2018-0630-man2868
万葉短歌2868 恋ひつつも2680
恋ひつつも 後には逢はむと 思へこそ
おのが命を 長く欲りすれ ○
2680 万葉短歌2868 ShuF492 2018-0630-man2868
□こひつつも のちにはあはむと おもへこそ
おのがいのちを ながくほりすれ
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第5首。男。
【訓注】恋ひつつ(こひつつ=恋乍)。おのが命(おのがいのち=己命)。
2018-0630-man2868
万葉短歌2868 恋ひつつも2680
恋ひつつも 後には逢はむと 思へこそ
おのが命を 長く欲りすれ ○
2680 万葉短歌2868 ShuF492 2018-0630-man2868
□こひつつも のちにはあはむと おもへこそ
おのがいのちを ながくほりすれ
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第5首。男。
【訓注】恋ひつつ(こひつつ=恋乍)。おのが命(おのがいのち=己命)。
2018-0629-man2867
万葉短歌2867 かくばかり2679
かくばかり 恋ひむものぞと 知らませば
その夜はゆたに あらましものを ○
2679 万葉短歌2867 ShuF492 2018-0629-man2867
□かくばかり こひむものぞと しらませば
そのよはゆたに あらましものを
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第4首。男。
【訓注】知らませば(しらませば=知者)[「‥事実に反する仮想を表わす。‥」]。ゆたに(由多尓)[下記注]。
【依拠本注 -その夜はゆたに】(要旨)女と共寝した夜はゆったりと。上代では、「そ」は中称・遠称を兼ねた。
2018-0628-man2866
万葉短歌2866 人妻に2678
人妻に 言ふは誰が言 さ衣の
この紐解けと 言ふは誰が言 ○
2678 万葉短歌2866 ShuF492 2018-0628-man2866
□ひとづまに いふはたがこと さごろもの
このひもとけと いふはたがこと
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第3首。女。
【訓注】人妻(ひとづま)[下記注]。誰が言([2句]たがこと=誰言)。さ衣(さごろも=酢衣)。誰が言([5句]たがこと=孰言)。
【編者注-人妻】「ひとづま」。04-0516人妻跡云者(~といへば)、10-1999人妻故(~ゆゑに)、-2297人妻跡(~と)、11-2365人妻姤(~ゆゑに)、12-2866人妻尓(~に)、-2909人妻尓、-3093人妻姤尓(~ゆゑに)、-3115人妻有跡(~なりと)。
2018-0627-man2865
万葉短歌2865 玉釧2677
玉釧 まき寝る妹も あらばこそ
夜の長けくも 嬉しくあるべき ○
2677 万葉短歌2865 ShuF490 2018-0627-man2865
□たまくしろ まきぬるいもも あらばこそ
よのながけくも うれしくあるべき
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(2864-2963、100首)の第2首。男。
【編者注-釼】「くしろ(釧)」。「上代の装身具の一種。貝・石・金属・玉などで作り、手首や腕にはめた輪状の飾り。」(三省堂『詳説古語辞典』) 01-0041釼著 手節乃埼二(くしろつく たふきのさきに)、12-3148玉釼 巻寝志妹乎(たまくしろ まきねしいもを)。
【原文】12-2865 玉釼 巻宿妹母 有者許増 夜之長毛 歓有倍吉 作者未詳
*** 万葉集 巻12 正述心緒の部(2864-2963、100首) 始 ***
2018-0626-man2864
万葉短歌2864 我が背子を2676
我が背子を 今か今かと 待ち居るに
夜の更けゆけば 嘆きつるかも ○
2676 万葉短歌2864 ShuF490 2018-0626-man2864
□わがせこを いまかいまかと まちをるに
よのふけゆけば なげきつるかも
○=出典未詳。
【編者注】「正述心緒」(せいじゅつしんしょ、2864-2963、100首)の第1首。女。
【原文】12-2864 吾背子乎 且今々々跡 待居尓 夜更深去者 嘆鶴鴨 作者未詳
2018-0625-man2863
万葉短歌2863 浅葉野に2675
浅葉野に 立ち神さぶる 菅の根の
ねもころ誰がゆゑ 我が恋ひなくに ○
2675 万葉短歌2863 ShuF487 2018-0625-man2863
□あさはのに たちかむさぶる すがのねの
ねもころたがゆゑ あがこひなくに
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第13首。女。左注1行目に、「或本歌曰 誰葉野尓 立志奈比垂」(たがはのに たちしなひたる)、2行目に「右廿三首〔編者注=2841~2863〕柿本朝臣人麻呂之歌集出」。
【訓注】浅葉野(あさはの)[所在未詳。11-2763紅之 浅葉乃野良尓(くれなゐの あさはののらに)]。立ち神さぶる(たちかむさぶる=立神古)[01-0052(長歌)宜名倍 神佐備立有(よろしなへ かむさびたてり)、06-0990茂岡尓 神佐備立而(しげをかに かむさびたちて)]。ねもころ(惻隠)。我が恋ひなくに(あがこひなくに=吾不恋)。
*** 万葉集 巻12 寄物陳思の部(2851-2863、13首) 終 ***
2018-0624-man2862
万葉短歌2862 山川の2674
山川の 水陰に生ふる 山菅の
やまずも妹は 思ほゆるかも ○
2674 万葉短歌2862 ShuF487 2018-0624-man2862
□やまがはの みづかげにおふる やますげの
やまずもいもは おもほゆるかも
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第12首。男。
【訓注】山菅の(やますげの=山草)。
2018-0623-man2861
万葉短歌2861 磯の上に2673
磯の上に 生ふる小松の 名を惜しみ
人に知らえず 恋ひわたるかも ○
2673 万葉短歌2861 ShuF486 2018-0623-man2861
□いそのうへに おふるこまつの なををしみ
ひとにしらえず こひわたるかも
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第11首。男? 左注(読下し)に、「或本の歌に曰はく/ 岩の上に 立てる小松の 名を惜しみ 人には言はず 恋ひわたるかも」。
【訓注】磯(いそ=礒)。人に知らえず(ひとにしらえず=人不知)。
2018-0622-man2860
万葉短歌2860 八釣川2672
八釣川 水底絶えず 行く水の
継ぎてぞ恋ふる この年ころを ○
2672 万葉短歌2860 ShuF484 2018-0622-man2860
□やつりがは みなそこたえず ゆくみづの
つぎてぞこふる このとしころを
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第10首。男? 左注(読下し)に、「或本の歌には<水脈(みを)も絶(た)えせず>といふ」。
【訓注】八釣川(やつりがは)[明日香村八釣山麓から寺川へ注ぐ川]。継ぎてぞ恋ふる(つぎてぞこふる=続恋)。この年ころを(このとしころを=是比歳)[02-0192夜鳴変布 此年己呂乎(よなきかへらふ このとしころを)]。水脈も(みをも=水尾母)[「水のとくに深くなって流れる筋」]。
2018-0621-man2859
万葉短歌2859 明日香川2671
明日香川 高川避きて 来しものを
まこと今夜は 明けずも行かぬか ○
2671 万葉短歌2859 ShuF484 2018-0621-man2859
□あすかがは たかかはよきて こしものを
まことこよひは あけずもゆかぬか
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第9首。男?
【訓注】明日香川(あすかがは)[奈良県高市郡明日香村を流れる川]。避きて(よきて=避)。明けずも行かぬか(あけずもゆかぬか=不明行哉)[下記注]。
【依拠本注-行】(要旨、〔 〕内は編者補注)字余り八音でも「ユ」を含めば例外。ただし「イク」訓もあり。17-3990〔見都追由可牟乎 於吉氐伊加婆乎思(みつつゆかむを おきていかばをし)〕、-4006〔(長歌)於伎弖伊加婆乎思(おきていかばをし)〕。
2018-0620-man2858
万葉短歌2858 妹に恋ひ2670
妹に恋ひ 寐寝ぬ朝に 吹く風は
妹にし触れば 我れさへに触れ ○
2670 万葉短歌2858 ShuF482 2018-0620-man2858
□いもにこひ いねぬあしたに ふくかぜは
いもにしふれば われさへにふれ
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第8首。男。
【原文】12-2858 妹恋 不寐朝 吹風 妹経者 吾与経 作者未詳
2018-0619-man2857
万葉短歌2857 菅の根の2669
菅の根の ねもころごろに 照る日にも
干めや我が袖 妹に逢はずして ○
2669 万葉短歌2857 ShuF481 2018-0619-man2857
□すがのねの ねもころごろに てるひにも
ひめやわがそで いもにあはずして
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第7首。男。
【訓注】ねもころごろに(惻隠々々)[12-3055菅根乃 懃懇(すがのねの ねもころごろに)、13-3284菅根之 根毛一伏三向凝呂尓(すがのねの ねもころごろに)、20-4454須我乃根能 袮母許呂其呂尓(すがのねの ねもころごろに)]。干めや我が袖(ひめやわがそで=乾哉吾袖)[10-1955照日尓毛 吾袖将乾哉(てるひにも わがそでひめや)]。
2018-0618-man2856
万葉短歌2856 山背の2668
山背の 石田の社に 心おそく
手向けしたれや 妹に逢ひかたき ○
2668 万葉短歌2856 ShuF480 2018-0618-man2856
□やましろの いはたのもりに こころおそく
たむけしたれや いもにあひかたき
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第6首。男。
【訓注】山背の(やましろの=山代)。石田の社に(いはたのもりに=石田社)[09-1731山科乃 石田社尓(やましなの いはたのもりに)]。心おそく(こころおそく=心鈍)[「鈍い、なおざりである」]。
2018-0617-man2855
万葉短歌2855 新治の2667
新治の 今作る道 さやかにも
聞きてけるかも 妹が上のことを ○
2667 万葉短歌2855 ShuF479 2018-0617-man2855
□にひばりの いまつくるみち さやかにも
ききてけるかも いもがうへのことを
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第5首。男。
【訓注】新治の(にひばりの=新治)[下記注]。さやかにも(清)。妹が上のこと(いもがうへのこと=妹於事)。
【依拠本注-新治】「新」は形容詞「新(にひ)し」の語幹。初々しいさま。「はり」は「墾(は)る」(10-2244)の名詞形。
【編者注-墾】10-2244岸乎田尓墾 蒔稲(きしをたにはり まきしいねを)。
2018-0616-man2854
万葉短歌2854 白栲の2666
白栲の 我が紐の緒の 絶えぬ間に
恋結びせむ 逢はむ日までに ○
2666 万葉短歌2854 ShuF475 2018-0616-man2854
□しろたへの わがひものをの たえぬまに
こひむすびせむ あはむひまでに
○=柿本人麻呂歌集。
【編者注】「寄物陳思」(2851-2863、13首)の第4首。女。
【訓注】我が(わが=我)。恋結び(こひむすび=恋結)[下記注]。逢はむ日までに(あはむひまでに=及相日)。
【依拠本注-恋結び】集中この例のみ。結び方は不明・・・。/恋の苦しみがなくなることを祈る紐結び。呪(まじな)いの一種であろう。思いをこめて結ぶことをいうのか、特殊な結び方をいうのか、不明。
【編者注-恋結び】(関連)20-4427麻由須比尓 由須比之比毛乃(まゆすひに ゆすひしひもの=真結ひに 結ひし紐の)