2021-0929-man4117
万葉短歌4117 去年の秋3819
去年の秋 相見しまにま 今日見れば
面やめづらし 都方人 大伴家持
3819 万葉短歌4117 ShuI561 2021-0929-man4117
□こぞのあき あひみしまにま けふみれば
おもやめづらし みやこかたひと
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第86首。第4116歌(長歌、題詞(要旨)に、国掾久米広縄が都から帰任して宴席で国守大伴家持が作る歌一首と短歌、と)への「反歌二首」の第1首。
【訓注】去年の秋(こぞのあき=許序能秋)。まにま(末尓末)[<随。連体修飾語を受けて、連用修飾句を構成する。・・・に任せて。・・・のままに>(『詳説古語辞典』)]。今日(けふ)。都方人(みやこかたひと=美夜古可多比等)[「都の方の人」]。
2021-0928-man4115
万葉短歌4115 さ百合花3818
さ百合花 ゆりも逢はむと 下延ふる
心しなくは 今日も経めやも 大伴家持
3818 万葉短歌4115 ShuI555 2021-0928-man4115
□さゆりばな ゆりもあはむと したはふる
こころしなくは けふもへめやも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第84首。第4113歌への「反歌二首」の第2首。左注に、「同閏五月廿六日大伴宿祢家持作」。
【訓注】さ百合花(さゆりばな=佐由利花)。ゆりも逢はむと(ゆりもあはむと=由利母相等)[18-4087 左由理婆奈 由利毛安波牟等]。
2021-0927-man4114
万葉短歌4114 なでしこが3817
なでしこが 花見るごとに 娘子らが
笑まひのにほひ 思ほゆるかも 大伴家持
3817 万葉短歌4114 ShuI555 2021-0927-man4114
□なでしこが はなみるごとに をとめらが
ゑまひのにほひ おもほゆるかも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第83首。第4113歌(長歌。題詞に、「庭中花作歌一首 并短歌」)への「反歌二首」、その第1首。次歌左注参照。
【原文】18-4114 奈泥之故我 花見流其等尓 乎登女良我 恵末比能尓保比 於母保由流可母 大伴家持
【編者注-ゑまひのにほひ】集中に <ゑまひ> は9か所、<にほひ> は31か所出現するが、<ゑまひのにほひ> はここだけの表現。
2021-0926-man4112
万葉短歌4112 橘は3816
橘は 花にも実にも 見つれども
いや時じくに なほし見が欲し 大伴家持
3816 万葉短歌4112 ShuI546 2021-0926-man4112
□たちばなは はなにもみにも みつれども
いやときじくに なほしみがほし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第81首。第4112歌(長歌。題詞に、「橘歌一首 并短歌」)への「反歌一首」。左注に、「閏五月廿三日大伴宿祢家持作之」。
【訓注】橘(たちばな)。花(はな)。実(み)。いや時じくに(いやときじくに=移夜時自久尓)[「さらに絶える時なく」。「<時じ>は定まった時がない、の意の形容詞」]。
2021-0925-man4110
万葉短歌4110 左夫流子が3815
左夫流子が 斎きし殿に 鈴懸けぬ
駅馬下れり 里もとどろに 大伴家持
3815 万葉短歌4110 ShuI530 2021-0925-man4110
□さぶるこが いつきしとのに すずかけぬ
はゆまくだれり さともとどろに
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第79首。題詞に、「先妻(せんさい)不待夫君(せのきみ)之喚(よぶ)使自来時作歌一首」。左注に、「同月十七日大伴宿祢家持作之」。
【訓注】左夫流子(さぶるこ=左夫流児)。斎きし(いつきし=伊都伎之)[「<斎く>は対象を祭って仕える意」]。駅馬(はゆま=波由麻)[「早馬で、官吏専用の馬」。「公用の使いは鈴を付けた駅馬を使った・・・」]。
2021-0924-man4109
万葉短歌4109 紅は3814
紅は うつろふものぞ 橡の
なれにし衣に なほ及かめやも 大伴家持
3814 万葉短歌4109 ShuI529 2021-0924-man4109
□くれなゐは うつろふものぞ つるはみの
なれにしきぬに なほしかめやも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第78首。第4106歌への第3反歌。左注に、「右五月十五日守大伴宿祢家持作之」。
【訓注】紅(くれなゐ=久礼奈為)。うつろふ(宇都呂布)。橡(つるはみ=都流波美)[「どんぐりの皮で染めたくすんだ薄墨色」。07-1311橡(~の)、-1314橡(~の)、など5か所]。
2021-0923-man4108
万葉短歌4108 里人の3813
里人の 見る目恥づかし 左夫流子に
さどはす君が 宮出後姿 大伴家持
3813 万葉短歌4108 ShuI529 2021-0923-man4108
□さとびとの みるめはづかし さぶるこに
さどはすきみが みやでしりぶり
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第77首。第4106歌への第2反歌。4109歌左注参照。
【訓注】里人(さとびと=左刀妣等)。恥づかし(はづかし=波豆可之)[集中ここだけ]。左夫流子(さぶるこ=左夫流児)[浮かれ女。遊女。<さぶ> は<荒ぶ・寂ぶ・錆ぶ>(『詳説古語辞典』)]。さどはす(佐度波須)[「<さどふ>の尊敬態。・・・<心が乱れる、血道をあげる>・・・。男女関係に特定されて用いられる語・・・」]。宮出後姿(みやでしりぶり=美夜泥之理夫利)[「<宮出>は難解。・・・<後姿(しりぶり)>は尻振り・・・」]。
2021-0922-man4107
万葉短歌4107 あをによし3812
あをによし 奈良にある妹が 高々に
待つらむ心 しかにはあらじか 大伴家持
3812 万葉短歌4107 ShuI529 2021-0922-man4107
□あをによし ならにあるいもが たかたかに
まつらむこころ しかにはあらじか
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第76首。第4106歌(長歌)の題詞初行に、「教喩史生(ししゃう)尾張少咋(をはりの をくいを)歌一首 并短歌」、以下に「七出例・・・三不出・・・両妻例・・・詔書・・・」云々と続く。その第1反歌。4109歌左注参照。
【訓注】あをによし(安乎尓与之)[28か所出現]。奈良(なら)。高々に(たかたかに=多可々々尓)[「背伸びする思いで」。集中に9か所]。
2021-0921-man4105
万葉短歌4105 白玉の3811
白玉の 五百つ集ひを 手にむすび
おこせむ海人は むがしくもあるか 大伴家持
3811 万葉短歌4105 ShuI516 2021-0921-man4105
□しらたまの いほつつどひを てにむすび
おこせむあまは むがしくもあるか
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第74首。第4101歌への第四反歌。脚注に、「一云 我家牟伎波母(訓義未定)」。左注に、「右五月十四日大伴宿祢家持依興作」。
【訓注】白玉(しらたま=思良多麻)。五百つ集ひ(いほつつどひ=伊保都追度比)[4101長歌の <安波妣多麻 伊保知毛我母>(〔鰒玉 五百個もがも〕あはびたま いほちもがも)を承ける]。おこせむ(於許世牟)[「<おこす>は・・・くれる、寄越す・・・」]。むがし(牟賀思)[「徳とする、心にかなう、喜ばしい・・・」]。
2021-0920-man4104
万葉短歌4104 我妹子が3810
我妹子が 心なぐさに 遣らむため
沖つ島なる 白玉もがも 大伴家持
3810 万葉短歌4104 ShuI516 2021-0920-man4104
□わぎもこが こころなぐさに やらむため
おきつしまなる しらたまもがも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第73首。第4101歌への第三反歌。
【訓注】我妹子(わぎもこ=和伎母故)。心なぐさに(こころなぐさに=許己呂奈具左尓)[18-4101(長歌)心奈具佐尓、-4104、-4113(長歌)情奈具左尓、など5か所]。沖つ島(おきつしま=於伎都之麻)。白玉(しらたま=之良多麻)。
2021-0919-man4103
万葉短歌4103 沖つ島3809
沖つ島 い行き渡りて 潜くちふ
鰒玉もが 包みて遣らむ 大伴家持
3809 万葉短歌4103 ShuI516 2021-0919-man4103
□おきつしま いゆきわたりて かづくちふ
あはびたまもが つつみてやらむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第72首。第4101歌への第二反歌。
【訓注】沖つ島(おきつしま=於伎都之麻)。い行き(いゆき=伊由伎)。潜くちふ(かづくちふ=可豆久知布)[「<ちふ>は<といふ>の約」。05-0800(長歌)由久智布比等波(ゆくちふひとは)、-0897(長歌)潅知布何其等久(そそくちふがごとく)、など]。鰒玉(あはびたま=安波妣多麻)。
2021-0918-man4102
万葉短歌4102 白玉を3808
白玉を 包みて遣らば あやめぐさ
花橘に あへも貫くがね 大伴家持
3808 万葉短歌4102 ShuI516 2021-0918-man4102
□しらたまを つつみてやらば あやめぐさ
はなたちばなに あへもぬくがね
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第71首。前歌(4101、長歌)の題詞に、「為贈京家願真珠(しらたまを)歌一首 并短歌」。第4101歌への第一反歌。下記注。
【訓注】白玉(しらたま)[下記注]。あやめぐさ(安夜女具佐)。あへも貫くがね(あへもぬくがね=安倍母奴久我祢)[「<あふ>は、合わせる・・・。<がね>は希望的推測・・・」]。
【編者注-歌番】依拠本は4098からの8首を、便宜上甲(4100まで)・乙(4101~05)に分け、乙の歌番には洋数字を付して元暦本に拠るとする。編者は、国歌大観歌番のままにしておく。
【編者注-白玉】しらたま。真珠。<しらたま>訓は、歌中では集中32か所。用字は、05-0904(長歌)白玉、06-1018白珠、10-2012水良玉、15-3628水良玉、16-3814真珠、など。歌中では <真珠=またま>(ただし <真玉=またま> が1例)、題詞で <真珠=しらたま> はこの一首だけ。同義の <鰒珠=あはびたま> は、6か所に出現する。
2021-0917-man4100
万葉短歌4100 もののふの3807
もののふの 八十氏人も 吉野川
絶ゆることなく 仕へつつ見む 大伴家持
3807 万葉短歌4100 ShuI515 2021-0917-man4100
□もののふの やそうぢひとも よしのがは
たゆることなく つかへつつみむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第69首。第4098歌への第二反歌。
【訓注】もののふ(物能乃布)。八十氏人(やそうぢひと=夜蘇氏人)[01-0050(長歌)物乃布能 八十氏河尓(もののふの やそうぢかはに)、03-0264(長歌)物乃部能 八十氏河乃(もののふの やそうぢかはの)、など]。吉野川(よしのがは=与之努河波)。
2021-0916-man4099
万葉短歌4099 いにしへを3806
いにしへを 思ほすらしも 我ご大君
吉野の宮を あり通ひ見す 大伴家持
3806 万葉短歌4099 ShuI515 2021-0916-man4099
□いにしへを おもほすらしも わごおほきみ
よしののみやを ありがよひめす
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第68首。第4098歌(長歌)〔題詞に、(聖武帝)吉野離宮行幸時儲作歌〕への第一反歌。第4105歌左注の、右大伴家持作、は、第4098~4105歌をさす。
【訓注】いにしへ(伊尓之敝)。我ご大君(わごおほきみ=和期於保伎美)。吉野の宮(よしののみや=余思努乃美夜)。
2021-0915-man4097
万葉短歌4097 天皇の3805
天皇の 御代栄えむと 東なる
陸奥山に 金花咲く 大伴家持
3805 万葉短歌4097 ShuI499 2021-0915-man4097
□すめろきの みよさかえむと あづまなる
みちのくやまに くがねはなさく
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻18(4032~4138、百七首)の第66首。短歌三首の第3。左注に、「天平感宝元年五月十二日於越中国守館大伴宿祢家持作之」。
【訓注】天皇(すめろき=須売呂伎)。御代(みよ)。東(あづま=阿頭麻)。陸奥山(美知乃久夜麻=みちのくやま)[「宮城県遠田(とおだ)郡涌谷(わくや)町黄金迫(こがねはざま)にある小山。今も残る黄金山神社のある山」]。金(くがね)。