ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

アーサー・ミラー作「みんな我が子」

2012-01-10 15:13:19 | 芝居
12月5日新国立劇場小劇場で、アーサー・ミラー作「みんな我が子」をみた(演出:ダニエル・カトナー)。

第二次大戦後のアメリカの或る家族の裏庭での一日の出来事。ジョー(長塚京三)は自らが戦争中に犯した過ちを
正当化し、真実が明らかとなることに怯えながらも強い父親・夫として振る舞う。妻ケイト(麻実れい)は夫に従順
ではあるが、3年前戦争で行方不明となった息子ラリーの死を受け入れることができないでいる。彼らはもう一人の息子
クリス(田島優成)と共に暮らしている。
そこにジョーのかつての仕事のパートナーの娘であり、ラリーの恋人だったアン(朝海ひかる)がやってくる。一見
平穏だった家族生活や近隣との関係は、彼女の来訪をきっかけに狂い始める・・・。

白壁の二階建ての家の裏庭。ベンチもテーブルも何もかも白(美術:堀尾幸男)。「白く塗りたる墓」か。

アンを呼んだのはクリスだった。彼は父に、彼女と結婚したいと告げるが、それは母に、息子ラリーの死を認めさせる
ことであり、困難は目に見えていた。とそこに、アンの兄で弁護士のジョージ(柄本佑)がやってくる。牢の中の父と
面会した後まっすぐここに乗り込んで来たと知って、夫婦は怯える・・。

麻美れいはいつもながら素晴らしい。圧倒的な存在感。青いドレスがよく似合って美しい。だが、この役には
ちとゴージャス過ぎる。この人には王妃エレノア(冬のライオン)やエリザベス一世がぴったりなのだから。
朝海ひかるは声もよく通って好演。
柄本佑はとても弁護士には見えない。

作者はどういう立場なのか、宗教的要素を注意深く排除しているように思われる。普通のアメリカの芝居なら
「ああ、神様」とかそういったセリフが当然出てくるはずの箇所で、登場人物たちは決して神の名を口にしない。

クリスの父に対する尊敬の念と全幅の信頼感が、いかにもアメリカ的。

保身に躍起となるジョーの気持ちは分かるが、彼は自分の良心とどう折り合いをつけていたのだろうか。特に、仲間に
責任をすべて押し付けて刑務所暮らしをさせていることに対してやましさを感じていないらしいのには驚く。この男、
既に信仰を捨てているのだろうか。神を恐れる心が残っているならとても平静ではいられまい。

クリスは理想主義者として描かれる。かつインテリ(父と違って)。積極的なアンと比べるといささか草食系。
昔のアメリカにもこういう男子がいたのかと思うとおかしい。

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