万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌3901 み冬継ぎ3626

2021年03月16日 | 万葉短歌

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万葉短歌3901 み冬継ぎ3626

み冬継ぎ 春は来れど 梅の花
君にしあらねば 招く人もなし  大伴書持

3626     万葉短歌3901 ShuI048 2021-0316-man3901

□みふゆつぎ はるはきたれど うめのはな
  きみにしあらねば をくひともなし
○大伴書持(おほともの ふみもち)=原文は「大伴宿祢書持」。08-1480歌参照。(3906左注に、「右十二年〔(740)〕十二月九日大伴宿祢書持作」。)
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第12首。題詞に、「追和(おひてこたふる)大宰之時梅花(ばいくゎに)新(あらたしき)歌六首」、その第1首。
【訓注】み冬継ぎ(みふゆつぎ=民布由都芸)[「この歌は梅花三十二首の冒頭歌815を意識して詠んだもの。・・・<み>は尊敬の接頭語。・・・時間名詞に<み>を冠する例は、集中、この一例のみ」。下記注]。梅の花(うめのはな=烏梅能芳奈)。君(きみ)[「815の作者、大弐紀卿〔(だいに きの まへつきみ)〕をさす」]。招く人(をくひと=遠久人)[05-0815招きつつ(をきつつ=乎岐都々)]。
【編者注-梅花三十二首冒頭歌815】現行元号<令和>は、2019年04月朔日に、日本政府が発表した。根拠として挙げたのがこの歌。翌日に編者(悠山人)は、やや異なる私見を述べた(ブログ『悠山人の新古今』、2019-0402-yts2058、短歌写真「2058 満開の」記事)。その考えは今も変わらない。


万葉短歌3900 織女し3625

2021年03月15日 | 万葉短歌

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万葉短歌3900 織女し3625

織女し 舟乗りすらし まそ鏡
清き月夜に 雲立ちわたる  大伴家持

3625     万葉短歌3900 ShuI042 2021-0315-man3900

□たなばたし ふなのりすらし まそかがみ
  きよきつくよに くもたちわたる
○大伴家持(おほともの やかもち)=原文は「大伴宿祢家持」。03-0403歌参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第11首。題詞に、「〔天平〕十年〔(738)〕七月七日之夜独仰天漢(あまのがはを)聊(いささかに)述懐(おもひを)一首」。左注に、「右一首大伴宿祢家持作」。
【訓注】織女(たなばた=多奈波多)[<たなばた>訓は、08-1520織女、以下集中に11か所]。まそ鏡(まそかがみ=麻蘇鏡)。清き月夜(きよきつくよ=吉欲伎月夜)。雲立ちわたる(くもたちわたる=雲起和多流)[「<雲>は、妻迎え舟が乗り出す動きによって立つ水しぶきが霧となると見たもの」]。


万葉短歌3899 海人娘子3624

2021年03月14日 | 万葉短歌

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万葉短歌3899 海人娘子3624

海人娘子 漁り焚く火の おぼほしく
角の松原 思ほゆるかも  ○

3624     万葉短歌3899 ShuI022 2021-0314-man3899

□あまをとめ いざりたくひの おぼほしく
  つののまつばら おもほゆるかも
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第10首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第10首(ただし、依拠本の付番は7)。
【訓注】海人娘子(あまをとめ=海未通女)。漁り(いざり=伊射里)。おぼほしく(於煩保之久)[「上からは対象の有様がはっきりしないさま、下へは心が晴れ晴れせずにうっとうしいさま」。<おぼほしく>訓は集中ここだけで、02-0176欝悒、以下<おほほしく>訓が16か所]。角の松原(つののまつばら=都努乃松原)[「<角>は兵庫県西宮市松原町津門(つと)の海岸」。03-0279角松原(つののまつばら)]。


万葉短歌3898 大船の3623

2021年03月13日 | 万葉短歌

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万葉短歌3898 大船の3623

大船の 上にし居れば 天雲の
たどきも知らず 歌乞はむ我が背  ○

3623     万葉短歌3898 ShuI022 2021-0313-man3898

□おほぶねの うへにしをれば あまくもの 
  たどきもしらず うたこはむわがせ
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第9首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第9首(ただし、依拠本の付番は6)。
【訓注】大船(おほぶね)。天雲(あまくも=安麻久毛)。たどき(多度伎)。歌乞はむ(うたこはむ=歌乞)[「難訓」]。我が背(わがせ=和我世)[「皆さん、の意。・・・歌の座の人に<我が背>などと呼びかけ・・・」。20-4448伊麻世和我勢故(いませわがせこ)、-4504伎末勢和我世古(きませわがせこ)]。


万葉短歌3897 大海の3622

2021年03月12日 | 万葉短歌

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万葉短歌3897 大海の3622

大海の 奥処も知らず 行く我れを
いつ来まさむと 問ひし子らはも  ○

3622     万葉短歌3897 ShuI022 2021-0312-man3897

□おほうみの おくかもしらず ゆくわれを
  いつきまさむと とひしこらはも
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第8首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第8首(ただし、依拠本の付番は10、3899左注をここへ置く)。
【訓注】大海(おほうみ)。奥処(おくか=於久可)。我れ(われ=和礼)。


万葉短歌3896 家にても3621

2021年03月11日 | 万葉短歌

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万葉短歌3896 家にても3621

家にても たゆたふ命 波の上に
浮きてし居れば 奥処知らずも  ○

3621     万葉短歌3896 ShuI022 2021-0311-man3896

□いへにても たゆたふいのち なみのうへに
  うきてしをれば おくかしらずも
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第7首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第7首(ただし、依拠本の付番は9)。
【訓注】家(いへ)。たゆたふ命(たゆたふいのち=多由多敷命)[下記注]。
【編者注-たゆたふ】集中5か所に出現。02-0196(長歌)大船 猶預不定見者(おほぶねの たゆたふみれば)、07-1089海原 絶塔浪尓(うなはらの たゆたふなみに)、11-2738大船乃 絶多経海尓(おほぶねの たゆたふうみに)、11-2816天雲之 絶多不心(あまくもの たゆたふこころ)、17-3896家尓氐母多由多敷命。


万葉短歌3895 たまやはす3620

2021年03月10日 | 万葉短歌

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万葉短歌3895 たまやはす3620

たまはやす 武庫の渡りに 天伝ふ
日の暮れ行けば 家をしぞ思ふ  ○

3620     万葉短歌3895 ShuI022 2021-0310-man3895

□たまはやす むこのわたりに あまづたふ
  ひのくれゆけば いへをしぞおもふ
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第6首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第6首(ただし、依拠本の付番は8)。
【訓注】たまはやす(多麻波夜須)[「魂を奮い立たせる意と覚しい」。14-3406乎里波夜志(をりはやし)、16-3886(長歌)腊賞毛(きたひはやすも〔2か所〕)]。武庫の渡り(むこのわたり=武庫能和多里)[「兵庫県武庫川の河口付近の渡し場」。03-0256武庫乃海能(むこのうみの)、-0358武庫浦乎(むこのうらを)、ほか]。日の暮れ行けば(ひのくれゆけば=日能久礼由気婆)。家(いへ)。


万葉短歌3894 淡路島3619

2021年03月09日 | 万葉短歌

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万葉短歌3894 淡路島3619

淡路島 門渡る船の 楫間にも
我れは忘れず 家をしぞ思ふ  ○

3619     万葉短歌3894 ShuI022 2021-0309-man3894

□あはぢしま とわたるふねの かぢまにも
  われはわすれず いへをしぞおもふ
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第5首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第5首。
【訓注】淡路島(あはぢしま)[淡路市・洲本市・南あわじ市からなる兵庫県の島]。門(と=刀)。船(ふね)。楫(かぢ=可治)。我れ(われ=吾)。家(いへ=伊弊)。


万葉短歌3893 昨日こそ3618

2021年03月08日 | 万葉短歌

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万葉短歌3893 昨日こそ3618

昨日こそ 船出はせしか 鯨魚取り
比治奇の灘を 今日見つるかも  ○

3618     万葉短歌3893 ShuI022 2021-0308-man3893

□きのふこそ ふなではせしか いさなとり
  ひぢきのなだを けふみつるかも
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第4首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第4首。
【訓注】昨日(きのふ)。船出(ふなで=敷奈■〔偏:亻、旁:弖〕)。鯨魚(いさな=伊佐魚)。比治奇の灘(ひぢきのなだ=比治奇乃奈太)[「兵庫県高砂市南方の播磨灘の一部・・・」]。今日(けふ)。


万葉短歌3892 磯ごとに3617

2021年03月07日 | 万葉短歌

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万葉短歌3892 磯ごとに3617

磯ごとに 海人の釣舟 泊てにけり
我が船泊てむ 磯の知らなく  ○

3617     万葉短歌3892 ShuI022 2021-0307-man3892

□いそごとに あまのつりぶね はてにけり
  わがふねはてむ いそのしらなく
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第3首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第3首。
【訓注】磯(いそ=伊蘇)[2か所]。海人の釣舟(あまのつりぶね=海夫乃釣船)。泊て(はて=波氐)[2か所]。


万葉短歌3891 荒津の海3616

2021年03月06日 | 万葉短歌

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万葉短歌3891 荒津の海3616

荒津の海 潮干潮満ち 時はあれど
いづれの時か 我が恋ひざらむ  ○

3616     万葉短歌3891 ShuI022 2021-0306-man3891

□あらつのうみ しほひしほみち ときはあれど
  いづれのときか あがこひざらむ
○=作者未詳。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第2首。旅人傔従等羇旅悲傷歌十首の第2首。
【訓注】荒津(あらつ)[「福岡市中央区西公園付近にあった大宰府の外港」。12-3215荒津之浜(~のはま)、-3216荒津左右(~まで)、-3217荒津海(~のうみ)]。
【原文】17-3891  荒津乃海 之保悲思保美知 時波安礼登 伊頭礼乃時加 吾孤悲射良牟  作者未詳


万葉短歌3890 我が背子を3615

2021年03月05日 | 万葉短歌

***** 万葉集 巻17(3890~4031、百四十二首) 始 *****

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万葉短歌3890 我が背子を3615

我が背子を 我が松原よ 見わたせば
海人娘子ども 玉藻刈る見ゆ  三野連石守

3615     万葉短歌3890 ShuI022 2021-0305-man3890

□わがせこを あがまつばらよ みわたせば
  あまをとめども たまもかるみゆ
○三野連石守(みののむらじ いそもり)=未詳。(01-0062、08-1644参照)
【編者注】題詞に(大意)、天平2年(730)冬、大宰帥大伴旅人の上京を悲しむ歌。ここでは略して、「旅人傔従(けんじゅう)等羇旅悲傷歌十首」。その第1首。巻17(3890~4031、百四十二首)の第1首。左注に、「右一首三野連石守作」。
【訓注】我が背子を 我が松原よ(わがせこを あがまつばらよ=和我勢児乎 安我松原欲)[「<よ>は、より、の意。起点を示す」]。海人娘子(あまをとめ=安麻乎等女)。玉藻(たまも=多麻藻)。傔従(「貴人・高官らの護衛に当たる従者。・・・<傔>は<従>・・・」)。


万葉短歌3889 人魂の3614

2021年03月04日 | 万葉短歌

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万葉短歌3889 人魂の3614

人魂の さ青なる君が ただひとり
逢へりし雨夜の 葉非左し思ほゆ  ○

3614     万葉短歌3889 ShuH607 2021-0304-man3889

□ひとだまの さをなるきみが ただひとり
  あへりしあまよの ■■■しおもほゆ
○=作者未詳。
【編者注】第3部(3855-3889、三十五首)の第34首。男。「怕物歌三首」の第3首。
【訓注】人魂(ひとだま)[「死んだ人の魂。上代にこの例のみ」]。さ青(さを=佐青)[「ここは<青>の不気味さを強調する。<君>は、・・・ついこのあいだ死んだ知人・・・。前歌の<君>とは質を異にする」]。雨夜(あまよ)[「集中ここのみ」。下記注]。葉非左(■■■)[「灰屋(はひや)(焼場)の意と考えるが、ここでは慎重を期して訓義未詳と見ておく」]。
【編者注-雨夜】雨夜鬼神恐(yǔyùyèguǐshénkǒng、元稹<寺院新竹>)、蕭騷寒雨夜xiāosāohányǔyùyè(杜牧<栽竹>)、いずれも『呉江詩詞網』参照。

***** 万葉集 巻16(3786~3889、百四首) 終 *****


万葉短歌3888 沖つ国3613

2021年03月03日 | 万葉短歌

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万葉短歌3888 沖つ国3613

沖つ国 うしはく君の 塗り屋形
丹塗りの屋形 神の門渡る  ○

3613     万葉短歌3888 ShuH607 2021-0303-man3888

□おきつくに うしはくきみの ぬりやかた
  にぬりのやかた かみのとわたる
○=作者未詳。
【編者注】第3部(3855-3889、三十五首)の第34首。男。「怕物歌三首」の第2首。
【訓注】沖つ国(おきつくに=奥国)。うしはく君(うしはくきみ=領君)[「死霊の集まる異界を領有する君主。<うしはく>は物を主(うし)として佩(は)く(着ける)意」。ほかには一例、09-1759(長歌)此山乎 牛掃神之 従来(このやまを うしはくかみの むかしより)]。塗り屋形(ぬりやかた=柒屋形)[「彩った屋形船。・・・<柒>は<漆>でヌル」。下記注]。丹塗り(にぬり=黄柒)[「魔除けのため、赤く彩った・・・。<黄>は、・・・丹(に)(赤)系統の一部と見なされていた・・・」]。
【編者注-柒】シツ、シチ、うるし(漆)、<七>の大写(代替大字)。(『漢字辞典ONLINE』『漢典』など参照)


万葉短歌3887 天にあるや3612

2021年03月02日 | 万葉短歌

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万葉短歌3887 天にあるや3612

天にあるや ささらの小野に 茅草刈り
草刈りばかに 鶉を立つも  ○

3612     万葉短歌3887 ShuH607 2021-0302-man3887

□あめにあるや ささらのをのに ちがやかり
  かやかりばかに うづらをたつも
○=作者未詳。
【編者注】第3部(3855-3889、三十五首)の第33首。男。題詞に、「怕物(おそろしきものの)歌三首」。3884は、仏足石歌体(集中唯一)。3885~3886は、長歌。
【訓注】天(あめ)。ささらの小野(ささらのをの=神楽良能小野)[「天界にあると信じられた野」。03-0420(長歌)天有 左佐羅能小野之(あめなる ささらのをのの)。下記注]。茅草(ちがや)。草刈りばか(かやかりばか=草刈婆可)[下記注]。鶉(うづら)。
【依拠本注-ささ】原文「神楽」は神楽(かぐら)奏上の時、囃詞でササと唱えることによる。
【編者注-刈りばか】稲や草を刈り取る場所や範囲。(『詳説古語辞典』)