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【現代ビジネス】ソフトバンク孫社長の選択は「正解」だ~大物経営者の引き際を考える

 現代ビジネス「ニュースの深層」(隔週連載)に「ソフトバンク孫社長の選択は「正解」だ~大物経営者の引き際を考える」というタイトルで記事を書きました。
 ソフトバンク孫正義氏の事実上の後継者と見られていたニケシュ・アローラ副社長が退任するというニュースから、今回は、大物経営者の辞め方について考察をまとめています。

 報道によると、孫氏が社長を継続したいという心境になったことによるそうですが、孫氏の選択は正解でしょう。真の大物経営者は、自身のビジネスにあっては取り替えの利かない生き物なので、体力と情熱が続く限り自分の事業に関わるのがいい。
 先般の、セブン&アイ・ホールディングスの「カリスマ」こと鈴木敏文会長の退任に至る事例もそうですが、創業者に限らず、事業を新しく構築し、長らく会社の成長を主導してきたような大物経営者の引き際というのは、難しいことがわかります。

 大物経営者は、「後継者」や自身の「高齢リスク」などを問われたり、判断力の衰えや成功体験への固執などが非難される場合があります。しかし、ゼロからイチを作り出すようなビジネス・モデルの創造者においては、多くの場合、自分を上回る人物が出るまで自分は留まるのだという覚悟で、自身のポテンシャルを使い尽くすことに注力する方が、会社のためでもあり、ひいては社会のためではないでしょうか。
 但し、これを、「ゼロをイチに変える」能力の気配が全くない凡庸な社長にやられると、会社にとっても社会にとってもありがたくないのが大変難しいところです。
 「ゼロをイチにする経営者」と「単なる社長」を正しく区別して適切に扱うことが、会社と社会の双方にとって重要です。
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【楽天証券】確定拠出年金について伝えたい5つのメッセージ

 楽天証券ホームページでの連載「山崎元のホンネの投資教室」に「確定拠出年金について伝えたい5つのメッセージ 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 確定拠出年金は、課税される金額以上の所得が見込まれる方にとって、「ほぼ確実に儲かる」と言える数少ない金融サービスであるにもかかわらず、利用していない人の多い制度です。
 記事では、確定拠出年金について今、是非ともお伝えしたい・言いたいと思っている以下の5項目について書いています。

確定拠出年金について伝えたい5つのメッセージ
1・利用しないと「もったいない!」
2・運営管理機関・運用商品の「地雷」を避けよ
3・金融機関による投資教育を警戒せよ
4・手数料が安い外国株インデックスファンドを選べ
5・70歳まで加入可能にして欲しい

 今月、確定拠出年金の改正法案が国会を通過しましたが、ちょうどそのタイミングで「確定拠出年金の教科書」(日本実業出版)という確定拠出年金の解説書の出版を進めていたため、ぎりぎりで改正法案の内容を本文中に紹介することが出来ました。先の5項目は、それぞれ拙著にて更に詳しい説明をしています。

 確定拠出年金については、今後要望したい点が大きく言って二つあります。

 1つには、移換をはじめとする各種手続の改善です。一部の手続は恐ろしく面倒ですし、全体的にみても手続きは不便で遅く、手数料も掛かかります。この改善は継続的に要望していこうと思います。
 もう1つは、原則として60歳迄としている年金の拠出可能年齢を、早急に70歳迄に引き上げることです。日本人が相対的に長寿・健康であること、働き方が多様化していることなどを踏まえても、加入資格年齢の引き上げは、政策が目指す方向性と合致するはずです。

 皆さんには、ご自分の加入資格を確認して、確定拠出年金を是非使ってみて欲しいと思っています。そのためのガイドブックとして、拙著が少しでもお役に立つなら、著者としては大変嬉しく思います。
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【告知】「確定拠出年金の教科書」一部修正します

 6月9日に「確定拠出年金の教科書」(日本実業出版社)を上梓しました。地味なテーマということもあり、売れ行きを心配していましたが、先日、増刷の連絡がありました。有り難いことです。
 本来なら、増刷のタイミングで誤植等の修正を加えるのですが、1点だけ、修正が間に合わなかった箇所がありました。この場を使って告知できればと思います。

 掛け金が全額、非課税になるという箇所で、会社員の企業型DC加入者を事例に説明していますが、これを、個人型の加入者である自営業者の例に置き換えたいと思います。
 企業型の場合、実際に掛け金を拠出するのは事業主であり、加入者本人が非課税になるのは、「マッチング拠出」で拠出した掛け金の額に限られます。修正前の説明では、掛け金全額が控除の対象になるかのように書かれていましたが、これは正しくありません。「図表1-1」の数値を含め、下記の通り修正したいと思います(金融ジャーナリスト竹川美奈子さんにご指摘頂きました。有難うございます)。

■該当箇所:p19~p21

〔第1のメリット〕
掛け金が全額「非課税」になり、所得税や住民税が減る

■修正後の内容

 確定拠出年金では、通常は毎月決まった金額を掛け金として拠出する。個人が掛け金を拠出する「個人型」の場合、金額は後から変更可能だ。「企業型」(詳細は63㌻参照)では個々の企業の制度による。これを日々運用していった成果を老後に受け取る。

 税金のメリットの1つ目では、この掛け金が全額、非課税になる(企業型の場合は、加入者が拠出した掛け金の全額)。所得税は、所得が大きくなるほど税金の額も大きくなる。確定拠出年金では、拠出した金額を差し引いて「圧縮」された所得額を元に、納める所得税の額を計算することが出来る。また、住民税も所得が対象になるので、計算の元になる所得が確定拠出年金の掛け金分だけ圧縮されると、税額が減少する。

 具体的な数字で見てみよう。
 ここに、課税対象となる所得が400万円になる自営業者がいるとしよう。この場合、適用される所得税の限界率は20%であり、住民税と合わせた納税額は78 万5300 円となる(次㌻図表1-1)。ところが、彼(又は彼女)が個人型の確定拠出年金の加入者であり、毎月6万8000円、年間81万6000円を掛け金として拠出していたとすると、この額は大きく変わってくる。因みに、月額81万6000円は、自営業者等の国民年金第1号被保険者が拠出出来る最高額だ。

 この場合、課税の対象となる所得の金額は、確定拠出年金の拠出額81万6000万円を差し引いた318万4000円となる。ここから所得税と住民税を改めて計算し直すと、税額は54万8900円となり、1 年間で23万6400円もの税金を「節約」出来るのだ。

 後で述べる企業型の確定拠出年金の加入者の場合、掛け金を拠出するのは事業主であるため、この段階では大きな節約にはならない。しかし、「マッチング拠出制度(63㌻参照)」を利用して、加入者である従業員が事業主の掛け金に上乗せして拠出した場合、この分の掛け金については、個人型同様、全額が非課税になる。

 この「節税」によって得られる金額と同じだけを株式投資によって手に入れようとした場合、仮に、運用期間中一定して5%のリターンが得られるとして計算すると、1年で23 万6400 円の運用益を得るには、元金として472万8000 円もの資金が必要だ。しかも、株式投資は、必ず期待通りのリターンが得られる訳ではない。当然ながら、マイナスになる可能性もある。

 非課税によって「確実」に節約出来るという確定拠出年金の威力は、金融の世界において、どれだけ「まれ」で「貴重」なものなのかが想像できよう。

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【DOL】ベーシックインカムという優れた制度が日本で実現しない訳

 ダイヤモンド・オンライン『山崎元のマルチスコープ』に、「ベーシックインカムという優れた制度が日本で実現しない訳」と題する記事を書きました。

 スイスで行われた国民投票で、ベーシック・インカム(以下BI)の導入が反対多数で否決されました。
 私自身は、BIの制度に賛成の立場です。BIには

1・予見性の高い安心なセーフティーネットである
2・行政の裁量を減らし効率を高めるシンプルな仕組みである
3・受給が恥ずかしくない再分配である
4・ミスや漏れが起こりにくい公平な仕組みである

といったメリットがあるからです。もちろん、上記以外にも多数のメリットが、BIにはあります。

 しかし、例えば「日本で今世紀の前半中に、BIは実現するか?」と問われたら、私は、「そうなればいいとは思うが、予想としては、そうならない方に賭ける」と答えるでしょう。

 制度の変化によって経済的に損をする人の抵抗は、得をする人の推進力を上回ることが予想されます。また、BIの長所とされる「行政の効率化」は、同時に、効率化される側の抵抗要因となり得ます。
 BIが日本で実現しにくいと私が考える主な理由は、こうした「既得権者の反対」と、効率化される側となる「官僚の抵抗」の2つです。BIが、少なくとも短期間で実現に向けて動き出すと考えることは難しいでしょう。

 既存の社会保障システムからBIに移行するためには、どんなに短くても十年、現実的には二十年くらい掛ける移行プロセスが必要ではないかと思います。
 それには、現行の社会保障関連の仕組みと行政システムを徐々に簡素化して、少しずつ「BI的」な仕組みや仕事のやり方を増やしていく方法がいいのではないでしょうか。
 具体的には、
1・行政の裁量ではなくルールに基づいて給付が決まる
2・基本的に使途が自由な給付金による再分配である
3・制度として簡素・効率的になる

といった制度の導入又は制度の変更でしょう。
 日本でも、諸外国に続いて「BI的価値観」が浸透していくことを期待しています。
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