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【ビジネスジャーナル】「公的資金の買い」を理解するポイント

 「ビジネスジャーナル」で連載中の『山崎元「耳の痛い話」』に、「 にわかバブルっぽい株式相場、そろそろ「降りる準備」をしたほうがよい 突然下落懸念も 」と題する記事を書きました。
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 年明け以降、株価が上昇傾向にありますが、この背景として注目されているのは、GPIFをはじめとする「公的資金の買い」です。これを「クジラ買い」と名づけた日経の記事によると、今後株式を買うことが予想される大きな資金主体による「買い余力」は、合計27.2兆円あるといいます。

 公的年金による株価てこ入れ政策は、過去にもしばしば行われました。大きな特色として、多額の買い資金を投入すると、その間は株価が上がりますが、企業の業績が改善するなど「株式の価値」が改善するような変化がなければ、一旦上がった株価は、その株価で買う買い手がいなくなるので、下落に転じてしまいます。

 問題は、公的資金が株式を買う速度です。今回、割合速い動きのGPIF以外(ゆうちょ銀行など)は、ゆっくりと動くことになりそうです。
 その場合、株価へのインパクトは、世界の機関投資家が動かす資金の流れの方により大きな影響を受け、「公的資金が買いに入るから大丈夫」とタカを括っていると、米国の金融引き締めや、欧州の金融不安などの悪材料が生じた時に株価が大幅に下落する可能性があるので、注意が必要です。

 こうした需給要因で株価が攪乱されている時の基本的な考え方は、「株価の動きと勢い」ではなく「株価の水準」に着目することです。
 「株価の水準」を考えるとき、長期金利と比較して高・安を判断することが一般的ですが、現状では、長期国債利回りも日銀によって低く抑えつけられていて、比較の基準がわかりにくくなっています。

 そこで、記事ではPER使って考えてみました。
 現在の東証一部平均で約18倍というPER(日本経済新聞予想利益ベース)は「やや高い」。これが、20倍を超えると「はっきりと高い」と思っておくと、いいのではないでしょうか。
 投資をすっかりゼロにするような極端な動きには走らない方がいいですが、現状は、株価を見ながら「少しずつ降りる」準備を考えておくべき頃合いのように思えます。
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【現代ビジネス】賃上げはどこまで続くのか?

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に記事を書きました。
賃上げはどこまで続くのか?
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 1月の実質賃金は前年同月比1.5%減でした。
 賃金は確かに上昇していますが、消費税増税分まで含めた物価上昇率に追いついてはいません。普通の生活をしていると消費税は払わなければなりませんから、平均的勤労者が実質的に貧しくなっているというのが実際です。

 さて、昨年に続き今年の春闘でも、いわゆる政労使会議が開かれて、政府・労働組合・経営者が一同に会し、政府が賃上げを要請して、近年としては大きな賃上げが連続して実現します。
 原則論を言うなら、賃金は雇用者と被用者が自由な交渉の下で決めるもので、政府が賃上げに介入することはいいことではありません。とはいえ、トリクルダウンの難しさを考えるなら、デフレ脱却に向けた環境整備の一環として、肯定出来る面もあります。
 政府が賃上げを要請する異例の状況は、いつまで続くでしょうか。物価上昇を上回る賃金上昇が自然に実現するような環境になれば、この「官製春闘」はなくなるはずであり、その時こそが「アベノミクスは成功した」と言える時でしょう。

 今後がどうなるのかは難しい問題です。2017年度には消費税率10%への引き上げが(一応は)決まっていて「不景気が予約されている」ことが気懸かりですが、2015年度、2016年度はまずまずの雇用と賃金の環境が続くと期待して良いのではないでしょうか。
 株価と賃金で、先に上がったのは株価でした。先に下がるのもおそらく賃金よりは株価ではないか、というのが私の目下の予想です。
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