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【告知】「確定拠出年金の教科書」一部修正します

 6月9日に「確定拠出年金の教科書」(日本実業出版社)を上梓しました。地味なテーマということもあり、売れ行きを心配していましたが、先日、増刷の連絡がありました。有り難いことです。
 本来なら、増刷のタイミングで誤植等の修正を加えるのですが、1点だけ、修正が間に合わなかった箇所がありました。この場を使って告知できればと思います。

 掛け金が全額、非課税になるという箇所で、会社員の企業型DC加入者を事例に説明していますが、これを、個人型の加入者である自営業者の例に置き換えたいと思います。
 企業型の場合、実際に掛け金を拠出するのは事業主であり、加入者本人が非課税になるのは、「マッチング拠出」で拠出した掛け金の額に限られます。修正前の説明では、掛け金全額が控除の対象になるかのように書かれていましたが、これは正しくありません。「図表1-1」の数値を含め、下記の通り修正したいと思います(金融ジャーナリスト竹川美奈子さんにご指摘頂きました。有難うございます)。

■該当箇所:p19~p21

〔第1のメリット〕
掛け金が全額「非課税」になり、所得税や住民税が減る

■修正後の内容

 確定拠出年金では、通常は毎月決まった金額を掛け金として拠出する。個人が掛け金を拠出する「個人型」の場合、金額は後から変更可能だ。「企業型」(詳細は63㌻参照)では個々の企業の制度による。これを日々運用していった成果を老後に受け取る。

 税金のメリットの1つ目では、この掛け金が全額、非課税になる(企業型の場合は、加入者が拠出した掛け金の全額)。所得税は、所得が大きくなるほど税金の額も大きくなる。確定拠出年金では、拠出した金額を差し引いて「圧縮」された所得額を元に、納める所得税の額を計算することが出来る。また、住民税も所得が対象になるので、計算の元になる所得が確定拠出年金の掛け金分だけ圧縮されると、税額が減少する。

 具体的な数字で見てみよう。
 ここに、課税対象となる所得が400万円になる自営業者がいるとしよう。この場合、適用される所得税の限界率は20%であり、住民税と合わせた納税額は78 万5300 円となる(次㌻図表1-1)。ところが、彼(又は彼女)が個人型の確定拠出年金の加入者であり、毎月6万8000円、年間81万6000円を掛け金として拠出していたとすると、この額は大きく変わってくる。因みに、月額81万6000円は、自営業者等の国民年金第1号被保険者が拠出出来る最高額だ。

 この場合、課税の対象となる所得の金額は、確定拠出年金の拠出額81万6000万円を差し引いた318万4000円となる。ここから所得税と住民税を改めて計算し直すと、税額は54万8900円となり、1 年間で23万6400円もの税金を「節約」出来るのだ。

 後で述べる企業型の確定拠出年金の加入者の場合、掛け金を拠出するのは事業主であるため、この段階では大きな節約にはならない。しかし、「マッチング拠出制度(63㌻参照)」を利用して、加入者である従業員が事業主の掛け金に上乗せして拠出した場合、この分の掛け金については、個人型同様、全額が非課税になる。

 この「節税」によって得られる金額と同じだけを株式投資によって手に入れようとした場合、仮に、運用期間中一定して5%のリターンが得られるとして計算すると、1年で23 万6400 円の運用益を得るには、元金として472万8000 円もの資金が必要だ。しかも、株式投資は、必ず期待通りのリターンが得られる訳ではない。当然ながら、マイナスになる可能性もある。

 非課税によって「確実」に節約出来るという確定拠出年金の威力は、金融の世界において、どれだけ「まれ」で「貴重」なものなのかが想像できよう。

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確定拠出年金◆理想の商品ラインナップの考え方

 先日、ダイヤモンド・オンラインに確定拠出年金について書きました。

 私自身は、「個人型」の確定拠出年金が、もっと充実した制度になって、広く普及することが望ましいと考えていますが、現行制度では、企業単位で普及する「企業型」の方が現実的なのでしょう。
 今回の「確定拠出年金、理想の運用商品ラインナップを考える」では、もし自分が確定拠出年金の導入担当者だったら、どんな運用商品のラインナップを作るのがいいか、という視点で書いています。「確定拠出年金の「望ましい」ラインナップ(山崎案)」の具体的な選択肢については、ダイヤモンド・オンラインの掲載記事をご覧頂くとして、ここでは、その選択に至る考え方について書こうと思います。

 まず、確定拠出年金は加入者の老後の生活を支える大切な資金ですから、手堅い運用が求められます。
 とは言え、元本確保型の商品の利回りでは、老後に大きな不足が生じるケースが殆どでしょう。それでは、元本確保型商品より期待リターンが高い、リスクのある運用商品を容用意すればいいのかと言うと、こうしたリスクのある運用商品を揃えるには、十分な情報提供と投資教育が必要になります。
 運用商品のラインナップには、加入者に十分な情報提供ができるかどうかという点が、重要なポイントになってきます。

 次に、確定拠出年金の商品ラインナップに必要な条件について考えてみましょう。

【良い確定拠出年金の商品ラインナップ3原則】
原則その1.選択肢の数が多すぎないこと
 ・理想的には1桁の本数に留める
 ・加入者が欲しがる商品を全て揃えるよりも、加入者が間違える可能性を減らす方がより大切である
 ・運用商品は、事務局が完全に理解して、情報提供が出来る(質問に対する回答も含めて)商品のみを選ぶ

原則その2.内容が分かりやすいシンプルな商品であること
 ・加入者にリスクの大きさや内容を示すことができ、且つ過去の実績がある商品
 ・資産配分のベンチマークとなる指数をターゲットにするインデックス・ファンドが現実的であると同時にベストの選択肢
 ・バランス・ファンドは、制度や税制上の点で確定拠出年金には向かない

原則その3.手数料コストが低いこと
 ・運用手数料(投資信託の場合、信託報酬)は、会社にとっても、社員にとってもコストであると心得よ
 ・手数料は、年率25ベイシス・ポイント(1ベイシス・ポイントは1パーセントの百分の一)以内に抑えるのが好ましい(この面からも、アクティブ運用の商品は選択肢から除外される)

 また、確定拠出年金の運用は、「全体の中の一部として、最適化する」と考えると、スッキリと理解し、適切に意思決定することができます。
 導入時に必要な、制度の説明や、個々のアセットクラス、運用商品のリスクとリターンの説明などに加えて、「確定拠出年金の合理的な使い方」の情報提供を、できれば、なるべく早い段階から行うのがよいでしょう。
 個々の加入者の確定拠出年金の資産額は小さいが、運用に必要なリスクの理解と判断のツボは、大きな年金基金と本質的に変わりません。間違える余地の少ない、無駄のないラインナップの提供と、ツボを押さえた情報提供が大切です。

→「確定拠出年金の「望ましい」ラインナップ(山崎案)」の詳細はこちら。ダイヤモンド・オンライン「確定拠出年金、理想の運用商品ラインナップを考える」



【補足】この原稿は、ある確定拠出年導入予定企業へのコンサルティングをきっかけとして、私の考えを文章にまとめたことから派生したものです。同企業に感謝するのと共に、「まずまず満足のいく商品ラインナップが出来そうだ」という印象を得て気分を良くしたことを付記しておきます。
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【ダイヤモンドオンライン】確定拠出年金を効率的に生かせ!

 先週、ある大手家電メーカーの依頼で、この会社の確定拠出年金の有効な使い方について講演した。今週のダイヤモンドオンラインの連載では、このときの「楽しかった」講演の話題とともに、確定拠出年金について、他社の確定拠出年金加入者にも役立ちそうな、具体的なアドバイスを載せてみた。

 確定拠出年金は、爆発的とまではいえないが、着実に普及が進んでいる。先般、NTTグループが9万人の社員が対象となっている規約型企業年金を確定拠出年金に移行することを労働組合に向けて提案したことが報じられた。
 しかし、確定拠出年金の制度だけが普及しても、加入者がそれを有効に活用してくれなければ、将来の加入者の満足度が低かろうし、企業としても従業員に十分有効な形でお金を渡したことにならない。

<年金としての確定拠出年金>
 先ず、加入者の立場で、確定拠出年金の意味を考えておきたい。
 そもそも、「年金」とは何か。老後の備えとなる資金のことだが、制度としての年金の意義は、煎じ詰めると、(1)節税された資金運用手段、であることと、(2)長生きへの保険、の2点だ。但し、日本では後者を担うのはもっぱら公的年金で、確定拠出年金の加入者にとっての意味は「節税された資金運用手段」の方だ。

 加入者にとっては、掛け金が所得控除されることの節税効果が先ずは大きいし、次に運用益が非課税になることの効果も大きい(通常の運用では20%も課税される)。

 先ず、この段階で、少なくとも十分な収入のある人は、確定拠出年金を使わないのは「もったいない!」し、掛け金の大きさを選ぶことができるプランの場合は、自分が使える上限の金額まで使うことが「得!」である場合が多いと説明できる。

<確定給付年金(DB)と確定拠出年金(DC)の違い>
 また、年金には大別して、DB(Defined Benefit)とDC(Defined Contribution)、すなわち確定給付型(DB)と確定拠出型(DC)の年金がある。これは、企業年金の場合でも同様だ。
 従業員の立場に立つと、年金だけを考えるなら、企業側で運用リスクを負って将来の支払いを約束してくれる確定給付型年金の方が有り難いかも知れない。加えて、率直にいって、DBからDCに移行する場合、DCの想定利回りはDBのものよりも相当に低い場合が多く、年金が実質的に減額されていると見ることができる場合が多い。
 しかし、好条件のDB年金に固執すると、企業に過大なリスクとコストを追わせることになり、結局、将来の給与やボーナスが圧迫されたり、経営が傾いたりもする(数年前、金融危機に加えて年金の重みで米国のGMが倒れたことは記憶に新しい)。

 そもそも、確定給付の企業年金は、大半の企業とその株主にとって合理的ではない。筆者が、講演させて貰った会社も、エレクトロニクスの技術はあっても、少なくとも運用会社ではない。株主にしてみると、この会社の技術やビジネスに投資しているつもりなのに、数千億円、あるいは兆円単位の資産運用のリスクが株式に付随することは余計というしかない。

 DBからDCへのトレンドは経営合理的であり、DCの場合、自分の財産の額と受給権がはっきりしているメリットがある。また、転職の際に持って歩くことが出来るので(「ポータビリティ」と呼ぶ)、人材の流動化にも対応できる。

<確定拠出年金の運用原則>
 確定拠出年金の運用選択肢の選択と資金配分は、「好み」や「相場観」からではなく、あらかたを論理的に決めることができる。
 確定拠出年金の運用を原則として述べると以下の通りだ。

(1) 自分の資金全体の運用計画を決めて、確定拠出年金にその一部を割り当てる。
(2) 割り当てにあたって考慮すべきは、第一に「運用益非課税のメリットが生きる期待収益率の高いもの」、第二に「通常の運用商品よりも安い手数料で買える商品があればそのメリット」、の2点。
(3) 1資産1商品でシンプルなものを選ぶ。
(4) 同じリスク内容ならコストの安い商品を選ぶ。

 ちなみに、自分の運用計画の立て方としては、損をした場合の損失額と期待リターンを勘案した上でリスク資産に投資する額を決め、残りを(ほぼ)無リスクな資産で運用することとし、リスク資産は内外の株式インデックス・ファンドに概ね半々に投資する簡便法を紹介した(詳しくは、たとえば拙著「超簡単 お金の運用術」(朝日新書)などをご参照下さい)。

 具体的なプランは、図も交えて連載の方で詳しく紹介しているので、そちらをご覧頂いた方がよいだろう。大まかな流れとしては、自分の資産全体についての運用計画を作成したのち、[新興国株式]→[外国株式]→[国内株式]の順で確定拠出年金に割り当てる。そして、残ったリスク資産投資枠は、別途自分で運用する、といった具合だ。

 「新興国株式」にどれくらいの期待リターンを想定するか、といった辺りで個人差が出る可能性があるが、自分では株式や投資信託を持っているのに、確定拠出年金では元本確保型の商品に資金配分しているというようなちぐはぐな運用は合理的でないと分かると、確定拠出年金の有効利用が進むのではないだろうか。

 これからも、機会があれば、確定拠出年金の具体的な使い方をアドバイスする仕事をしてみたいと思っている。
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【東洋経済オンライン】黒田日銀は、どこまで市場を「操作」できるか

東洋経済オンラインの「競馬好きエコノミストの市場深読み劇場」というコーナーに、『山崎 元が読む、「ちょっと先」のマーケット』というコラムを書いています。

本日、「黒田日銀は、どこまで市場を「操作」できるか」というタイトルで、最近の黒田日銀総裁の発言を検討してみました。また、コラムの規格に従い、文末で、今週末の皐月賞の予想を書きました。

 黒田総裁については、4月4日に発表された日銀の政策決定会合後の記者会見での「リスクプレミアムにはまだまだ圧縮できる余地がある」との発言が意味する実質的な「株価目標」論と、また、4月10日に行われた大手新聞によるインタビューでの発言から読みとれる「3つの不安材料」から、今後に想定し得るシナリオについて考えてみました。
 4月4日に発表した緩和策パッケージが、暗黙の操作目標である為替レートと株価に対して大きな効果を発揮して、今のところ自信満々であろうと推測される黒田総裁ですが、記者会見やインタビューを読むと、所々に将来の不安を感じさせる(財務官僚臭い…)発言があります。
 組織論的に難しいとしても、理想的には「岩田規久男総裁」だったかな、と思う次第です。
 相場については、「アベノミクス相場」が直ぐに終わるとは思っていませんし、書いてもいませんが、当面の「中だるみ」リスクを少し心配しています。

 たまに予想を載せて、ここでも恥をかいてみましょう。
 皐月賞の予想は、◎ロゴタイプ、○エピファネイア、▲コディーノ、△コパノリチャード、△タマモベストプレイです。理由は、記事を読んでみて下さい。
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【ダイヤモンド・オンライン】黒田日銀の「目標株価」を推測する

 久しく休んでいた、原稿の紹介を再開することにした。あちらこちらに書いた原稿の全ては紹介できないだろうが、なるべくマメにご紹介していきたい。

 4月9日アップのダイヤモンド・オンラインに、「黒田日銀の「目標株価」を推測する」という記事を書いた。

 4月4日、日銀は、黒田東彦総裁が「これまでと次元の違う」と表現する大胆な金融緩和政策を発表した。資本市場には「猛烈」といっていいくらいの効果が表れたが、筆者の驚きはむしろ、政策よりも、黒田総裁の記者会見の発言にあった。日本銀行ホームページ「総裁記者会見要旨」(4月5日付け)から引用しよう。「…そこで、今のリスクプレミアムの状況をみると、まだまだ圧縮できる余地があるということで、ETFの保有額を 2 倍以上増やそうと決めたわけです」

 この発言は、分かりやすく言い換えると「現状の株価は安すぎるので、ETFを買って株価上昇を目指すことにした」となる。「株式のリスクプレミアムを圧縮する」とは、「株価を上げる」と言っていることに等しいのだ。これを、日銀総裁が言うのだから、驚いた。

 率直にいって、為替レートと並んで株価は、「アベノミクス」の初期の重要な波及経路の一つであり、黒田氏個人も組織としての日銀も、為替レートや株価の具体的な水準を意識していないなどということは「考えられない」。

 では、黒田総裁は、どのくらいの株価が適正だと考えているのか。
細かい計算式やデータの引用などは、掲載記事を読んで頂くとして、記者会見前日の株価(12,362円)と、東証一部の今期予想利益に対するPER(21.5倍)から算出される利益の利回りは4.65%だ。ここで、「圧縮の余地」がどのくらいなのかは総裁ご本人から聞かないと分からないが、仮に、「『まだまだ』というくらいだから、2%くらいは可能だと思っているのではないか」と考えると、益利回りは2.65%ということになる。

 すると、計算上の株価は、「リスクプレミアム2%の圧縮」に対して日経平均で21,691円。また、現在の予想利益に対しては、PERで37.7倍となる。加えて、利益の上方修正が伴うと、株価はもっと上昇する可能性がある。どれくらいの期間でかは分からないが、日銀はこの程度の株高を目指している可能性が十分あるのではないだろうか。

 黒田総裁の「まだまだ圧縮できる余地がある」をどの程度と見るか、また、そもそも黒田総裁の見解をどう評価するか(信じるか否かも含めて)は、もちろん読者次第だ。
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【週刊ダイヤモンド “マネー経済の歩き方”】アップル的な人気銘柄とどう付き合うか

 紙媒体に書いた原稿の紹介は難しい。執筆・送稿と掲載までの間に何日もかかるので、書いた印象が残っているうちに紹介できない。掲載前の原稿の内容を紹介することについては、信義上の問題がある。
 「週刊ダイヤモンド」のマネー関係の1ページ連載は、途中連載タイトルを変えながらも書き続けて、現在13年目になるはずだが、現在発売号中の号に載っているのは、「アップル的な人気銘柄とどう付き合うか」というタイトルの文章だ。グラマー・ストック(市場で人気を集めて、時価総額も大きな銘柄)に対する投資の姿勢について書いた。
 率直にいって、運用マンとしての私は人気銘柄の後追いが好きではないが、プロの運用者の場合、人気銘柄を完全に外すことは不適切な場合が多いし、また、ポートフォリオの中には「自分の嫌いな銘柄」を持つことが多くの場合大事だ。ただ、私が現在ファンドマネージャーなら、個人としてアップル社の製品はたくさん買うとしても、アップル株は市場ウェイトよりもアンダーウェイトにすると思う。
 もちろん、それが奏功するかどうかは、「運を用いるから、運用」というくらいの世界の話なので何ともいえない。
 尚、この号の「週刊ダイヤモンド」は、「カメラ激変!」というタイトルの特集だが、経済問題として読んでも、カメラ好きのための一風変わった情報(「アサヒカメラ」などとは違った情報)として読むとしても読み応えがあって、なかなかいい。

 ところで、iPhoneはしばらく4Sで我慢するつもりでいるのだが、さて、いつまで我慢できるだろうか…。
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【ダイヤモンド・オンライン“山崎元のマルチスコープ”】谷垣氏、細野氏の「残念」について

 今週の「ダイヤモンド・オンライン」では、事情は随分違いますが、共に党首選に立候補しなかった、谷垣禎一氏と細野豪志氏を取り上げてみました。
(http://diamond.jp/articles/-/24643)
 党首選が盛り上がってくると別の人に注目が集まって辛いネタなので、水曜日UPはギリギリのタイミングでした。
 今回の中心的なテーマである、谷垣氏、細野氏のどこか「勝負弱かったのか」については、拙稿をご参照頂くとして、原稿を書きながら考えてみると、トップに立つチャンスを逃したとはいえ、谷垣氏も細野氏も、組織内にあってはかなりの「出世」をしており、この理由に興味が湧いてきました。
 谷垣氏は、真面目な人柄とお見受けするが、頭がキレる!というわけではなさそうだし、政治家としては人付き合いが良くないと言われている。また、細野氏は、恵まれた体格と優れた容姿を持っていると思うが、首相候補にはいかにも若いし過去に女性問題で一頓挫あった。彼らは、なぜ今のようなポジションに就けたのだろうか?
 たとえば、サラリーマンになぞらえると、お二人はかなりタイプが違うように思います。谷垣氏は、真面目だけど社内派閥形成の下手なこともあり「警戒されない」ことがプラスに働いて副社長まで行って、その後、副会長に棚上げされてしまうタイプでしょうか。ご本人も、将来の衆議院議長候補の一人でしょう。細野氏は、挨拶の声が大きくて万遍なく年長者受けのいい「ジジ殺し」型の組織内エリートでしょうか。彼は、またチャンスがあるかも知れません。
 サラリーマンとしては、彼らから、失敗の原因よりもむしろ、出世の秘訣を学ぶと有意義なのではなのかも知れません。
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子供の頃の思い出(1)【正しいいじめっ子の三箇条】

 先週の「日刊現代」の「私の秘蔵写真」という連載にインタビューを載せて貰った。最近発見された、小学校入学前に写真館で撮った写真をお見なせしながら、あれこれ子供の頃の話をした(尚、記事中、小4で旭川から札幌に引っ越したことになっているが、これは、「4歳になる直前」の間違い。入学した小学校は札幌の平岸小学校)。
 幼稚園中退であるという話や、小中学校時代は、学校になじめなくて自分としては「暗黒時代」だったという話や、それでも親にはかわいがられていたのだなと写真から分かる、というような取りとめのない話をした。
 子供時代の話といえば、ここしばらく、「いじめ」に関する話題が多い。少し前、「朝日新聞」には、元いじめっ子(やいじめられっ子)からの、ありがたい談話がシリーズで掲載されていた。
 私は、子供の頃、8割いじめっ子で、2割がいじめられっ子、とくらいの感じで暮らしていた。当時は、いじめという言葉はあまりポピュラーではなかったが、近所の子供や同級生をずいぶん泣かせた覚えがあるし、何度かは保健室に送ったり、父親と一緒にいじめた子供の家に謝りに行ったりしたことがある。他方、よく「仲間はずれ」の対象にはなったので、いじめられていないということでもない。
 子供には、攻撃的な側面があるし、時には残酷でもある。決して、先天的に純真な訳でも、絆を愛する平和主義者なのでもない。度を超した「いじめ」は、親・警察・学校(責任の優先度はこの順だと思う)の責任で排除しなければならないが、喧嘩やいたずら、心を傷つける言葉、などを、全て排除することは不可能だと思う。また、これらを肯定・推奨する訳ではないが、子供時代の加害・被害の経験によって、物事の「加減」を覚えるという面もある。

 とはいえ、被害側はたまらない感じがするはずだし、子供の頃から加減は大切だ。私は、現在、いじめられた側への有効なアドバイスを持っていないので(やっぱり、大勢としてはいじめっ子だったのだろう)、現役のいじめっ子に、誇りあるいじめっ子として胸を張るための、「正しいいじめっ子の三箇条」を述べてみたい。

【正しいいじめっ子の三箇条】

(1)連(つる)んで攻撃しない。
 力とプライドのあるいじめっ子は、一人で仕事(喧嘩、いたずら、などの攻撃行為)をする。攻撃に、他人の力を借りるのは、格好の悪いことだと心得よ。

(2)自分よりも弱い者を攻撃しない。
 明らかに弱い相手、降伏している相手を攻撃してはいけない。多くの場合、児童・生徒にとって、最適ないじめの対象は「強そうにしている先生」であると心得よ。

(3)しつこく攻撃しない。
 物事一般にあって、「しつこい」事は美しくない。降伏した相手や、(他人が見ても)明白に弱っている相手を攻撃し続けてはいけない。

 子供時代、そして大人になってからも、私が、これらを完璧に実践できたとはとても言えない。過去を振り返ると、心得通りに上手くできたケースと、反省点の残る「美しくない」ケースとが、共にぞろぞろある。
 子供時代に先生との相性で多々苦労したと思う私としては、良い教師いじめの見本例などを語って、現役のいじめっ子に一自慢したいところでもあるのだが、相手の先生はまだご存命かも知れないし、「しつこい」のはいけないとの心得を立てたばかりなので、止めておく。

 「正しいいじめっ子の三箇条」は、そのまま大人が守るべき心得でもあると思っている。

※「日刊現代」の記事中で述べた、小さい頃に私が登場した、北海道拓殖銀行のポスター(商品名は「すずらん定期」)が、その後に見つかった! 何れ、ご紹介しようと思う。なので、本エントリーのタイトルには「(1)」がついている。
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【夕刊フジ】”経済快説”

 サラリーマンが電車の中でよく読んでいる夕刊紙「夕刊フジ」の水曜日売りの号に、”経済快説”と題したコラムを毎週書いています(11字×100行)。こちらの方も、ついでがあったら、読んでみて下さい。
 テーマはその都度自由に決めており、ビジネス、経済、マーケット、運用などに関係するテーマから選んでいます。今週は、当ブログでも書いたLCCの話を書きました。
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【東京スポーツ】“マネーの知恵袋”

 私は、「東京スポーツ」というスポーツ紙の火曜日販売の号(表示は水曜日の号)で、「マネーの知恵袋」という小さな(11字×50行)コラムを毎週書いています。内容は、お金の運用に関係する知識を、なるべく簡単に書いています。今週は9月5日(水曜日)号の17面(終わりから4ページ目)に載っています。今回書いたテーマは「確定拠出年金の利用検討を」でした。連載としては、72回目になります。
 わざわざ私の小コラムを読むためだけに「東京スポーツ」を買う人はいないでしょうし、お勧めもしませんが、火曜日売りの東スポを読む機会があったら、探してみて下さい。
 尚、私は、東スポを主に競馬の情報源として週末に買っており、「西の仕掛け人」の異名を持つ上田巧巳記者のラップ分析のファンです。
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【現代ビジネス】…瀬戸際に追い込まれた日本家電メーカーに「目のつけどころがシャープ」な生き残りの…

 今週の「現代ビジネス」には、日本の家電メーカーが苦境を脱出する方法があるかどうかについて書いた。
(「最悪の選択は「霞ヶ関主導の対等合併」だ。瀬戸際に追い込まれた日本家電メーカーに「目のつけどころがシャープ」な生き残りの道はあるのか」http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33322)
 タネの一部を明かすと、大雑把に、マイケル・ポーターの「競争の戦略」の5つの競争要因の分析と、3つの基本的な競争戦略を参照して、状況と生き残り戦略の有無を論じてみた。
 端的にいって、日本では「大手」であっても、日本の家電メーカーが苦境にあるのは自然なことだし、常識的な競争戦略は、彼らの環境や社風を考えると、策定・実行共に難しい。普通に考えて、先行きは暗い。
 ではどうするかを考えなければならないが、最悪の選択は、たぶん、役所が主導して、「対等の精神」を建前とした経営統合・合併を行う業界再編だろう。
 私が考える戦略は、(世界的には中途半端なサイズの)大手電気メーカーを、商品・ビジネス・技術などの単位で多数のベンチャーに解体してしまうことだ。一つの狙いは「総合電機メーカー」の“総合の呪い”を解消することであり、別の狙いは、現在メーカーに囲い込まれている有能なはずの人材に潜在能力を十分発揮させることだ。
 短期的な雇用に関してはネガティブな効果があるかも知れないが、株主にとってはプラスになる可能性が大きいと思うし、ベンチャーの中から、将来のグーグルやアップルのような企業が出てくるかも知れない。
 日本経済の大きな弱点は、優秀な人材が大企業に囲い込まれてスポイルされて潜在的能力を腐らせていることだ。
 原稿を書きながらの思いつきで得た結論だが、案外悪くないと思うのだが、いかがだろうか。
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ダイヤモンド・オンライン 「バブルと金融政策の関係を整理する(前編)」

 一週間サイクル上、原稿の締め切りは火曜日に集中することが多い。今週は、ダイヤモンド・オンライン、現代ビジネス、週刊ダイヤモンドの締め切りがこの日だった。
 ネットに掲載される全二者は翌日にはアップされるので、水曜日に紹介しなければならないのだが、なかなか追いつかない。

 ダイヤモンド・オンラインでは、バブルと金融政策の関係について書いた。
(http://diamond.jp/articles/-/23570)
地味な話題で、読者の人気はないかも知れないが、大事な話だと思うので、今来週の二週間かけて前編・後編に分けて書く。

 金融の緩和は少なくともバブル形成の必要条件だが、バブルの多くはこれだけで生じるのではない。バブルの発生と成長のためには、「質の悪い信用拡大」が必要であり、これを可能にするのが、何らかの「リスクを誤認させる仕掛け」だ。これは、土地神話やネットの成長ストーリーのようなストーリーである場合もあるし、証券化商品のような金融のイノベーションである場合もあるし、規制緩和など制度の要因が関わることもある。

 1980年代後半に発生した日本のバブルでは、株価について、簿価分離での財テクを可能にした特金・ファントラ、さらに、これらの受託にあって利回りを約束した「握り」の慣行が、本来ならリスクのあるはずの株式運用のリスクを小さく見せて、且つ、市場にリスクマネーを供給して株価を上げる一方、質の悪に信用拡大をもたらした。
 今回の前編では、私が見聞した実体験も交えながら、この辺りの事情について書いた。
 次回の後編では、バブルの可能性と直面した時に、政策はどうしたらいいのか(特に中央銀行が)、について考えてみる予定だ。
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「休眠預金」にたかるシロアリに要注意!

 今週のダイヤモンド・オンライン「山崎元のマルチスコープ」では、「『休眠預金』は預金者に返せ」というタイトルで、休眠預金の活用をダシに新たな「シロアリの巣」(=余計な天下り組織)が作られることになるのではないかという懸念を書いてみました(http://diamond.jp/articles/-/21654)。

 名前からして胡散臭い「成長ファイナンス推進会議」のとりまとめ資料(7月9日付)を見ると、休眠預金の活用を検討することが書かれていて、資料の別紙には新機構のスキーム図が載っています。今年度に検討を終え、来年度に「必要な制度整備を終え」、2014年度から「休眠預金の管理・活用に向けた体制を構築」というスケジュール観のようです。
 注目すべきは、とりまとめ資料の本文中に、「休眠預金を一元的に管理する機構を設ける制度案を中心に検討する」と早くも書き込まれていることです。
 日経の記事によると年間にざっと500億円くらい使えるお金が生まれるらしい休眠預金を活用する「機構」を作りたい、ということのようです。
 ポイントは二点。
 先ず、仮に(百歩譲って)ベンチャーへの投資・融資などへの資金活用を行うとしても、対象を発見・審査するのは、民間がやった方が明らかにいいので、この「新機構」は不要だと指摘しました。必要なのは、休眠預金に関するルールの整備と公知であって、余計な新組織はいりません。この点に関しては、異論の余地がないと思っています。
 次に、休眠預金の発生経緯を考えると、これは預金者全体に返すのが筋ではないかと私は思います。家計の貯蓄性預金(ざっと500兆円)に1ベイシス利息を追加できます。こちらの方は異論があるかも知れませんが、薄くても、広く、公平に、ということです。

 もっとも、ルールに基づいて、広く、非裁量的に、公平にお金を配る政策は、官僚や業者のメリットが乏しいので、嫌われる傾向があり、預金者への還元は実現しそうにない、というのが私の「予想」です。
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当ブログの運営方針について

 7月12日に、Yahoo!は「Yahoo!ニュースBUSINESS」という新しいサービをスタートしました。私はこのサービスに参加することとなり、当ブログは、この「Yahoo!ニュースBUSINESS」のページからリンクされることとなりました。
 これを機に、今後の当ブログの運営方針を少々変化させることにしたので、直ぐには実行できない今後の希望的な予定も含めて、当ブログの運営方針として、私が今考えていることをご報告します。

(1) 長短様々なエントリーをなるべく頻繁に投稿する
(2) エントリーの話題は従来以上に多様にする
(3) 他の媒体に書いた原稿の紹介記事をなるべく載せる。多媒体に書いた記事との内容の重複は気にしない
(4) ブログのデザインを変える
(5) 管理者のプロフィールを更新する
(6) アフィリエイト等ブログを使ったスモール・ビジネスを導入する
(7) コメント、トラックバックに関する処理方針は従来通り(※ 原則としてコメントは即時反映、トラックバックは承認制。但し、どちらも、エントリーと無関係なもの、管理者が不適当と判断したものは、遠慮なく削除する)

 運営方針の変化は、主として、「Yahoo!ニュースBUSINESS」に参加することにより、ブログを頻繁に更新する必要が生じることをきっかけとするものです。加えて、ブログ、Facebook、Twitterなどいくつかの媒体を使ってみて、ブログの位置づけを定義し直す方が良さそうだと判断しました。

 Facebookを使ってみると、実名に近い(匿名に近い格好でこそこそ使っている冴えない人もいますが…)、相手がほぼ特定できるコミュニケーションの心地良さが確かにありました。
 しかし、「友達」の数が増えるに従って、不特定多数が相手のブログとの書き分けが曖昧になり、告知や意見のやりとりはオープンなブログでやる方が生産的ではないかと思うようになりました。Facebookは、他人との連絡、ブログではやりとりしにくい意見の発信や、ややプライベートな情報発信に主に使うことにして、その他の諸々の発信はこのブログで行うのがよさそうだと考え直しました(Facebookはビジネス利用には、もっと別の可能性がありそうに思えますが、私にとっては将来の課題です)。

 また、私の情報発信をフォローしてくださる有り難い人のためにも、私自身の備忘録的意味合いでも、別の場所に書いた原稿や記事、つぶやきなどについて、多少形を変えつつ、このブログにまとめておくのが便利ではないか、と思うようになりました。
 これは、余計な手間の掛かる作業なので、どこまでできるか分かりませんが、他の発信内容を当ブログで紹介することを増やそうと思っています。
 これまで、他の媒体の原稿と当ブログへの投稿とのテーマの重複をなるべく避けようと考えてきましたが、この方針は、連載原稿が増えるのと共に、時間面でもテーマの面でも当ブログに原稿を書く動機と余裕が無くなる結果をもたらしました。今回、この方針を逆方向に転換するわけです。

 ブログ開始時の47歳になっているプロフィールの更新も必要ですし(私が今年で54歳です)、デザインもそろそろ変えたいと思っています。また、ブログに掛ける手間が増えることを思うと、アフィリエイト等の商業的な利用も付け加えたい、と思っています。
 これらは、何れもブログの設定の変更やデザイン変更などの手間が掛かるので、近い将来の予定です。当ブログは、もともとgooから提案があって、gooの担当者にデザインなどを作って貰ってスタートした経緯があります。利用方法やデザインなどについては、gooと相談する必要があります。もともとの義理、及び読者の利便性を考えると、今後もgooでの運営を続けるのが良かろうと考えています。

 コメント、トラックバックなどの処理方針は従来と変わりません。このブログを始めた時の思想的な「手本」は、当時の堀江貴文さんのブログでした。堀江氏は、的外れな批判や時には罵倒に近いコメントも含めて「何でも載せておくのが、おおらかにも見えるし、トラフィックも稼げるし、賑やかで良い」と多分考えておられたのだと思います。
 私は、「これは、学ぶに値する方針だ!」と思ったのでした。
 その後、トラックバックに関しては、「エロ系のものが多くて女性読者にはツラい」との読者の意見を反映して承認制としましたが、コメント欄は原則オープン・即時反映としています。
 ただ、最近、コメント欄に、おそらく自動ないしはごく軽い手間で物品販売系のサイトに誘導しようとするコメントを頻繁に見かけるようになり、これの削除(削除しないと「意味のある新規コメント」が注目されなくなる)に手間がかかっています。
 推測するに、私が現在の10倍くらい(もっと必要かな?)有名になると、諸々の理由でコメント欄が荒れやすくなる公算が大きく、この方針が不適当になる可能性がありますが、当面は従来通りの方針で行こうと思っています。
 但し、今後、エントリーの内容と関係のないコメントに関しては、削除比率を上げる方針です。
 私への連絡や、意見、それ以外に告知してほしい内容などは、私宛のメールあるいはFacebookのメッセージでお寄せ下さい。このブログに掲載する意味があると思うものについては、その後にエントリーで取り上げるつもりです。
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「JMM」の中間決算

 村上龍さんが主宰する経済・社会系のメールマガジン「JMM」(Japan Mail Media)には、10年以上にわたってほぼ毎週寄稿していたが、今年に入ってから、執筆回数が減った。もったいないことに、TwitterやFacebookで、「山崎さんのJMMへの寄稿を楽しみにしています」というメッセージをしばしば頂くので、「JMM」について、簡単に触れてみたい。
 「JMM」に参加した切っ掛けは、「JMM」のスタート時に、林康史さん(現・立正大学教授)に紹介していただいたことだ。当時の「JMM」は対談編と村上編集長に寄稿家が答えるQ&A編の二つを中心として構成されていて、幸運にも、私は両方に参加することが出来た。
 「JMM」で特徴的だったと思うのは、「論争に決着を付ける」のではなく、「問題を提示する」ことを目的として多様な意見を吸収・発信する点だったように思う。これは、時に物足りないこともあったが、振り返ってみると、議論の無用な加熱を回避する賢い方針だった。
 私は、村上編集長の経済に関する質問に対して、「ともかく毎週答える」ことを方針として、10年以上、ほぼ皆勤で回答を書いてきた。毎週回答を書いてきたことで、多少の信用(?)にもなったと思うし、私が書いた回答を見てやって来た仕事も少なくない。これは、気のせいかも知れないが「JMM」に書き続けている人々の多くが、それなりに「世に出ている」ような気がする。村上さんの人徳だったのかも知れないが、縁起のいい媒体だ(→若者よ、「JMM」に寄稿してみませんか!)。
 回答は、その時々に自分の意見の表明としてマジメに書いてきた積もりだが、他方で、経済に関わる文章を書く練習の場だとも思っていた。村上龍さんに読まれるということだと、それなりの緊張感が伴うし、編集長は(寄稿文は全て丁寧に読まれているようだ)ときたま「書き方」について指導してくれた(何と豪華な、作文通信添削か!)。村上さんから貰った幾つかのアドバイスは、私の個人的な財産だ。
 毎週必ず回答書く方針を修正する切っ掛けは、第一に忙しくて手が回らなかったからだ。今年NHK出版から出して貰った「お金の教室」という本の仕上げの頃にいよいよ手が回らなくなったので、「毎週」を諦めることにした。考えてみると、「JMM」参加の頃と異なり、「ダイヤモンド・オンライン」(毎週)や「現代ビジネス」(隔週)など、時々の経済・社会をテーマとした原稿の執筆もある。残念ではあったが、いざ「皆勤」の縛りを解いてみると、それでホッとしたのも事実だ(つくづく私は凡人である)。だが、「お金の教室」を手に取ると、今でも少し複雑な気分になる。
 もう一つの理由としては、「JMM」で自分が書いている回答が、過去と似た内容を何度も書いていることに気付いたことだ。
 その時々の話題に寄り添ったテーマで発問されるウィークリー・メルマガの性質上、広義の「構造改革」、「財政赤字」、「デフレ」、「マーケット」、「景気」などが繰り返し登場するが、これらに対する基本的な“考え方”はそう簡単に変わるものではない。
 唯一以前と変わったのは、「デフレ」について、以前は、その弊害は認めつつも、デフレ対策の弊害の方が大きい、と思っていたものを、メリットよりも弊害の方が小さいデフレ対策は十分存在しデフレ対策の実行が重要だ、と宗旨替えしたのが変化であるが、それ以外の問題については、基本的な考え方に大きな変化はない。
 市場は不完全であるが、利益団体化した官僚が主導する設計主義的な社会運営よりも、自発的で自由な取引を重んじる方がずっとましだ、というのが私の基本的な立場だ。基本的なミクロ経済の教科書の内容を認めるなら、大体において深刻な論争の対象になるようなことは言ってこなかった積もりだ。
 もっとも、「毎週」を止めたとはいっても、「JMM」への回答執筆自体をすっかり止めようと考えている訳ではない。面白い回答が書けそうに思えるテーマで、原稿を書く時間があれば、「私もここにいるよ」と出しゃばって行きたい。
 レギュラー選手から、代打の選手になったような感じなのはガッカリだが、まだ「消える老兵」になる積もりはない。とはいえ、「JMM」の回答編には、もう少し若い活きのいい寄稿者が欲しい感じはある。我こそは、と思う方は、編集部へのメールの形で回答を書き送ってみて欲しい。読者からの回答が掲載・配信されることもあるし、何度か回答を送るうちに常連回答者に仲間入りすることもあるはずだ(過去に何人もいる)。
 以上、「JMM」の中間決算の脚注だ。「JMM」も「山崎元」もまだまだ続くはずだ。私は「JMM育ち」だ。
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