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料理人の味見について

 ブログよりもツイッター向きの小ネタかも知れないが、ここしばらく気になっていることを書いてみる。
 外に飲み食いしに行った場合、カウンターの向こうが料理場であったり、オープンキッチンであったり、あるいは厨房の中が客席の中から見える場合に、料理人が味見をしている様子が見えることがある。
 この場合に、自分が口をつけたスプーンをまた調理中の鍋やボウルに戻したり、あるいは、手で食材のかけらをつまんで口に入れて、その手で調理や盛りつけを続けるケースがある。要は、厳密に言えば唾液が混じる状況だ。
 もともと外食の調理場というものが、完全に衛生的で行儀のいいものだとは思っていないのだが、見えるところでやられると、「いやなところを見てしまった」というネガティブな気づきと、「注意してやった方がいいのだろうか」という葛藤と、余計な感情を二つ抱え込むことになる。注意は、自分のためということもあるが、客の何%かはきっと気になるだろうから、店のために問題点を伝えたいという少しお節介な親切心が主な動機だ。
 私の見るところ、外でしっかり修行したらしき料理人は、さすがに客から見える場所で行儀の悪い味見はしないが、そうでもなさそうなシェフやその弟子が、気楽に味見をしている場合を時々目撃することがある。
 先日は、客席の一部から厨房の中が少し見える角度のある中華料理屋店で、たぶん客から見られていないと思っている料理人が、自分の指を舐めて味見をしていたのが見えた。この時は、支払いを済ませるときに、他の客に聞こえないようにレジの女性に「料理人に、後から、注意しておいてあげて下さい」と言えたので気分的にはスッキリした。
 しかし、店の構造や客の入り具合、あるいは店と自分との関係によっては、なかなか注意する機会を得られずに、気になると思いながら、その店に通い続けている場合もある。
 私が気にしすぎなのかも知れないと思う一方、最近はインフルエンザが話題になるなど、衛生面への関心が高まっている。味見の様子を気にする客はきっといるはずだ。

 このブログを見た、料理人あるいは、飲食店の支配人、ウェイター、ウェイトレスのみなさん、味見をするときには、神経質なお客の目を意識して、丁寧にやって下さい。お願いします。
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ベーシックインカム7つの長所

 3月15日の『日本経済新聞』朝刊の「領空侵犯」というコラムで、ベーシックインカム(BI)について語らせて貰った。書いたり、語ったりするたびに思うのだが、BIは、「夢の制度」ではないものの、さまざまな反論に強い「悪くない制度」だ。
 まとめるのに「7つ」がいいかどうか分からないが、改めて、長所をリストアップしてみる。

(1)BIは、コスト(特に官僚や業者による中抜き)の小さい富の再配分だ。

 生活保護、雇用保険、年金、それに公共事業等々再配分の仕組みは多々ある。一つの大きな問題は、再配分の過程で、官僚や業者による「中抜き」が起こることだ。これが少なくて済む分、BIはスッキリしている。
 
(2)BIは、手続きが単純だ。

 書類を書いて申請したり、その申請を受理して貰ったりしないと、貰えるものが貰えない制度は感じが悪い。

(3)BIは、使途が自由で、国の介入が少ない。

 余計なお世話が少ないことが自由主義者には嬉しい。子供学費に使おうが、寄付しようが、パチンコだって、競馬だっていいではないか。
 
(4)BIは、先の見通しが立ちやすい。

 一人当たり幾ら、という受給内容がハッキリしているので、生活設計がしやすい。例えば、まだ売れていないクリエイティブ系の人達にはいいのではないか。

(5)BIは、働くインセンティブを阻害しない。

 おバカさんが分からないらしいのはこの点。BIは無条件且つ定額なので、所得水準の如何に関わらず「より稼ぐと、より多くのお金を得ることが出来る」。現実的な額(一人月5万円とか)なら、労働意欲を削ぐことはないだろう。「働かなくてもカネを貰える」のは、生活保護も一緒。だが、生活保護は、稼ぎが増えると貰えなくなる。BIの方が労働インセンティブに対して中立。

(6)BIは、恥ずかしくない。

 生活保護の申請や、受給の事実には、不当な「恥」が伴う。BIは頭数に対して給付が自動的にあるので、恥を伴わない。これは、なかなか大切なポイントだと思う。

(7)BIは、徐々に、部分的に、実現できる。

 行政のムダなコストを削減して、その分の予算を平等な給付にすると、「BI的な政策」が部分的に実現する。BIは、一気にではなく、少しずつ実現することが出来る。

 現実的な問題として、官僚や業者(要はレントシーカー達)にとって行政のムダのムダの部分こそが生活の糧であり人生のビジネスモデルでもあるので、BIの一気の実現は、殆ど可能性がない。しかし、制度や政策をBIを基準に評価して、少しずつBI的にすることで、政府、ひいては社会が効率化されるのではないか。
 BIは、即効性のある成長戦略や景気対策になるようなものではないが、効率の改善を通じて社会に貢献する有効な仕組みの一つであり、その「考え方」を理解することは、政府・社会のあるべき姿に対する理解も改善するように思う。
 当面は「これは、BI的か?」という価値軸で、多くの政策を評価してみたい。
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Twitterを始めました

 幾つかお問い合わせをいただいているので、簡単にご説明しておきます。

 昨日Twitterのアカウントを作りました。yamagen_jpです。

 前後の事情をご説明すると何とも間抜けな話なのですが、3月10日に出演した東海テレビの「ぴーかんTV」で、当初、Twitterを取り上げる予定でした。せめてアカウントぐらいは作ろうかと思って、アカウントを作りました。mixiで「やまげん」を使っているので「yamagen」を登録しようかと思ったのですが、どなたかが既に使用しているらしく、「_jp」をつけたところ、OKだったようで、アカウントが決定しました。その際に、取り急ぎ、堀江貴文さんと鳩山首相をフォローしました。

 10日朝の名古屋行きの新幹線で、Twitterの解説本を読み、iPHONEから最初のメッセージを入れて、コメンテーターとしてはそれなりに準備をしたつもりだったのですが、オンエア10分前にスタジオに行ってみると、「今日は、J-WALKの中村サンの覚醒剤のネタが入ったので、Twitterの話は飛ばす」と聞いて、がっかりしました。最初のつぶやきは空振りです。

 解説本を読んで作法を学び、ゆっくりフォローとフォロワーを増やしていこうと思っっていたのですが、昨日遅くまで、飲んで、歌って、今朝目覚めてみると、700人以上のフォロワーが来訪していて、メールの受信トレイがTwitterからの通知で溢れかえっていました。フォロワーの多い堀江さんをフォローしたから発見していただいたのか、あるいは、どなたかが検索して発見してくださったのか、事情が分からないのですが、たいへん有り難いことです。

 とはいえ、にわかにフォロワー長者になって当惑しています。
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消費税率引き上げに向けていよいよ動き出した!

 財務省が消費税率引き上げに向けて本格的に動き出したようだ。
 「新年金制度に関する検討会」(議長=鳩山由紀夫首相)を立ち上げて、5月をめどに基本的な考え方をまとめる方針を示すという。この鳩山政権らしからぬ手回しの良い物事の進め方は、夏の参院選前に、民主党のいうところの最低保証年金の財源の形をとって消費税率の引き上げを「予約」する手順に従ったものだろう。『朝日新聞』の3月8日夕刊の見出しは「年金改革 参院選にらみ」だが、実際には、参院選が消費税率の引き上げに利用されるということではないか。
 たとえば、マニフェスト上は「国民にとって安心な年金制度の創設を約束する」といった形をとって、年金の目的税として消費税率の引き上げを入れ込むのではないだろうか。
 民主党が参院選挙で過半数を取ればスムーズだし、そうでない場合も、自民党は、消費税率引き上げに関しては、強く反対しないだろう。
 考えてみると、財務省にとって念願の消費税率引き上げに向けて、現在ほど条件の整った状況はない。
 鳩山首相は巨額の脱税を「お目こぼし頂いて、首相を続けさせて貰っている」立場だし、小沢氏についても国税はお金の流れをある程度把握しているのではないか。良し悪しの問題はあるとしても、現実問題として再び家宅捜索されたり、あるいは起訴でもされることになれば小沢氏の政治生命はあらかた終わりだろう。民主党の裏表のツー・トップは共に弱点を押さえられているから抵抗できない。それに、小沢氏はもともと国民福祉税を提案した消費税率引き上げ論者だ。
 先般の郵政選挙で自民党が大勝したときも、消費税率引き上げのチャンスだったが、小泉首相に「私の政権ではやらない」と消費税率引き上げを封じられてしまった。安倍、福田、麻生の三内閣は、国民の支持基盤が脆弱で、とても消費税率引き上げに向けて動ける状態ではなかった。
 それと較べて、今回は民主党が多数勢力を持ちつつもツー・トップが明らかな弱点を持っており、野党である自民党を見ても、党首は財務省に忠実な谷垣氏だし、これを批判している与謝野氏も財政再建優先論者だ。財務省としては、これほど消費税率を上げやすい布陣もあるまい。
 ギリシアの財政危機なども、財政再建の必要性を訴える上で、ほどよいスパイスだ。
 財務大臣就任当初は「今年一年は増税ではなく、財政支出のムダの削減に注力する」とやや強硬な姿勢を示した菅大臣も、その後程なく「3月から議論はOK」とすっかり軟化した。短期間に調教が完了したようだ。
 菅氏は、財務省方面の実務に疎いからそもそも財務官僚には逆らえないだろうし、鳩山首相がいかにも頼りなく、いつ辞任せざるを得なくなるか分からない現状では、財務省との関係を良好にしつつ次のチャンスを待つのが得策でもあるだろう。
 また、3月8日付けの『日経』朝刊の井堀利宏東大教授の「経済教室」や、同じく3月3日の「消費税率最低15%が必要」と小見出しの付いた櫻川昌哉慶大教授の「経済教室」、さらに3月7日の『読売』の社説など、ここのところメディアには消費税率引き上げ論が頻繁に登場している。メディアも財務省の意向を汲んで動いているようだ。「最低15%は必要」「20%台」といった数字を頻繁に目にすると、10%なら十分小さく見える。世論のアンカリングに関しても抜かりはない。
 もともと日経は、財界が、あわよくば法人税率の引き下げの財源として、ないしは法人税率引き上げに至らずに済ませる財源として、消費税率引き上げに賛成であることもあって、消費税率引き上げに対して積極的な論調だ。財界としては、最低保証年金が税方式になることも企業の年金コスト負担の一部を税一般に転嫁できるので、歓迎だろう。
 世論も、「消費税率引き上げやむなし」に傾きつつあるようで、かつてほど強力な反対論はない。「社会保障の財源」という形でコーティングすれば、世間は消費税率引き上げを飲むのではないか。

 先般の予算編成を見ても、我が国の財政は、歳入歳出両面で硬直的だ。景気を見て増税のタイミングをコントロールするような贅沢は、我が国には無理なのかも知れない。また、現在の官僚と政治家(主に民主党)の力関係を考えると、財政支出の削減も難しそうだ。
 何れ増税が必要だとした場合、消費税は、相対的に裕福な高齢者層にも課税が及ぶので「まあまあマシな方の税金」だろう。徴税コストの効率性を考えると、5%では税率が低いということもある。
 また、消費税なら、鳩山氏のような「平成の脱税王」(与謝野氏の表現)でも、お金を使ったときには税金を払わなければならない。脱税・節税しにくい税金という意味では好感が持てる。
 個人的な意見として、「税目の中で相対的にどこを増やすか?」という問題設定の場合、消費税には反対しない。ただ、手順として財政支出削減の前に消費税率の引き上げを決めることの問題と、デフレと不景気の最中に消費税率を上げるとすることへの違和感はある。

 しかし、消費税率引き上げを棚上げした上で、財政支出のムダ削減に徹底的に取り組むとした総選挙の頃の民主党の勢いは一体どこに消えたのか。
 政権交代は、結局のところ、情報バラエティのキャスターの交替ほどの意味も持っていなかった。今の段階では、そう思わざるを得ない。
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電子出版は著者に何をもたらすのだろうか?

 アマゾンのキンドルが電子出版の普及を後押ししそうだ。アマゾンは、条件を満たす著者に電子本の価格の70%を支払ってもいいと発表した。アマゾンをベースとして著作を発表する著者が今後出てくるだろうし、それ以外の電子出版も普及する可能性を秘めている。
 電子出版の本は、読みやすさに関する限り、ほぼ何の問題もない。紙が必要ないこと、印刷の手間が掛からないこと、配本コストが低いこと、何よりも紙の本の在庫を持たなくてもいいことを考えると、出版の手段として極めて合理的だ。
 今のところ、私も含めて、「ブツとしての本」に対する愛着があるから、紙の本が完全になくなるということではないだろうが、出版のウェイトが電子版に移ることは間違いなさそうだ。
 この場合に、出版社の役割はどのようなものになるだろうか。
 思いつく限りでは、企画、編集、校正、デザイン、印刷、配本、宣伝、書店への営業、在庫のコストのリスクの負担、代金決済(著者への印税支払いを含む)、本の権威付け、といったものが、今のところの出版社の貢献だ。これらのうち、印刷、配本、在庫、書店への営業はかなりコストが掛かっていそうだが、電子出版では不要になる。
 今のところ、プロの編集や校正を経ていない本は読むに堪えないことが多いが、これらは出版社でなくても、フリーの編集者や校正者で出来る。自分が著者側だからそう思うのかもしれないが、編集と校正を合わせても、通常、本に対する貢献は執筆よりも小さいだろう。加えて、編集、校正、デザインは、先端的なレベルは別として、相当部分がソフトウェアで処理できそうだ。近い将来、価値のある本文のアイデアと執筆能力を持っている著者は、スタンダードな出来の電子書籍を自力で(簡単に)作れるようになるのではないだろうか。また、企画は今でも著者自身で相当程度可能な作業だ。
 こうなると、電子出版で出版者側の貢献として残るのは、配信管理(主にサーバーの管理)と代金決済、宣伝を中心とする営業といった部分になる。
 完全な個人出版までやるマメな著者は稀だろうとすると、電子出版の場合、出版社と著者の取り分は50対50位の配分でいいのではないだろうか。
 電子出版本の紙本に対するフェアなプライスがどの辺かという問題は難しいが、紙本の4割位だと十分安い感じがする。私が次に出そうとしている紙の本(240ページ位の実用書)は価格が1300円(+税)だから、520円(+税)となるが、まあ、その程度の価格でいいのではないかと思う。
 電子本は、新刊時と時間が経ってから価格設定を変える(もちろん下げる)のがたぶん合理的だろう。これは、時間が経った新刊本の文庫化にほぼ相当する。
 上記のような「相場」だとすると、著者の取り分がほぼ2倍になる計算だ。問題は、電子本と紙本でどの程度部数が違うかだ。読者にとっての本の付加価値が主に中身にあるなら、電子本の実売部数は紙本よりも増えていいはずだが、どうだろうか。こればかりは、やってみないと分からない。
 仮に、こうした状況になった場合、出版社はどう行動するだろうか。紙の本の制作と営業に関わっていた社員が人員削減されることはかなり確実に思えるが、本を企画する側は何を考えるだろうか。
 予想するに、本を作るコストと在庫のリスクが劇的に下がるのだから、本の制作点数を増やすのではないだろうか。本市場全体の売り上げ縮小にもかかわらず、DTPの普及によるコスト低下で出版点数が増えたような現象が起こるような気がする。
 これは、著者間の競争が激化することを意味する。印税の取り分が増えるからといって、全ての著者が裕福になるとは限らない。
 また、電子出版による本の制作コストと在庫リスクの低下は、今後の著述業者が本の著者になることが簡単になることを意味すると共に、著作の「権威」の低下を意味するかも知れない。
 現在、相当に売れている著者は別として、著述業者の経済生活は、原稿料や印税だけではなく、講演やセミナーの講師、コンサルティング(的な仕事)で支えられているのが普通だろう。後者の仕事にあっては「本を出したセンセイ」であることが権威付けの一つになっている。実は、本に権威がある今のうちに、紙の本を出しておくことが重要なのかも知れない。
 
<出版の取引慣行に関する補足>

 ところで、これから著述業をやってみようと思われる方のためにご説明するが、、出版業界の契約と支払いは、一般的なビジネスの世界と相当に違う。
 活字の世界では、原稿を書いて、これが掲載されて、その後に原稿料が振り込まれてはじめて原稿料が幾らだったのかが分かるケースが少なくない。原稿の依頼を受けた際に「原稿料は幾らですか?」と訊くと(この頃はあまり訊かないが)、「えっ、原稿料を訊くのですか?!」と言いたげな怪訝な顔をされることがある。これは、講演の依頼の場合も同様だ。まして、支払い条件など(期限等)を質問すると、「細かい奴だなぁ」と言いたげな顔をされることになるだろう。
 また、支払いの条件についても、支払う側が独自のルールを持っていて、これを強制するケースがある。
 印税も通常の10%だろうと思い込んでいると、「当社の規定は8%です」とか「10%ですが、先ず半分お支払いして、残りは実売に応じてお支払いします」といった条件が、後から(!)出てくることがある。
 私も、ある出版社で「印税のお支払いは、出版の翌々月から始まる四分割です」と原稿をすっかり書いてから言われて、脱力したケースがある。そこまで作業をして、出版を止めるのも大人げないと思うから、「仕方がないですね。まあいいです」と答えたわけだが、何とも嫌な感じだった。その本は、出版前から「早く忘れたい本」になってしまった。多少は慣れているつもりでも、こうした意外性に見舞われることがある。
 電子出版の普及と共にこれから何が起こるか未だよく分からないが、出版や講演の世界でも、仕事の依頼の際に、経済的な条件を明確にする商習慣が確立するといいなあと思う。こうした慣行は、出版社の担当者レベルでも感じが良くないと思っているのではないかと思うが、如何なものだろうか。
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