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【DOL】鈴木敏文氏、「カリスマ・サラリーマン経営者」の3つの敗因

 今週のダイヤモンド・オンライン『山崎元のマルチスコープ』では、セブン&アイ・ホールディングスの「お家騒動」について書きました。

 本件は、創業家である伊藤家及びセブン・イレブン・ジャパンの井阪社長サイドと、会長である鈴木敏文氏との間の、経営主導権を巡る権力闘争だったとみています。勝負は未だ完全決着した訳ではありませんが、今のところ、伊藤家・井阪氏サイドが鈴木氏を排除することに成功しつつあるように見えます。

 今回の一連の問題で、「鈴木氏の負け」だと私が判断するに至った、同氏の敗因ないしミスと思われるポイントは3つあります。

 まず、息子を自社の要職に就けていたことは、彼の「弱点」になりました。勝負に出る時期に「世襲懸念」が出ない程度には、息子を遠ざけておくべきでした。
 また、現在83歳と、勝負に出るタイミングが遅かったこと、そして、決定的なミスとして、現社長を対外的に批判したことが挙げられます。これは、結果的にセブン&アイ・ホールディングスにとって、マイナスの影響しか持ちませんし、普通の組織の論理からすると、鈴木氏の側に「残る」選択肢はもうありません。

 まだ「対案」は発表されていませんが、今後、同グループはどのような経営を行うのがいいのでしょうか。

 恐らくは、井阪氏が会社とグループを主導して経営して行く以外に、グループが求心力を持ちつつ同時に経営スピードを落とさずに進んでいくための道はあり得ません。
 将来、彼及び彼を支援する人々の力量が不十分だったことが明らかになった場合には、別の誰かによる新たな淘汰を待つことになるのでしょう。

 組織というものは、闘争を通じて進化するものでもあり、以前の実力者であり功労者が権力闘争の末に去り、新しい権力者が組織をリードするようになることは悪いことばかりではありません。もちろん、権力闘争の結果疲弊して衰えたり、無能な権力者が勝利して没落する組織が多数あるのも事実ですが、そうした組織は、いずれ別の組織に取って代わられます。

 個人的な意見を言うなら、「5期連続増益で、交代というのは世間が認めない」と社外取締役が考えたという井阪隆一氏の手腕に期待すべきではないでしょうか。会社は、先ずはそのストーリーを盛り立てるべくまとまるべきであり、それで駄目なら、また、その時に考えたらいい、そう思います。
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【楽天証券】「ランダムウォーカー流」財産の健康管理の10カ条を読む

 楽天証券ホームページでの連載「山崎元のホンネの投資教室」に「第267回 「ランダムウォーカー流」財産の健康管理の10カ条を読む 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 前回に引き続き、投資啓蒙書の名著、「ウォール街のランダムウォーカー」(バートン・マルキール著、井手正介訳、日本経済新聞社)の原著最新版である第11版を題材にしています。
 今回取り上げて、見解を付け加えた第12章「財産の健康管理のための10カ条」は、米国の読者に特化した内容であるとして前回の版まで割愛されていたものが今回の版で訳出されたもので、日本の個人が資産運用を行う上でも参考になるトピックを多く含んでいます。

第1条 元本を蓄えよ
 元本が小さいと投資の効果が乏しいというのは、本書が言う通りです。
 但し、そこそこのお金を貯める「習慣」には、「あらかじめ『天引きで』貯蓄額を決めておこう」とするのでないと、お金は貯まらないことを付け加えておきます。

第2条 現金と保険で万一に備えよ
 保険が必要なごく一部のケース以外は、保険料を払うよりも、その分を蓄える方が賢く、変額年金保険という商品はダメだと言う点は、日本においても同じです。

第3条 現金でもインフレ・ヘッジ
 日本の個人の場合は、「個人向け国債変動金利10年満期型」、「普通預金」をそれぞれ利用するといいでしょう。

第4条 節税対策と年金制度の利用
 日本の個人に置き換えた場合、確定拠出年金とNISAを最大限に且つ有効に活用することになるでしょう。

第5条 運用目標をはっきりさせる
 本書において、投資家に適切なリスクの程度を「運用商品」の別で選ぼうとしている表が出てきます。しかし実際には、リスクを取る運用商品への「投資額」で調節するのが、より確実であり、同時に効率的な方法です。

第6条 マイホームの活用
 「アベノミクス相場」が明らかに後半に差し掛かっていると思われる今から、不動産投資でリスクを取るのなら、現物の不動産に投資するより、本書で勧められているREITの方がいいように思います。

第7条 債券市場に注目
 外国債券について、マルキール先生は「外国に目を転じると、国内の債券よりも遙かに高い利回りが得られる国がたくさんある」と書いてありますが、通貨の違う債券の利回りを直接比べるような勘違いをされていないか、少し心配になります。
 尚、今の超低金利下で債券を持つなら、個人向け国債の変動金利10年型が、圧倒的に優位です。

第8条 金、ダイヤ、書画骨董、コレクター・アイテム
 これらの物への投資に対して、マルキール先生は消極的な見方であり、日本の個人投資家も、そのまま「そうだ!」と思っていいでしょう。
 敢えて付け加えると、金の購入は、資本として生産活動に関わる物への「投資」ではないので、基本的に必要無いと考えておくのが適切です。

第9条 投資にかかるコストに目を配る
 株価や債券価格の変動など、投資において、投資家にはどうしようもないことも多いが、コストに関してはその意思さえあれば十分コントロール出来る、という、マルキール先生の主張には、全面的に賛成です。
 コントロール出来る要因の改善に集中することは、投資だけでなく、人生全体にあって重要なポイントです。

第10条 分散投資が大原則
 マルキール先生は、分散投資を「現代ポートフォリオ理論の教えの要」と言っています。
 有効な分散投資で可能な範囲でリスクを低下させることも、投資家が自分で「コントロール出来る」要因を改善する行為の一つです。

 以上、マルキール先生の10項目のうち、最後の3項目は当たり前の内容ですが、重要且つ優れた指摘であり、投資家は、しっかりこれらの考え方を身に付けて欲しいと思います。
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【ダイヤモンドオンライン】消費増税がやはり延期されるべき現実的な理由

 ダイヤモンド・オンラインの『山崎元のマルチスコープ』に「消費増税がやはり延期されるべき現実的な理由」と題する記事を書きました。

 来年4月に予定されている消費増税が延期されるのではないか、という観測が方々で流れています。
 「どうなるのか」について、私は「政府によって延期されるだろう」と予想しています。根拠は記事に書きましたが、何より、既に増税延期が市場関係者の「期待」(≒予想)として相当程度織り込まれていることから、「延期は無し」というのは、事実上難しいでしょう。

 あらゆる経済主体は、将来どうなるだろうという「期待」に基づいて、自分の行動を決めます。仮に、消費増税がもっぱら消費に影響するのだとすれば、消費財販売業者や消費者向けのサービス業者は正社員の採用に慎重になるのは当然です。
 更に言えば、今より数ヶ月早く、消費増税の延期が決められていれば、春の賃金交渉の「ベア」にもプラスになったことでしょう。「デフレ脱却」のためには賃金の上昇が重要であることは、首相官邸でも十分理解しているところでしょうが、増税の予定が既に悪影響を及ぼしていることにも、早く気付くべきでした。

 一方、野党の方でも、この悪影響を上手く批判材料に使うことが出来ず、政治的センスを欠いた発言に終わっています。
 野党は、それこそ「選挙対策」をもっとまじめに考えた方がいい。政党が選挙に熱心で恥ずかしいことは何もありません。

 より正しい政策を実現してくれるなら、その主体は、与野党どちらでも構いませんが、「デフレ脱却」に向けて、今は正念場です。「期待」(経済の文脈では「予想」に近い)が果たす役割を考えると、こうした方向性の政策を打ち出すのは、少しでも早い方が良いはずです。
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【現代ビジネス】商社はまた「冬の時代」を迎えるのか

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「三菱商事と三井物産「大幅赤字」に、証券のプロとしてひと言! リスク管理の視点はあったのか?」というタイトルで記事を書きました。

 三菱商事と三井物産が、資源関連のビジネスの減損処理で大幅な赤字に陥ることを発表しました。

 商社にとって、個々の投資プロジェクトは、投資信託における一投資銘柄のようなものですが、投資信託のリスク管理には「ポートフォリオ」の視点が必要です。商社における投資ポートフォリオに、同様のリスク管理が働いていたのかは、大いに疑問の余地があります。

 かつての商品を動かして口銭を稼ぐ商人型のビジネスモデルから、プロジェクトや会社に出資し、時には人も出して、且つ商売にも絡む「物流付投資銀行型」とでも呼ぶべきビジネスモデルに転換することで、商社は新しいビジネスに対応すると共に、収益のスケールアップを果たしてきました。
 当面「物流付投資銀行型」のビジネスモデルを商社が止めることはないでしょうし、その必要もないと私は思います。ただ、投資したポートフォリオのバランス調整の機能をもっと強化するべきです。

 金融業にさらに学ぶなら、キャッシュフローを生む対象に自分達が投資し、これを保有するだけでなく、対象を証券化して転売することを可能にし、自分のポートフォリオの調整を可能にした、「証券化機能付きポートフォリオ運用」的なビジネスモデルを将来もっと強化すべきではないでしょうか。

 今回の資源関連の投資に於ける、「のめり込み具合」と「リスク管理の甘さ」は、少なからず、バブル当時の財テク運用の問題と似ているように思います。但し、資源価格バブルの崩壊は、かつての財テク運用と同等か、場合によっては、それ以上のマイナス・インパクトとなる可能性があります。
 現在の世界経済の停滞具合等を考えると、資源価格が簡単に回復すると期待することは難しいかも知れません。まだまだ、要注意の状況は続くでしょう。

 商社を真に「総合商社」たらしめるためには、全社のリスクを「ポートフォリオ」として管理するリスク管理機能と、リスクを現実に調節するための様々なビジネス機能とを、開発・強化する必要があるでしょう。
 総合商社は、日本独特の業態です。大いに進化しつつ、発展して欲しいと願います。
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