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取材の可視化あるいは公開

 昨日、ある雑誌の取材を受けながら、これを録音か動画でネットにアップするとどうなのだろうか、と考えていた。

 取材のテーマは「ビジネスマンが経済・経営について学ぶのに適した書籍を薦めて下さい」というもので、順番を付けて、20冊紹介した。1番目はこの本で、理由はかくかく、と20冊について90分くらい話した(一応、まとまった話をしたと思う)。ちなみに、ベスト3は、1.フリードマン「資本主義と自由」、2.ウェルチ「ウィニング 勝利の経営」、3.ドラッカー「経営者の条件」で、それぞれ、経済、経営、自己啓発分野の役立ち書籍ナンバーワンだ(但し、ウェルチの本は、読み方にコツと注意が必要だが)。

 さて、取材を受けながら考えたことの1番目は、暇な人がネット経由で見聞きすると、単純にためになるかも知れないということだった(価値は視聴者が判断すればいい)。問題は、書籍(雑誌)の売り上げに対する影響だが、90分時間をかけて視聴するよりも2ページ(?)眺めるほうがいい人もいるだろうし、興味を持って雑誌を買う人もいるだろうし(たとえば、他の人の記事も見たいだろう)、帳尻は宣伝効果のプラスが効いてプラスになるのではではないか。

 もう一つ考えたのは、雑誌を見て、もっと詳しい話しを聞きたいと思った人に対して、ネットに取材の際の音声や動画があると補足説明になることだ。誌面に載らない情報も届けることが出来る。スペースに制限がある紙の記事を補完することが可能だ。

 加えて、今回の取材では問題にならないと思うが、取材を受け掲載記事を見た時に「私は、こんな話しをしたつもりはないのに」と思う場合に、取材の記録があれば、証拠になるというメリットもある。一定の意図やバイアスのかかった取材も現実にはあるので、取材される側が身を守るには記録が有効だ。記録があって、公開が可能なら、いくらか気楽に取材を受けることが出来る。これからは、取材を受ける側が「録音していいですか?」と相手に許可を求める時代になるかも知れない。

 別に「オレの話は面白いから、直接伝わらないのは、もったいない」とまで考えた訳ではないが、「取材→記事」という作業に一手間加えるだけで、(1)ネットによる宣伝(無料)、(2)より詳細な情報の伝達(有料化も可能かな?)、(3)取材に関する証拠の保存、といったことが、やろうと思えば可能なのだな、と思った。あるいは、ビジネス的には(4)取材に立ち会いを許可する(有料で、あるいは会員に)という選択肢もあるか。

 ビジネスとして考えると、「評論家」も、原稿を書いたり(紙の本が高い値で売れる時代では無くなりつつある)、講演をやったり(景気に左右されるし、スポンサーの影響を受ける)、ということばかりではなく、別種のビジネスモデルを考えることが可能(且つ必要)なのではないか。たとえば、facebookをプラットホームにして、こうしたモデルのビジネスが可能になるかも知れない。
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グルメ今昔

 画像の「五傑そろい踏み」は、筆者が高校1年生、つまり37年前頃に流通していた、映画監督、山本嘉次諸さんの「東京食べ歩き地図」の巻末に載っていたものだ。当時、著者は札幌の高校生だったが、駿台の夏期講習を理由に上京して、食べ歩きを試みた。といっても、当時はまだまだ子供で、そんなにお金を持っている訳でもないので、コーヒーと蕎麦を中心に、あとは、うなぎやとんかつを食べたくらいのものだった。

 蕎麦は、今となっては、藪蕎麦よりも美味い店がたくさんあるような気がする。しかし、コーヒーは、好みの問題もあるが、未だにカフェ・ド・ランブルよりも美味いと思うコーヒー屋はない。とんかつ屋は、蓬莱亭や本家ぽん多は、まだまだ東京のとんかつ屋では第一線の範疇だろう。うなぎの野田岩、尾花も格付ならばAAはあっていいと思う。

 随分変わったな、と思うのはラーメンだ。全国的にラーメンに凝る文化が育まれて、東京でも様々なラーメン屋が栄えている。当時の東京のラーメンは貧しいものだった。札幌のラーメンと東京のラーメンは大差で札幌のが美味いと思っていた。だが、今は分からない。まだ札幌の方が美味いのかも知れないが、確信は全くない。東京では各種のラーメンがしのぎを削っていて、ラーメンが評論の一ジャンルとして確立された趣がある。今や、雑誌を見ると、株価や株式の銘柄よりもラーメン屋の話題の方が多いくらいだ。

 30年以上前のグルメ情報は、価格と味のバランスを取っているとの触れ込みだが、要は、著者が個人的に知っている店をリストアップしたのだろう。近年の網羅的でしばしばネットによる多くの人の意見を反映したランキングの方が、情報としては有用なのかも知れないが、一人の通人が自分の好みにまかせていい店を紹介したリストにも捨てがたい味がある。

 ブログで飲食店を紹介するのは、一つにはネガティブな意見を書きにくいことと、もう一つには食事中に食べ物の写真を撮るのが食事マナー的に冴えないことの二つの理由であまり積極的にやってこなかったが、最近は、時々ならいいのかなと思うようになった。さて、どこから紹介しようかな・・・。
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若者に「モーレツ社員」と「ごますり」の方法を教えるべきか?

 ムン・ヒョンジン「サムスン式 仕事の流儀 ~5年で一流社員になる」(吉原育子訳、サンマーク出版)という本を読んでみた。

 日本でいうと30年前に存在した「モーレツ社員」と「ごますり男」になるための具体的な方法とそれがいかにメリットのあることなのかが、具体的且つ論理的に臆面も無く書かれている。上司との付き合い方、役員のアテンド、顧客への贈り物、飲食のマナーにドレス・コード、書類の作り方、出張の準備など、たぶん、現在45歳以上の日本のビジネスパーソンには、おなじみのことばかりだ。率直にいって、当たり前すぎて参考にはならない。知ってはいるけれども、敢えてそうはしない、というようなことも多い。

 期待する若手社員になら、「君はここに書いてあるサムスンの社員像よりも、ましな人物になってね!」といいたいところなのだが、一方で、ちょっと待てとも思う。

 今の会社の上司や先輩社員は、この本に書いてあるような内容を、親切に、事細かに、後輩に教えることはないだろう(個人的には、わざわざそれをやらなければならないレベルの組織では働きたくないとも思う)。一つには先輩の側の照れもあるだろうし、もう一つには「ウチの会社は凄いのだ!」という高揚感がほとんどの会社にないからだ。ウチの会社で評価される人間になるには、こうしなさい、と後輩に教える先輩像が想像しにくい(或いは、そんな先輩は人間として面白くない人だろうとも思う)。

 たとえば、「ごますり」にしても「モーレツ社員」にしても、その原理と基本を知っていて、そうしないのと、単に嫌いだからそうしないのとでは、行動に差が出来る。自分が与えるイメージや人間関係の作り方も含めてビジネスの能力であるという考え方は知っておいてもいい。これらについて、日本人が書いた本は妙に精神論的になる傾向があるが、この本は、直接的且つ論理的だ。

 だから、申し訳ないけれども「つまらない」と思う一方で、この本は妙に捨てにくい。もしかしたら、これから社会に出る学生には貴重な「資料」であるのかも知れない。彼らにとっては、たぶん、一読の価値があるだろう。「モーレツ社員」と「ごますり」について能率良く理解するためなら、これはいい本だ。ただし、彼らには、会社に入ってからこの本を再読するような人にはなって欲しくない。一度読んだら、考え方だけ覚えて、捨てて欲しい。学生に紹介するなら、注釈付きで紹介すべきだろう。

 さて、学生に紹介すべきだろうか。止めておくべきか。今の段階ではまだ迷っていて、この本を、捨てるか(自分のためなら躊躇なくそうする)、スキャンして保存するか(後で取り上げる可能性があればそうする)、本のまま保存するか(学生に紹介するなら本があった方がいい)、結論が出ていない。
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