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終了する連載、始まる連載

ポラロイド様から、「転機晴朗」が最終回になったことを惜しむコメントを頂きました。「転機晴朗」は人材紹介と派遣の大手であるインテリジェンス社のサイトに連載していた転職に関するコラムで、月二回掲載で、85回をもって最終回となりました。この連載の前半からは、「転職哲学」(かんき出版)という単行本も生まれましたし、転職やキャリアプランについて、割合自由に書けたコラムだったので、筆者としても愛着を持っていましたが、この度、インテリジェンス社がサイトをリニューアルされるとのことで、連載を終了することになりました(今後もまた何かが始まるかも知れませんが、現在、未定です)。

このコラムは85回分のバックナンバーが全てサイトに載っていますので、転職にご興味のある方は、是非お読みになってみて下さい。一本あたり2400字くらいなので、単行本2冊分くらいのテキストが載っています。もちろん無料です。
http://tenshoku.inte.co.jp/knowhow/yamazaki/

そういえば、この連載の後半は単行本化していませんし、「週刊ダイヤモンド」で連載しているコラム(現在は「マネー経済の歩き方」)は、かれこれ300回くらいになりますが、後の方の200回分くらいを、これまた単行本にしていません。もちろん、そのまま並べ替えて本にする積もりはありませんが、山崎元商店としては、書いた文章の使い方について、少し効率が悪いと感じます(反省材料!)。

始まる連載は、「オーマイニュース」の日本版で、「山崎元の経済用語の新常識」という連載です。800字から1000字程度で経済用語を解説する小コラムですが、毎週金曜日に掲載予定で、初回は今週の金曜日です。

「オーマイニュース」は、韓国で成功したネット新聞で、市民記者を使うことで有名ですが、日本ではどうでしょうか。市民記者の記事を読んで、裏を取り、採否を判断する、あるいはプロとして取材して記事を書く、といった、プロとしてのジャーナリストの仕事をする人たちに有能で熱心な人をどれくらい集めることが出来るかが、新聞の質と信頼性の確保のために重要だと思うのですが、今後に期待したいと思います。

私は、この種の「新しいメディア」には、何となく惹かれるものがあるので、現在、GyaOの「News GyaO」にも週三回出ていますし、オーマイニュースにも参加(ちょっとだけですが)してみたい気分になりました。

加えて、本決まりまであと一歩ですが、ある週刊誌で、新聞の比較読み(目下、6紙を予定)をする連載について交渉中です(3,4人の筆者で交替で書く予定)。考えてみると、随分、ニュース関係の仕事が増えることになります(あと「週刊SPA!」のニュースコンビニエンス欄も長らくやっています)。

実は、「評論家」を名乗ることがある割には、私は、ニュースに対する関心が乏しく、必要がなければ敢えて見ないし、知らないニュースがあっても気にならないという態度でした(つまらないニュースが多いのも、一方の事実ですし)。しかし、興味の幅を広く持つことも大事ですし、ニュースの報じ方についても、もっと見識を養うべきでしょうから、これからしばらくの間、ニュースをたくさん追いかける日々をやってみようかと思っています。
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王子製紙の敗因と、今後の敵対的TOB

王子製紙の篠原社長が、9月4日のTOB期限を前に、敗北宣言の記者会見を行った。大変率直な印象を受ける社長さんで(その分、サラリーマン社長的で迫力を感じないが)、事実上の「敗北宣言」であることを率直に認め、TOBの条件変更は、王子製紙の企業価値の向上につながらないので、やらない、と語った。

彼が語る「敗因」の中にあった、「ある程度、日本的にやったこと」と「三菱商事への増資に対する対応の甘さがあったかもしれないこと」は、実務担当者としては悔いの残る所かも知れない。前者は、北越製紙に対して提携交渉をする間に、北越側に、三菱商事への駆け込みなどの時間的余裕を与えてしまったことを指すのだろうし、後者に関しては、三菱商事とは話を付けられると思っていたのだろう。三菱商事と自社とのビジネス関係を過大評価したのか、あるいは、三菱商事が会社として「純経済合理的」に動くと誤って読んだのか、何れかなのだろう。

あの価格条件が一杯であるとすれば、もっと早期にTOBに打って出るべきだったのだろうし、三菱商事については「彼らの体面」をもっと現実的に分析すべきだった。607円で増資しておいて、直ぐに860円で売れれば大儲けだが、さすがに、三菱の紳士達はそのようなことをしない(しても、経営者としては、個人的に得をしない)。せめて、増資差し止め請求をするべきだったのだだろう。後から話が付くと読んだとすれば、王子もアドバイザーの野村も大いに甘かった。

また、860円、或いは増資後の800円という株価は、株式投資をする価格としては決して安くはないが(その証拠に、TOB不成立の報道後、北越の株価は大幅下落している)、「手を出せないぐらい高い」という株価ではない。現実に、本州製紙は、横やりを入れることができた。日本に限らないと思うが、敵対的なTOBを成功させるには、相当に高い株価で買収をかける必要があるのだ。だからこそ(いわゆる「勝者の呪い」的状況だ)、投資採算が悪化して、「敵対的TOBは上手く行かないことが多い」と言われるのだと推測される。

それでは、日本では敵対的なTOBは不可能なのかと言えば、そんなことは無いと思う。上記のような意味で十分に高い株価を提示できる企業が、実際にはあるはずだ。それは、自分自身の株価の方が更に超割高な企業だ。そうした企業で、経営者が、自社の株価が超割高であることに自覚的であれば、彼は、自分の企業の実体がバレないうちに、自社の資産を「割高ではあっても、割高具合がましな事業」に入れ替えたいというインセンティブを持つからだ。株式交換によって、買収が決済できるようになると、そのインセンティブはますます強められるだろう。

王子製紙の株価は、少なくとも、上記のようなレベルで割高ではなかった。ある意味では、これが王子製紙の真の敗因である。しかし、勝っても損をしては元も子もないわけで、自社による設備強化が正しい道ではなかろうか(独禁法の精神からも)。

ただし、そういうことなら、このTOBを仕掛けたことは失敗だったし、その進め方も下手だったとすると、アドバイザーの野村證券は一体何をしていたのか(北越製紙の主幹事だったのに、北越側の動きが見えていないなんて!)、ということになるのではなかろうか。

今後ということに関していえば、(1)実体に対して超割高な株価の企業はあるし、(2)こうした企業は資産を割安なものに入れ替えたいし、(3)同じくM&Aで成長を「演出」したいし、(4)そもそも業界再編をしたい業界・企業はたくさんあるので(薬品とか消費者金融・ノンバンクなどはどうか)、やはり、企業買収は活発に行われるだろうし、中には敵対的なものもあるだろう。

それにしても、TOB不成立で株価がこれだけ下がって(8月30日終値で709円)、北越製紙の経営者は一般株主にどう申し開きするつもりなのか。また、何とも奇妙な行動を取った本州製紙の経営者にも、あの行動にどのような合理性があったのか、どう説明するのか、聞いてみたい。
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