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【エンジニアの生きる道】「夢」と「目標」を区別して考えよ

 株式会社VSN様(技術系人材サービス業)のWEBサイトにて、「経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」」というタイトルで、月一回、エンジニアの方に向けたコラムを書いています。

 今月は、『「夢」と「目標」を区別して考えよ』と題する記事を書きました。

 先日、弁護士になりたいという夢を持った大学院生の母親からの相談について、考える機会がありました。
 相談の内容は、法科大学院に行く学費をどうするか、ということで、直接相談を受けたFPは、奨学金の紹介をしました。
 一方で、私は「司法試験に合格することが、『夢』なのか『目標』なのかをまず区別すべきでしょう」と答えました。合格が非現実的な『夢』に過ぎなければ、諦めるのが立派な決断でしょうし、それが努力によって十分合格の可能性がある『目標』なら、そこで初めて具体的に考える価値があるからです。

 夢の価値を全面的に否定するわけではありません。お金や時間といった現実のコストを考える場合には、実現性のある目標に対して考える必要があることを強調したいだけです。

 夢と目標の違いについて、私は「具体的で現実的な時間と努力で達成できる確率が50%以上に達すると考え得る夢」のことを「目標」だと考えています。
 これは、学生のみならず、社会人であっても、老若男女問わず、基本的に同じ考え方です。
 夢が真に大切なら、その夢を勝率が半分以上の目標に落とし込む努力をするべきだ、というのが、リアリストであり「人生のファンドマネジャー」(ちなみに、主な運用資産は時間と努力とお金です)としての私からの親身のアドバイスです。

 夢と目標を正確に区別して、目標を目指すことの、機会費用を含めたリアルなコストについて、意識することが必要です。
 また、当然ながら、目標によって達成までの期間は異なります。あまりに長い期間を要する目標の場合、途中でその達成度合いを測ることが出来る中間目標が必要でしょう。

 時に、目標のつもりで目指してきたことが、本人の意に反して、単なる夢になってしまうことも人生にはあります。この場合は、目標を現実的なものに設定し直すべきです。もちろん、逆のケースもあり得ますから、その場合には、自分の可能性を拡張するためにも、目標の上方修正を考えるのがいいでしょう。

 避けるべきは、夢を持っているということにこだわり、夢を言い訳にして不適切な選択を正当化することです。
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【楽天証券】ロボでも人間でも運用アドバイザーは何を訊くべきなのか?(その1)

□タイトル
【楽天証券】ロボでも人間でも運用アドバイザーは何を訊くべきなのか?(その1)

 楽天証券ホームページでの連載「山崎元のホンネの投資教室」に「ロボでも人間でも運用アドバイザーは何を訊くべきなのか?(その1) 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 近ごろ流行りの「フィンテック」の一つとして、「ロボアドバイザー」が注目を集めています。
 ロボアドバイザーであっても人間の専門家であっても、運用アドバイスを行う上でなされる質問には、
1・顧客に訊くべき必須の質問
2・運用アドバイスのためには顧客に訊く必要がない質問
3・アドバイスに必要ないけれどもビジネス上の都合で訊いている質問
等があるでしょう。
 今回は、典型的な質問点から10を選び、「運用アドバイスに必要な情報は何か」について、考えています。

(1)運用期間は聞いても良いが、これでリスクは決まらない

 極端に短い期間でなければ、個人投資家に対して、運用期間を聞く意味はあまりありません。
 運用計画の最適な想定期間は、運用期間全体の長さによってではなく、ポートフォリオ調整の取引コストと運用環境の変化スピードなどによって決まるからです。
 「短期の運用戦略が、その都度、長期的にもいいと思う運用戦略になり、短期の運用判断をつなげたものが、長期運用となり、あくまでも結果的にポートフォリオには大きな変化が無かった」というのが、一見ほぼバイ・アンド・ホールドに見えるような長期運用の「正しい姿」です。

(2)アドバイス対象のお金は、全体の中のどれくらいか?

 今、動かそうとしている運用額が顧客の資金全体の中でどれほどの大きさなのか、これによって発生し得る損失がどれほどのインパクトを持つのかの評価なく、適切なアドバイスなど出来るはずがありません。
 顧客についてこの点を的確に把握し、または顧客自身による把握を補佐することが、FPの運用アドバイスにあって最重要ポイントだと考えていますが、この視点の欠けたアンケートやHPをしばしば見掛けます。

(3)資金の使用目的は全く重要ではない

 後から使い途を決められることが、お金の長所の一つです。
 取り得るリスクの範囲内で、効率よくお金を増やすことが運用の問題であり、老後の生活費なのか、子の学費なのか、その使い道は基本的には「別の問題」であり、運用方法には関係ありません。

 ※尚、元の記事では、10の質問点の1~3が今回掲載されており、残りは次回以降の掲載となります。
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【楽天証券】18歳からの投資入門

 楽天証券ホームページでの連載「山崎元のホンネの投資教室」に「18歳からの投資入門 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 選挙権年齢が18歳に引き下げられました。
 18歳には投票を行う上で十分な判断力がある、との判断が根底にあるのだとするなら、同時に、投資を始めるにもいい年齢なのだとは言えないでしょうか。この思いから今回、18歳からの投資の心掛けについて考えました。

 まず、18歳に限ったものではありませんが、投資について具体的に考えるためには、多少の数学知識が必要です。四則計算の他に、
・複利計算
・割引現在価値の考え方
・標準偏差と正規分布の初歩
・等比数列の和の公式
などの理解(公式が理解できるレベル)があれば十分に、損得をある程度計算で判断できるようになるでしょう。いずれも、高校の文科系コースであっても十分履修しているはずの内容です。

 しかし、一般的な投資教育では、この最も肝心な「損得の判断方法」の基礎に当たる知識を教えていない場合が殆どです。さらには、売り手側が取る実質的な手数料が重要なのだといった「真に大切なこと」も、案外教えられていません。
 18歳の皆さんには、耳障りがいいだけの「似非投資教育」(にせものの投資教育)には気を付けて欲しいと思います。
 そこで記事では、投資の心得を5カ条にまとめて紹介しています。

18歳の投資入門者に贈る投資の心得5カ条>
1.投資は無理にやらなくてもいい
2.投資は自分のためにする
3.リスクは投資額でコントロールする
4.投資では他人を頼ってはいけない
5.「予想外」と上手く付き合え



 率直に言って、18歳の年齢から、将来に備えた資産運用を行うべきだとは思っていません。しかし、早くから投資に関わることで、リアルな感覚と問題意識を持って時々の経済・金融状況と付き合った経験を、この年齢から持つことが出来るとすると、これは相当に有効な「経験」への投資になり得ます。
 18歳の当人である皆さんや、その親御さんには、ぜひ提案してみたいと思います。経験に時間を投資する上で、優れた期待リターンの投資になるのではないでしょうか。
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【DOL】国民投票で国論二分の大問題を決めることのリスク

 ダイヤモンド・オンライン『山崎元のマルチスコープ』に、「国民投票で国論二分の大問題を決めることのリスク」と題する記事を書きました。

 英国のEU離脱を問う国民投票で「ブレグジット」が可決されました。
 この結果が、英国及び世界にどのような帰結をもたらすのかは、今のところ「よく分からない」と言うしかありません。
 しかし、ブレグジット以降の金融市場では、どこかの国でEU離脱に向けた国民投票の「気運が高まる」だけで資本市場が反応を始め、大手金融機関のバランスシートに生じた修復不可能な歪みが表面化してしまう可能性があります。
 世界経済は、言わば、いつ発作が襲うか分からないような慢性病の病巣を欧州に抱えており、致命的な発作につながりかねない症状の進行を見せたのが、今回のブレグジットの可決です。

 国民投票後の英国民の間では、EU離脱への賛否を巡って深刻な対立感情が残ったようにも見えますし、スコットランド独立問題が再燃する可能性も生じています。いずれも、キャメロン氏が国民投票という手段を採らなければ、直ちに表面化することは無かったはずです。
 国論を二分するような問題を国民投票に掛けてはいけない、ということなのか、国論が二分される大問題である以上国民投票で決めるのが正しいということなのかは、政治家の信条に関わる問題です。
 キャメロン氏は、国民を説得できるはずだと考え、まさか負けるとは思っていなかったのでしょう。

 今回の英国の「民意」には、二種類の説明の可能性があります。

 一つは、個人間の大きな経済「格差」が顕在化して、固定してきた、という印象を多くの人が持つ場合、「経済全体にとって得なこと」が選択されなくなる可能性が、大いにあるということです。
 可能性のもう一つは、自分も損をすると分かっていても、儲けている連中が損をすることが望ましいと思う、一種の処罰ないしは嫉妬の感情を持ったことが挙げられます。

 今回の英国の状況は、次の大統領選挙に向けて米国が直面している状況と似ている可能性がありますし、経営者の報酬ばかりを引き上げる一方、ROE向上に圧迫されて一般社員の賃金が上がりにくい現在の日本企業と社会にあっても、遠からず問題となる状況かも知れません。
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【エンジニアの生きる道】凡人が秀才を逆転するために必要な5つの要素

 株式会社VSN様(技術系人材サービス業)のWEBサイトにて、「経済評論家・山崎元の「エンジニアの生きる道」」というタイトルで、月一回、エンジニアの方に向けたコラムを書いています。

 今月は、「凡人が秀才を逆転するために必要な5つの要素」と題する記事を書きました。

 仕事における処理能力とは、高校レベルの国語・数学・英語の運用能力が、その全てではないとしても、大まかには当てはまるように思います(但し、この三科目を、高校レベルで文字通り「完璧」に使いこなす人は、私のビジネス経験上殆ど見たことがありません)。
 そして、「秀才」と呼ばれる人々が一般的に「凡人」に比べて仕事の処理能力が高いと言われるのは、個人差があるとしても、これらの能力が相対的に優れているからであり、そのために、ビジネスの世界でも「あの人は、出来る」と評されるのでしょう。

 しかし、業務全般の処理能力が高い秀才が、必ずしも、ビジネスの世界で高い成果を上げて出世するかというと、そうはなっていないのが現実です。

 それでは、秀才ではない者に、仕事の「処理能力」に勝る秀才を逆転する余地が現実にあるのだとしたら、逆転を可能にするためには何をしたらいいのでしょうか。

 後天的な努力によって変化が可能な「逆転のための要素」を抜き出すと、以下の5つが目に付きました。
 今回の記事では、それぞれについてまとめています。

1・対人能力
 恐らく最大の要素でしょう。問題は、努力によって改善可能であることに、本人が自覚的であるかどうかと、改善のための努力の仕方を知っているか、です。

2・人脈(=人間関係の集合)
 人脈を利用するには、作り方、維持の仕方、育て方等を知らなければなりません。方法を知って意図的に努力するかしないかで、大きな差が付きます。

3・芸
 有効な人間関係の形成に役立つ場合があることに加え、高度な達成度合いの芸事を持つ者は、仕事にあっても高い達成意欲をもつだろうと推定されて、人材評価を改善する可能性が十分あります。

4・健康
 高い処理能力も、健康と体力が無いと有効には機能しません。特に、差が付きやすい中年期以降は、仕事のパフォーマンスにも、経済的な有利不利も、さらに出世の可否にも大きな影響が出ます。

5・経験
 いつどのような仕事に関わったかという「経験」の差も要素としてあるでしょう。自分の「時間」という貴重な資源を、どういった経験に投資するか、常に自覚的であるべきです。
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