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お金の大学「お金フェスタ」12月12日

 お金の大学という組織が主宰する、「お金フェスタ」というイベントで話をすることにした。12月12日に開催される。忘年会シーズンと言うこともあって、懇親会付きだ(よほどのことがなければ、飲み会は断らない)。
http://kokucheese.com/event/index/359252/
 正直なところ、お金の大学が提供しようとしている情報・サービスが良いものなのかどうか、現段階で、私には分からない。「金融商品の販売は一切絡めません」とのことなので、引き受けた。推察するに、お金を増やすための「マインド・セット」を植え付けることに力を入れているようだ。私は、技術としてのお金の「正しい扱い方」を伝えようと思う。
 以下のような内容について、詳しく話そうと思っている。

① 「お金」と「自由」と「時間は」緩やかに交換可能である。最も大切なのは、時間だ。
② 大事な順。「稼ぎ」→「貯め方」→「家」→「保険」→「車」→「運用」?
③ お金にあっては、「他人」を正しく警戒せよ。銀行員も、友人も…。
④ お金には2つの自由がある。「使途の自由」と「スケールの自由」。
⑤ 誰にとっても正しい運用内容は同じ。「ストーリー」に騙されるな。「投資家のタイプ」と運用商品の選択は無関係だ。
⑥ リスクは、運用商品の種類ではなく、「投資金額で」調整する。
⑦ あらかじめ「最大の損」を想定しよう。
⑧ 今のお金と将来のお金をつなぐ「360」。
⑨ 「最悪3分の1損するけれど、同じ確率で4割くらい儲かり、平均5%くらいの利回り」のモノ(リスク資産)を幾ら買うか、と考える。リスク資産は内外株式のインデックスファンドを内4:外6で。
⑩ NISA(少額投資非課税制度)とDC(確定拠出年金)は最大限利用せよ。
⑪ 運用商品は、先ず「手数料から」評価する。投資信託の99%は検討に値しないクズだ。
⑫ 運用商品は三つだけ知っていればいい。「個人向け国債・変動金利10年型」、「TOPIX連動インデックスファンド」、「外国株式インデックスファンド」だけ。
⑬ 毎日、為替レート($)、日経平均、NYダウ、長期金利を見て10秒考えよう。但し、「調節」は少しだけ。

 実質的には、「お金に強くなる」(ディスカバー・トゥエンティワン)の主な内容を口述するような感じになりそうだ。


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ファンドオブザイヤー2015

 「投信ブロガーが選ぶファンドオブザイヤー2015」(http://www.fundoftheyear.jp/2015/)に、日付的には昨日投票しました。
  金融ジャーナリストで投資信託に詳しい竹川美奈子さんから「ヤマザキさん、ファンドオブザイヤーに投票して下さい」との要請を一年を通じて再三受けており、投票しなかった場合、もう彼女に話しかけることが出来なくなりそうなので、11月30日の投票期限を前に慌てて投票しました(投票が未だの投信ブロガーさんは、忘れずに投票されて下さい)。
 私は、自分自身が「投信ブロガー」だという強い自己認識はないのですが、「投信についてもブログに書くことがあるので、ヤマザキさんにも投票権があります」とのことなので、もう投票しない訳にはいかなくなりました。
 投票は、1人5点の持ち点を最多で5ファンド迄に割り振る方式で、投票後に「なりすまし」を防ぐために、自分のブログに投票した旨のエントリーを書いてはじめて、有効投票と認められるという方式です。多少面倒ですが、なかなかよくできた投票方式かと思います。
 私は持ち点の5点を1ファンドに投入して、簡単に投票を終了しました。私の投票が他人に影響するとも思えませんが、念のため影響を避ける目的と、これからしばらく続くであろう飲み会での「話題」として温存する意味も含めて、当ブログにはどのファンドに投票したのかを書きません。
 参加者・投票者の投信に対する価値観にあまりズレが無い「インデックス投資ナイト」と異なり、「ファンドオブザイヤー」は好みの異なる人が投票するので、結果が読みにくく、発表は大いに楽しみです。
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日本版ISAでの正しい運用法

 来年1月から、英国の制度を参考にした「日本版ISA」と呼ばれる、投資優遇税制が始まる予定だ。これは、一人年間1百万円までの投資について、5年間、運用益に掛かる税金が免除される制度で、残高ベースで最大5百万円が非課税で運用できる。
 それでは日本版ISAは、個人にとって、どのように使うのが、最も賢いやり方なのだろうか?
 意外に思われるかもしれないが、この問いの答は、論理的に前提条件を追うだけで明快に導き出せる。
 以下に、日本版ISAでの正しい運用方法を四原則の形でまとめてみた。

 尚、以下の内容は、楽天証券ホームページの連載、「山崎元のホンネの投資教室」の第196回 日本版ISAでの正しい運用法(2013年5月10日)の一部と重複するが、最近、日本版ISAの運用法について、適切でないと思われる説明も出回っているようであり、正しい(と私が考える)説明をなるべく早く広く普及したいので、当ブログにも載せておく。

【日本版ISA投資の四原則】
一、日本版ISA枠を最大限に使う
二、日本版ISAではリターンの高い資産の運用に利用する
三、日本版ISAではバランス良く分散投資した商品を選ぶ
四、日本版ISAは低コストで運用する

★一、日本版ISA枠を最大限に使う
 日本版ISAの導入は、現在、株式や株式投信などへの投資に適用されている優遇税率(10%)が本則の税率(20%)に戻ることに伴う、税制上の、いわばバーター取引的な措置でもある。個人の資金量や運用内容にもよるが、運用金額が大きな投資家にとっては、損になるだろう。

 既に発生が決まっており、この「損」はもう取り戻せないのだから、投資家に出来ることは、確定している「損」に別の「得」をあわせて、少しでも最適化することだけだ。そして、将来に向けて利用可能な条件を前提に、今後の損得を最適化すると考えると、何はともあれ、日本版ISAで使える税制上の優遇枠を使わないのは「もったいない」という結論になる。
「日本版ISAは、ご利用されないと、もったいないですよ」という金融機関のセールス・トークは、顧客の立場から見ても正しいアドバイスだ。

 日本版ISAの枠を「最大限」に使うという意味では、通貨選択型を含めた毎月分配型投信など高分配の商品は、高分配によって元本の成長が阻害され、その分、税制優遇された形で運用ができないので不適切だということになる。
 また、投資できる資金が既に十分にある場合は、積立投資も、優遇期間をフルに使えなくなるので、同じく不適切だ。それ以前に、ドルコスト平均法が有利だという見解は、誤解であり、「気休め」以上の意味はないことも付け加えておく(ドルコスト平均法の誤解については、「山崎元「ホンネの投資教室」ドルコスト平均法について整理する」をお読みいただきたい)。

★二、日本版ISAはリターンの高い資産の運用に利用する

 日本版ISAは、運用益に対する課税を免除する優遇措置だ。従って、自分の運用資産全体の中で、リターンが高い、つまり、高い運用益を得られると思う資産の運用を、日本版ISAの運用に割り当てるのが正しい。

 例えば、株式で500万円、債券・預金で500万円運用しようとしている投資家がいるとして、株式の方が期待されるリターンが高いと思うなら、日本版ISAの口座には、債券や預金の運用を割り当てず、株式の運用に集中させるべきだ。よって、株式や債券など複数のアセット・クラスに投資するバランス・ファンドも、日本版ISAの運用にあっては、適切な選択肢ではない。

★三、日本版ISAではバランス良く分散投資した商品を選ぶ

 現在の制度設計によると、日本版ISAでは、いったん売却してしまった資金を再投資しても、再び税制優遇の対象にして貰うことができない。
したがって、税制優遇される5年の間に売却することなく、長期間持ち続けることが可能なものを投資対象に選ぶことが望ましい。

 仮に、株式の個別銘柄に投資しているとすると、5年の間には、株価の大幅な上昇や業績見通しの悪化など、「売りたい」と思う機会が訪れる可能性は大きいだろう。また、同様な理由で、株式に投資する投資信託でも、特定の業種やテーマなどに特化したもの、外貨預金や外国債券も、適切な運用対象ではない。

★四、日本版ISAは低コストで運用しよう
 原則の四番目は、日本版ISAに限らないが、投資家から見て手数料は「確実な(リスク・ゼロの)マイナス・リターン」だ。
 日本版ISAの場合は、長期で持ち続ける投資を行うべきなので、継続的に掛かる手数料が大きい運用商品は、はっきり損だ。株式投信でもアクティブ・ファンドは手数料が高すぎてだめだし、個人年金保険も実質的な手数料が高いので避けた方がいい。

 日本版ISAの口座は、運用商品に必要十分な選択肢があって、手数料コストが小さな金融機関で開くのがいい。

<日本版ISAでの正しい運用例>

 以上の四原則から、日本版ISAにあって、多くのケースでベストな運用は、内外の株式のインデックス・ファンドだろう。長期的に持ち続けるに際して少しでもリスクを落とすためには、日本株だけでなく、外国株のインデックス・ファンドにも分散投資する方がいい。

 例えば、一年間に100万円の日本版ISA投資枠を、日本株のインデックス・ファンド(TOPIXに連動するもの)に50万円、先進国株のインデックス・ファンド(MSCI-KOKUSAI)に25万円、新興国のインデックス・ファンド(MSCI-EM)に25万円投資する、といった運用が、利用者側から見るとベストなものになる可能性が大きい。特に日本株では信託報酬が安いETF(上場型投資信託)を使う運用が最適だろう。

 最後に、日本版ISAでの投資以外の資産運用の内容は、投資家一人ひとり異なるだろうが、あくまでも日本版ISAは「自分の運用の一部分」として位置づけて、「自分の運用の全体が最適になるように運用を調整する」という考え方が、最適な運用への道であることを付け加えておく。
 日本版ISAにおいては不適切であるとした個別株への投資や、儲けを狙った外貨投資などを行いたい場合は、日本版ISA以外の口座に置いた資金で投資すればいい。その場合でも、「自分の運用資産の合計」を最適化するという考え方が大切だ。
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【楽天証券”ホンネの投資教室”】ドルコスト平均法について整理する

 楽天証券のホームページの「ホンネの投資教室」に「ドルコスト平均法について整理する」という原稿を書きました。
(https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/yamazaki/yamazaki_20120907.html)

 「今回は、「ドルコスト平均法」について考える。一般に言われていることと違うことも申し上げるので、「頭を柔らかくして」、「先入観を捨てて」読んで欲しい」という書き出しで、ドルコスト平均法が「有利」といえる根拠が無いこと、三つほど弊害となるケースがあること、などを書きました。内容的には、普通に考えると分かる、当たり前の話の確認です。

 ドルコスト平均法が、積み立て投資と相性がいい方法であることを認めなくはないのですが、積み立て投資が貯蓄習慣として優れているというだけであって、ドルコスト平均法には、勘違いしていると気休めになるという以上の素晴らしい点があるわけではありません。これが「有利だ」とか「リスクが縮小するので安心だ」とか「長期で見ると、必ず上手くいく」といったことが言われると、「おいおい、待ってくれ。少しは頭を使ってよ」といいたくなります。

 ただ、この話は、多くのマネー運用入門書や、バートン・マルキールの「ウォール街のランダムウォーカー」のような本まで、ドルコスト平均法を賞賛しているので、正しく伝えるのに骨が折れます。加えて、金融機関にとっては、「ドルコスト平均法の客≒毎月積み立て投資する都合のいい客」ということもあって、彼らが「ドルコスト平均法はいい投資方法だ」と熱心に勧めるので、誤解(運用の世界では比較的弊害の小さな誤解ですが、誤解は誤解です)を解く作業はなかなか進みません。

 
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ホンネの投資教室「金融商品評価の『一般論』」

 あちこちに書いた物をブログで紹介する、という方針を立ててみましたが、少しぼんやりしているだけで、紹介し残した原稿がどんどん出来てしまいます。毎週5本から7本くらい原稿を書いていて、紹介したいと思っている物が、3~4本あるのですが、追いつきません。簡単に要点だけを紹介するコツをつかむ必要があります。

 さて、気を取り直して、昨日、楽天証券のホームページの連載「ホンネの投資教室」(179回目になります)にアップされた「金融商品評価の一般論」をご紹介しましょう。
(https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/yamazaki/yamazaki_20120817.html)

 拙文の要点は以下の通りです。

① 金融商品は「フェアに取引されている資本市場の条件からどれだけの距離があるのか」で評価するのがいい。

② たとえば、株式の運用について、残念ながら投資家は(金融機関のセールスマンも、運用コンサルタントも、FPも、だが)、どの商品、ひいては運用者が上手いのかを投資する前に見分けることが出来ない。

③ 従って、商品選択の段階で投資家に出来る最大の運用改善は、「資本市場のフェアな条件からの距離」即ち「実質的な手数料」をどれだけ縮めることが出来るかだ。

 国内株式に投資する商品について描いた図を見ていただけると、仕組みがイメージしやすいかと思います。

 説明を付け加えますと、TOPIXが必ずしもベストな株式ポートフォリオだと考えているわけではありませんが、「投資家の平均的ポートフォリオ」を代表する指標として、アドバイス用には無難だと考えています。
 また、点Fと点Mを結ぶ直線は、国内株式と現金の組み合わせの有効フロンティアですが、他の資産を組み合わせると、FMの傾きよりも期待超過リターンの対リスク効率がいい運用全体の有効フロンティアが出来ることになります。

 個人の資産運用の一般的な手順と運用の簡便法、現在のような低金利の場合の特殊性(普通預金やMRFが「資本市場のフェアな条件」に近くなる)についても書いてみました。ご一読いただけると幸いです。
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五輪アスリート、プロ野球選手、それとも東大医師・・・「子供の将来に対する投資」として最も得なのは?

●「オリンピックに出るのと東大理に入るのはどっちが難しい?五輪アスリート、プロ野球選手、それとも東大医師・・・「子供の将来に対する投資」として最も得する選択はなにか」(現代ビジネス)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33077

 ロンドン・オリンピックの日本の代表選手が293人という数字を見て(ちなみに「役員」が225人も派遣される!)、五輪代表を目指すことはどのくらい困難なのか、例えば子供がこれを目指すことが「投資」としてどうなのか、ということをあれこれ考え、『現代ビジネス』に原稿を書いてみました。

 過去数回のオリンピックの日本代表選手の数はだいたい300人前後です。仮に、勉強に熱心な子供とスポーツに熱心な子供が同数いるとした場合、オリンピックは4年に一度しかないので、これは、受験に置き換えると、毎年試験があって90人が定員の東大理(医学部に進学できる)にやや近い数字かと思いました。
 生まれたばかりの子供に対して、「この子を必ずオリンピック選手にする」と思っている親がいるとすると、これは、「うちの子は、必ず東大の医学部に入れる」と思うのと同じくらいの難事を子供に期待しているということになります。
 オリンピック選手に近い数を持っている集団として、もう一つ目に付いたのが、プロ野球選手です。一軍の支配下選手が28人(外人助っ人を除く)なので、12球団あると336人です。
 投資として考える場合、収入が問題ですが、日本では、超一流のスター選手を望むと、集団として経済的に最も成功しているスポーツは、おそらくプロ野球でしょう。サッカーも人気スポーツですが、収入的には、プロ野球のかなり下ですし、選手寿命も短い。他のスポーツも、プロ野球には及ばないのではないかと考えました。
 そのプロ野球の場合、プロ選手731人(二軍も含む数字です)の平均年収は3千万円台後半の数字になりますが、「平均」は少数の高年俸選手のデータに引っ張られるので「中央値」で見ると、上から365~366番目くらいの選手で14百万円くらいになるようです。
 一方、たとえば、医師を目指すと、「年収ラボ」のデータでは、1141万円(平均年齢39.3歳)とあります。勤務医1千数百万円、開業医は2千万円以上、というようなイメージを持っていたので、やや低めの数値に見えますが、それでも、プロ野球選手の選手寿命が短い(9年位といわれています)ことを考えると、金銭的には医師の方がずっと有利に見えます。しかも、東大の医学部を出なくとも、医師にはなれます。(歯科医師も含めると、毎年8千人弱のいし国家試験合格者がいます)
 こう考えると、子供を将来、プロ野球選手を含むスポーツ選手にしようと考えるよりも、たとえば医師にしようとして勉強させる方が、金銭的な「投資としては」有利なのだろう、という極めて平凡な結論に辿り着きました。
 世の中に、「教育ママ」の方が、「スポーツ・ママ」よりも多いように見えるのは、たぶん、経済合理的なのでしょう。
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「買ってもいい」運用商品全リスト(週刊ダイヤモンド)

 これも本業(資産運用)の原稿。最新号の「週刊ダイヤモンド」に掲載された原稿をご紹介する。ただ、紙の雑誌の進行では、原稿を書いたのは2週間近く前になるので、今ご紹介するのは、今一つ調子が良くない。雑誌に書いた原稿は紹介のタイミングが難しい。

 気を取り直して、内容をご紹介する。
 個人投資家は、以下の①~⑤の条件にあてはまる運用商品は、買わない方がいいし、検討すること自体が時間の無駄だ。
 五条件は以下の通り。
 ①運用の中身の分からない商品は買うな、
 ②実質的な手数料の分からない商品は止めておこう、
 ③同類の商品よりも手数料がはっきり高い商品は、検討自体が無意味だ、
 ④手数料が高すぎるものはダメだ(年間1%を超える実質手数料は高すぎ。0.5%以内を目指したい)
 ⑤生産に資本を提供する「投資のリスク」はいいが、ゼロサムゲームの「投機のリスク」を取るのは「遊び」だし「不利」。

 上記条件で、生命保険のあらかた(個人年金保険も、外貨建ての生命保険も)、仕組み商品のほぼ全て、プライベートバンク、ヘッジファンド、さらに投資信託の99%以上も消える(条件③、④から)。そもそも、検討の対象にしなくていい。、


 この際、買ってもいい商品を「全て」リストアップする方が便利だろう。というわけで、まあまあ以上の運用商品をリスト・アップしてみた。「買ってもいい商品」は、カテゴリーで数個、具体的な商品を数えても、十数個から二十個前後だろう。個人投資家は、様々な商品をいちいち検討する必要はない。自分の家計で取ってもいいリスクのレベルを決めて資産配分(アセットアロケーション)を作り、それぞれのアセットクラスに、実質的な手数料(=市場の条件からの「中抜き」)が最勝で十分分散投資された商品を選ぶといい。

 商品のリストアップは、「週刊ダイヤモンド」の7月28日号の「マネー経済の歩き方」(p109)をご一読下さい。
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「ベンチマークの概念整理」(楽天証券ホームページ「ホンネの投資教室」)

 楽天証券のホームページに連載している「ホンネの投資教室」に、「ベンチマークの概念整理」という原稿を書きました。
(https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/yamazaki/yamazaki_20120720.html)
 資産運用の話であり、私としては、いわば本業の原稿です。
 ベンチマークには、
(A)アセットクラスの情報を縮約して運用の計画作りに役立つこと、
(B)運用期間中はポートフォリオのリスク測定の基準を提供すること、
(C)運用終了後はパフォーマンス評価の相手になること、
の三機能があり、これらをよく満たすベンチマークを一貫して使用しなければなりません。
 機関投資家における運用の契約ではベンチマークを適切に用いることによって運用がコントロールできますし、個人投資家も適切なベンチマークを考えることの出来ない運用商品は買わない方がいい、といった形で、ベンチマークを意識することが有用です。
 ベンチマークは、「比較の相手に使われる具体的なポートフォリオ」ですが、上記の機能をよく果たすためには、
(1)透明性(構成銘柄名とウェイトが分かる)、
(2)再現性(ベンチマークのリターンをトレースできる)、
(3)規範性(ポートフォリオとして望ましい性質を持っていること)、
が必要であり、これらの観点から具体的なベンチマークの適否を評価することが出来ます。
 概ね、十分な分散投資がなされていて、低回転率で、過去と将来の作成ルーるに一貫性がある、情報がオープンなポートフォリオがいいベンチマークです。
 ベンチマークには、株価指数のような「インデックス」が用いられることが多いのですが、必ずしもインデックスがベンチマークとなる必要もありません。
 デリバティブ取り引きの原資産になっているインデックスをベンチマークとすると、エクスポージャーの調整(ヘッジなど)がやりやすいという長所がありますが、裁定関連の取り引きの影響や銘柄・ウェイト変更の際のトレードで無用な損をすることがある、といったデメリットがあります。
 また、「市場平均」をベンチマークにすると、比較の点で分かりやすいという長所がありますが、市場平均に特別な意味はありません。運用のベースになる考え方によっては、市場平均以外のカスタマイズされたポートフォリオをベンチマークにすることも考えられます。
 以上のような、まじめな話を書きました。運用にご関心のある読者は、ご一読下さい。
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水瀬ケンイチさんと共著の「ほったらかし投資術」が出ました

 「ほったらかし投資術」(水瀬ケンイチ、山崎元著。朝日新書)が12月10日に発売された。当ブログでは、自著の宣伝はやったりやらなかったりなのだが、共著者の水瀬ケンイチさんのブログの販売への貢献が非常に大きいので、私としても、何も告知しないのは肩身が狭い。
 内容は、個人投資家向けのインデックス投資ガイドブックで、水瀬さんの投資体験記、私の理論編、インデックスファンドの商品ガイド、インデックスファンドのファンドマネジャーへのインタビューなど盛りだくさんなものになっていると思う。
 水瀬さんは既に有名な方だが、人気の投資ブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」の管理者で、ご自身がインデックス投資家でもある(本職は堅い会社の会社員で愛妻家だ)。
 水瀬さんとは、過去3、4度お会いしたことがあるだけだったが、ブログを読んで、(1)情報提供が正確で且つ対象に対する敬意がにじみ出ていること、(2)文章が上品であること、などに好感を持ち、是非共著でお願いしたいと私から頼んだ。印税の配分は50%ずつ折半でお願いした(水瀬さんの方が文章量が多いが、快諾してくれた)。おかげで、幅広い読者にとって、読みやすい本になったのではないだろうか。
 ありがたいことに、12月14日に5千部ほどの増刷が決まった。増刷が決まると、著者としては責任を果たしたような気分になって(出版社に損をさせなかったという程度の意味ですが)、ほっとする。
 唯一の心残りは、こうして本が出来上がってみると、帯にある「賢者の運用術」の方がいいタイトルなのではないかという気がすることだ。毎度のことながら、本のタイトルは難しい。
 以下に「前書き」を掲げる。当ブログは、アフィリエイトに体操していないので、本書をネットで購入されたい方は、できたら、水瀬さんのブログ、「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」(http://randomwalker.blog19.fc2.com/)経由でご購入下さい。

★「ほったらかし投資術」の前書き

 この本の目的は、手間いらずで、同時に合理的なお金の運用方法を「運用が仕事でも趣味でもない普通の人」に広く伝えることだ。
 これは、私(山崎)の前著『超簡単お金の運用術』(朝日新書)と同じだが、結論を「強く」伝えることに重きを置いた前著に対して、本書は「やさしく、丁寧に、惜しみなく」伝えることを目指した。
 お伝えしたい運用方法はインデックスファンドへの投資であり、これは前著も同じなのだが、読者がより納得・安心してインデックス投資を行うことができるように、インデックス投資をテーマとするブログを運営されている水瀬ケンイチさんを共著者にお迎えした。水瀬さんのブログは運用・証券業界も注目する人気ブログだが、丁寧で正確な情報提供と、ソフトで率直な語り口が特色だ。加えて、水瀬さんご自身がインデックス投資を実践されているので、理論や方法だけでなく、インデックス投資家の「気持ち」をお伝えすることができる。本書では、内外の株式に、インデックスファンドを組み合わせて投資することをお勧めしているが、著者も組み合わせの効果を目指すことにした。
 この作戦は成功したと思う。本音を言うと、水瀬さんが共著を引き受けてくれた時点で、私は「しめた!」と思ったのだった。たとえば、インデックス投資の実際をガイドしている第三章(水瀬さん執筆)を見て欲しい。これだけ具体的でかつすっきりと分かるインデックス投資の手引きは、少なくとも書籍としてはこれまでどこにもないはずだ。
 良き共著者を得たことで、私は、安心してインデックス投資に関する持論を展開することができた。詳しくは、第二章で述べたが、「市場が効率的だから、インデックス運用がいい」のではない。「市場が効率的であってもなくても、インデックス運用は有利」なのだ。
 加えて、インデックス運用の最前線をお伝えするために、現役のインデックスファンド運用者である相川雅弘さんにインタビューでご登場頂いた。また、具体的な商品も実名をあげて評価しつつご紹介しているので、読者は、どのファンドを買ったらいいのか迷わずにすむはずだ。
 結果として、新書サイズながら、盛りだくさんな内容の本になった。もちろん、価格は新書価格だ。インデックスファンドは、幅広い分散投資をローコストに(安い手数料で)提供するところに本領があるが、本書も同じ路線を目指している。

   二〇一〇年一一月吉日
     山崎 元

 ●

<読者へ>

 早速で恐縮ですが、以下、訂正です。増刷の機会に可能な限り訂正する予定です。

(1) 68ページの2行目「1口9万円弱」となっていますが、1306の最低購入代金は10株の9千円前後です。(最小単位は十分小さいのですが、ETFであるため、少額投資の場合売買手数料の比率が高くなるので、やはり、積み立て投資には向かないと思います)

(2)p.93の相関係数の図に関するp.95の説明文で外国債券の説明文の記述の数字が間違っています。正しくは、外国債券と国内株式の相関係数が0.3、外国株式と先進国株式、新興国株式の相関係数が0.4です。

(3)152ページ、東証の乖離率ページのURLは、http://www.tse.or.jp/rules/etf/etfinfo.html に変更されています。大証の乖離率ページのURLは、http://www.ose.or.jp/market/trading_data/etf に変更されています。

(4)72ページ、(誤)「鴨が漁師の」→(正)「鴨が猟師の」、です。

 以上の誤りに関するご指摘は、何れも、読者から、ツイッターないしはブログに対する連絡で頂いたものです。ご指摘に感謝します。(12月14日)


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インデックス投資の本を書くことになりました

 人気の投資ブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」で既に発表されていますが、同ブログの管理人である筆名・水瀬ケンイチさんと私の共著で、インデックス投資の本を書くことになりました。

 出版社は追って発表しますが、インデックス投資の本でもあり、なるべく低価格で、手に馴染みやすいコンパクトな装丁の本にしたいと思っています。
 出版時期も未定ですが、私は、今年度の前半は獨協大学の授業の準備に時間を取られるので、夏休みに仕上げに掛かって、秋に出版というくらいのスケジュールを想定しています。本のセールスのためには、世界の株価が順調であればいいなあ、と思っています。

 水瀬さんは、会社に勤める傍ら、ご自身がインデックス投資家で、内外の株式インデックスに投資されて、着々と資産を形成されています(←エライ!)。私は、「インデックス投資ナイト」でお会いしたり、梅屋敷にお邪魔したりして何度かお会いしていますが、顔写真を公開しないのがもったいない好男子です。
 ブログからお分かり頂けると思いますが、水瀬さんは、投資に対して、正確な知識と共に深い愛情をお持ちで、これが文章にバランス良く表れています。今回は、徹底的に投資家の立場から本を作りたかったので、実際の投資家の視点を本に注入すべく、共著での執筆をお願いしました。水瀬さんなら、単なる自慢話や逆に偏見に固まった恨み節のようなものではない、読者のための投資のガイドブックを書いて下さると確信しています。

 本の内容は構成も含めてまだまだ流動的ですが、たとえば、次のようなものを考えています。
(水瀬さんと、編集者も含めて、一度やり取りしていますが、まだ確定的なものではなく、現在の私の頭の中にある構成のイメージ、という程度のものです)

=================================
<「インデックス投資完全ガイドブック」(仮称)水瀬さん・山崎共著の仮構成案>

● タイトル未定(目下鋭意検討中)

★ 「前書き」:(山崎)
・日本の資産運用の現状とインデックス投資。なぜインデックス投資が一番いいか。
・現実の投資家が投資の本を書く意議。投資家の視点から書くことの宣言。
・本の構成の概要説明。どのような人に、どのように使って欲しいか。

★ コラム:「インデックス投資ナイトの印象」
(A)インデックス投資ナイトに出演してみた印象(山崎)
(B)インデックス投資ナイトを見物してみた印象(水瀬さん)

★ 第一章: 「人はどのようにしてインデックス投資家になるか」(水瀬さん)
・水瀬ケンイチさんの過去の投資遍歴。
・水瀬さんがインデックス投資家になった理由。
・水瀬式インデックス投資の方法(日常生活とインデックス投資)。
・インデックス投資家になって、何が変わったか。
・水瀬さんのインデックス投資、現在の課題。
・こんな人にはこんなインデックス投資を勧めたい!

★ コラム「インデックス投資家列伝 1」(水瀬さん)
     ・インデックス投資家を紹介したいと思います。
     「インデックス投資家列伝 2」(水瀬さん)
     ・同

★ 第二章: 「インデックス投資の理論と実務」
・インデックス投資をお勧めする理由は「市場の効率性」ではない。
・ポートフォリオ理論とインデックス投資の関係。
・株価指数の優劣評価の考え方。
・実務としてのインデックス運用のポイント。
・インデックス運用のパフォーマンス評価の方法(通常の投信と、ETFと)。
・インデックス運用、今後の方向性。
・インデックス投資家のためのアセットアロケーションの方法。
・エクセルを使ったアセット・アロケーション。
・期待リターンの決め方と最適化計算の方法。

★ コラム「インデックス運用者A氏に訊く」(山崎)
     ・ファンドマネジャーにインデックス運用のあれこれを訊きます。

★ 第三章: 「インデックス投資、こうやったら大丈夫!」(水瀬さん)
(個人投資家の目線で、インデックス投資のやり方を完全ガイド)
・インデックス投資を始めるために必要なものは?
・金融機関の選び方。
・口座開設の方法と手順。
・積み立て投資のやり方。
・インデックス投資商品選び方。
・インデックス投資の情報収集。
・リバランスの方法。
・インデックス投資のチェック&レビューの方法

・(対談)インデックス投資の問題解決(水瀬さん、山崎)
     ・インデックス投資の方法論上の問題点を解決。

★ コラム「インデックス投資家列伝 3」(水瀬さん)

★ 第四章: インデックス投資商品ショッピング・ガイド(水瀬さん、山崎)
・インデックス投資商品の評価基準を設定する。
・具体的なインデックス投資商品を評価する。
・リテール投信
・国内ETF
・海外ETF
・カテゴリー別、インデックス投資商品どれを買えばいいか。
・インデックス投資商品、どれを買ってはいけないか。

★ コラム「インデックス投資家列伝 4」(水瀬さん)
     「インデックス投資家列伝 5」(同)
  <第四章の中に織り込む>

★ 「後書き」(水瀬さん)
・この本の成り立ち(執筆経緯など)。
・インデックス投資の今後を展望する。
・インデックス投資に託す夢。
・読者への感謝、など。

以上
=========================

 繰り返しになりますが、この本の内容は構成も含めてまだまだ流動的です。潜在的読者のからのご希望などあれば、これから反映することができるので、当ブログのコメント欄でも、メールででも(yamazaki_hajime@mail.goo.ne.jp)、あるいは梅屋敷の若旦那のブログ「梅屋敷商店街のランダムウォーカー」(http://randomwalker.blog19.fc2.com/)にでもお寄せ下さい。
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インデックス投資ナイト

 昨日「インデックス投資ナイト」というインデックス投資を勉強・実践するブロガー達によるイベントに行ってきました。台場の舞台とスクリーンが用意されたカフェ的居酒屋(収容120人)が会場で、私は、パネルディスカッションに参加しました。
 有料ということもあって客足は大丈夫なのかと気になりましたが、チケットは前日に売り切れたそうで、出席率も上々で満席(一部立ち見?)でした。

 「インデックス投資家」とはどんな人達かというイメージはまだ完全に掴み切れてはいませんが、年齢層は30代、40代が極端に厚く、かつ、行儀のよい方々の集まりでした。開場の際には列が出来ていたそうですが、席の奥の方から順に詰めて座ってくれて手間が掛からなかったそうです。何れにせよ、株式の個別銘柄を話題にするセミナーに来る人々(たぶん、かぶり付きを含めて、思い思いの場所に着席するでしょう)とはかなりイメージが違う集まりだなあと思いました。

 インデックス投資という、ある意味では地味な話題でどれほど盛り上がるものかと半信半疑でしたが、出席者は、自分の知識を確認したいというモチベーションが強いようで、会場が満席ということもあって、熱気のあるイベントでした。

 私が登壇したのは前半のパネルディスカッションです。一日経っていますが、記憶を辿ると、以下のようなことを話しました。
(1)インデックスそのものが特別いいとは思わないがアクティブ運用の手数料が高すぎるので、安価な分散投資の手段としてインデックス運用に優位性がある。手数料が下がれば、アクティブ運用も楽しむ余地が出てくるし、インデックスそのものも、もっと多様であっていい。
(2)運用自体はアクティブ運用の方が楽なくらいなのだが(売買や事務処理はインデックス投資の方が面倒)、価値があるかどうか疑わしい内容(たとえばアナリストの分析)に対して、アクティブ運用は高い手数料を取っている。アクティブ・ファンドは宗教法人のようなビジネスモデルだ。
(3)バランスファンドには不賛成だ。理由は、コスト(信託報酬)が高いこと、資産配分を他人(専門家)に任せると運用内容が把握できないこと、販売側でも販売員がろくなアドバイスが出来ないのでバランス型が無難だという商品企画段階での「志」が賤しいこと、の三点。
(他のパネラーさん達から、「何もしないよりは、初心者にはいいのではないか」、「このごろはバランスファンドの手数料が下がった」といった指摘がありました。確かに、ここのところ信託報酬が低めのバランスファンドが幾つか出ています。「投資家側で、中身が分かっていて、手数料に納得できるならいいでしょう」というのが一応の妥協点で、会場からの質問にはそのような主旨で答えましたが、現実には三番目の理由が見え透いているので、特に債券の比率が大きいものについて好きにはなれません)
(4)相場的には、今年は、かつての日本の98年、99年のような感じ(不良債権の絶好の買い場だった)であり、株式についてもREITについても投資のチャンスを探せるのではないか。
(5)インデックス運用は規模の利益が強く働く分野であり、また運用会社としては自社のアクティブ運用との競合が悩ましい。日本では、インデックス運用で大きなプレゼンスを持つ運用会社がこれから登場する余地が十分あるのではないか。
(6)ネット証券の競争は厳しい。株式売買の次の収益の柱が十分育っていない。資産運用サービスが十分育てばいいが、前途は不透明。個人的な見解としては、10年後という意味ではトップのSBI以外どこがなくなっていてもおかしくないと思う(ネット証券はシェア・トップが有利な業態だ)。ただし、競争に敗れた会社も単純になくなるというのではなく、顧客は別の会社に引き継がれることになるはずだ。

 プレスも何社か入っていて、「何でも言える」という場ではないのですが、制約の範囲内ですが、なるべくホンネで話してみました(勿体ぶっても仕方がないので)。ただ、時間が短かったこともあり、バランス上私の発言量が多すぎたかも知れません(他のパネラーの皆さん、スミマセン)。
 客席とのやりとりもあり、特に、あるブロガーさんのネット証券三社に関するご指摘は参考になりました(ありがとうございます!)。

 会の後半には投信ブロガーによる「ファンド・オブ・ザ・イヤー2008」の発表がありました。ベストテンを10位から発表していく形式でしたが、信託報酬の安いファンドが評価される傾向が明確でした。
 大賞を受賞したのはSTAM(住信アセットマネジメント)のファンドでした。会場に来ていた同社の橋本マーケティング部長の受賞スピーチが非常に良くて、この日のハイライトでした。
 橋本氏は信託報酬が安いSTAMシリーズの産みの親ですが、資産配分を顧客に選んで欲しかったというシリーズの開発意図には大いに共感できます。住信の場合、年金運用マーケットでの蓄積がある一方で、リテールの投資信託ではこれから割合自由に発展方向を描くことが出来るので、STAMの今後は楽しみです。

 イベントには二次会があり(新橋駅近くの「坐・和民」)、30名以上の方が参加されました。ここでは、多くのインデックス投資家と話をし、名刺交換が出来ました。二次会でも、行儀のいい、気持ちのいい人達でした。

 ただ、投資に関しては、損をしているファンドの売却に躊躇のある方が多いようでした。これは、拙著(「超簡単 お金の運用法」朝日新書)の中でも心配したポイントですが、「あくまでも現状の値段で出来上がりの状態を基準に(ドライに)判断する」という原則の実行には、心理的な抵抗が大きいようです。
 
 名刺交換した方の中には何人かブログ名とハンドルネームの名刺があり、目新しい感じがしました。こうした形で「別人格」を持つのも楽しそうだなあ、と少し羨ましく思いました。
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投資チャンスの年としての2009年

 あけましておめでとうございます。

 リーマン・ショック以来、個人的には時間の足りない日々が続いていたが、11月下旬に「超簡単 お金の運用術」を脱稿してから少し余裕が生じて、忘年会を(例年通り)何度も楽しむことが出来た。
 12月中に収録を済ませ、年が変わってからオン・エアされるテレビやラジオの番組では「2009年の景気はかなりキビシイ」「株価に関しても安値更新の可能性が高い(大雑把な予想レンジでは日経平均で6000円~9000円)」と言っているのだが、2009年は投資のチャンスの年だろうと思っている。

 昨年の相場と世界経済の展開は、1990年代の日本をVTRの早回しで見ているような感じだった。昨年初が1991年くらいの感じで、5月くらいに少し景気が回復し掛かった1995年くらい、しかし9月に一気に1997年(11月に山一が自主廃業を発表した年だ)を経過して、目下1998年から199年という感じだ。
 1998年には、にわか仕立ての奇妙な委員会のお墨付きで「大手行は健全だ」としながらも大手銀行に公的資金を注入したのだが、これが信用されるに至らず、長銀が潰れた。1990年以降、年度ベースで日本は3回のマイナス成長があるが、1998年度が一番悪くマイナス1.5%だった。
 来年の経済見通しは、今のところ、政府が0.0%(実質成長率。名目は0.1%。努力目標という感じだろうか)だが、民間のエコノミストの予想はマイナス1%近辺に集中している。確かに、2009年は、他の先進国が日本並み或いはそれ以上に悪い見通しでもあり、1998年並のマイナス1.5%程度の状況になってもおかしくない。
 だが、ここで、90年代を振り返ると、安くなった資産を買って儲けようという人にとって、最大のチャンスの年は99年だった。典型的には、サービサー(債権回収業者)が金融機関から不良債権をバルクで買って、この担保不動産がその後の収益源になったのだった。
 この99年に相当するタイミングが「今」なのか、「数ヶ月くらい先」なのかはよく分からないのだが、そろそろチャンスへの感度を高めるべき時だろう。

 次のような状況を見ると、チャンスの接近を感じる。
 お名前はあげないが、かつて構造改革を推進し、財政政策など役に立たないと広言していたような偉い経済学者さん達が、ある人は「新自由主義を反省」し(自由主義者にとっては迷惑だ)、別の人は「需要が(主に輸出が)落ち込んでいるので、大型の財政支出が必要だ」(今までの意見の前提と何が違うのだろうか?)と言い出す始末で、なにやら心許ない(ただし、堂々と転向できることはご立派だと申し上げておく)。
 些か非論理的で恐縮だが、この種の頑固者が、たとえば右から左に「転向」する時には、世の中はもうそれ以上左には進まないものなのだ。
 彼らは、たぶん、トヨタが赤字を出すような状況を見て、気が動転してしまったのだろう。

 政策に関する個人的な意見は以下の通りだ。
 物価はデフレ的であり、日銀による金融緩和が十分に効果をあげるに至っていない状況を考えると、信用の供給まで含めて(たとえば日銀によるCPの買い切り)金融を緩和することに反対はない。また、銀行貸し出しの拡大に至るような資金需要を作るために、政府部門が赤字を出して、需要を追加することにも異議はない。しかし、これを、財政支出の拡大を意味する「財政出動」でやるのはいかがなものだろうか。お金の使い途に関して、政府に、急に良いアイデアがあるとも思えないし、財政出動は「大きな政府」への流れを後押ししそうだ。
 需要の追加は、減税や給付金といった、民間が資金の使途を自由に決められる形で行うのがいいのではないだろうか。財政支出の方が乗数効果が高いというのはその通りだろうが、デフレ(≒政府の債務に対する過剰信認)なのだから、十分に効くまで減税しても(或いは給付金を支払っても)いいはずだ。
 また、現状は、均衡利子率(投資採算の取れる利子率)がマイナスという状況なのかも知れないが、資本財の価格が高すぎる時に無理に投資を促すような政策を推進するよりも(お金のいい使い途は急には出てこないから、たとえば過疎地に道路が増える)、資本財の価格が十分に調整されるまでの間は、分配の問題に集中すればいいのではないだろうか(官僚さんはやりたくないだろうが、ベーシック・インカムを始めてもいい)。

 こと景気に関しては、昨年の夏頃に、所得流出が問題になって日本の成長率予想を下方修正せさせた(政府見通しで2.0%→1.3%)輸入資源価格が、その後に急落していることの好影響があるはずだが、これが殆ど話題にならない。これは、世間一般の経済に対する見方が、一方的に悲観に傾いているからだろう。

 回復がどこから始まるかを予想することは難しいが、一つの候補は、アメリカの不動産市況だろう。現在、平均ベースでは、住宅は売り物が多くてしばらく下がる趨勢にあるだろうが、オフィスでも住宅でも「いい物件」については、これだけ金利が下がると、遠からず投資採算に乗ってくるのではないだろうか。
 平均を表す指数がマイナスのうちに、部分的に(地域別などで)プラスの数字が出てくる状況が、遠からず生まれてくるのではないだろうか。プラス・マイナスがまだらに混じるようになったときはチャンスのはずだ。
 日本の不動産は、業界通の知人に聞くと、不動産会社が今の価格で売ると損が確定するので「売れない」状況にあって、まだ十分に価格が下がっていない印象らしいが、市況が崩れる前の状況に関して、今回のバブルは、前回ほどフェアバリューから離れているわけではないだろう。不動産会社の倒産はこれからも出てくるだろうが、価格調整はそう長期化せずに済むのではないだろうか。

 また、時間ということに関しては、アメリカの住宅ローンが、借り手から見て手離れの良いものであることも、不況を短期で終わらせる要素だろう。
 アメリカの住宅ローンは、ローン返済が出来なくなったら、金融機関に担保を渡してしまうと終わりだ。日本の場合のように、担保を処分しても完済できなければ、さらにローンが追いかけてくるというような実物経済にも影響し続かる「しつこさ」がない。
 その分、不動産格の下落が金融機関で損として表れやすいはずだが、これは、金融機関の資本を十分に手当てすればサッパリとリセットが出来るということでもある。
 ホームエクイティ・ローンによる消費の拡大(家の値上がり分を担保にしたローンによる消費)が止まることは短期的に大きなマイナス材料だが、これは物事の性質から見て値下がり最初の1、2年で影響の大きな部分が終わるはずだ。
 個人的に詳しいわけでもない不動産について長々書いているのは、これが「危機」の大本であって、危機が終了する前提条件でもあるからだが、日本の「失われた10年」よりも、今回のアメリカの不動産問題は早くかたが付くのではないかと思うのだ。

 株価に関しては、当面はあまり楽観していない。
 日経平均のフェアバリューは拙著(「超簡単 お金の運用術」朝日新書)に書いた方法で計算すると7,536円だ(リスクプレミアム6%ベース。名目成長率は政府見通しの0.1%を仮定。リスクプレミアム5%だと8,779円)。ここのところの利益の減り方が急で、株価を追い越した感がある。投資家にとって、一度気持ちの悪い局面があってもおかしくないと思っている。
 とはいえ、そもそも株価が底から回復するときは、利益に対して割高な状態から回復が始まって、利益は後からついてくることが多い。
 つまり、私のようなフェアバリューにうるさい人物が、「まだ下値の可能性がある」と言っているときから回復が始まることが多いものだ。
 一般論としては、不動産価格よりも、株価の方が先に上昇し始めるのが自然だろう。ベストのタイミングでは、理屈では買えないものだろうが、小さくても良い「兆し」に対しては敏感でありたい。

 尚、機関投資家の仕事のコンテクストで考えると、多くのヘッジ・ファンドが撤退・縮小を余儀なくされた現状では、これらのヘッジ・ファンドが使っていた最大公約数的なアプローチが有効なはずだ。

 山崎元個人としては目下、証券会社の社員だということもあり、自分の個人資金で個別株に株式投資をする訳にはいかないのだが、何らかの意味で、今年中に、株価ないしは不動産価格が上昇することで(小さくても)メリットを受けるようなポジションを作りたいと思っている。
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「超簡単お金の運用術」

 友達と明け方近くまで楽しく飲んで、昼過ぎに目覚めたら、朝日新書の見本が届いていた。
 11月27日が校了で、今回はほぼぎりぎりまで原稿を書いていたので、ずいぶん早く本になった気がする。見本が出来たのは昨日(12月4日)だが、書店への配本は12月10日、発売は12月12日だ。
 私は、自著や講演をブログではあまり紹介しないが(宣伝に関しては、これまであまりマメでない著者だった。編集者には少し申し訳なかった)、この本は、このブログで書いた簡単な運用法がベースになっているので、読者へのお礼かたがたご紹介する。
 内容は内外2つ(ないし3つ)のETFと個人向け国債・MRFを使った「無難な」運用法を紹介して、これを詳しく解説したものだ。

 以下に前書きを掲載する。

===================================

はじめに 「生涯最大級のチャンスを生かすシンプルな運用術」

 個人のお金の運用について、前置きからではなく、結論から先に述べる本を書いてみたい。これが本書執筆の動機だ。
 著者は、仕事柄、お金の運用のやり方について他人に説明することが多い。この際に、多くの人が、理由や考え方ではなく、具体的な方法(たとえば投資すべき銘柄)を早く知りたがることに気が付いた。
 投資家の事情には好みも含めて大きな個人差があるし、株式市場や外国為替市場など市場の環境も変化するので、本当は、「なぜ、そうするのか」という考え方を理解した上で、その一例として具体的な運用方法を理解して欲しいのだが、聞き手が「早く結論を言え」という気分になる理由も分からなくはない。多くの人にとって、お金の運用は、仕事でも趣味でもないのだ。
 そこで本書では、第一章でいきなり具体的なお金の運用方法をご紹介することにした。多くの人にとって「ほぼこれでいいだろう」という簡単な方法だ。もちろん、投資対象についても具体的な商品名も、配分比率も書いてある。
 運用が仕事でも趣味でもない「普通の人」にとっては、厳密にベストだが実行が面倒な運用方法や、考えなければ浮かんでこないような「好み」に合わせた選択肢を多数提供されるよりは、「ほぼ効率的で」、「自分が損をしない」、「無難な」方法を一つ知っていれば、実用上は、それで十分ではないだろうか。
 理由はどうでもいいから、結論だけを知りたいという人は、共に第一章の、40ページにある「超簡単お金の運用術 その2 リスク調整可能型」の周辺と、50ページ以下の「<重要な補足>運用対象の変更可能性」の項目を数ページだけ読んでいただけると、答えが書いてある。
 原則として余裕資金を全て内外の株式市場に投資する「超簡単お金の運用法 基本型」と、リスクを取りたくないお金の扱い方も含めた「超簡単お金の運用法 リスク調整可能型」の二つを紹介した。読者の多くにとってしっくり来るのは、たぶん「リスク調整可能型」の方だろうが、一見乱暴な感じがする「基本型」についても、「これで何か不都合があるだろうか」とご自分の状況に当てはめて想像力を働かせてみて欲しい。その方が、運用における「リスク」について、具体的な意味が分かる。
 答えが書いてあっても、なぜその答えでいいのかを知りたいのが人情だろう。
 第二章では、個人の「人的資本」や「ライアビリティ」など、超簡単運用法の背景にある概念や、運用商品の評価と選択の方法、投資ウェイトの決定根拠、株価の割高割安の評価方法などについて説明している。また、お金の運用に関連して、生命保険や確定拠出年金(年金も保険の一種だ)など、保険に対する考え方と扱い方にも触れておいた。
 第三章は「お金のあれこれ簡単レクチャー」と称して、お金の運用に関係するトピックを一〇個ほど取り上げて解説した。銀行の使い方から、持ち家と賃貸の損得判断、外国為替、日本の財政赤字に絡むパニック論の真偽、ギャンブルとの付き合い方など、広い範囲のテーマを取り上げた。第一章、第二章との内容的な重複もあるが、個々の項目は独立しているので、ご興味のあるところを拾い読みしていただいてもいい。
 世の中には顧客にとって損な金融商品やサービスがあふれているし、こうしたビジネスを営む人々のセールスの手口は、大方の想像以上に巧みだ。「自己責任」で判断するはずの顧客(読者のことだ)の心の揺れもまた想像以上に大きい。第三章は、読者が、お金の運用で「しまったー」と後悔しないための精神的ワクチンを目的としている。時々苦い部分もあるかも知れないが、甘口の味付けにしたので、気軽に読んで欲しい。

 それにしても、世の中には、どうしてこんなに多くの金融商品があるのだろうか。第二章で説明するが、これらの大半は顧客にとってはじめから検討に値しない不要なものだ。不要なのにこれらが存在する理由は、顧客にとって不要であるがゆえに、売り手にとっては利益率が高くて、ビジネスとして儲かるからだろう。
 こうした顧客にとって不利な商品の販売を後押ししているのが、金融ビジネス側にに好都合なバイアスの掛かった、歪んだ情報提供だ。
 たとえば、インデックス型の投資信託から入門してなぜかアクティブ型の投資信託に「チャレンジ」する手順になっていたり、自分が買った株式などの価格が一定割合下落したら自動的に損切りすべし(下落の理由を考えて、あくまでもその時点の価格に対して判断をするのが正しい)といっていたり、というような、合理性を欠く内容を、厚かましくも「金融リテラシー」などと呼んで恥じない者もいれば、FX(外国為替証拠金取引)で通常の外貨預金の何倍もリスクを取った方法を、さも安定的な運用であるかのように紹介する人もいる。
 これらの、いわば「カモ(誤解した顧客)を育てるための金融リテラシー」の提供者たちは、根本的には「十分に考えていない」ということなのだろうが、それだけでもない。運用の情報提供がもっぱら運用商品・サービスの売り手側から行われていることと(アメリカ流の投資教育にも多くの間違いがある)、彼ら(彼女ら)のビジネス上の立場とが影響しているのだろう。
 投資教育の重要性が強調されて久しいが、投資教育を普及させようとする大きなインセンティブが金融機関の利益以外に存在しないのが現状だ。
 本書は、偽の金融リテラシーに対する著者のささやかな批判の書でもある。

 さて、本書の執筆時点にあって、アメリカの「サブプライム問題」から発生した「金融危機」が世界中に猛威をふるっている。内外の株価は大きく下落し、且つ不安定な動きを続けているし、金融的な混乱が、本格的に実物経済に影響しつつある。二〇〇九年の世界経済の展望は明るくない。
 第二章でも触れたが、著者は、今回の問題は、アメリカの不動産をはじめとする各種資産という大物を対象としているだけに規模こそ大きいが、景気循環の一局面であり、根本は循環的な問題だと考えている。典型的なバブルの崩壊過程に過ぎない。問題解決の方法はあるし、内外の景気も株価もいずれは回復するはずだ(多くの場合、株価が先だが)。
 株価がどこまで下がって、いつ回復するのか、著者には分からない。しかし、現在が、バブルの崩壊を伴う循環的な景気の下降局面であり、かつ、それが大規模なものなのだとすると、現在、あるいはごく近い将来が、株式による資産形成にとって絶好の時期である公算は大きい。

 あれやこれやにうるさいことを言う著者も証券マンの端くれだ。一言ぐらいは、勇ましいことを言ってみたいので、許して欲しい。
 われわれは、現在、生涯最大級のチャンスに直面している可能性がある! 本書が読者の資産形成と快適な人生に少しでもお役に立てば幸いだ。

            二〇〇八年一一月吉日
                              山崎 元

=================================

 朝日新書はデザイン上、表紙よりも帯が目立つ。帯は、この本の編集者である友澤和子さんによるものだ。彼女は「週刊朝日」で私が人生相談の連載を持っていたときの担当者であり、帯に使われている写真は、人生相談の連載で使っていたものだ。


<拙著正誤表>
●p82、10行目の「低い」は「高い」の誤りです(5刷り目から訂正予定)。この訂正は、<虫取り小僧>さんのコメントでのご指摘によるものです。
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日経平均と糸瀬茂さんの思い出

 10月28日の「日本経済新聞」の一面トップの見出しは「日経平均26年ぶり安値」だった。前日の終値7162円が、バブル後の最安値7607円(2003年4月)を下回り、1982年10月7日の7114円以来の安値になるという記事の内容だ。
 事実に相違はないから「誤報」だとは言わないが、過去の経緯を知っていると、ちょっとツッコミを入れたくなる。なぜかというと、日経平均は、2000年の銘柄入れ替えの際に、株価全般の水準とはほぼ無関係に、当時の値で2千数百円、率にして12、3%は下ブレして、分析上の連続性を失っているからだ。
 この時に、銘柄入れ替えでどれくらい「ズレた」のかは、計算の方法によって諸説あるのだが、私は、入れ替え時点を含む前後2週間の期間のTOPIXと日経500がほとんど変わっていなかったのに対して、日経平均が十数%下落していたことから、「12、3%は、相場全般の変動と関わりのない要因で下ズレした」という内容の原稿を書いた覚えがある(たぶん「週刊ダイヤモンド」だと思う)。これは、どちらかというと控えめな推計だったはずだ。
 簡単に言うと、入れ替え時点に向かって、除外銘柄が売られて、新規採用銘柄が買われて、証券会社の自己売買の影響もあって、最後の株価が前者は下に、後者は上に大きく振られて株価(金曜日の終値で計算される)が計算された。入れ替えられた銘柄は225銘柄のうちの30銘柄だったが、新規採用銘柄に値嵩株が多かったこともあって、ポートフォリオの内容としては51%程度入れ替わったと記憶している。
 当時、証券会社の自己売買部門では業界合計で2000億円以上の儲けが出たとされる大イベントだった(最大手は800億円儲けたと関係者から聞いたことがある)。逆に、日経平均連動の投資信託を持っていた投資家や先物のロング(買い持ち)を持っていた人が大損したのだった。
 日本経済新聞社は、さすがにこの件以降は、もっと慎重に銘柄入れ替えを行うようになったので、あの時のような理不尽な(特にインデックスファンドの投資家には)入れ替えはその後は行われていないが、相場の分析上、2000年の銘柄入れ替えの時点で日経平均は、十数パーセント狂っているという事実は動かない。
 日経平均はポピュラーな株価指数だから、これを報道することは悪くないが、良心的な新聞報道としては、銘柄入れ替えの影響について注記すべきだったと思う。当時の銘柄入れ替えの際に責任のある立場だった人がまだ会社に残っているのだろうか(事実は未確認だ)。
 あの銘柄入れ替えでの狂いが仮に12、3%だとすると、10月27日の終値が、「バブル後最安値」であることは間違いないが、実質的に「26年ぶり安値」ではないから、記事は不正確だ(日経平均の分析上の不連続性を「常識」とみるというなら「不正確」ではないが、「不十分」、「不親切」ではある)。
 尚、割合どうでもいいことだが、2000年で日経平均の連続性が壊れているとすると、2000年を跨ぐ長期のチャート分析で日経平均を使うのは不正確だ。チャートはこれを予測目的に使う限り、インチキ占いのようなものだと思っているが、インチキ占い師にも、「ていねいなインチキ占い師」と「いいかげんなインチキ占い師」の二通りがある。
 日経平均の銘柄入れ替えを思い出すと、いつも故・糸瀬茂さん(最後は宮城大学教授)のことを思い出す(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%B8%E7%80%AC%E8%8C%82)。
 糸瀬さんとは、村上龍さんのJMMの座談会でご一緒したことがある。当時、日本の不良債権問題について、銀行は事実の隠蔽、損失の先送りをすべきでない、という論陣を張っておられて、国会に参考人として出席したり、テレビにもよく出演されたりしていた。
 座談会の後に、村上龍さんや座談会のメンバーと一緒に食事をして、その後、時々メールでやりとりするようになった。
 日経平均と関係するのは次のようなエピソードだ。
 糸瀬さんが日本経済新聞社から本を出そうとしたときに、この銘柄入れ替えについて触れようとしたところ、編集サイドから、この問題には触れないで欲しいと削除の要請が来たのだという。そのとき、糸瀬さんから「日経にも反論のページを用意してもいいから、この問題は指摘したい。しかし、相手は日経なので、得失を慎重に考えなければならない。山崎さんはどう思いますか。率直な意見を教えて下さい」という趣旨の相談メールが来た。ビジネス的にも、意見発表のチャネルとしても日経は大切だが、さて、どうしたものだろうかというニュアンスだった。
 私の返信は、
(1)銘柄入れ替えには日経に明らかに落ち度があり、
(2)反論ページを用意しても日経は満足な反論が書けないだろう。しかも、
(3)日経はこの問題に極度に神経質であり「議論する」余裕はなさそうで、
(4)単行本の編集部は著者と会社の板挟みの状態にあるはずだ。
(5)ビジネス上、意見発表上の影響は考えつつも、批判はすべきだが、日経の本でやらなくてもいいのではないか、
というような内容だったと記憶している。無難でつまらない答えだが、正直に答えた。
 3ヶ月くらい後に送られてきた糸瀬さんのご著書には、日経平均の銘柄入れ替えに関する記述は無かった。
 糸瀬さんは、第一勧銀に就職された後、外資系の証券会社を何社か経て、宮城大学の教授になった方だった。村上龍さんも一緒の会食の際に、「どうして外資系証券会社を辞めたのですか?」と訊いたら、「私は、仕組み債を売るのが嫌で辞めました。あれは良くない」と仰っていて、意見が一致したのを覚えている。
 その後、程なく、糸瀬さんは食道ガンに冒された。ネットで病気の情報を収集し、同病の患者達と情報交換し、病状に対して客観的だが、希望を失わない、見事な病人ぶりだった。村上龍さんには「早く病気を退治して、銀座で豪遊したい」とメールしていたように記憶する。しかし、現実は残酷で、ご病気の状態は常に予測の下限を少しずつ外れて、病状の進行は容赦なく速かった。
 糸瀬さんは、体力が続くぎりぎりまで、テレビなどで意見を発信されていた。現在の世界的な金融危機は、不良債権を核とした金融機関の問題であり、証券化商品という「仕組み物」が深く介在した混乱だから、糸瀬さんがご存命であれば、きっと大いにご活躍されているはずだ。
 月並みだが、残念でならない。
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いつ本格的に強気に転換するか?

 ニューヨーク・ダウも日経平均も久しぶりに1万割れをつけた。
 レベルはともかく、当面の感じとしては、市場の気分が些か弱気に偏りすぎているような気がする。米国の経済安定化法案は、銀行の不良資産を幾らで買うかが不明な点で「効果が不十分ではないか」と言う余地のある代物だが、これは同時に買値・買い方によっては銀行の潜在的損失をかなり埋める可能性もあるわけで、プラス面が過小評価されているような気がする。このような解釈の偏りは、経験的に、多くの場合行き過ぎのサインだから、ちょっと「買い!」と言ってみたい気分が起こる。
 もっとも、この種の気分を私も何回も経験しているし、市場の予測を発表することを商売としておられる皆様も、しばしばこういう気分を感じるらしく、多くの方が「そろそろ強気だろう」という強気を述べては失敗している。普通の相場で言う「コツンと来た感じ」が、サブプライム相場には通用しない。ここが底かと、少し体重を掛けると、地面が崩れる、といった感じなのだ。
 日本株のフェアバリューに対する価値は、私がいつも使う計算方法で、フェアバリュー(リスクプレミアムが6%)よりも僅かに安いくらいだが、現時点で、是非とも買わなくては!というほど株価は安くないし、計算の基になる企業の利益が下方修正されそうなので、バリュー面から目をつぶって買えるという状況では未だない。
 悪材料としては、GEがバフェット氏から資本を調達(これを呼び水にして一般からもっと調達したが)したことが印象的だった。大きな金融事業を抱えているとはいえ、GEのような(元?)優良会社が、資金繰りを心配して資本を調達するくらいなのだから、アメリカのクレジット・クランチは相当のものなのだろう。MMFの解約が、銀行預金の引き出しに染るような可能性が絶えずありそうだ。リーマンショック以来の強度のクレジット・クランチが実体経済に目に見える影響を与えるには2、3ヶ月は掛かるだろうが(少なくとも統計が発表されるのにそれくらい時間が掛かる)、この悪影響がかなりのものになるのではないかという恐れを感じる。
 また、ヨーロッパにも「サブプライムの毒」がかなり回っているので、ヨーロッパの経済の急速な悪化も心配だ。やはり、考え始めると、弱気材料の方が多い。
 一方、外人投資家主導のローカル市場である日本の株価が、アメリカなどの株価の影響を受けるのは当面仕方がないが、日本の経済は、景気が低調ながらも、金融システムの強度、つまり主要銀行の財務内容には比較的余裕がありそうだ(中堅以下の数行を除くと)。国際金融や証券化業務への出遅れが幸いしたわけだが、相対的なアドバンテージではある。
 迷っているときりがないので、乱暴に山勘を使うと、来年の早い時期に、米欧の大手銀行が保つか保たないかというような山場が来るような気がする(NYダウで7000~8000ドルくらいのイメージだ)。ここが底なら分かりやすい。
 私は両行の財務内容を分析したわけでも情報を持っている訳でもないが、イメージとしては、シティバンクとUBS(共にサブプライム損失の大きな象徴的銀行として名前を挙げた)が国有化されるとかされないとかいった場面が現れて、株価が大きく下げるというような分かりやすい状況が来るなら、「世界の中心で『ここが底だ!』と叫ぶ」といいのだろうが、普通、世の中はそんなに分かりやすくない。
 傾向として私はやや(自分ではホンの少しだと思っているが)弱気の予想に傾きやすい(セールスマンには向かないし、企業では出世しにくい心理的傾向だ)。そうしたことを考えると、そろそろ少し意識的に強気の材料を探す方がいいのかも知れないと思うのだ。
 「株価下落の、私たちの生活に与える影響は何ですか?」といった質問にその場その場で答えるようなことばかりをやっていると(テレビのインタビューを軽視するわけではないのだが、あまりにも同じパターンの質問が多い)、相場的思考が停滞してしまう。とりとめの無い話で恐縮だが、まだ弱気を基調として考えるか、強気の思考を積極的に起動するか、現在迷っていて、どうするか自分なりに考えている

(他人にはどうでもいいことだろうし、自分で株を買うわけではないのでこの「考え」は実利につながらない。でも、考えること自体は悪い感じがしない)。

 尚、私は、マーケットの話は複数のメディアに高頻度で原稿を書いているので、コメント欄のご質問には原則としてお答えしません。コメントを書き込まれる方は主にご自分の「意見」を書いてください(私は、勝手に、感想や追加の意見を書き込むつもりですが)。皆様のご意見は全て真剣に拝読します。コメンテーター同士の議論も歓迎致します。
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