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投資番組として「スーパー競馬」を見る

フジテレビ日曜午後3時からの「スーパー競馬」は、ほぼ毎週見る番組だ。私は、週のテレビの視聴時間がトータルでだいたい5-6時間なのだが、その中の1時間弱を占める。私が、最初に見たダービーはシンボリルドルフのダービーだったから、もう20年くらい見ていることになる。

競馬も株式投資も、お金を使い、あわよくば儲けようと考える人が興味を持つ点がよく似ている。ところで、この毎週見ている「スーパー競馬」を株式投資番組の視点で見ると、なかなか「大変な」番組であることが分かった。

番組に登場する専門家は、株式投資に世界でいうと、アナリストか投資評論家のような立場だが、彼らは、堂々と「個別銘柄」(=具体的な馬)の名前を挙げて、良し悪しを言う。しかも、「ディープインパクトから馬単二着流しで○▲・・・」とか「3,5,8,9番の馬連ボックス」といった調子で、「投資配分」まで言うではないか。また、専門家ばかりでなく、女性司会者も予想を述べ、買い目を提示する(それにしても、馬の名前や数字はもう少しきちんと読んで欲しいなあ・・)。

個別銘柄の判断をテレビ番組で伝えるには、十分な根拠(証券会社のアナリストの分析など)がないと、視聴者のクレームに耐えられないし、そもそも、個別の売り買い判断を伝える事に対して、テレビ局は消極的だ。しかも、投資の配分まで言うのだから、株式投資であれば、投資顧問業法の問題があるかも知れない。

加えて、こうした「情報」が流されているのは、馬券が買える時間であり、株式市場で言えば、出来高の多い、ザラバ中である。最近は、PCや携帯で馬券を買えるIPATなどで自宅に居てテレビを見ながら、馬券を買う競馬ファンが多いだろう(私もそうだ)。現実に、テレビで何と言ったかによって、オッズが動くこともある。投資番組で言えば、番組が、株価に影響を与えているのだ。

しかも、番組を見ていると、出演者達は自分で馬券を買っているようであり、その事を隠さない。隠さないばかりか、それをネタにした話題もある。株式投資番組であれば、インサイダー取引として大問題になるだろう。

しかし、番組全体は明るいし、競馬という題材を楽しませることに成功している。

各種の法律の問題を別とすると、競馬情報番組と、株式情報番組に、本質的に大きな差はない。前者は、オッズが実現するか否かにレースが介在する点が、オッズそのものの変化に賭けるような株式投資と異なるが、たとえば、番組の内容でオッズを意図的に動かすことで、何らかの収益機会が生じることは同じだ。お金の損得に直結している点も同じだ。

競馬評論家の場合「普通は外れるものだ」(吉田さん、井崎さん、ごめんなさい!)という了解があるから、「馬券の購入はご自身の判断で」とテロップを入れなくてもいいのか。だが、考えてみると、アナリストやファンドマネジャーの能力も、投資成績で正しく評価する限り、競馬評論家と変わるものではない。テレビ番組で、個別の株式について話すことに関しても、もっと大らかでいいのかも知れない。

もっとも、「どうせ外れるのだし・・・」という前提条件で、誇り高き金融マンたちがテレビに出て、自分の見解を話してくれるかどうか。また、「それでも話したい」という自称評論家などの専門家の中には、アブナイ(色々な意味で)人も入ってくることだろう。

ただ、どうせ外れるかもしれないという前提の下で、金儲けや情報を大いに楽しむという競馬番組のあり方は、投資番組を考える上で参考になるように思う。「儲けるための」「有益な情報を届けます」とかしこまっている間は、投資番組は面白くない。投資に関わる情報そのもの、あるいは運用そのものを「深く楽しませる」番組が見たい。
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