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「原発の今後に関する簡単な整理」

 今、何かについて発言する場合、「原発をどう考えるか」について自分の立場を明確にしないと十分な意見にならないことが多いように思います。
 以下は、原発に関する私の意見を簡単にまとめたものですが、フジテレビの【コンパス】という意見収集サイトの質問を基にしています。このサイトに回答しても、番組で取り上げられることは滅多になく、回答が徒労に終わることが多いのですが、質問に回答する作業は、自分の意見の整理に役立つことがあります。

 以下にコンパスへの回答に加筆修正したものを載せます。

★問1:
日本は今後、原子力発電と、どのように向き合うべきと考えますか?

1-<即時廃止>多少の電力不足も受容し、原発を停止させる
2-<段階的廃止>電力不足に配慮し、ゆるやかに原発を停止させる
3-<現状維持>安全管理の基準を見直し、可能なかぎり既存原発を活用
4-<増やす>より安全性の高い炉の導入などで、原子力発電に取り組む
5-そのほか(設問・選択肢以外の考え方、視点)

私の回答→ 2.

 この辺が妥当な意見ではないかと思っています。

 私は、原子力環境整備促進資金管理センターの最終処分積立金の資金運用の運用委員会の委員を務めています。ある意味では、原発の存在を肯定し原発に協力している面がありますが、原発は日本に既に存在し(日本の原子力発電は「トイレ無きマンション」などと呼ばれることもあります)、核廃棄物の処分は必要なのでこの処分費用の積立金運用に協力することと、上記の回答は矛盾していないというのが、自分なりの整理です。
 尚、この積立金の運用には、小さからぬ反省点があると感じています。この点については、別の機会に整理してご報告したいと思っています。

★問2:
問1の選択の理由、日本の原子力発電の今後の在り方、原子力発電を取り巻く
今の国内の議論について、ご意見をお聞かせください。

原発のリスクのマイナス面に注目すると、以下の点が指摘できます。

(1)原子力という技術そのものを安全か危険かと決めつけることは不毛です。実際にリスクとして認識しなければならないのは「原子力」そのものよりも、それを運営・管理する「人間」でしょう。基本的に、人間を完全に信じることができないことが、原子力そのもののリスクと混同されていることが、原子力問題を難しくしている根本原因でしょう。

(2)原子力のリスクを評価する上では、今回の「フクシマ」の事故のようなケースの「コスト」をどのように見積もるかという問題があります。
 評価に関しては、たった1ケースについても最低数十年の期間を必要とする現実があり、「科学的に」有効な結論を出すことには困難がありそうです。たぶん、上下に10倍以上の開きのあるコストを前提に賛成派と反対派とが議論をするので、議論は噛み合うことがありません。
 ツイッターなどを見ていると、原子力は経済的で事故の可能性を考えてもコストが安いという意見もあれば、原子力のコストは莫大だと決めつけた議論の両方があり、お互いに議論の前提が噛み合わないまま罵り合うことが多いように思います。

(3)現実的にいえるのは、姿が見えないし、悪影響が表れるまでに何十年も掛かる放射能に対する「心理的コスト」が非常に大きいということであるように思えます。原子力は自分の利害で判断すべき問題ではありませんが、私個人は、電気料金がもっと高くても(現在よりも五割高くても)、それで原子力発電なしで済むならまあいいのではないかと思っています。

(4)上記の(1)~(3)を綜合していえそうなことは、「できれば」、同じコストの下なら原発を使わずに済む方が、国民の満足度は明らかに高い、ということです。

 この段階で、もう一つ考慮すべきは「技術」の前提でしょう。

(5)現在の技術を将来も所与のものとして、発電のコストを考えてはいけないように思います。原発も、それ以外の発電も、開発と投資に資源を振り向けると、効率(安全性も含めて)を改善することができるのではないでしょうか。
 この点に関しては楽観的に過ぎるのかも知れませんが、将来の技術について確かなことが言えない中で、私個人としては、技術進歩の可能性に期待してもいいのではないかと思っているということです。

(6)また、節電(家庭レベルでは、白熱電球→LEDライト、エアコンや冷蔵庫の技術進歩など)技術の進歩や、蓄電、電力マネジメントの技術進歩は、発電力の増強と同様の効果を持ちます。

 すると、次のような期待を持つことが出来るのではないでしょうか。

(7)「原子力発電を段階的に廃止する」という大方針を明確にして、他の発電技術と節電技術に投資を行うなら、将来的、コスト的に見て原発の代替が可能になる可能性は小さく無い。

(8)付け加えると、上記のような、原発を不要とする発電技術の開発は、ビジネス的にも極めて大きな価値を持つことが予想できます。日本以外の国でも、この種の技術に対しては、大きなニーズがあるように思います。この技術開発への投資は投資それ自体として魅力的なものである可能性が(かなり)ありそうに思います。

 一方、現実問題として、次のような問題があります。

(9)技術の改善とその実現には時間が掛かります。現在稼働している原発を全て直ちに止めることのショックは大きい。従って、安全管理に現在以上に留意しながら、徐々に原発を減らしていくことが、現実的な選択になるように思います。

 最後に補足として。

(10) 原発廃止で電力コストが上がり、日本の競争力(←曖昧で使い物にならない概念です!)が損なわれるという議論がありますが、そもそも、石油もウランも輸入するような国がエネルギー集約的な製造業にウェイトを置くこと自体が非合理的です。
 あくまでも、個々の企業なり個人なりの意思決定の集積で決まることですが、電力コスト云々の問題以前から労賃もエネルギーコストも(アジアの中では相対的に)高い日本でこれらに依存するところの大きな「ものづくり」に注力することが賢くありません。
 脱原発をある程度の時間を掛けつつ確実に進めながら、日本の産業構造も変わって行くことが、望ましい将来の展開ではないかと考えています。

★問3:
今後、原子力発電に替わる電力の供給が必要になってくると考えられます。
再生可能エネルギー(自然エネルギー)を実現してゆくために
どのような施策、政策、枠組みを用意すべきでしょうか。

下記の選択肢をお選びいただき、
ご意見をお聞かせください。
1-「実現のための施策、政策、枠組み」への意見
2-回答を控える

もちろん1です。

 先ず、環境への負荷やリスクが相対的に小さい新技術に基づく発電電力一単位当たりのコストとして、どれだけ追加的なコスト投資していいかを考えて、国からの補助金を設定するべきでしょう。この補助金は、新技術への投資に対する奨励金であり、間接的な形ではありますが、国としての再生可能エネルギーへの「投資」の意味を持ちます。
 既存の電力会社がそれぞれの地域で強力すぎる独占企業であることを考えると、新しい発電に取り組む事業者に対して国が補助的な投資を行うことは悪くないと思います(補助金は金額・時間共に限定的な者である必要があると思いますが)。
 具体的には、送電会社と発電会社を分離した上で、送電設備を持つ電力会社に再生可能エネルギーによる電力を(強制的に)買い取らせて、割安な既存電力の価格に上乗せされる奨励金に相当する差額部分を国が負担するような仕組みを作るといいのではないでしょうか。これによって、新技術の進歩を促すといいでしょう。
 基本的には、現在検討されている再生可能エネルギーの買い取り法案に近い考え方を支持します。
 但し、どのようなエネルギーをどのような条件で誰が買い取るか、価格をどうするか、そもそも送電・発電の分離をどう実現するかについては、それなりに慎重に考える必要がありそうです(そのためには、東京電力を法的にフェアに、たとえば会社更生法で整理して、新しい枠組みの発電会社とこれとは別の送電会社に再編することは有意義であるように思います)。

 最後に、この問題は「死に体」の菅内閣の下で検討すべき問題ではないことを強調しておきたいと思います。

(※ 上記の拙文は、一ヶ月ほど前にfacebookに投稿した文章がもとになっています。原発については、賛否何れのサイドにも、冷静な議論にならない人がいるので、コメント者が実名で読み手が限定されるfacebookに意見を書くことにしたものです。
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 尚、今後、賛否が分かれるようなデリケートなテーマについては、なるべくfacebookで議論しようと思っています。ご興味のある方は、facebookで「友達」の申請をして頂けると助かります。原則として、所属を明かした実名で、顔写真のはっきりしているリクエストを承認する方針にしています)
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