yaaさんの宮都研究

考古学を歪曲する戦前回帰の教育思想を拒否し、日本・東アジアの最新の考古学情報・研究・遺跡を紹介。考古学の魅力を伝える。

河野美代子さん「性と生を考える」三重大学特別講演会-2の条

2010-11-29 22:07:13 | 歴史・考古情報《日本》-1 宮都


 来年は入学式に新一年生全員に聞かせたい、とてもとても感動的なお話しだった。超多忙な河野先生にこの性教育後進大学の三重大学まで来て頂いたことに厚く厚く御礼申し上げたい。来年も是非お願い致します。

 河野先生のブログに三重大学の学生が次々とコメントしてくれています。広がりのあるとても充実した、素敵な講演会だったことがこれでよく判ります。これこそ三重大学が最近お念仏のように唱えている「生きる力」(4つの力の内の一つ)となる講演会だったと思うのです。

 ところで、なぜ私が河野先生をお呼びしたいと思ったかなのです。

 私が学生達に常日頃授業で申していることは、「考古学は「ロマン」学ではなく、人文科学であり、歴史学である」ということなんです。だからどんなテーマの授業でも、必ず現代と対比して話しすることを心がけているのです。
 
 例えばこの前の尖閣列島での問題も、ちょうど斉明天皇の牽牛子塚古墳が発見されたときに「外交」と「戦争」をテーマに対比して話しました。斉明天皇は百済の遺臣達の要請を受ける形で大和から「一族郎党」全てを引き連れて九州に遷り、朝倉宮を設けて百済出兵に備えます。しかし、天皇は既に病を得ていたのかこの地で亡くなり、その跡を継いだ中大兄皇子が白村江に大軍を派遣しますが4万とも言われる軍は全滅します。さらに、唐・新羅連合軍の反撃を畏れた皇子は百済遺臣達の援助を受けて九州から瀬戸内海一帯に朝鮮式山城を構築し一大防衛体制を組みます。さらに緊急事態に備えるために非難に適した近江大津宮に宮殿を移します。日本が外国に占領される最初の危機でした。

 その原因こそ、「強腰」の政策による海外侵略にありました。おそらく、天智天皇の治世はこの後遺症によって大きく後退したものと推測されます。

 マスコミや戦争大好き集団はやたらと菅政権の弱腰を批判していますが、日本という国は歴史的に外交下手だし、常に「弱腰」なんです。今回もその「伝統」がそのまま出たに過ぎないんです。本当に馬鹿正直なんです。下手なんです。どうしてもう少し巧妙に立ち回れないのか、ホント、悲しくなります。しかし、これまでのどの政権も下手だということは最近次々と公表されている戦後の外交文書を見れば明かです。最も典型的なのがアメリカに対する「弱腰」です。

 だからといって、強行に打って出て成功した例は一つもないんです。その一番最初の典型例が斉明天皇による百済支援戦争、そして一番身近なのが太平洋戦争でしょうね。今回の件も、「弱腰」と叫んでいる人達のどれだけの人が自分達の失敗の歴史を見直しているんでしょうね。じゃ、「強腰」に打って出てどう収拾するんですかね。戦争するんですか?「弱腰」だと批判するのではなく、いかに外交を進めるべきかを政党なんてどうでもいいから知恵を絞り合うことなはずなんです。まさに党利党略でしかものを言わない。普天間問題然り、年金問題然り、消費税問題また然り。このまま日本は沈没するんですかね。もったいない。

 こんな感じです。歴史学は現代の課題を解決するための極めて現実的な、現代的な学問であることを申し上げています。考古学だけが「ロマン」だなんてとんでもない!人間にとって学問ほどロマンテイックなものはありません。最も人間的な営みなのです。先日のノーベル賞をもらわれた根岸さんも鈴木さんも化学は面白い!!こんなに楽しいものはない!!と仰っているのです。そして彼らはこう言います。

 「現代社会のためになる研究をしてきた。」と。私たち人文学は直ぐに人類の役に立つ成果を示すことはできません。とってもまどろっこしく、時間をかけて説明し、納得させ、資料を積み重ねて課題解決の道を示すからです。いろんな資料を使う内に、いろんな方法で説明する内に、様々な人が様々な方法で示すので、「解答例」が何種類も出てくるのです。だから自然科学のように解答がきちんと出ることはないのです。でも人間は考える葦です。考えることによって、社会を進めてきました。答えは直ぐ出ないが、しかし人類を緩やかに、人間的な方向に持ってきたのは人文学なのです。

 先日の日本学術会議中部支部の講演会で驚くべきことを聞きました。日本学術会議のテーマには「人文科学」は入れないと謳ってきたというのです。信じられません!!これだから日本は駄目なんです。成果や効率だけが人間社会が追い求めるものでないことは日常生活をみれば明らかです。悲しい!!

 いろんな人間がいろんな意見を交わし、みんなで考え、少しずつ実行してきたからこそ社会は進んできたのです。

 歴史学をやる私は、過去の人間の姿を知ることによって、現代社会の課題を解決する、考える材料を与えているつもりです。若い学生がどう生きていくのか、生きる指針の何本かを提示しているつもりです。

 目の前の学生達が「性」で悩んでいたら、「生」を迷っていたら、その学生達にいろんな解決方法例を提示するのが教育だと思うのです。私が専門とする日本の古代社会、とりわけ国家を動かしてきた支配者層では「性」は男「性」によって支配されていました。女「性」は子供を産む装置と化していました。私の研究している桓武天皇は26人もの女性に35人もの子供を産ませたとして知られています。こんな歴史、繰り返したくないですよね。じゃ、どうするの?という感じなのです。

 25日はどれだけの学生が集まってくれるか、とても不安でした。こちらからお願いしておいて20人や30人では話しになりませんものね。それで3週間程前から自分達でチラシを作って、デートDVを研究する院生のTMさんと毎日毎日チラシ撒きをしたんです。彼女のゼミの同級生達もとても熱心に手伝ってくれました。男子学生も来てくれたのにはある種感動しました。

 内の考古学の学生にもチラシの印刷やパンフレットの製本など裏方さんとして手伝ってもらいました。印刷する間に中身を読むものですから、みんなそれなりに関心を抱いてくれるようになって、

 「私これ絶対に聞きに行きますから!」と言ってくれました。

 もちろん受け付けもやってくれ、しっかり聞いてくれました。本当は彼氏にも聞かせたかったことだろうが、今彼は山奥で研究中とか。ま、また機会があるだろうから、次回は二人で聞いてもらおうと思います。
 つい先ほども内の男子学生がお礼を言いに来ました。「きいてよかった!」と。

 次回はデートDVに焦点を当てて講演会をやったらどうかと思っています。皆さんまた協力して下さいね。

 http://miyoko-diary.cocolog-nifty.com/blog/
  「三重大学の講演に行って来ました。」と、既に報告頂いている。とっても素敵なブログなので是非皆さんも覗いてみて下さいね。


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