ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

イプセン作「野鴨」

2016-06-20 23:59:26 | 芝居
4月18日文学座アトリエで、H.イプセン作「野鴨」をみた(演出:稲葉賀恵)。

写真師ヤルマールは妻ギーナと一人娘ヘドヴィク、そして父エクダルとささやかに暮らしている。
ギーナのかつての雇い主ヴェルレの息子であるグレーゲルスは、友人ヤルマールに家族の秘密を告げるが・・・。
真実は人間を幸福にするか?

ヴェルレ家のパーティ。一人息子グレーゲルス(中村彰男)が十数年ぶりに帰ってきたのを祝う会に、彼の友人ヤルマール(清水明彦)も招かれている。
二人は大学卒業以来の再会。ヤルマールはヴェルレ氏の世話で写真師の資格をとり、開業し、ギーナという女性と結婚している。その女性の名前を
聞いてグレーゲルスは驚く。彼女は昔ヴェルレ家で女中として働いていたのだ。この辺から観客は話の行方が分かってくる。

この話、どこかで聞いたような気がしたら、かつて見た、やはりイプセンの「幽霊」という芝居にそっくりの状況があった。
裕福な家庭の主人が、その家の女中に手を出して子供が出来てしまい、あわてて別の男と結婚させるが・・・という話が副筋だった。
女中の子の父親が、実はその家の主人・・・というのはイプセンの idee fixe のようだ。デンマークのキェルケゴールの出自もそうだった。
北欧ではそういうことが結構多かったのだろうか。

ヤルマール役の清水明彦は、前半と後半の変貌ぶりが鮮やか。子供っぽい、弱い性格の男をコミカルに描き出している。
ギーナ役の名越志保は、いつもながら落ち着いた声が美しい。
グレーゲルス役の中村彰男は声に力がなく、気持ち悪い。このお節介な男を演じるに当たり、わざとそうしているのかも知れないが。
いや、そうだとしたら、その試みは成功している。まったく、この男の言動は腹立たしい。世間知らずの正義漢で、こいつが出しゃばったことを
したばっかりに、貧しいが温かいこの家庭は崩壊してしまうのだから。

ヤルマールは単純で子供っぽいところがある。娘の気持ちを思いやることができず、悲劇を招いてしまう。あまりにも弱く愚かだ。
ギーナはいつも穏やかな女性だが、後半、重大な局面で開き直るあたり、どう解釈してよいのか難しい。したたかとか言いたくはないが。

イプセンはやはり作劇術がうまい、と改めて思った。
だが今回の演出は思わせぶり。特に舞台中央のくぼみの水たまり。あれはどういう意味があるのか。 

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