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亀田・ランダエタ戦を見て思ったこと

私も亀田勝ちという採点はなかろうと思いました。

昨晩と今朝に分けてVTRを見た私の採点では、117-112でランダエタの勝ちです。1ラウンドはダウンがあるのでルール上は10-8、その後、8ラウンドまでは一進一退で、この7ラウンドを亀田が4つ取っていたとして、9ラウンドから12ラウンドは全てランダエタが取っているので、先のスコアになります。

ランダエタとしては、終盤に、これだけハッキリ取っていれば大丈夫だと思ったことでしょう。なぜ倒せなかったか、という疑問もありますが、かなり力の差があっても、無理に倒しに行って、倒し損なって自分がガス欠(実際には足りないのは酸素で、筋肉には乳酸が溜まる)になるリスクもありますし、カメというだけあって、亀田選手のガードの外側は堅い(内側にはアッパーを入れるスペースが頻繁にあるが・・)ので、何が何でも倒すというのは、大変な話です。ランダエタは、「まさか、これで、負け?」と思っているかも知れませんが、敵地でのタイトル戦は、倒さなければ勝てない、と覚悟するべきなのでしょう。厳しい世界です。

TBSの意を受けてか、解説の鬼塚氏が、亀田のパンチの方が効いているというようなことをしきりに言っていましたが、何を見ていたのか。ランダエタは最後まで顔が綺麗だったし、ボディーもそう効くような打たれ方をしていませんでした。その証拠に、11ラウンド目にふらふらになって、何度もクリンチしたのは亀田選手であり、ダメージの差は明らかでした。TBSは判定後に、一度もランダエタ選手を映しませんでしたが、まあ、亀田物語に忙しかったとしても、彼我のダメージが違いすぎて映せなかったのでありましょう。

亀田とランダエタの実力差は、かなりのものがあるのではないでしょうか。亀田選手は装甲車のようにガードを上げてプッシュしましたが、ランダエタはそう頻繁にロープにつまらなかったし、つまっても、殆どクリンチ無しに体をかわしていました。これは、亀田選手のラッシュに、カラダを押す力はあっても、パンチの威力がないことの証拠ではないでしょうか。ランダエタは、「怖くない」と思っていたはずです。

もっとも、ランダエタもそんなに優れた選手だとは思えません。彼は、右のガードが下がるという明らかな欠点があり、当て方は上手いけれども、パンチは手打ちです(良く言えばモーションが小さくて避けにくい)。しかも、強く打とうとすると、パンチが大きく外を回るので、避けやすそうです(これは亀田選手も一緒ですね)。ところが、亀田選手の1回のダウンは、この大回り右フックを浴びたのですから、格好が悪かった。

亀田選手は、体格・体力上の素質を認めるとしても、一番がっかりしたのは、パンチがないことです。前出のように、ランダエタは、右が下がるので、亀田選手の左ストレートが時々入りましたが、ランダエタがふらつくようなインパクトは一度もありませんでした。

これまでも、格違いの相手を一発でしとめるのではなく、ボディーで強引に倒していましたが、軽量級とはいえ、切れのいい一発パンチが無いようでは、素材として魅力がありません。

試合運びも、ガード(八の字ワンパターンで)を上げて押して行って、相手が疲れたらラッシュする、という単調な(ご本人も「ブサイクな試合」と言っていましたが・・)パターンだけなので、パンチ、テクニック共に、まだまだこれからなのではないでしょうか(パンチ力が急に育つとは思えませんが)。亀田選手は、口ぶりは派手ですが、試合振りは意外に堅実です。

それにしても、このホームタウン・ディシジョン(現地有利の判定)はいただけません。試合内容は、昨年フランスで行われた、ロレンソ・パーラ(ベネズエラ)とブライム・アスローム(フランスのゴールデンボーイ。五輪金メダリスト)ほどは離れていなかったかも知れませんが、あの試合が、ロレンソ・パーラのフルマーク勝ちであったことを思うと、今回の日本というか興業サイドのやり口は、「やり過ぎ」でしょうし、かえって逆効果になったようにも思います。もっとも、ビジネス的には、これでアンチ亀田ファンが増えて、妙に盛り上がるかも知れませんが・・。

亀田選手の次の試合の相手は、今回のタイトルを返上して一階級上げて、WBCフライ級チャンピオンのポンサクレック(タイ)でしょうか。彼は、一発で倒すような危険なパンチがないので、亀田陣営好みです。WBAのロレンソ・パーラは上手くて狡くて強いので、陣営は、彼とはやりたくないでしょう。亀田が本当に強ければ、WBCライト・フライ級のブライアン・ビロリア(ハワイ出身。パンチ有り!)と統一戦を組むところでしょうが、これはどう見ても勝ち目がありません。ちなみに、日本が認めない団体のフライ級チャンピオンは、ホルヘ・アルセ(メキシコ。人気者でファイター)、ビック・ダルチニャン(アルメニア?。たぶん同級最強の倒し屋)で、共に面白い試合を見せるので、見物人としては、彼らとやらせたいところですが、現時点では、「非人道的ミスマッチ」と言えそうです。

ところで、ボクシングの採点でいつも思うことですが、形ばかり第三国からとはいえ、今回のように興業サイドが審判にお金を払うわけで、採点が怪しくなることは今後もあると思うのですが、ジャッジ毎の採点を毎ラウンド終了時に公開したらどんなものなのでしょうか。これなら、ポイントが足りない側は必死になるし、ポイントの見込み違いで逃げて試合を落とす(デラ・ホーヤとトリニダードの試合のデラ・ホーヤみたいに)、といった後味の悪さもありませんし、余りにおかしな採点をするジャッジには、途中からブーイングが出るでしょう。また、点差が離れて、相手をノックアウト出来ないとなれば、早く諦めるでしょうから、選手のダメージも少なく済みます。

私は、怪しい判定の試合を見る度に、上記のようなことを思うのですが、「これがいい」とも思う一方、点数が分かると、粉飾してでも決算をごまかそうとする経営者のごとく、劣勢の選手が必死になって、ボクシングの試合があまりに危なく、また凄惨なものになってダメかも知れない、とも思います。

毎ラウンド採点を公表するとどうなるのか、どなたか専門家のご意見を伺いたいところです。

それにしても、多少の現地選手有利は仕方がないとしても、プロの格闘技の中でも、せめてボクシングはスポーツとして見たい、と思っている私のようなボクシング・ファンには、今回の亀田選手の試合は残念な試合でした。
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