万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌4191 鵜川立ち3880

2021年11月30日 | 万葉短歌

2021-1130-man4191
万葉短歌4191 鵜川立ち3880

鵜川立ち 取らさむ鮎の しが鰭は
我れに削き向け 思ひし思はば  大伴家持

3880     万葉短歌4191 ShuJ145 2021-1130-man4191

□うかはたち とらさむあゆの しがはたは
  われにかきむけ おもひしおもはば
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第53首。「贈水烏越前判官大伴宿祢池主歌一首 并短歌」の短歌第2首。脚注に、「右九日付使(つかひに つけて)贈之」。
【訓注】鵜川立ち(うかはたち=鸕河立)[用字<鸕> は、17-4022以後計6か所に出現。下記注]。しが鰭(しがはた=之我波多)[「<し>は上の<鮎>・・・。<鰭(はた)>はひれ。・・・尾ひれ・・・」]。
【編者注-鸕】(1)音読み:ロ、訓読み:あたま、かしら、ピンイン:lu2。(『漢字辞典』参照) (2)鸕鷀也。ただし『康熙字典』では、鸕の字体が「鳥+盧」。鸕鷀(ろし)は、「鵜」または「鵜科」の鳥。(『漢典』「鸕」の『康熙字典』条、ほか参照)


万葉短歌4190 叔羅川3879

2021年11月29日 | 万葉短歌

2021-1129-man4190
万葉短歌4190 叔羅川3879

叔羅川 瀬を尋ねつつ 我が背子は
鵜川立たさね 心なぐさに  大伴家持

3879     万葉短歌4190 ShuJ145 2021-1129-man4190

□しくらがは せをたづねつつ わがせこは
  うかはたたさね こころなぐさに
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第52首。前歌(4189、長歌)の題詞に、「贈水烏(うを)越前判官大伴宿祢池主歌一首 并短歌」、その短歌第1首。
【訓注】叔羅川(しくらがは=叔羅河)[「越前国府のあった福井県武生市を流れる日野川か・・・」]。我が背子(わがせこ=和我勢故)。鵜川立たさね(うかはたたさね=宇可波多々佐祢)[「<鵜川立つ>は鵜飼をすること」。<うかは> は、01-0038(長歌)鵜川乎立(うかはをたち)、17-3991(長歌)宇加波多知(うかはたち)、など5か所に出現]。心なぐさに(こころなぐさに=情奈具左尓)。水烏(う)[「鵜」。この用字は他に2か所、06-0943水烏二四毛有哉(うにしもあれや)、19-4189(長歌)水烏乎潜都追(うをかづけつつ)。]


万葉短歌4188 藤波の3878

2021年11月28日 | 万葉短歌

2021-1128-man4188
万葉短歌4188 藤波の3878

藤波の 花の盛りに かくしこそ
浦漕ぎ回つつ 年に偲はめ  大伴家持

3878     万葉短歌4188 ShuJ140 2021-1128-man4188

□ふぢなみの はなのさかりに かくしこそ
  うらこぎみつつ としにしのはめ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第50首。前歌(4187、長歌)の題詞に、「六日遊覧(いうらんして)布勢水海(みづうみを)作歌一首 并短歌」、その短歌。
【訓注】藤波(ふぢなみ=藤奈美)。花の盛り(はなのさかり=花盛)。年に(としに=年尓)[「来る年も来る年も」]。


万葉短歌4186 山吹を3877

2021年11月27日 | 万葉短歌

2021-1127-man4186
万葉短歌4186 山吹を3877

山吹を やどに植ゑては 見るごとに
思ひはやまず 恋こそまされ  大伴家持

3877     万葉短歌4186 ShuJ136 2021-1127-man4186

□やまぶきを やどにうゑては みるごとに
  おもひはやまず こひこそまされ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第48首。前歌(4185、長歌)の題詞に、「詠山振(やまぶきの)花歌一首 并短歌」、その短歌[下記注]。
【編者注-やまぶき】集中、用字「山振」は8か所、「山吹」は4か所。ここでは、題詞・短歌で別字。
【原文】19-4186  山吹乎 屋戸尓殖弖波 見其等尓 念者不止 恋己曽益礼  大伴家持


万葉短歌4184 山吹の3876

2021年11月26日 | 万葉短歌

2021-1126-man4184
万葉短歌4184 山吹の3876

山吹の 花取り持ちて つれもなく
離れにし妹を 偲ひつるかも  大伴家持

3876     万葉短歌4184 ShuJ134 2021-1126-man4184

□やまぶきの はなとりもちて つれもなく
  かれにしいもを しのひつるかも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第46首。題詞に、「従京師(みやこより)贈来(おこする)歌一首」、左注に「右四月五日従留女之女郎(りうぢょの いらつめより)所送也(おくれるぞ)」。
【訓注】山吹(やまぶき)。つれもなく(都礼毛奈久)[「無関心に。<つれ>は<連れ>で、つながり、関係の意」]。女郎(いらつめ)[「おもに畿内氏族の子女を呼ぶ称。<娘子>の対」]。


万葉短歌4183 ほととぎす3875

2021年11月25日 | 万葉短歌

2021-1125-man4183
万葉短歌4183 ほととぎす3875

ほととぎす 飼ひ通せらば 今年経て
来向ふ夏は まづ鳴きなむを  大伴家持

3875     万葉短歌4183 ShuJ127 2021-1125-man4183

□ほととぎす かひとほせらば ことしへて
  きむかふなつは まづなきなむを
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第45首。「反歌三首」の第3首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。今年(ことし)。来向ふ夏(きむかふなつ=来向夏)。まづ(麻豆)。


万葉短歌4182 ほととぎす3874

2021年11月24日 | 万葉短歌

2021-1124-man4182
万葉短歌4182 ほととぎす3874

ほととぎす 聞けども飽かず 網捕りに
捕りてなつけな 離れず鳴くがね  大伴家持

3874     万葉短歌4182 ShuJ127 2021-1124-man4182

□ほととぎす きけどもあかず あみとりに
  とりてなつけな かれずなくがね
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第44首。「反歌三首」の第2首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)[下記注]。なつけな(奈都気奈)。離れず(かれず=可礼受)。
【編者注-ほととぎすの鳴声】鴬のように長鳴音を含めることはなく、すべて短鳴音で、個体によって5拍系・6拍系に分かれる、らしい。(YouTube での確認)


万葉短歌4181 さ夜更けて3873

2021年11月23日 | 万葉短歌

2021-1123-man4181
万葉短歌4181 さ夜更けて3873

さ夜更けて 暁月に 影見えて
鳴くほととぎす 聞けばなつかし  大伴家持

3873     万葉短歌4181 ShuJ127 2021-1123-man4181

□さよふけて あかときつきに かげみえて
  なくほととぎす きけばなつかし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第43首。前歌(4180、長歌)の題詞に、「不飽(あかずして)感(めづる)霍公鳥之情(こころに)述懐(おもひをのべて)作歌一首 并短歌」。その短歌の小題詞に、「反歌三首」、その第1首。
【訓注】さ夜更けて(さよふけて=左夜深而)。暁月(あかときつき)[「夜明けまで残る月」]。ほととぎす(霍公鳥)。聞けばなつかし(きけばなつかし=聞者夏借)[「その声を聞くとむやみやたらに心が躍る」。4180歌では <聞婆奈都可之>]。


万葉短歌4179 ほととぎす3872

2021年11月22日 | 万葉短歌

2021-1122-man4179
万葉短歌4179 ほととぎす3872

ほととぎす 夜鳴きをしつつ 我が背子を
安寐な寝しめ ゆめ心あれ  大伴家持

3872     万葉短歌4179 ShuJ127 2021-1122-man4179

□ほととぎす よなきをしつつ わがせこを
  やすいなねしめ ゆめこころあれ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第41首。「不勝感旧之意述懐一首 并短歌」の短歌第2首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。我が背子(わがせこ=和我世児)。安寐な寝しめ(やすいなねしめ=安宿勿令寐)[「安眠などさせてくれるなよ」]。ゆめ心あれ(ゆめこころあれ=由米情在)[「<ゆめ怠らず心あれ>の意か」]。


万葉短歌4178 我れのみ3871

2021年11月21日 | 万葉短歌

2021-1121-man4178
万葉短歌4178 我れのみ3871

我れのみ 聞けばさぶしも ほととぎす
丹生の山辺に い行き鳴かにも  大伴家持

3871     万葉短歌4178 ShuJ126 2021-1121-man4178

□あれのみ きけばさぶしも ほととぎす
  にふのやまへに いゆきなかにも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第40首。前歌(4177、長歌)題詞に、「四月三日贈越前判官(こしのみちのくちの じょう)大伴宿祢池主霍公鳥歌」。小題詞に、「不勝(あへずして)感旧之意(かんきうの こころに)述懐(おもひをのぶる)一首 并短歌」、その短歌第1首。
【訓注】我れ(あれ=吾)[この初句、ヒトリノミ、アレノミシ、ワレノミ、などの他訓。依拠本、10-1986吾耳哉(あれのみや)の訓に合わせる]。ほととぎす(霍公鳥)。丹生の山(にふのやま=丹生之山)[「越前の国府のあった福井県武生(たけふ)市西方の山」。丹生の名は、福井県では、丹生郡・越前市丹生郷町などに残る]。い行き鳴かにも(いゆきなかにも=伊去鳴尓毛)[「行って鳴いておくれでないか」]。


万葉短歌4176 我が門ゆ3870

2021年11月20日 | 万葉短歌

2021-1120-man4176
万葉短歌4176 我が門ゆ3870

我が門ゆ 鳴き過ぎ渡る ほととぎす
いやなつかしく 聞けど飽き足らず  大伴家持

3870     万葉短歌4176 ShuJ123 2021-1120-man4176

□わがかどゆ なきすぎわたる ほととぎす
  いやなつかしく きけどあきたらず
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第38首。「詠霍公鳥歌二首」の第2首。脚注に、「毛能波氐尓乎六個辞闕之(も・の・は・て・に・を、三つの辞[こと]は欠く)。
【訓注】鳴き過ぎ渡る(なきすぎわたる=喧過度)。ほととぎす(霍公鳥)。いやなつかしく(伊夜奈都可之久)[ほかには、17-3978伊夜奈都可之久]。


万葉短歌4175 ほととぎす3869

2021年11月19日 | 万葉短歌

2021-1119-man4175
万葉短歌4175 ほととぎす3869

ほととぎす 今来鳴きそむ あやめぐさ
かづらくまでに 離るる日あらめや  大伴家持

3869     万葉短歌4175 ShuJ123 2021-1119-man4175

□ほととぎす いまきなきそむ あやめぐさ
  かづらくまでに かるるひあらめや
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第37首。題詞に、「詠霍公鳥歌二首」、その第1首。脚注に、「毛能波三個辞闕之(も・の・は、三つの辞[こと]は欠く)」[下記注]。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。あやめぐさ(菖蒲)。かづらく(可都良久)[「縵(かずら)として頭につける」]。
【依拠本注-毛能波・・・】作歌上、使用頻度の高い数個の助詞を使わないという条件をつけて作った歌。一種の遊びである。


万葉短歌4174 春のうちの3868

2021年11月18日 | 万葉短歌

2021-1118-man4174
万葉短歌4174 春のうちの3868

春のうちの 楽しき終は 梅の花
手折り招きつつ 遊ぶにあるべし  大伴家持

3868     万葉短歌4174 ShuJ121 2021-1118-man4174

□はるのうちの たのしきをへは うめのはな
  たをりをきつつ あそぶにあるべし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第36首。題詞に、「追和(おひてこたふる)筑紫大宰(つくしの だざい)之時春苑梅歌(しゅんゑんばいかに)一首」。左注に、「右一首廿七日依興作之」。
【原文】19-4174  春裏之 楽終者 梅花 手折乎伎都追 遊尓可有  大伴家持


万葉短歌4173 妹を見ず3867

2021年11月17日 | 万葉短歌

2021-1117-man4173
万葉短歌4173 妹を見ず3867

妹を見ず 越の国辺に 年経れば
我が心どの なぐる日もなし  大伴家持

3867     万葉短歌4173 ShuJ118 2021-1117-man4173

□いもをみず こしのくにへに としふれば
  あがこころどの なぐるひもなし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第35首。題詞に、「贈京丹比家(たぢひけに)歌一首」。
【訓注】我が心ど(あがこころど=吾情度)[〔<心ど>は〕「しっかりした心・・・満たされないぎすぎすした心情・・・。<ど>は形容詞<利(と)し>〔の派生語〕」。03-0457心神毛奈思(こころどもなし)、-0471情神毛奈思(こころどもなし)、など7か所]。なぐる(奈具流)[「心が鎮まる・・・<なぐ>・・・」。ほかに17-4019之気伎孤悲可毛 奈具流日毛奈久(しげきこひかも なぐるひもなく)]。丹比家[「奈良の丹比家。・・・ただし、ここは<大伴田村家>(・・・)ともども、大伴一族の族意識の中での称で、・・・<橘家><藤原家>と称するのとは異なる。・・・丹比氏は姓は真人。・・・大伴氏とは親族関係にあったらしい」。「歌にいう<妹>も家持といかなる関係にあるか、不明」]。


万葉短歌4172 ほととぎす3866

2021年11月16日 | 万葉短歌

万葉短歌4172 ほととぎす3866
2021-1116-man4172
万葉短歌4172 ほととぎす3866

ほととぎす 来鳴き響めば 草取らむ
花橘を やどには植ゑずて  大伴家持

3866     万葉短歌4172 ShuJ115 2021-1116-man4172

□ほととぎす きなきとよめば くさとらむ
  はなたちばなを やどにはうゑずて
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第34首。「廿四日応立夏四月節也因此廿三日之暮忽思霍公鳥暁喧声作歌二首」の第2首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。花橘(はなたちばな)。