万葉短歌-悠山人編

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万葉短歌0645 白栲の0580

2012年06月30日 | 万葉短歌

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万葉短歌0645 白栲の0580

白栲の 袖別るべき 日を近み
心にむせび 音のみし泣かゆ  紀女郎

0580     万葉短歌0645 ShuB562 2012-0630-man0645

□しろたへの そでわかるべき ひをちかみ
 こころにむせび ねのみしなかゆ
○紀女郎(きの いらつめ)=第643歌参照。
【編者注】「紀女郎怨恨歌三首」の第三首。
【訓注】白栲(しろたへ=白妙)。心(こころ)。むせび(咽飯)。音(ね=哭)。


万葉短歌0644 今は我は0579

2012年06月29日 | 万葉短歌

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万葉短歌0644 今は我は0579

今は我は わびぞしにける 息の緒に
思ひし君を ゆるさく思へば  紀女郎

0579     万葉短歌0644 ShuB562 2012-0629-man0644

□いまはわは わびぞしにける いきのをに
 おもひしきみを ゆるさくおもへば
○紀女郎(きの いらつめ)=第643歌参照。
【編者注】「紀女郎怨恨歌三首」の第二首。
【訓注】我(わ=吾)。わび(和備)。息(いき=気)。思ひし(おもひし=念師)。君(きみ)。ゆるさく(縦左久)。思へば(おもへば=思者)。


万葉短歌0643 世の中の0578

2012年06月28日 | 万葉短歌

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万葉短歌0643 世の中の0578

世の中の 女にしあらば 我が渡る
痛背の川を 渡りかねめや  紀女郎

0578     万葉短歌0643 ShuB562 2012-0628-man0643

□よのなかの をみなにしあらば わがわたる
 あなせのかはを わたりかねめや
○紀女郎(きの いらつめ)=題詞脚注に、「鹿人大夫(かひとの まへつきみ)の娘で、名は小鹿(をしか)。安貴王(あきの おほきみ)の妻。」
【編者注】題詞原文は、「紀女郎怨恨歌三首」。その第一首。
【訓注】世の中(よのなか=世間)。女(をみな)。我が(わが=吾)。痛背(あなせ)。


万葉短歌0642 我妹子に0577

2012年06月27日 | 万葉短歌

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万葉短歌0642 我妹子に0577

我妹子に 恋ひて乱れば くるべきに
懸けて搓らむと 我が恋ひそめし  湯原王

0577     万葉短歌0642 ShuB561 2012-0627-man0642

□わぎもこに こひてみだれば くるべきに
 かけてよらむと あがこひそめし
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】題詞原文は、「湯原王歌一首」。湯原王恋歌群十二首の終歌。「一二首がおそらく虚構の作品であった」と、依拠本。
【訓注】我妹子(わぎもこ)。恋ひて乱れば(こひてみだれば=恋而乱者)。くるべき(久流部寸)。搓らむ(よらむ=縁)。我が恋ひそめし(あがこにそめし=余恋始)。


万葉短歌0641 絶ゆと言はば0576

2012年06月26日 | 万葉短歌

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万葉短歌0641 絶ゆと言はば0576

絶ゆと言はば わびしみせむと 焼大刀の
へつかふことは 幸くや我が君  娘子

0576     万葉短歌0641 ShuB559 2012-0626-man0641

□たゆといはば わびしみせむと やきたちの
 へつかふことは さきくやあがきみ
○娘子(をとめ)=第631歌参照。
【編者注】題詞原文は、「娘子復報贈歌一首」。底本には「歌」でなく「和歌」とあるが、諸本の「歌」に拠る。<倭歌の意味で「うた」を「わか」ということ、万葉には例がない。>と、依拠本。
【訓注】わびしみ(和備染)。焼大刀(やきたち)。へつかふ(隔付経)。我が君(あがきみ=吾君)。


万葉短歌0640 はしけやし0575

2012年06月25日 | 万葉短歌

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万葉短歌0640 はしけやし0575

はしけやし 間近き里を 雲居にや
恋ひつつ居らむ 月も経なくに  湯原王

0575     万葉短歌0640 ShuB559 2012-0625-man0640

□はしけやし まちかきさとを くもゐにや
 こひつつをらむ つきもへなくに
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】題詞原文は、「湯原王亦贈歌一首」。
【訓注】はしきやし(波之家也思)[3-454 では「はしきやし」]。間近き(まちかき=不遠)。恋ひつつ(こひつつ=恋管)。


万葉短歌0639 我が背子が0574

2012年06月24日 | 万葉短歌

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万葉短歌0639 我が背子が0574

我が背子が かく恋ふれこそ ぬばたまの
夢に見えつつ 寐寝らえずけれ  娘子

0574     万葉短歌0639 ShuB557 2012-0624-man0639

□わがせこが かくこふれこそ ぬばたまの
 いめにみえつつ いねらえずけれ
○娘子(をとめ)=第631歌参照。
【編者注】題詞原文は、「娘子復報贈歌一首」。
【訓注】我が(わが=吾)。かく(如是)。恋ふれ(こふれ=恋礼)。ぬばたまの(夜干玉能)。寐寝らえず(いねらえず=寐不所宿)。


万葉短歌0638 ただ一夜0573

2012年06月23日 | 万葉短歌

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万葉短歌0638 ただ一夜0573

ただ一夜 隔てしからに あらたまの
月か経ぬると 心惑ひぬ  湯原王

0573     万葉短歌0638 ShuB557 2012-0623-man0638

□ただひとよ へだてしからに あらたまの
 つきかへぬると こころまとひぬ
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】題詞原文は、「湯原王亦贈歌一首」。
【訓注】ただ(直)。あらたまの(荒玉乃)。心惑ひぬ(こころまとひぬ=心遮)。


万葉短歌0637 我が背子が0572

2012年06月22日 | 万葉短歌

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万葉短歌0637 我が背子が0572

我が背子が 形見の衣 妻どひに
我が身は離けじ 言とはずとも  娘子

0572     万葉短歌0637 ShuB554 2012-0622-man0637

□わがせこが かたみのころも つまどひに
 あがみはさけじ こととはずとも
○娘子(をとめ)=第631歌参照。
【編者注】題詞原文は、「娘子復報贈歌一首」。
【訓注】我が(わが=吾)[初句]。妻どひ(つまどひ=嬬問)[妻問い婚語源、初出]。我が(あが=余)[四句]。離けじ(さけじ=不離)。言(こと=事)。


万葉短歌0636 我が衣0571

2012年06月21日 | 万葉短歌

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万葉短歌0636 我が衣0571

我が衣 形見に奉る 敷栲の
枕を放けず まきてさ寝ませ  湯原王

0571     万葉短歌0636 ShuB554 2012-0621-man0636

□あがころも かたみにまつる しきたへの
 まくらをさけず まきてさねませ
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】「湯原王亦贈歌二首」の第二首。
【訓注】我が(あが=余衣)。奉る(まつる)。敷栲(しきたへ=布細)。枕を放けず(まくらをさけず=枕不離)。まきて(巻而)。さ寝ませ(さねませ=左宿座)。


万葉短歌0635 草枕0570

2012年06月20日 | 万葉短歌

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万葉短歌0635 草枕0570

草枕 旅には妻は 率たれども
櫛笥のうちの 玉をこそ思へ  湯原王

0570     万葉短歌0635 ShuB554 2012-0620-man0635

□くさまくら たびにはつまは ゐたれども
 くしげのうちの たまをこそおもへ
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】題詞原文は、「湯原王亦贈歌二首」。その第一首。
【訓注】旅に(たびに=客)。妻(つま=嬬)。率たれども(ゐたれども=雖率有)。櫛笥の(くしげの=匣)。玉を(たまを=珠)。思へ(おもへ=念)。


万葉短歌0634 家にして0569

2012年06月19日 | 万葉短歌

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万葉短歌0634 家にして0569

家にして 見れど飽かぬを 草枕
旅にも妻と あるが羨しさ  娘子

0569     万葉短歌0634 ShuB550 2012-0619-man0634

□いへにして みれどあかぬを くさまくら
 たびにもつまと あるがともしさ
○娘子(をとめ)=未詳。第631歌参照。
【編者注】「娘子報贈歌二首」の第二首。
【訓注】旅に(たびに=客)。妻(つま)。羨しさ(ともしさ=乏左)。


万葉短歌0633 そこらくに0568

2012年06月18日 | 万葉短歌

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万葉短歌0633 そこらくに0568

そこらくに 思ひけめかも 敷栲の
枕片さる 夢に見え来し  娘子

0568     万葉短歌0633 ShuB550 2012-0618-man0633

□そこらくに おもひけめかも しきたへの
 まくらかたさる いめにみえこし
○娘子(をとめ)=未詳。第631歌参照。
【編者注】題詞原文は、「娘子報贈歌二首」。その第一首。
【訓注】そこらくに(幾許)。思ひ(おもひ=思)。敷栲(しきたへ=敷細)。


万葉短歌0632 目には見て0567

2012年06月17日 | 万葉短歌

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万葉短歌0632 目には見て0567

目には見て 手には取らえぬ 月の内の
桂のごとき 妹をいかにせむ  湯原王

0567     万葉短歌0632 ShuB550 2012-0617-man0632

□めにはみて てにはとらえぬ つきのうちの
 かつらのごとき いもをいかにせむ
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】「湯原王贈娘子歌二首」、その第二首。
【訓注】取らえぬ(とらえぬ=不所取)。桂(かつら=楓)[楓は中国で木犀、倭名抄で加豆良・加都良]。


万葉短歌0631 うはへなき0566

2012年06月16日 | 万葉短歌

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万葉短歌0631 うはへなき0566

うはへなき ものかも人は かくばかり
遠き家道を 帰さく思へば  湯原王

0566     万葉短歌0631 ShuB550 2012-0616-man0631

□うはへなき ものかもひとは かくばかり
 とほきいへぢを かへさくおもへば
○湯原王(ゆはらの おほきみ)=第375歌参照。
【編者注】題詞原文は、「湯原王贈娘子歌二首」。その第一首。第631歌から642歌までは「娘子」との恋歌の贈答歌群。
【編者注-娘子(をとめ)】湯原王が旅先で通った女性。妻を伴って旅へ出て来た王から、激しく恋される。ひと月ほどの贈答関係らしい。
【訓注】うはへ(宇波弊)。かくばかり(然許)。家道(いへぢ=家路)。帰さく(かへさく=令還)。