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【ダイヤモンドオンライン】この円安と株高をどこまで喜ぶべきか?

 ダイヤモンド・オンラインの「山崎元のマルチスコープ」に「 この円安と株高をどこまで喜ぶべきか? 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

<明暗分かれる円安の影響>

 1年ほど停滞し膠着していた為替レートと株価が、円安・株高方向に抜けてきました。
 私は、現状においては、概ね「円安・株高」が好ましいと考えています。

 まず円安について言うと、円安は、日本の労働者の国際的な賃金水準を引き下げ、日本の商品(輸出品ばかりでなく、輸入品と競合する商品も)の競争力を改善します。この効果によって、日本の雇用が改善し、完全雇用に近づくと、賃金の上昇を通して、物価に対して上昇方向の圧力が掛かるようになります。

 これは、アベノミクスの、というよりも、世界で普通に行われている金融政策の波及メカニズムの一つです。平均的に実質賃金が下がって、これまで安定的に雇用されていた中間層の実質所得が下がることは、アベノミクスの波及過程として、「予定通り」なのです。

 現状は、成長戦略の前段階のデフレ脱却に向けた動きの段階にあります。もちろん、どこまでも円安になっていい、というものではありませんが、デフレ脱却を達成したい今は、もう少し円安になってもいいでしょう。

<株高をどう見るか>

 株価は現状では明らかに「バブル」ではないので、目下の株高自体の効果は経済にとって好ましい状況です。一方、「円安に対応する株高」でもあり、全体が丸ごと不自然だということではなかったのですが、ここしばらく、「幾分怪しい」上がり方を見せつつ直近の高値を更新してきています。

 値動きだけから断定してはいけませんが、なるべく上値を追わずにじわじわ買うスタイルは、1990年代にあった「公的資金の買い」のパターンと同じです。  市場で注目されているGPIFの新しい運用方針(特に標準的資産配分を示す「基本ポートフォリオ」)の発表がなかなか行われませんが、GPIFが計画を発表してから株を買い始めると「市場のカモになる」という世間の批判を気にして、あくまでも推測ですが、「計画発表前から既にある程度は買っていた」と後から言えるような、アリバイ作りをしている可能性があります。

 「政府・GPIF」対「市場参加者」の心理ゲームはこれからが本番です。一般投資家としては、GPIF資金の投入による「需給型株価対策」の効果は、「買っている間は確かにあるが、買い終わると徐々にハゲ落ちる」ということを覚えておきたいところです。

 もっとも、どうやって上がるにせよ、持ち株が値上がりすれば投資家にとっては利益になります。株高を、投資家は素直に喜んでいいでしょう。しかし、国民は、官製相場操縦の胡散臭さと、政府機関が民間企業の大株主になることや、そもそも不必要に大きな積立金をGPIFが抱えて、頼んでもいないリスクを取ったり、運用会社にビジネスを提供したりしている構図の不健全性に気づくべきです。

<投資家はどうすべきか?>

 私に相場の正しい予測など出来る訳ではないから、「予想」としては、一切あてにしないでほしいと思いますが、目下の円安と株高に対して、個人をはじめとする投資家がどうしたらいいか、DOLの記事では、簡単にまとめています。

 個人の場合、向こう1、2年のタイムスパンで考えていいでしょう(注;基本的には長期で起こりそうなことがこの期間でも起こる確率が大きいという予想が、予想の主な成分になります)。私は、このくらいの期間で、115円から120円くらいの円安になる可能性がまずまずあるように思います。

 今後、日本企業の利益拡大と足並みを揃えた程度の株高であれば、問題はありません。少なくとも「通常ペース」での国内株式保有をキープしていいでしょう。
 問題は、株価だけ上った場合であり、当面であれば、PER20倍を超えたら、「通常ペース」よりも投資金額を減らすことを考えるのがいいと思います。
 そこまで過熱した状態を想像することは、現段階では、捕らぬ狸の皮算用に近いとは言え、現実にそうなった場合には、危険を忘れがちなので、今考えたことを、しばらく頭に入れておくのがいいでしょう。

 読者のポートフォリオのご幸運を祈ります。
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【ダイヤモンドオンライン】個人投資家は「為替リスク」をどう扱うべきか

 現在発売中の『週刊ダイヤモンド』(9月20日号)に、「ドル円相場の大転換点はいつか?」と題し、外国為替の世界では名前の通った一流の専門家2名の対談記事が載っています。
 お2人の見通し及びその詳しい理由については、対談記事を読んで頂くとして、今週のダイヤモンド・オンライン「山崎元のマルチスコープ」では、「 個人投資家は「為替リスク」をどう扱うべきか 」と題する記事を書きました。(※リンクをクリックすると、新しいページが立ち上がります。)

 為替に関する認識で、個人投資家を中心に案外理解されていないのは、
1.金利と為替レートはセットで取引されている
2.為替リスクはゼロサム・ゲーム的なリスクであり、原則としてリスクを補うリターンが期待出来ない
の2点です。

 この原則が、投資家になかなか広く浸透しないのは、高金利通貨での運用が円ベースでも高利回りを持つと投資家を錯覚させておく方が、金融ビジネス側にとって好都合であるせいでしょう。

 それでは、個人投資家は、お金の運用にあって為替リスクとどう付き合ったらよいのでしょうか。さし当たって考慮に入れておきたいポイントを、以下、4点にまとめました。

1.為替レート(と金利の組み合わせの収益率)は予想が難しいが、株価指数の半分くらいのリスク(年率標準偏差で10%くらい)がある。
2.外債・買い株だけでなく、国内株式を持っていても、円安時にリターンが高く、円高時にリターンが(しばしばマイナスに迄)低下しやすい、「実質的な為替リスク」がある。
3.円高で損をする為替リスクを大きく集中させると、円高に転じた時に大きく損をする可能性がある。
4.当面、日本円建ての金利物(預金、債券)の収益率は、実質ベースで(インフレ率差し引きベースで)、マイナスになる公算が大きい。

 まず、ポイント4.の環境においては、ある程度のリスクを取った運用が妥当である可能性が大きく、その場合、国内の株式でリターンを稼ごうと考えても、実質的には、円安で儲かり・円高で損をする為替リスクを取ることになります。

 また、株式運用のリスクを考えると、外国株式への分散投資は是非行いたいものです。異なる会社やビジネスへの分散投資のみならず、自然災害や地政学的リスクなども合わせて考えるなら、リターンの源泉を分けておくことには意味があります。
 その一方で、株式で円安に賭ける方向のリスクを取る以上、外国債券・外貨預金などで、さらに同方向の為替リスクを追加することは避けたほうがよいでしょう。

 そこで、金利物に関しては、デフレ脱却が本格的に達成されて、長期国債利回りが2%を超えるような水準まで上昇した場合に、運用全般の見直しと共に再検討するといいでしょう。それまでは、リスクを取りたくない資金を、銀行預金、個人向け国債(10年満期変動利付き)、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)などに置いておきます。

 一方、株式については、外国為替のリスクを低減させながらであれば、株式内での国内株式の比率を1~3割に下げて、よりグローバルな株式ポートフォリオを持つ選択肢が考えられるでしょう。
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