15日の「革命終焉」は天龍の引退試合以外にも10試合が並んだ。
ライガーの掌打、カブキの毒霧、越中のケツ、組長の脇固め、そして長州のラリアットが
1枚のチケットでおがめたのだから、これは天龍版「夢のオールスター戦」だったと言える。
そんな10試合の中で、いまだに悪い意味で物議を醸しており、ワタシもひと言語りたいのが、
セミの「藤田和之・関本大介×諏訪魔・岡林裕二」
藤田と諏訪魔がとにかく全くかみ合わず、プロレスにならなかった。
一騎打ちへの機運を高めるため、天龍がわざわざお膳立てした両国の舞台。
だから「前哨戦」にするのはよい。しかし「両者のシングルが見たい」と
観客にネクストを期待させる攻防を2人はまるで見せられなかった。
最初のにらみ合いにしても、「視殺戦」というよりは
「お互いに挑発しまくったが、いざ向かい合ったらノープランで双方フリーズ」
という印象が強い。藤田が諏訪魔をジャーマンで、諏訪魔が藤田をバックドロップで
投げ捨てる場面こそあったが、全てが単発に終わり、
1万人の観客に「うねり」を起こすには、ほど遠いレベルの攻防に終始した。
挑発的な態度を振りまきながら、相手の攻撃をスカすばかりの藤田は、
プロレスラーの悪い手本としての「小川直也」そのもの。
IWGPのベルトを三度巻いた男がここまでダメになったかと悲しくなった。
諏訪魔はプロレスをしようという気持ちが見えた分だけ気の毒だったが、
武藤敬司や秋山準といったレスラーの近くにいながら何を学んだのかと言いたい。
「俺が、俺が」のプロレスを続けて「暴走専務」とまつり上げられた成れの果てが
この不様な試合である。ネクスト・ジャンボ? とてもそんな器には見えなかった。
いつぞやの中邑真輔の言葉を借りれば「とんだ期待外れのゴリライモだぜ」
悪い時には悪いことが重なるもので、諏訪魔の株が大暴落した翌日に鼓太郎までも退団。どうなる秋山全日本?
この試合の唯一の救いが、お互いのパートナーが大日本の関本&岡林だったこと。
この2人がお互いのパートナーのお守りをやめて、普段から大日本で繰り広げている
ド迫力の攻防をそのまま見せたことで、かろうじて観客は溜飲を下げることができた。
特に、藤田をラリアットでふっとばし、アルゼンチンで担ぎ上げた岡林には驚いた。
関本から3カウントを奪ったゴーレム・スプラッシュも説得力十分。
さすが現・BJW認定世界ストロングヘビー級王者である。長期欠場からよくぞここまで・・・
全日本やNOAH、ゼロワンでの試合を見てきたから、
セキオカの実力は分かっていたが、今回の両国でさらに惚れ直した。
最後にひと言。「こーいう不穏試合も含めてプロレスなんだよ」という声も聞こえる。
それは決して間違ってはいない。ただ、ワタシのように30年以上プロレスを見ていれば、
そんな「諦観」も抱けるが、若いファンはこの手の試合への「免疫」が乏しい。
その意味において、スキャンダルも売りの一つだった昭和のプロレスに比べて、
常にリング上の内容が問われ続ける現在のプロレスの方が厳しい時代を生きているのだろう。