goo

【現代ビジネス】あなたの「投資リテラシー」を鍛えるはじめの一歩

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「あなたの「投資リテラシー」を鍛えるはじめの一歩 ~金融機関は「手数料」で儲けている」というタイトルで記事を書きました。
 今回紹介する内容には、私の勤務先である楽天証券株式会社が関連しています。本稿では正しい情報をお伝えするつもりですが、私は中立な立場にないことをあらかじめお断りしておきます。良い商品・サービスであるか否かは、読者ご自身で判断してみて下さい。

 今月、三井住友アセットマネジメント株式会社は、これまでDC専用としてきた4つの投資信託商品について、一般向け投資信託としての販売を、楽天証券を通じて開始しました。投資信託の手数料水準の改善を促すかも知れない「大変好ましい動き」と言えます。
 これらの4商品は、ノー・ロードで販売されることに加えて、運用管理手数料の水準がDC向け商品のレベルなので、商品によっては、既存の一般向け投信と比較してかなり安くなります。

 信託報酬の配分を見ると、運用会社や販売会社(私の勤務先です)等、関係者全てが、受け取る手数料を既存商品よりも少しずつ下げることで、DC向け商品を一般向けに投入する事を可能にしています。
 そうなると気になるのは、今後、運用会社、販売会社とも、他社による追随があるかどうかでしょう。
 他社としては、投信手数料の相場を下げたくないので、可能なら、今回の動きを無視したいという気分はあるでしょう。しかし、資産運用に熱心な顧客から見て、手数料の差に基づく既存商品との優劣は明白に今回の商品が優れており、運用会社としても、販売会社としても、何れは追随せざるを得なくなるのではないかと、私は考えています。

 今回の三井住友アセットマネジメント社の英断によるDC専用商品の一般向け投信への投入は、消費者のメリットにつながる健全な競争への道を切り開くきっかけになる可能性があります。
 投資家各位に対して「是非今回の商品を買って欲しい」とまでは言いませんが、これらの商品よりも運用管理手数料の高い商品を売る運用会社・販売会社に対して、「手数料が高い!」と文句の声を上げて大いに騒いで欲しいと思います。そうした声こそが、わが国の個人の資産運用環境をまともにする力になります。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ダイヤモンドオンライン】“面倒くさい”消費税問題の論点を整理する

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「“面倒くさい”消費税問題の論点を整理する」と題する記事を書きました。

 消費税をめぐる問題については、軽減方式、軽減対象、軽減の実施時期、そもそも消費税率10%への引き上げの実施時期など、実に多くの組み合わせがありそうで、それこそ「面倒くさい」問題です。しかし、その論点は、問題が小さい方から順に、以下の3つに整理することが可能です。

1.軽減税率の実現方法
 軽減税率の実施には、大きく2つの方法があります。財務省が提示した「マイナンバーカード方式」と、もともと想像されていた「品目別の税率設定方式」です。
 来年の参院選を意識し、軽減税率の実現を急ぐ場合には、官邸主導で強引にインボイス方式への移行を進め、品目別の税率設定方式を採用するのが、唯一の解かも知れません。 もちろん、税制が複雑化することは、公平且つ簡素を旨とすべき税の一般的考え方としては好ましくない傾向です。

2.品目別の軽減税率の可否
 そもそも品目別の軽減税率の適用は必要なのか、という点については、軽減税率自体を止めて、例えば、税率アップでの増加した税収の範囲で、低所得者向けの給付金を配るといった方法の方が「明らかにベター」でしょう。

3.税率引き上げの可否
 デフレの脱却を大きな目標とする現在の経済政策にあって、来年4月の消費税率アップは、明らかに政策目標に逆行します。
 記事本文では、軽減税率の適用方法で揉めている目下の情勢を利用して、「税率10%時」に軽減税率を導入すべく、増税時期を後送りすることを提案しています。

 以上の各論点から、経済的なロジックで素朴に考えるなら、増税はデフレ脱却後が好ましく、税率を引き上げる際には、品目別の軽減税率を止めて、減税・給付金で逆進性対策を行うのが良いでしょう。
 しかし、論理的に良いと思うことが、簡単には実現しないのが現実の世の中です。政治家よりも、官僚の方が集団としては強く、結果、来年4月の消費税率アップは、実現することになるでしょう。そうなると国民は、2017年には「不景気が予約されている」と思って身構えて置く必要がありそうです。
 この予想が、外れることを切に願っています。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【現代ビジネス】「馬券裁判男」の馬券術と株式運用の共通性

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「元ファンドマネジャーが仰天!「競馬で1億5000万円儲けた男」に学ぶマネー運用の"鉄則"」というタイトルで記事を書きました。

 馬券で得た利益を申告しなかったことで巨額の課税を受けた会社員が裁判で争った一件は、最高裁において、外れ馬券を経費として認めるという判決が確定しました。
 馬券に対する課税もさながら、競馬ファンが真に驚き興味を持ったのは、28億7千万円の馬券を購入し、30億1千万円の払い戻しを得て、1億4千万円も儲けたという馬券裁判被告人の馬券術です。

 その会社員「卍」氏が自著「馬券裁判 競馬で1億5000万円儲けた予想法の真実」(株式会社メタモル出版)において、自身の馬券術について説明しているというので、一競馬ファンとして読んでみましたが、実際、驚きました。卍氏の馬券術は、私がファンドマネジャー時代に株式のポートフォリオ運用で行っていた運用法と、考え方の上でも、諸々の実行方法の点でも、非常によく似たものだったからです。

 もともと株式投資と競馬はよく似ています。株価とオッズ(馬券が当たった場合の払い戻し倍率)の形成原理がよく似ているからであり、卍氏の馬券術の中核となる「適中の楽しみを捨てて、回収率を重視する」ことは、株式の運用にあっても重要な考え方になります。
 その他、本書には若いファンドマネジャーに是非読ませたくなるような内容がいくつも出てきますが、前書きの中ほどに、注目すべき記述を見つけました。「しかしながら、私が馬券で得た利益の約半分はリーマンショックの時に投資信託での損失として消えてしまっており」とあります。
 競馬では緻密な資金マネジメントをしていた卍氏でしたが、投資信託では実質的に過剰な集中投資になっていたようです。お気の毒ですが、どこかの金融マン、あるいは書籍などの情報を、過剰に信じてしまったのかもしれません。
 卍氏のように、本業(?)にあっては緻密で成果を上げていても、資金運用の失敗で大損をした、あるいは、しつつある、という人は少なくないのではないでしょうか。他山の石として頂けたらと思います。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ダイヤモンドオンライン】就活問題をこじらせた経団連「指針」の本質的欠陥

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「就活問題をこじらせた経団連「指針」の本質的欠陥」と題する記事を書きました。

 経団連の榊原会長は、大学生の採用活動指針を来年見直すこともあり得ると、会見で述べました。
 批判を受けたことは認識しているが、大きくは変えたくないし、そもそも現時点で何をどう変えたらいいのかが分からない、という本件に関する経団連の当事者能力の無さがよく伝わって来る大変残念な会見でした。

 問題があれば見直すというのは、当たり前の話ですが、それでは、榊原経団連は「採用活動の指針」をどう見直したらいいのでしょうか。

 結論から言うと、経団連は、「採用活動の指針」を廃止して、企業の採用活動に一切関与しないことを宣言すべきです。
 第1の理由は、それが一番フェアだから。
 第2の理由は、企業も学生も、お互いの合意に基づいて好きな時期に好きな契約を結べることがより便利で合理的だから。
 第3の理由は、企業も学生も「大人」なので、自由な合意に干渉すべきではないからです。

 そもそも「採用活動の指針」という名の協定の目的は、端的に言えば、経団連企業が、採用という本来競争的であるべき行動に関してカルテルを結ぶためにあります。他社に抜け駆けされないように、自分達の努力不足で明白な失敗をしないで済むように、各社の採用担当者が他社の採用担当者を牽制することによって、採用活動を無難なものにしようというのが協定の目的です。

 経団連の「採用活動の指針」は無くしてしまうのが、最善の改革です。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【東洋経済オンライン】中国はアベノミクス相場の致命傷になるのか

 東洋経済オンラインの「山崎 元が読む、ちょっと先のマーケット」に「 中国はアベノミクス相場の致命傷になるのか 」と題する記事を書きました。

 中国の資産価格におけるバブル崩壊が本格的に進行しつつあることは、どうやら間違いなさそうです。
 中国経済のジレンマが端的に表れているのは、元の為替レートの問題です。理屈上は、為替取引を一気に自由化して、急速且つ大幅な元安にしてしまうことが、最善の策になるでしょう。しかし、中国当局が打とうとしている手は、当面の資本流出を防ぐために人民元の売りを規制する方向のようです。これは、むしろ事態を悪化させ、問題の解決を遠くする可能性があります。
 投資家は、中国経済の迷走や意外に大きな落ち込み、低迷の長期化などを、それぞれリスクとして織り込んでおくべきでしょう。

 さて、考える対象を日本株に絞るとして、今回のチャイナ・ショックで「アベノミクス相場」は終焉を迎えるのでしょうか。
 中国経済の減速はほぼ確実だとしても、単独で日本株の大幅で中長期の下げ要因になるようには思えません。私は、アベノミクスによる上昇相場が、まだ継続する可能性は大きいのではないかと考えています。
 理由は4つあります。

1・中国の資産価格の下落はサブプライム問題、リーマンショックと異なり、国際金融システムに対する波及が小さい中国の国内問題だ。
2・日米両国の金融政策が緩和的である限り、世界・日本国内両方の資金はリスク資産に向かいやすい。
3・120円台のドル/円レート以上の円安を維持している限り日本企業の業績はまずまずだろう。今期は減益になるまい。効果はゆっくりだが原油価格下落もプラスだ。
4・東証一部平均でPER 15倍強と、株価は現時点で少なくとも「割高」ではない。

 但し、それぞれの要因がもっともだとしても、9月にFRBに利上げされるようだと、さしものアベノミクス相場も、いったん終了となる可能性が大きいように思います。
コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする