2012-0130-man0499
万葉短歌0499 百重にも0440
百重にも 来及かぬかもと 思へかも
君が使の 見れど飽かずあらむ 柿本人麻呂
0440 万葉短歌0499 ShuB397 2012-0130-man0499
□ももへにも きしかぬかもと おもへかも
きみがつかひの みれどあかずあらむ
○柿本人麻呂(かきのもとの ひとまろ)=第30歌参照。
【編者注】「柿本朝臣人麻呂歌四首」の第四首。結句訓読九音(原文六字)初出。
2012-0130-man0499
万葉短歌0499 百重にも0440
百重にも 来及かぬかもと 思へかも
君が使の 見れど飽かずあらむ 柿本人麻呂
0440 万葉短歌0499 ShuB397 2012-0130-man0499
□ももへにも きしかぬかもと おもへかも
きみがつかひの みれどあかずあらむ
○柿本人麻呂(かきのもとの ひとまろ)=第30歌参照。
【編者注】「柿本朝臣人麻呂歌四首」の第四首。結句訓読九音(原文六字)初出。
2012-0129-man0498
万葉短歌0498 今のみの0439
今のみの わざにはあらず いにしへの
人ぞまさりて 音にさへ泣きし 柿本人麻呂
0439 万葉短歌0498 ShuB397 2012-0129-man0498
□いまのみの わざにはあらず いにしへの
ひとぞまさりて ねにえなきし
○柿本人麻呂(かきのもとの ひとまろ)=第30歌参照。
【編者注】「柿本朝臣人麻呂歌四首」の第三首。
2012-0128-man0497
万葉短歌0497 いにしへに0438
いにしへに ありけむ人も 我がごとか
妹に恋ひつつ 寐寝かてずけむ 柿本人麻呂
0438 万葉短歌0497 ShuB397 2012-0128-man0497
□いにしへに ありけむひとも あがごとか
いもにこひつつ いねかてずけむ
○柿本人麻呂(かきのもとの ひとまろ)=第30歌参照。
【編者注】「柿本朝臣人麻呂歌四首」の第二首。
【訓注】我が(あが=吾)。寐寝(いね=宿)。
2012-0127-man0496
万葉短歌0496 み熊野の0437
み熊野の 浦の浜木綿 百重なす
心は思へど 直に逢はぬかも 柿本人麻呂
0437 万葉短歌0496 ShuB397 2012-0127-man0496
□みくまのの うらのはまゆふ ももへなす
こころはおもへど ただにあはぬかも
○柿本人麻呂(かきのもとの ひとまろ)=第30歌参照。
【編者注】題詞原文は、「柿本朝臣人麻呂歌四首」。その第一首。
【訓注】み熊野(みくまの=三熊野)。浜木綿(はまゆふ=浜木綿)。
2012-0126-man0495
万葉短歌0495 朝日影0436
朝日影 にほへる山に 照る月の
飽かざる君を 山越しに置きて 舎人吉年
0436 万葉短歌0495 ShuB393 2012-0126-man0495
□あさひかげ にほへるやまに てるつきの
あかざるきみを やまごしにおきて
○舎人吉年(とねりの えとし)=第152歌参照。
【編者注】「田部忌寸櫟子任大宰時歌四首」の第四首。作者名なし。
2012-0125-man0494
万葉短歌0494 我妹子を0435
我妹子を 相知らしめし 人をこそ
恋のまされば 恨めしみ思へ 田部忌寸櫟子
0435 万葉短歌0494 ShuB393 2012-0125-man0494
□わぎもこを あいしらしめし ひとをこそ
こひのまされば うらめしみおもへ
○田部忌寸櫟子(たべの いみき いちひ)=第453歌参照。
【編者注】「田部忌寸櫟子任大宰時歌四首」の第三首。作者名なし。
2012-0124-man0493
万葉短歌0493 置きていなば0434
置きていなば 妹恋ひむかも 敷栲の
黒髪敷きて 長きこの夜を 田部忌寸櫟子
0434 万葉短歌0493 ShuB393 2012-0124-man0493
□おきていなば いもこひむかも しきたへの
くろかみしきて ながきこのよを
○田部忌寸櫟子(たべの いみき いちひ)=未詳。「近江朝の人らしい。<田部忌寸>の祖は、応神朝に帰化した阿智王(漢高祖の子孫)の末裔阿素奈直という(…)。」
【編者注】「田部忌寸櫟子任大宰時歌四首」の第二首。脚注に「田部忌寸櫟子」。
【訓注】敷栲(しきたへ)。
2012-0123-man0492
万葉短歌0492 衣手に0433
衣手に 取りとどこほり 泣く子にも
まされる我れを 置きていかにせむ 舎人吉年
0433 万葉短歌0492 ShuB393 2012-0123-man0492
□ころもでに とりとどこほり なくこにも
まされるわれを おきていかにせむ
○舎人吉年(とねりの えとし)=第152歌参照。
【編者注】題詞原文は、「田部忌寸櫟子任大宰時歌四首」。その第一首。脚注に「舎人吉年」。前二首は、田部櫟子が大宰府へ向かう時の舎人吉年との別れの歌、後二首は別れたあとの述懐の歌で、「作者を女・男・男・女の順にして一群を構成(…)。男女の悲別においては女が先にうたうという伝統がある。」
【訓注】我れ(われ=吾)。
2012-0122-man0491
万葉短歌0491 川の上の0432
川の上の いつ藻の花の いつもいつも
来ませ我が背子 時じけめやも 吹芡刀自
0432 万葉短歌0491 ShuB390 2012-0122-man0491
□かはのうへの いつものはなの いつもいつも
きませわがせこ ときじけめやも
○吹芡刀自(ふふきの とじ)=第22歌参照。第490歌参照。
【訓注】いつ藻(いつも=伊都藻)。いつもいつも(何時何時)。我が(わが=我)。
2012-0121-man0490
万葉短歌0490 真野の浦の0431
真野の浦の 淀の継橋 心ゆも
思へや妹が 夢にし見ゆる 吹芡刀自
0431 万葉短歌0490 ShuB390 2012-0121-man0490
□まののうらの よどのつぎはし こころゆも
おもへやいもが いめにしみゆる
○吹芡刀自(ふふきの とじ)=第22歌参照。さらに、「刀自」は女性の尊称、「戸主」(とぬし)の約か、の追記。
【訓注】夢(いめ=伊目)。
2012-0120-man0489
万葉短歌0489 風をだに0430
風をだに 恋ふるは羨し 風をだに
来むとし待たば 何か嘆かむ 鏡王女
0430 万葉短歌0489 ShuB386 2012-0120-man0489
□かぜをだに こふるはともし かぜをだに
こむとしまたば なにかなげかむ
○鏡王女(かがみの おほきみ)=第92歌参照。
【訓注】羨し(ともし=乏之)。
2012-0119-man0488
万葉短歌0488 君待つと0429
君待つと 我が恋ひ居れば 我がやどの
簾動かし 秋の風吹く 額田王
0429 万葉短歌0488 ShuB386 2012-0119-man0488
□きみまつと あがこひをれば わがやどの
すだれうごかし あきのかぜふく
○額田王(ぬかたの おほきみ)=第7歌参照。
【編者注】題詞原文は、「額田王思近江天皇作歌一首」。「近江天皇」は天智天皇。
【編者注-秋風閨怨】429~430の2歌は、秋風を主題にした二人の王朝女性歌人の作品である。これを依拠本は秋風恋歌とか王朝閨怨と表現する。天智・天武など古代王朝要人を巻き込んでの成立事情、重出(1606~07)について、依拠本は詳述している。
【訓注】我が恋(あがこひ=吾恋)。我がやど(わがやど=我屋戸)。
2012-0118-man0487
万葉短歌0487 近江道の0428
近江道の 鳥籠の山なる 不知哉川
日のこのごろは 恋ひつつもあらむ 岡本天皇
0428 万葉短歌0487 ShuB380 2012-0118-man0487
□あふみぢの とこのやまなる いさやがは
けのこのごろは こひつつもあらむ
○岡本天皇(をかもとの てんわう)=第486歌参照。
【編者注】第485歌(長歌)への第二反歌。左注訓に、(第485歌題詞の)「岡本天皇といふは、いまだその指すところ審(つまび)らかにあらず。」
【訓注】近江道(あふみぢ=淡海路)。鳥籠(とこ)。不知哉(いさや)。日(け=気)。
2012-0117-man0486
万葉短歌0486 山の端に0427
山の端に あぢ群騒き 行くなれど
我れはさぶしゑ 君にしあらねば 岡本天皇
0427 万葉短歌0486 ShuB379 2012-0117-man0486
□やまのはに あぢむらさわき ゆくなれど
あれはさぶしゑ きみにしあらねば
○岡本天皇(をかもとの てんわう)=舒明天皇か。斉明天皇説との比較検討は、依拠本に詳述。
【編者注】第485歌(長歌)への第一反歌。
【訓注】あぢ(味[味鴨、巴鴨])。我れ(あれ=吾)。
―― 巻四 相聞 ――
― 相聞 ―
万葉短歌0484 一日こそ0426
2012-0116-man0484
万葉短歌0484 一日こそ0426
一日こそ 人も待ちよき 長き日を
かく待たゆれば 有りかつましじ 八田皇女
0426 万葉短歌0484 ShuB376 2012-0116-man0484
□ひとひこそ ひともまちよき ながきけを
かくまたゆれば ありかつましじ
○八田皇女(やたの ひめみこ)=「仁徳天皇の異母妹」。題詞原文には、「難波天皇妹」。
【編者注】題詞原文は、「難波天皇妹奉上在山跡皇兄御歌一首」。
【編者注-難波天皇(なにはの てんわう)】仁徳天皇。孝徳天皇説を紹介しながらも、依拠本は孝徳説を完全否定。
【編者注-磐姫・八田恋敵伝承】仁徳を巡る皇后磐姫と皇妹八田の、恋敵嫉妬伝承の凄まじさは、『古事記』『日本書紀』に記されるほどであり、古代上流階級の間では常識であった。ここでは既出磐姫の類歌を併記するにとどめる。
君が行き日長くなりぬ山尋ね 迎へか行かむ待ちにか待たむ 磐姫皇后(0085)
一日こそ人も待ちよき長き日を かく待たゆれば有りかつましじ 八田皇女(0484)
【訓注】一日(ひとひ)。日(け)。山跡(やまと)。