8月7日、世田谷パブリックシアターでD.ハロワー作「BLACKBIRD」を観た(演出:栗山民也、翻訳:小田島恒志)。
2007年度オリビエ賞最優秀作品賞受賞作品とのこと。
音楽は一切ない。これは非常に珍しい。
舞台はある会社の一室。
若い女の突然の訪問に怯える中年男。次第に二人の過去が明らかになってくる。男は12歳の少女だった彼女と関係を持った罪で服役し、今は名前も住所も変えて生きている。
だが彼女の方は同じ名前で同じ家に住み続け、町の人たちから白い目で見られ、友人たちを失っていた。
ということは、彼女は復讐のためにやって来たのだろうか。
しかし、事の真相は我々が想像していたような単純なものではなかった。
男が異常だったと言うよりは、むしろ少女の方が異常に早熟だったのだ。
彼女はあの日よりずっと前から男に恋していた、と言う。男と男の恋人との仲を裂こうとまでしていた、と。
この場合、少女だけが被害者と言えるだろうか。
もちろん、まともな40男なら12歳の少女の誘いに乗ったりはしないだろうから、男の側にも問題はある。
だが事件の後、通りで彼女を見つけた男の恋人は、彼女に近づいて平手打ちしたという。つまり彼女にとって、この少女こそが誘惑者であり、加害者とまでは言えなくとも、少なくとも少女さえいなければ二人の仲は裂かれることなく、男は刑務所に入ることもなかったということなのだ。
男と成長した少女、この二人のセリフの応酬だけで、「あの日」の情景がまざまざと浮かび上がる。このあたりのセリフの巧みさ。
二人の愛の逃避行は、ちょっとした行き違いから失敗し、刑事事件に発展してしまう。だが、少女があと数年年取ってさえいれば、特に問題にもならず、よくある「少女の家出」に過ぎなかっただろう。
ところで、途中で男が突然ゴミ箱の中身を撒き散らし始め、女も一緒になって部屋中ゴミだらけにするシーンがあるが、あれは一体何なのか?さっぱり分からない。イギリス人なら分かるのか??
伊藤歩は声もよく、セリフ回しもなかなかうまい。舞台経験は浅いらしいが、熱演だ。内野聖陽も少女に振り回される情けない男を好演。
終わり方はあっけなく、力が足りない。それまでは非常に面白いのに残念だ。ただ、曖昧さは大いに結構。
蛇足だが、「クリネックス」は日本語では普通「ティシュー」もとい「ティッシュ」と言うのだから、そう訳したほうがいいのでは?
2007年度オリビエ賞最優秀作品賞受賞作品とのこと。
音楽は一切ない。これは非常に珍しい。
舞台はある会社の一室。
若い女の突然の訪問に怯える中年男。次第に二人の過去が明らかになってくる。男は12歳の少女だった彼女と関係を持った罪で服役し、今は名前も住所も変えて生きている。
だが彼女の方は同じ名前で同じ家に住み続け、町の人たちから白い目で見られ、友人たちを失っていた。
ということは、彼女は復讐のためにやって来たのだろうか。
しかし、事の真相は我々が想像していたような単純なものではなかった。
男が異常だったと言うよりは、むしろ少女の方が異常に早熟だったのだ。
彼女はあの日よりずっと前から男に恋していた、と言う。男と男の恋人との仲を裂こうとまでしていた、と。
この場合、少女だけが被害者と言えるだろうか。
もちろん、まともな40男なら12歳の少女の誘いに乗ったりはしないだろうから、男の側にも問題はある。
だが事件の後、通りで彼女を見つけた男の恋人は、彼女に近づいて平手打ちしたという。つまり彼女にとって、この少女こそが誘惑者であり、加害者とまでは言えなくとも、少なくとも少女さえいなければ二人の仲は裂かれることなく、男は刑務所に入ることもなかったということなのだ。
男と成長した少女、この二人のセリフの応酬だけで、「あの日」の情景がまざまざと浮かび上がる。このあたりのセリフの巧みさ。
二人の愛の逃避行は、ちょっとした行き違いから失敗し、刑事事件に発展してしまう。だが、少女があと数年年取ってさえいれば、特に問題にもならず、よくある「少女の家出」に過ぎなかっただろう。
ところで、途中で男が突然ゴミ箱の中身を撒き散らし始め、女も一緒になって部屋中ゴミだらけにするシーンがあるが、あれは一体何なのか?さっぱり分からない。イギリス人なら分かるのか??
伊藤歩は声もよく、セリフ回しもなかなかうまい。舞台経験は浅いらしいが、熱演だ。内野聖陽も少女に振り回される情けない男を好演。
終わり方はあっけなく、力が足りない。それまでは非常に面白いのに残念だ。ただ、曖昧さは大いに結構。
蛇足だが、「クリネックス」は日本語では普通「ティシュー」もとい「ティッシュ」と言うのだから、そう訳したほうがいいのでは?
ゴミ箱の中身をひっくり返してたシーンのことですが…
私なりの解釈では、
今まで、臭いものにフタをして過去の事を封印して生きてきたレイが、ウーナとの、互いの過去のいきさつの打ち明け話を通して、洗いざらい過去の事や気持ちをぶちまけて吐き出しきった…っていうのを、象徴した場面かなぁ…って思いました。
ちょうど、芝居の最初に、ウーナが突然レイの前に現れた時には、レイは慌てて、散らかってたゴミをゴミ箱に入れてフタをしてたから、居心地悪く警戒心抱いてる感じがしていたので…(また、散らかってた部屋を整えようとして、体裁整えるのにだけ必死な感じがしてましたが…。)
最初の場面と対比させて、レイは、しまい込んでたものや感情を吐き出しきってスッキリした開放感で…ウーナは、そこに愛があったのではって感じること出来て…二人ともハイになってる感じかな?見てる側(観客)にも、二人のわだかまりがなくなったように感じさせて、ホッとさせといて…
で、明るく終わるかと思いきや…
最後の少女登場!
なんとなく、余韻というか、疑惑めいたものを残して幕切れ…
かなぁ…?
って、見終わった後に、色々考えました。
ご指摘ありがとうございます!なるほどと思いました。最初のシーンを思い出すと確かにおっしゃる通りですね。でもあの場で観ていてそういうことに気がつかなかったのが残念です。
これを機会に、これからもいろいろと教えて下さいね。