この物語は敵同士の家に生まれた若い男女の悲恋物語としてあまりにも有名だ。
シェイクスピアを知らない人でも題名くらいは聞いたことがあるだろう。
だがその中身はと言うと、実は意外と豊かで奥が深い。
ここでは特にジュリエットの置かれた立場とその心情の変化に焦点を当てて考察してみようと思う。
① 父
ジュリエットの父キャピュレットは、当初、さほど頑固で理不尽な父親ではなかった。
1幕2場で、パリスが13歳のジュリエットと結婚したいと再度願い出た時の会話はこんな風だ。(引用は松岡和子訳)
キャピュレット:以前申し上げたことを繰り返すだけです。
娘はまだ世間知らず、
十四の誕生日も迎えてはいない。
あと二回、夏の盛りが過ぎないうちは
嫁入りどきとは思えません。
パリス :もっと若くて幸せな母となる例もあります。
キャピュレット:早く成るものは早く壊れる。
頼みの綱の子供らにはみな先立たれ、残るはあの子ひとり。
あの子だけが私のこの世の望みなのだ。
だが、パリス殿、娘を口説いて心を掴まれるがいい。
わしの意向などは本人の承諾のほんの添えもの、
娘がうんと言えば、わしも同意。
あの子の選択にいやとは言えません。
この時はこんなに理解ある父親だったのに、数日後にはまるで豹変してしまう。
3幕4場でパリスが帰ろうとするのを、彼はふと呼び止める。(魔が差したとしか思えない)
キャピュレット:パリス殿、娘の心は思い切って
わしから差し上げることにしよう。何であれ
わしの言うことなら聞くはずです。いや、必ず聞かせる。
だがちょうどその頃、ロミオは縄梯子を伝ってジュリエットの部屋に登り、二人は夫婦として一夜を過ごしていたのだった・・。
次の場面で母がジュリエットの部屋に来て、父の決めた結婚式のことを話したのは、彼女がロミオと涙ながらに別れた直後だった。
すでに夫と結ばれた彼女にとって、パリスとの結婚など、とうてい受け入れられるはずがなく、彼女はかたくなに拒む。
父親は娘の返事を聞くと、怒り出す。
キャピュレット:木曜には
パリスと一緒に聖ペテロ教会に行くんだ
いやなら簀の子にでも乗せて引きずってってやる。
(略)
くたばれ、こしゃくな親不孝者!
いいか、木曜には教会へ行くんだ。
いやなら、今後二度とわしの顔は見るな、
言うな、答えるな、返事もするな!
(略)
いいか、よく考えろ、わしは冗談など言わない質(たち)だ。
木曜はすぐだ、胸に手を当ててようく考えろ。
わしの娘なら、わしの気に入った男の嫁になれ。
そうでないなら、首くくれ、乞食になれ、飢えて野たれ死にしろ。
断じてお前を我が子とは認めない。
財産もびた一文譲らない。
嘘ではない、よく考えろ、わしは誓ったことは破らないからな。(退場)
当時、貴族の娘にとって、結婚以外の理由で実家を出て生きていくことなど考えられないことだった。
本当に、父親の言うように「飢えて野垂れ死に」するしかなかった。
一人娘を可愛がっていたキャピュレットがなぜこれほど豹変したのだろうか。
おそらくパリスに対して、娘が自分の言う通りにするはず、と自信を持って請け合った手前、引くに引けなくなったこと、
人前で恥をかかされそうになったことがあると思う。
いとこの急死を嘆き悲しんでいる娘のためにと思って考えてやっているのに、親の気持ちも知らないで、というわけだ。
可愛さあまって憎さ百倍。
彼だって、まさか娘がすでに別の男と結婚しているなどとは思いもしなかっただろう。
そう思うと、すべてを知っていた乳母の罪は重い。
だが乳母もまた、ジュリエットをこよなく愛していたことは間違いない。
ただ、愚かで想像力がないため、娘が自分とはまるで違う人間で、まるで違う考え方をするとは思いもよらなかったのだ。
② 母
ジュリエットと母親とは、今日の一般的な母娘のように親しい間柄ではなかった。
1幕3場で母はこんなことを言っている。
キャピュレット夫人:このヴェローナではお前より年下で
もう母親になっている良家のお嬢様がいらっしゃる。
そう言えば私も、まだお前の年頃でお前を産んだのよ。
つまり、この時、母親はまだ28歳くらいということになる!
貴族なので、娘が生まれた直後から乳母が娘の世話をしたし、他にも子供はいたようだし(みんな死んでしまったが)、娘のそばにはいつも母親代わりの乳母がいた。
だから、いざ生きるか死ぬかという命の瀬戸際に立たされた時、娘は母に真実を打ち明けることもできなかったのだろう。
③ 乳母
この芝居はヒロイン・ジュリエットの成長物語でもある。
彼女はまだ14歳の誕生日を迎えてもいない。今で言えば中学一年か二年生だ。
最初は乳母とじゃれ合い、乳母に何もかも打ち明けているが、3幕5場で彼女は、母親代わりのこの乳母と初めて精神的な、そして決定的な決別をする。
逆上した父親に、パリスと結婚しないなら勘当だ、と告げられたジュリエットは、母にすがりついて嘆願する。
ジュリエット: ああ、優しいお母さま、私を見捨てないで!
結婚を延ばして、せめてひと月、いえ一週間、・・(省略)
キャピュレット夫人:話しかけないで、お前にはもう二度と口をききません。
好きなようにおし、もう知りません。(退場)
ジュリエット:ああ、神様!ねえ、ばあや、どうすれば取り止めにできるかしら?
私の夫はこの世に生きていて、私の誓いは天に在る。(省略)
いい知恵を貸して。
どうすればいいの?何か嬉しい言葉はないの?
ばあや、何か慰めは?
乳母:ええ、ええ、ありますとも。
ロミオは追放、戻ってきてお嬢様を妻と呼べる見込みは
万に一つもございません。
仮に戻ってきたとしても、ごくごく内密に。
ですから、こういうことになった以上
伯爵様と結婚なさるのが一番ですわ。
おお、ほんとに素敵な方!
ロミオなんかあの方に較べたら雑巾ですよ。それに、パリス様の
あの青くて、生き生きして、きれいな目、鷲だってかないっこない。
今度の結婚でお嬢様が幸せにおなりになるのは間違いありません。
だって、前のよりずっと上ですもの。そうでないとしても
前のお相手は死んだんです、生きてらしたって
離ればなれで役に立たないなら死んだも同然。
ジュリエット:本気で言ってるの?
乳母:本気で本心、でなきゃ両方とも地獄におちて結構。
ジュリエット:そうなりますよう。
乳母:はあ?
ジュリエット:別に。お前のお陰ですっかり気持ちがなごんだわ。
(省略)
ジュリエット:(乳母を見送って)
罰当たりなおいぼれ!ああ、恐ろしい悪魔!
こんなふうに私に誓いを破らせようとする。
較べものがないと、私の夫を何千回も褒めちぎった同じ舌で
今度はさんざんこきおろす。
どっちが大きな罪かしら?さようなら、これまでは相談相手
だったけど
もう私の心はお前とは縁を切るわ。
神父様のところへ行って救いの道をうかがおう。
何もかも駄目になっても、死ぬ力だけは残っている。
乳母の考え方には彼女なりの処世術が表れている。
追放されたロミオとの結婚生活は、事実上不可能。
パリスは家柄も容貌も立派である。
親があれほどパリスと結婚しろと迫っているのだから、彼と結婚するのがいいに決まっている。
いや、ジュリエットには、もはやそれしか道はない。
乳母にとって、そう考えるのが自然であり合理的であり、そういう風に行動するのが常識だったろう。
だがジュリエットはそうは考えなかった。
たとえ誰も立会人のいない結婚式であっても、神父の手で式を挙げ、誓いの言葉を口にしたからには、それは神の前での正式な結婚式であり、
パリスと結婚したりすれば、重婚という恐ろしい罪を犯すことになる。
それくらいなら死んだ方がましだ、と彼女は思い詰める。
乳母はジュリエットを可愛がり、愛していたが、先ほども書いたように、彼女のことを理解してはいなかった。
彼女が自分とは全然違う人間であって、死を覚悟するまでに精神的に追い詰められているなどとは思いもよらなかった。
この場面はジュリエットにとって大きな転換点だ。
ここで彼女は母親代わりだった乳母と決定的に決別し、真に独立した一人の人間として、自分の人生を生き始める。
ロレンス神父はジュリエットに、42時間仮死状態になる薬を渡し、結婚を逃れるために、それを飲むよう告げる。
結婚式の朝、キャピュレット家の人々と花婿パリスは死んだ(ようになった)彼女を発見し、嘆き悲しみ、葬儀を行い、墓所に埋葬する。
ロミオの召使いは早馬を飛ばしてジュリエットの死をロミオに伝える。
一方、ロレンス神父の使いの修道士は、道中、疫病騒ぎに巻き込まれてロミオに手紙を渡すことができないまま帰って来る。
知らせを聞いて絶望したロミオは、毒薬を買ってキャピュレット家の霊廟に急ぎ、入り口をこじ開けてジュリエットの眠るそばで毒を仰いで死ぬ。
霊廟にジュリエットを迎えに来たロレンス神父は、ロミオの遺体を見て自分の計画が失敗したことを知り、ジュリエットに、ここを出よう、と促す。
だがジュリエットは、自分の傍らに夫ロミオのまだ温かい遺体を見てしまい、もう動くことができない。
死者たちの横たわる、この暗く冷たい霊廟に一人留まり、夫の後を追って死ぬという覚悟が、その胸に宿る。
13歳の娘がたった一人で冷静にこのことを決断し、実行できるまでに成長したのだ。いや、そこまで追い詰められた、と言うべきか。
日曜の夜に初めてロミオと出会ってからまだ4日しか経っていなかった。
シェイクスピアを知らない人でも題名くらいは聞いたことがあるだろう。
だがその中身はと言うと、実は意外と豊かで奥が深い。
ここでは特にジュリエットの置かれた立場とその心情の変化に焦点を当てて考察してみようと思う。
① 父
ジュリエットの父キャピュレットは、当初、さほど頑固で理不尽な父親ではなかった。
1幕2場で、パリスが13歳のジュリエットと結婚したいと再度願い出た時の会話はこんな風だ。(引用は松岡和子訳)
キャピュレット:以前申し上げたことを繰り返すだけです。
娘はまだ世間知らず、
十四の誕生日も迎えてはいない。
あと二回、夏の盛りが過ぎないうちは
嫁入りどきとは思えません。
パリス :もっと若くて幸せな母となる例もあります。
キャピュレット:早く成るものは早く壊れる。
頼みの綱の子供らにはみな先立たれ、残るはあの子ひとり。
あの子だけが私のこの世の望みなのだ。
だが、パリス殿、娘を口説いて心を掴まれるがいい。
わしの意向などは本人の承諾のほんの添えもの、
娘がうんと言えば、わしも同意。
あの子の選択にいやとは言えません。
この時はこんなに理解ある父親だったのに、数日後にはまるで豹変してしまう。
3幕4場でパリスが帰ろうとするのを、彼はふと呼び止める。(魔が差したとしか思えない)
キャピュレット:パリス殿、娘の心は思い切って
わしから差し上げることにしよう。何であれ
わしの言うことなら聞くはずです。いや、必ず聞かせる。
だがちょうどその頃、ロミオは縄梯子を伝ってジュリエットの部屋に登り、二人は夫婦として一夜を過ごしていたのだった・・。
次の場面で母がジュリエットの部屋に来て、父の決めた結婚式のことを話したのは、彼女がロミオと涙ながらに別れた直後だった。
すでに夫と結ばれた彼女にとって、パリスとの結婚など、とうてい受け入れられるはずがなく、彼女はかたくなに拒む。
父親は娘の返事を聞くと、怒り出す。
キャピュレット:木曜には
パリスと一緒に聖ペテロ教会に行くんだ
いやなら簀の子にでも乗せて引きずってってやる。
(略)
くたばれ、こしゃくな親不孝者!
いいか、木曜には教会へ行くんだ。
いやなら、今後二度とわしの顔は見るな、
言うな、答えるな、返事もするな!
(略)
いいか、よく考えろ、わしは冗談など言わない質(たち)だ。
木曜はすぐだ、胸に手を当ててようく考えろ。
わしの娘なら、わしの気に入った男の嫁になれ。
そうでないなら、首くくれ、乞食になれ、飢えて野たれ死にしろ。
断じてお前を我が子とは認めない。
財産もびた一文譲らない。
嘘ではない、よく考えろ、わしは誓ったことは破らないからな。(退場)
当時、貴族の娘にとって、結婚以外の理由で実家を出て生きていくことなど考えられないことだった。
本当に、父親の言うように「飢えて野垂れ死に」するしかなかった。
一人娘を可愛がっていたキャピュレットがなぜこれほど豹変したのだろうか。
おそらくパリスに対して、娘が自分の言う通りにするはず、と自信を持って請け合った手前、引くに引けなくなったこと、
人前で恥をかかされそうになったことがあると思う。
いとこの急死を嘆き悲しんでいる娘のためにと思って考えてやっているのに、親の気持ちも知らないで、というわけだ。
可愛さあまって憎さ百倍。
彼だって、まさか娘がすでに別の男と結婚しているなどとは思いもしなかっただろう。
そう思うと、すべてを知っていた乳母の罪は重い。
だが乳母もまた、ジュリエットをこよなく愛していたことは間違いない。
ただ、愚かで想像力がないため、娘が自分とはまるで違う人間で、まるで違う考え方をするとは思いもよらなかったのだ。
② 母
ジュリエットと母親とは、今日の一般的な母娘のように親しい間柄ではなかった。
1幕3場で母はこんなことを言っている。
キャピュレット夫人:このヴェローナではお前より年下で
もう母親になっている良家のお嬢様がいらっしゃる。
そう言えば私も、まだお前の年頃でお前を産んだのよ。
つまり、この時、母親はまだ28歳くらいということになる!
貴族なので、娘が生まれた直後から乳母が娘の世話をしたし、他にも子供はいたようだし(みんな死んでしまったが)、娘のそばにはいつも母親代わりの乳母がいた。
だから、いざ生きるか死ぬかという命の瀬戸際に立たされた時、娘は母に真実を打ち明けることもできなかったのだろう。
③ 乳母
この芝居はヒロイン・ジュリエットの成長物語でもある。
彼女はまだ14歳の誕生日を迎えてもいない。今で言えば中学一年か二年生だ。
最初は乳母とじゃれ合い、乳母に何もかも打ち明けているが、3幕5場で彼女は、母親代わりのこの乳母と初めて精神的な、そして決定的な決別をする。
逆上した父親に、パリスと結婚しないなら勘当だ、と告げられたジュリエットは、母にすがりついて嘆願する。
ジュリエット: ああ、優しいお母さま、私を見捨てないで!
結婚を延ばして、せめてひと月、いえ一週間、・・(省略)
キャピュレット夫人:話しかけないで、お前にはもう二度と口をききません。
好きなようにおし、もう知りません。(退場)
ジュリエット:ああ、神様!ねえ、ばあや、どうすれば取り止めにできるかしら?
私の夫はこの世に生きていて、私の誓いは天に在る。(省略)
いい知恵を貸して。
どうすればいいの?何か嬉しい言葉はないの?
ばあや、何か慰めは?
乳母:ええ、ええ、ありますとも。
ロミオは追放、戻ってきてお嬢様を妻と呼べる見込みは
万に一つもございません。
仮に戻ってきたとしても、ごくごく内密に。
ですから、こういうことになった以上
伯爵様と結婚なさるのが一番ですわ。
おお、ほんとに素敵な方!
ロミオなんかあの方に較べたら雑巾ですよ。それに、パリス様の
あの青くて、生き生きして、きれいな目、鷲だってかないっこない。
今度の結婚でお嬢様が幸せにおなりになるのは間違いありません。
だって、前のよりずっと上ですもの。そうでないとしても
前のお相手は死んだんです、生きてらしたって
離ればなれで役に立たないなら死んだも同然。
ジュリエット:本気で言ってるの?
乳母:本気で本心、でなきゃ両方とも地獄におちて結構。
ジュリエット:そうなりますよう。
乳母:はあ?
ジュリエット:別に。お前のお陰ですっかり気持ちがなごんだわ。
(省略)
ジュリエット:(乳母を見送って)
罰当たりなおいぼれ!ああ、恐ろしい悪魔!
こんなふうに私に誓いを破らせようとする。
較べものがないと、私の夫を何千回も褒めちぎった同じ舌で
今度はさんざんこきおろす。
どっちが大きな罪かしら?さようなら、これまでは相談相手
だったけど
もう私の心はお前とは縁を切るわ。
神父様のところへ行って救いの道をうかがおう。
何もかも駄目になっても、死ぬ力だけは残っている。
乳母の考え方には彼女なりの処世術が表れている。
追放されたロミオとの結婚生活は、事実上不可能。
パリスは家柄も容貌も立派である。
親があれほどパリスと結婚しろと迫っているのだから、彼と結婚するのがいいに決まっている。
いや、ジュリエットには、もはやそれしか道はない。
乳母にとって、そう考えるのが自然であり合理的であり、そういう風に行動するのが常識だったろう。
だがジュリエットはそうは考えなかった。
たとえ誰も立会人のいない結婚式であっても、神父の手で式を挙げ、誓いの言葉を口にしたからには、それは神の前での正式な結婚式であり、
パリスと結婚したりすれば、重婚という恐ろしい罪を犯すことになる。
それくらいなら死んだ方がましだ、と彼女は思い詰める。
乳母はジュリエットを可愛がり、愛していたが、先ほども書いたように、彼女のことを理解してはいなかった。
彼女が自分とは全然違う人間であって、死を覚悟するまでに精神的に追い詰められているなどとは思いもよらなかった。
この場面はジュリエットにとって大きな転換点だ。
ここで彼女は母親代わりだった乳母と決定的に決別し、真に独立した一人の人間として、自分の人生を生き始める。
ロレンス神父はジュリエットに、42時間仮死状態になる薬を渡し、結婚を逃れるために、それを飲むよう告げる。
結婚式の朝、キャピュレット家の人々と花婿パリスは死んだ(ようになった)彼女を発見し、嘆き悲しみ、葬儀を行い、墓所に埋葬する。
ロミオの召使いは早馬を飛ばしてジュリエットの死をロミオに伝える。
一方、ロレンス神父の使いの修道士は、道中、疫病騒ぎに巻き込まれてロミオに手紙を渡すことができないまま帰って来る。
知らせを聞いて絶望したロミオは、毒薬を買ってキャピュレット家の霊廟に急ぎ、入り口をこじ開けてジュリエットの眠るそばで毒を仰いで死ぬ。
霊廟にジュリエットを迎えに来たロレンス神父は、ロミオの遺体を見て自分の計画が失敗したことを知り、ジュリエットに、ここを出よう、と促す。
だがジュリエットは、自分の傍らに夫ロミオのまだ温かい遺体を見てしまい、もう動くことができない。
死者たちの横たわる、この暗く冷たい霊廟に一人留まり、夫の後を追って死ぬという覚悟が、その胸に宿る。
13歳の娘がたった一人で冷静にこのことを決断し、実行できるまでに成長したのだ。いや、そこまで追い詰められた、と言うべきか。
日曜の夜に初めてロミオと出会ってからまだ4日しか経っていなかった。
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