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【現代ビジネス】政府部門が民間企業の大株主となることについて

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「政府機関が民間企業の「経営指導」を行うって…本当にうまくいくんですか?」というタイトルで記事を書きました。

 GPIFが、投資先企業との定期対話を始めるといいます。
 東証一部の現在の時価総額から計算すると、GPIFは日本企業の約6%の株式を保有する大株主です。GPIFや日銀のような政府機関が民間企業の大株主になることには、そもそもの制度設計として、私は反対です。
 しかし、既に彼らが大量の株式を持ってしまっている以上、株主権の空洞化が起こることは不健全であり、今回の対話に「全く反対」と言うわけではありません。

 GPIFの企業との対話は、最早、公的年金が民間企業の経営に関与しない存在であることを堂々と放棄し、建前と実態のズレを解消した点では画期的でしょう。同時に、公開の対話の場で、大株主であるGPIFが何を考えているのかを明らかにすることは、情報公開の点でも進歩といえます。

 但し、こうした政府機関が株主として民間企業の経営に関与することの可否と、彼らが民間企業の経営によい影響を与える「指導」ができるのかという点には、心配と疑問が残ります。
 制度の設計としては、公的機関が大株主となるよりは、民間人が分散して株式を持ち、民間人としての利益の立場から株式保有企業の経営に関与する方がスマートです。

 さらに、強く懸念しているのは、「公的大株主」の勢力を背景とした、民間企業の社外取締役への「天下り」が増えることです。官民の癒着は、今に始まったことではありませんが、大量の株式まで保有することで、官僚側の交渉力がより強くなることは否めません。
 公的機関の株式保有の影響は、直ちに見えるようなものは少なくても、気づいたときには大きくなっている可能性があります。公的機関が民間企業の大株主である以上、彼らの株主としての振る舞い方に注意を向けることが重要です。
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【DOL】世耕大臣が唱える新卒一括採用の見直しは本当に必要か?

 ダイヤモンド・オンライン『山崎元のマルチスコープ』に、「「世耕大臣が唱える新卒一括採用の見直しは本当に必要か?」と題する記事を書きました。

 世耕経済産業大臣は4日、「新卒一括採用」について「実施する企業は多いが、かなりの比率で新入社員が辞めている。採用される学生も採用する企業も、このやり方は負担だと思っている」として、見直しを促す考えを述べました。

 新入社員は「3年で3割」辞めると言われますが、新卒一括採用に限らず、新卒でも中途採用でも、職場と社員のミスマッチは3割くらいはあるものだというのが私の実感です。
 世耕大臣が、「かなりの比率で新入社員が辞めている」こと問題視しているのだとすれば、些かピントがずれています。

 むしろ、中途採用市場を整備すると共に、年金や人事評価などの面で、中途採用者が不利にならないようにすることが重要です。強力に推進すべきは、「やり直しの利く就職活動」ではないでしょうか。

 採用活動は通年で行い、既卒者・転職者も有能なら採用して使うべきだ、というのは、企業の手間や人事制度などのコストの問題を棚上げすると、理屈は通っているように思います。

 そして、新卒一括採用と結びついている「年次主義型人事管理」は、そろそろ止めるべき企業が多いのではないでしょうか。
 年次が下でも、有能な管理職たり得る人材はいますし、年次が上でも無能な管理職は、もっとたくさん居るというのが、多くの企業の実態でしょう。

 問題は、これら企業経営の根幹に関わる人事管理のシステムを誰が変更するのかですが、これは、経営者がやるしかありません。
 日本企業の経営者達は、報酬に見合う実績を上げるためにも、人事管理システムの改革に本気で取り組むべきでしょう。その成果が十分出た時には、少なくとも企業側で新卒一括採用に拘る必要はなくなるように思います。
 「新卒一括採用」が企業の後進性を象徴するようになれば、日本企業の人事システム改革は成功です。
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【DOL】資産運用に「高齢者向き」の方法など存在しない

 ダイヤモンド・オンライン『山崎元のマルチスコープ』に、「資産運用に「高齢者向き」の方法など存在しない」と題する記事を書きました。

 最新号の『週刊ダイヤモンド』(2016年8月6日号)は介護・死別・終末期などの特集を組んでいます。
 そこで今週は、「終末」あるいは「相続」まで辿り着く手前でお金で失敗してしまうことのないよう、高齢者のマネー運用について、気をつけるべき項目を四箇条にまとめました。

高齢者の資産運用四箇条

第1条 運用に歳を取らせる必要はない

 お金は、使いみちや所有者の年齢、手持ち金額などから独立して、その運用方法を決定することができます。
 「判断力さえしっかりしていれば」、高齢者だからと言って、ポートフォリオにまで歳を取らせて、リスク水準を落とすようなことは必要ありません。

第2条 インカムゲインに拘るな

 株式でも投資信託でも、分配金などのインカムゲインとキャピタルゲイン(と税金や諸費用も)を「合わせて」判断するのが、運用における絶対の基本の一つです。
 本ブログでも何度もお伝えしていますが、毎月分配型の投資信託は、買った値段に関係なく、即刻解約して構いません。

第3条 プロに任せるな

 たとえ無料相談であっても、お金の運用の判断には、運用商品を販売するプロに一切関わらせてはいけません。
 彼らは高い人件費以上の利益を稼がなければならない(商売の)プロであり、彼らが繰り出す「ご提案」を、素人がその場で的確に批判することは難しいからです。
 相談が必要な場合は、金融商品や保険商品などを扱っていない「金融機関と関わりのない」ファイナンシャル・プランナー(時に専門知識に疑問がありますが)などに相談料を払って相談するのがよいでしょう。

第4条 お金の在処が分かるようにしておけ

 十分な判断力がある高齢者は、以上の1~3条を守ってお金を運用すればよいのですが、高齢者の場合、「自分が不意に判断力を失った場合」について想定しておく必要があります。
 例えば、家族に告げずに持っている銀行預金があり、家族が通帳を見つけられない場合、その預金は見つけられないままとなる可能性があります。

 もっとも、これは、本質的に高齢者に限った問題ではないかもしれません。いわゆる認知症が進むケース以外にも、単純に記憶を失ったり、亡くなったりすることは、高齢者に限らず起こり得ます。
 運用にあって、「高齢」が特別な要素ではないように、全ての年代にあってお金の在処を情報として適切に管理する必要性があるのだ、という理解を持っておくことが正しいということなのでしょう。
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