3月8日シアターサンモールで、ブリケール&ラセイグ作「OH!マィママ」を見た(劇団NLT公演、演出:釜紹人)。
フランスの国会議員アルベールの妻マリィは、25年前に謎の失踪。
一人息子のルイは、アルベールとマリィの幼なじみのマチルドが面倒を見てきました。
ルイの結婚も決まり、一家が幸せいっぱいのある日、
国連の人権委員、アメリカの陸軍大佐フランクがアルベールを訪ねてきます。
ところがフランクの話題と視線はルイのことばかり。挙句に結婚にまで口を出す始末。
一体フランクとは何者なのか?フランクにはとんでもない秘密があったのです!!
それを知ったアルベールは大パニック。この秘密だけは決してルイに知られてはならない!
知られたら全ては破滅だ。七転八倒の大騒動!!こんなに笑えるのにどうしてこんなに切ないの?
現代ブールヴァ―ルコメディの自信作です!(チラシより)
パリのアパルトマン。黒ワンピースに白いエプロンというメイド姿のジャサント(吉越千帆)が、家具にはたきをかけている。
彼女はスウェーデンから来た留学生で、家事をする代わりに部屋と食事をタダにしてもらっている。
この家の一人息子ルイ(小泉駿也)が来る。
彼は大学を出て建築家になったばかり。
最近、財閥令嬢イネスと結婚が決まったばかりだが、ジャサントとも深い仲だった。
父親のアルベール(渡辺力)も来る。
ルイが出て行くと、アルベールはジョサントを抱きしめる!
何と、ジョサントはアルベールとも深い仲だった!
そしてこのアルベールも、25年間家事をやってくれているマチルドと再婚することになっている。
去年ようやく元妻の死亡が認定され、晴れて独身に戻れたのだ。
この再婚は、親子同時に結婚したら支持率がアップするだろうという政治家らしい考えから思いついたのだ。
ここにアメリカ人のフランク(海宝弘之)がやって来る。
アルベールと仕事の話をするはずが、なんやかんやとプライベートなことを尋ねる。
(観劇前にチラシを読んだだけで、この男が何者なのか、敏感な人は気づいてしまうだろう)
彼こそは、かつてのマリー・ルイーズで、当時外務省に勤務しており、スパイ騒動に巻き込まれて米国に逃亡する羽目になった。
そこで別人になりすますしかなくなるが、どうせならと性別も変えることにし、顔も整形したのだった。
彼がようやく正体を告白すると、最近心臓が弱っているアルベールは倒れてしまい、薬を飲む。
フランクはジョサントともすぐに親しくなる。
マチルド(安奈ゆかり)が来る。黄金色の衣装に身を包んだ堂々たる体格のひとで、すこぶる女性的なタイプ。
フランクを見ると「何だか胸騒ぎがするの」と言い出す。
彼女は旧友マリー・ルイーズについて語る。
本当は女性が好きだったんじゃないかしら。
アルベールが本当に愛していたのは私なの。
アルベールは子供を欲しがっていたの。でもマリー・ルイーズはそうじゃなかった。
あの人の策略なの。私への当てつけで子供を産んだの・・・。
こんな話を聞くと、彼女とマリー・ルイーズは仲が悪かったのかと思うが、実はそうではなかった。
二人は学校時代から喧嘩ばかりしていたけど、実は密かに惹かれ合っていた・・。
ルイも、フランクに何やら不思議な感じを抱いており、家族がみんなして自分に何か隠していると感じる。
フランクを追及し、「秘密が分かった!」と大興奮するルイ。
突如流れるドラマチックな音楽を背景に「わかった!」と叫ぶので、観客は身構えるが。
彼はフランクを抱きしめて「パパ!」と叫ぶのだった(笑)。
フランクは困惑するが、すぐに心を決めて話を合わせることにし、実のパパのふりをする。
二人から話を聞いたアルベールは、自分がのけ者にされたため、当然ながら面白くない。
そこでマチルドが、実は私が・・・と言い出し、またまた話がややこしくなる。
こういう芝居の場合、最後にはルイが真実を知ることになると普通思うでしょう。
ところがどっこい、違うんですよ。
このマチルドという人が、意外な動きをするのです。
創造力が豊かな彼女は、ルイのためを思って、そしてアルベールのためにも、とんでもない話をでっち上げる。
実は私がルイの母親で、妊娠してしまったことを厳しい父親に知られたくなくて、吹雪の夜、山小屋で出産したの、と、必要以上にドラマチックな物語を語り出す。
ルイが、僕の誕生日は5月ですよ、と言っても聞かない(笑)
自分の捏造する物語にすっかり酔ってしまっている。
そして、実は父親がフランクなのかアルベールなのかわからない、とまで言い出すのだった(笑)
もちろんアルベールがのけ者にならないためだ。
こうして話はどんどん事実から逸れて行ってしまうが、ルイは単純に、そうだったのか!みたいに喜び、4人は盛り上がる。
が、ルイがふと「じゃあ、マリー・ルイーズって誰?」と(当然ながら)尋ねると、マチルド「あれは私のペンネームなの」。
4人はシャンパンで乾杯する。
そこにイネスから電話。
彼女の話を聞いたルイは呆然として電話を切り、「できちゃったって」。
みなは「おめでとう!」アルベール「お前もできちゃった婚か、さすが俺の息子だな」。
ルイ「僕はまだキスしかしてないんだよ!」
「僕の他に男がいたってこと・・」
これで彼の結婚の話はなしになりそうだ。・・・
途中ひょんなことから、ジョサントがルイとアルベールの両方と「ベッドを共にしていた」ことがバレる。
マチルドは「二股かけてたのね!」と驚き呆れ、彼女をクビにするが、ラストでは思い直して、今後もいて欲しいと告げる。
最後にジョサントとフランクが二人だけになると、ジョサントが何と2年前まで男だったと告白。
フランクは似た者同士として彼女を励ます。
だが、このエピソードはつけ足し感が強すぎて、むしろない方がよかった。
非常に面白い芝居だったが、ルイがだまされたまま、その場の思いつきで、皆が適当にお茶を濁して終わるのが残念だった。
いろいろすったもんだはあっても、結局最後には彼が真実を知ることになるだろうと思い込んでいた。
筆者は、"the truth ,the whole truth ,and nothing but the truth " (裁判所での宣誓の言葉)という言葉が好きなので。
それに、チラシに「この秘密だけは決してルイに知られてはならない!知られたら全ては破滅だ」とあるが、
どうしてそんな風に思うのかさっぱりわからない。
とは言え、演出もよく、音楽の使い方も楽しい。
「美しく青きドナウ」、フォーレのレクイエム、「ワルキューレ」「ツアラツストラはかく語りき」などが
要所要所に突然流れ、笑わせ、盛り上げてくれる。
役者は皆さん好演。
特にマチルド役の安奈ゆかりが素晴らしい。
ルイ役の小泉駿也も思いっきり楽しそうに演じている。
ジョサント役の吉越千帆もうまい。
フランス人は、しまいに真実が明らかになって「しみじみする」のが好きじゃないのかも知れない。
それくらいなら、最後まで真実が明らかにならずモヤモヤする方がましなのかも。
いや、そもそもそんなことでモヤモヤしたりしないのかも知れない。
フランスの国会議員アルベールの妻マリィは、25年前に謎の失踪。
一人息子のルイは、アルベールとマリィの幼なじみのマチルドが面倒を見てきました。
ルイの結婚も決まり、一家が幸せいっぱいのある日、
国連の人権委員、アメリカの陸軍大佐フランクがアルベールを訪ねてきます。
ところがフランクの話題と視線はルイのことばかり。挙句に結婚にまで口を出す始末。
一体フランクとは何者なのか?フランクにはとんでもない秘密があったのです!!
それを知ったアルベールは大パニック。この秘密だけは決してルイに知られてはならない!
知られたら全ては破滅だ。七転八倒の大騒動!!こんなに笑えるのにどうしてこんなに切ないの?
現代ブールヴァ―ルコメディの自信作です!(チラシより)
パリのアパルトマン。黒ワンピースに白いエプロンというメイド姿のジャサント(吉越千帆)が、家具にはたきをかけている。
彼女はスウェーデンから来た留学生で、家事をする代わりに部屋と食事をタダにしてもらっている。
この家の一人息子ルイ(小泉駿也)が来る。
彼は大学を出て建築家になったばかり。
最近、財閥令嬢イネスと結婚が決まったばかりだが、ジャサントとも深い仲だった。
父親のアルベール(渡辺力)も来る。
ルイが出て行くと、アルベールはジョサントを抱きしめる!
何と、ジョサントはアルベールとも深い仲だった!
そしてこのアルベールも、25年間家事をやってくれているマチルドと再婚することになっている。
去年ようやく元妻の死亡が認定され、晴れて独身に戻れたのだ。
この再婚は、親子同時に結婚したら支持率がアップするだろうという政治家らしい考えから思いついたのだ。
ここにアメリカ人のフランク(海宝弘之)がやって来る。
アルベールと仕事の話をするはずが、なんやかんやとプライベートなことを尋ねる。
(観劇前にチラシを読んだだけで、この男が何者なのか、敏感な人は気づいてしまうだろう)
彼こそは、かつてのマリー・ルイーズで、当時外務省に勤務しており、スパイ騒動に巻き込まれて米国に逃亡する羽目になった。
そこで別人になりすますしかなくなるが、どうせならと性別も変えることにし、顔も整形したのだった。
彼がようやく正体を告白すると、最近心臓が弱っているアルベールは倒れてしまい、薬を飲む。
フランクはジョサントともすぐに親しくなる。
マチルド(安奈ゆかり)が来る。黄金色の衣装に身を包んだ堂々たる体格のひとで、すこぶる女性的なタイプ。
フランクを見ると「何だか胸騒ぎがするの」と言い出す。
彼女は旧友マリー・ルイーズについて語る。
本当は女性が好きだったんじゃないかしら。
アルベールが本当に愛していたのは私なの。
アルベールは子供を欲しがっていたの。でもマリー・ルイーズはそうじゃなかった。
あの人の策略なの。私への当てつけで子供を産んだの・・・。
こんな話を聞くと、彼女とマリー・ルイーズは仲が悪かったのかと思うが、実はそうではなかった。
二人は学校時代から喧嘩ばかりしていたけど、実は密かに惹かれ合っていた・・。
ルイも、フランクに何やら不思議な感じを抱いており、家族がみんなして自分に何か隠していると感じる。
フランクを追及し、「秘密が分かった!」と大興奮するルイ。
突如流れるドラマチックな音楽を背景に「わかった!」と叫ぶので、観客は身構えるが。
彼はフランクを抱きしめて「パパ!」と叫ぶのだった(笑)。
フランクは困惑するが、すぐに心を決めて話を合わせることにし、実のパパのふりをする。
二人から話を聞いたアルベールは、自分がのけ者にされたため、当然ながら面白くない。
そこでマチルドが、実は私が・・・と言い出し、またまた話がややこしくなる。
こういう芝居の場合、最後にはルイが真実を知ることになると普通思うでしょう。
ところがどっこい、違うんですよ。
このマチルドという人が、意外な動きをするのです。
創造力が豊かな彼女は、ルイのためを思って、そしてアルベールのためにも、とんでもない話をでっち上げる。
実は私がルイの母親で、妊娠してしまったことを厳しい父親に知られたくなくて、吹雪の夜、山小屋で出産したの、と、必要以上にドラマチックな物語を語り出す。
ルイが、僕の誕生日は5月ですよ、と言っても聞かない(笑)
自分の捏造する物語にすっかり酔ってしまっている。
そして、実は父親がフランクなのかアルベールなのかわからない、とまで言い出すのだった(笑)
もちろんアルベールがのけ者にならないためだ。
こうして話はどんどん事実から逸れて行ってしまうが、ルイは単純に、そうだったのか!みたいに喜び、4人は盛り上がる。
が、ルイがふと「じゃあ、マリー・ルイーズって誰?」と(当然ながら)尋ねると、マチルド「あれは私のペンネームなの」。
4人はシャンパンで乾杯する。
そこにイネスから電話。
彼女の話を聞いたルイは呆然として電話を切り、「できちゃったって」。
みなは「おめでとう!」アルベール「お前もできちゃった婚か、さすが俺の息子だな」。
ルイ「僕はまだキスしかしてないんだよ!」
「僕の他に男がいたってこと・・」
これで彼の結婚の話はなしになりそうだ。・・・
途中ひょんなことから、ジョサントがルイとアルベールの両方と「ベッドを共にしていた」ことがバレる。
マチルドは「二股かけてたのね!」と驚き呆れ、彼女をクビにするが、ラストでは思い直して、今後もいて欲しいと告げる。
最後にジョサントとフランクが二人だけになると、ジョサントが何と2年前まで男だったと告白。
フランクは似た者同士として彼女を励ます。
だが、このエピソードはつけ足し感が強すぎて、むしろない方がよかった。
非常に面白い芝居だったが、ルイがだまされたまま、その場の思いつきで、皆が適当にお茶を濁して終わるのが残念だった。
いろいろすったもんだはあっても、結局最後には彼が真実を知ることになるだろうと思い込んでいた。
筆者は、"the truth ,the whole truth ,and nothing but the truth " (裁判所での宣誓の言葉)という言葉が好きなので。
それに、チラシに「この秘密だけは決してルイに知られてはならない!知られたら全ては破滅だ」とあるが、
どうしてそんな風に思うのかさっぱりわからない。
とは言え、演出もよく、音楽の使い方も楽しい。
「美しく青きドナウ」、フォーレのレクイエム、「ワルキューレ」「ツアラツストラはかく語りき」などが
要所要所に突然流れ、笑わせ、盛り上げてくれる。
役者は皆さん好演。
特にマチルド役の安奈ゆかりが素晴らしい。
ルイ役の小泉駿也も思いっきり楽しそうに演じている。
ジョサント役の吉越千帆もうまい。
フランス人は、しまいに真実が明らかになって「しみじみする」のが好きじゃないのかも知れない。
それくらいなら、最後まで真実が明らかにならずモヤモヤする方がましなのかも。
いや、そもそもそんなことでモヤモヤしたりしないのかも知れない。
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