある。なにしろ波動関数の収縮自体が、ひとつの前提にすぎないわけだから。
意識が解明されるには、相対性理論や量子力学の発生と同様な根底的なパラダイム変換を待たないといけないだろう、ということらしい。




ニュートン力学を最初に理解した人は誰か?というなぞなぞがあるそうだ。答えはアインシュタイン。彼の業績はニュートン力学の限界を明確にしたということでもあり、理論の限界をはじめてすみずみまで理解した人こそ、その理論を最初に理解したということになる。

量子力学についてはいまだその限界をすべて明確にした人はいない。私たちは量子力学を超えて、それを含む新しい包括的理論体系を手に入れて初めて量子力学をすべて理解したといえる。

それは超ひも理論かもしれないし、ペンローズのツイスターかもしれないし、全然別のものかもしれない。万物理論の登場はいつだろう。(その発見のニュースを生きているうちに聞きたいもんだ。)


☆理系の人へ:この文章を読んでも笑わないこと。
 ど文系の頭脳ではここまでが精一杯なんですから・・☆

***

ありゃりゃ。
読んだ本をいくつかレビューしようと思ったら1冊でこんなに長くなってしもた。
(というわけで続く)

そうそう
この本で
●2回転しないと元の状態にもどらないという「スピノール」の性質について体感的に実験できた。
●「対角線論法」というのを知った。これで「自然数より実数の方が数が多い」ことを証明できるそうな。

そいから、私の苦手なソダーバーグ監督作品に「ペンローズの悩み」というのがあるそうですが、↑のペンローズとは全然関係ないみたいです・・・


↓次回予告
量子力学が語る世界像―重なり合う複数の過去と未来

講談社

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ペンローズの本(すげ~難しそう)
皇帝の新しい心―コンピュータ・心・物理法則

みすず書房

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心の影〈1〉意識をめぐる未知の科学を探る

みすず書房

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心の影〈2〉意識をめぐる未知の科学を探る

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心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる

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コメント (4)
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