ピアニスラー

ゴールド・フィンガー、ハイパー・ピアニスト矢沢朋子のブログ

腱鞘炎(関節炎):その4

2008年08月31日 | 美容、健康
『頭は使えば使うほど良くなるが、体は使えば使うほど悪くなる』

んだそうですー

一口に腱鞘炎と言っても、人間の手は他の動物と違って色んなことが出来るため、その症状もかなり個人差があるようです。

ヤザワの場合、発症して1ヶ月ほど経った頃:手のひらが紫に内出血をしたようになりました。

その後も指と指の間が内出血を起こしたり、手の甲側が指先から緑にアザのようになったり。

「ひぇ~・・アタシの手は一体どうなるの~

さすがに楽天的なヤザワもコワくなりましたが、1週間ほどすると消えて、その度に指が楽になり動くようになっていきました。

「それは寝ている間に痛くて苦しんで床とかを叩いたりしてるんじゃないの打撲してるのよ、寝てる間に!アザになる腱鞘炎とか外上果炎なんて聞いたことないんだけど」と友人たちは口を揃えて言うし。

でもね、次に治る所がアザになるのよね。まるで予告みたいに。人体の不思議。

ブロック注射の治療は1ヶ月で見切りをつけ、キウレイコンを2日塗っては1日休み(火炎地獄なので・・)、整体に3日1度のペースで通いだしました。

キウレイコンを寝不足でふらふらになりながらも貼り続けているうちに、整体もできるように腫れが(炎症ね)引いていったのでした。本当に辛かったです。治すのも地獄のようでした。。

「いやー・・ピアノってすごい楽器ですねー・・ボクサーだってこうはなりませんよ」と整体の先生に感心(?)されるし。


腕全体の腫れが引いてみれば:肘が問題だった!肘の中に何か潜んでる!というようなコリが石のようにあるのが分かるのでした。

「うわーこりゃひどい。一体、何の曲を弾いたの?」と音楽家が多数来る名先生に聞かれて、「リゲティです!」とか答えてたわけです。

ヤザワに少し気持ち的な余裕が出来て、先生とも無駄話をしながら指圧とかしてもらえるようになった頃:「さすがに背筋も上腕もすごい筋肉だよねー。もともと筋肉質なんだろうけど、それだからこれまで事故も故障もなかったんだろうねー。もともと弾き方もいいけどねー。やっぱりピアニストはタフだよね」と言われて、

「まあ筋肉質ではあるけれど鍛えてもいるから」と答えたら「へえ?何?水泳?(←ピアニストの筋力アップに最適な運動とされている)」と聞かれたので「有酸素運動を取り入れた筋トレ。ダンベルでボクササイズしたり、腹筋とかもね」と答えた瞬間、

「それだ!」と先生が叫んだのでした。

「?」「ダンベルはどれくらいの重さ?」「2キロ」「両方で?」「いや1つが」

「・・・それは重すぎるよ・・この肘はダンベルだね」「ええだって17歳からずーっとやってるんですよ」「だってもう17歳じゃないでしょう?」「・・・・・」

ヤザワがしていた筋トレは、「表層筋肉」を使う、スピードや瞬間的な力技のための筋肉で、スポーツ選手が使う筋肉なんだそうだ。

記録を競うスポーツ選手ならもう引退している年になっていたヤザワ。ピアニストの現役寿命が長いのは、同じ運動でも「深層筋肉」を使う運動なので、スポーツとはやはり別物らしい。
しかも!表層筋肉をあまりに酷使すると、内蔵に負担がかかりすぎて病気になるらしい。引退したスポーツ選手に内臓疾患が多いというのも、ひとえに時差でくる職業病ということらしい。

という話を整体の先生に聞きました。ヤザワの内蔵はどうなるの

「まー選手ってわけじゃないから、まだそこまでの心配はないでしょう」という言葉にホッとしたヤザワ。「でも」と先生が話し続けます。「こうやって自己流でトレーニングして体を壊してる人ってけっこーいるんですよ。スポーツクラブとかでも、プールの監視員みたいなことしかしてないでしょう?道具だけ貸してくれて」

ああ恥ずかしい。自分が「習い事」とはどういうものか、きちんと習ったことがあるのか自己流なのか、というのは一番分かってたはずなのに。しかも何年も続けばどんな状態かをチェックする必要もあるということも(ピアノで)知っているのに。ピアノ以外で応用が利かなかったなんて。

「ともかく炎症が収まるまで(痛み、疼きがなくなるまで)は腹筋もしてはだめ。腕に力が入るからね。体力作りはウォーキングにしてください。ランニングはだめですよ!」とのお達し。

表層筋肉が整体で少しほぐれてきた(←悶絶的に痛い)あたりで、肘に潜む巨大なしこり、肘関節周りの筋肉が炎症と疲労で硬直している状態をほぐすために、鍼に通いだしました。これがまた!痛いのなんのって!

「これだけ悪いと痛いでしょうねー」とまさに人ごとで鍼を打つ先生。「うふふ~・・ちょっと痛いですよー?」

ぎょえーっ!いたーいっ!

「ねー痛いでしょうー?でも治りますよー」と背骨からずーっと鍼を打って、痛みでヘンに硬直していた全身のバランスも整えてくれたのでした。ずっと「ウチの布団は硬い。もう換えるかいっそテンピュールにしようか?」と思っていた布団がその晩、ふかふかに感じて1ヶ月半ぶりに熟睡したのでした!布団ではなくて背骨とその周りが問題だったわけだ。

先生にそう報告したら:「我慢強いですねー。そこまで悪くなるまで我慢してたんですよー」と半分呆れられました。

そして炎症が収まって表層筋肉が取れたら(なくなったら)、改めて「深窓筋肉トレーニング」を開始して完全に体質改善をはかるんだそうだ。

「同じ事をしたら次回のダメージは今回の比ではありませんよ」と口を揃えて整体も鍼の先生も仰ります。分かってますヤザワだって生徒にはそんなようなこと言ってます(注:ダンベル指導はしておりません)
くそーバカヤロー、アタシ!あームカつく!アタシ!

もうしばらく鍼とお灸(←バカにしてたけどものすごい効き目!)、整体のお世話になります。そういえば鍼灸治療は感受性が鋭いほど効くそうです。エコライフが役立ちました!

さー17歳ではないこの年で!(笑)体を作り変える!
一体、どんなカラダにヤザワは生まれ変わるのでしょう

つづく


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腱鞘炎(+関節炎):その3

2008年08月30日 | 美容、健康
      ヘンミの実家菜園(札幌)の完全無農薬野菜ディナー。

味が全然違います!そして皮が薄い!

農薬を使えば使うほど、野菜はその薬の毒性から身(実?)を守るために皮が厚くなって、食べた時に口の中に皮が残るようになります。実は少ないし。

見た目は同じトマトでもインゲンでも、全くの別物。

この野菜を育てるのに、虫を捕るだけでも大変。と、この1ヶ月の夏休みのほとんどを野菜作りに注いでいるヘンミ。ピアノはどーした?(笑)

美食不毛の地、シュトゥットガルト(←偏見)に暮らしながら、軽いスパークリングのドイツ・ワインのセレクトも素晴らしいヘンミ。お料理も上手なのは美食の地、北海道の出身だから?

6年前くらいに、趣味というか基礎体力作りのためのはずだったモダン・ダンスで肩を壊したヘンミ。肩は治りが遅いらしく2~3年ほどは調子が悪かったらしいけれど、ピアノはもとい農業ができるまでに完全復活。ダンベルの筋トレで肘を壊したヤザワ(!)に:「分かるよ。ピアノ弾くのに体力つけなくちゃと思って頑張っちゃったんでしょう?アタシもそうだったから」と慰めてくれました。

そう。17歳からずっとやってた2キロのダンベルを使った筋トレのプログラムが、歳を取ってだんだん1・5キロとか軽くしていくか回数を減らすとかするべきだったのに、プロのスポーツ・トレーナーにも付かず、自己流でやった結果がこれ。17歳から20歳までの3年間はジムに行ってたんだけど、その後は外国に住んだり旅行も多かったのでジムには行かないで自宅や行った先で練習の合間にしていたの。

始めは「ん~・・なんか肘が凝るなー・・リゲティのエチュードが腕をクロスしたままの姿勢で弾くからかなー・・」とか思ってたわけだ。まさか原因がダンベルとは思わなかったので「リゲティは要注意ね。気をつけないと腱鞘炎になるわ」とエチュードの練習には気をつけながら、何も気にせずダンベルは続行してたという。

それがある日、外上果炎になったの。軽かったので湿布で冷やせば治る程度の感じだったのに、その炎症が指先から肩まで一気に広がって。もう熱いわ痛いわ腕だけ水死体のように腫れるわ・・というのが6月。

整体に行っても、「(指圧する)指が(ヤザワの腕が腫れすぎてて)入らない」という状態。

今から思うと「肘が凝る」と感じた時点で軽い関節炎を起こしていたのよね。この時点でダンベルをやめておけば良かったのに。肘が炎症を起こしているので、弾く時のバランスが崩れて外上果炎になり、腱鞘炎にもなったわけだ。

ピアニストの友人たちは:「一体、何の曲でそんなになったのその曲は弾かないわ!」とビビるし。整体の先生も「あんなに無理なく無駄なく弾いてたのにねえ。年なのかねえ・・・と・・ゴメン・・」とか首をひねるし。

あまりの腫れと痛みでついに整形外科へ。抗炎症、ステロイドなどの入った神経ブロック注射を両腕と手首にしてもらうものの、医者も首をひねる効かなさ加減。腱鞘炎には一発で効く!という注射が:歯が磨けるようになった程度の治癒効果。

それもこれも、誰も「ピアニストがダンベルで筋トレをしている」とは思わなかったため、肘の故障を疑わなかったからだと思う。やってた本人ですらダンベルを疑っていなかったので申告もしなかったし。最初から肘に抗炎症剤を注射していたら・・あの地獄の2ヶ月はもう少しましだったかもしれないと今さらながら思う。

結局、自己治癒力で1ヶ月ほどで腫れが少し引いた時点で整体に行きだしました。そしてここからが本当の治療、療養生活となったのでした。

つづく

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北海道滞在記:2

2008年08月27日 | 日常
銭函犬。(ウソ)アイヌとシェルティーと・・色々ミックスされた気だての良いコ。

一夜明けて軽く朝練をしてニセコを後に、ミルク工房、余市の果樹園で桃狩り、夜は銭函の漁師番屋で浜パーティーと予定びっちりの文屋チェロ合宿。(笑)

「それでお昼はいつ食べるの?」と幹事(学生)に聞いたら:「お昼は豪華に桃の食べ放題です!」「・・・・・」(←先生たち)

でも誰も「昼は桃かよ~」とか言わないの。食べ盛りの学生たちなのに。これぞ道産子気質。『動物のお医者さん』を地でいく気だての良さ!

ニセコのミルク工房のソフトクリームは美味しかった。お裾分けしたバニラが背中から「楽しい」オーラを発信してるし。
桃園まで来て受付をしようとして・・・入り口にあった食堂のメニューにジンギスカンがあるのを見て、文屋さん以外の有志の先生と抜けてしまったのでした。(笑)運転をしないヤザワだけがビールも飲んで、チェロの人たちが桃狩りをしている間にニッカ・ウイスキーの工場にも連れて行ってもらい、「竹鶴17年」とかを試飲したりしてすっかりいい気分になったまま銭函の漁師番屋で桃組と合流。

「小樽にビーチあるから泳げるよ?」と聞いていて水着は持って来たんですが、やはり北海道は夏でも寒中水泳です。ビーチで焚き火しながら泳ぐんだって。諦めました。

そんな低い水温の海に育まれた海の幸。



1人2個~4個は食べたホッキ貝。激ウマ!バターとお醤油をちょっとたらして少~しレアで。


鮭のちゃんちゃ焼き。鮭とネギとかキャベツを味噌味で仕上げたもの。グー!


どうよ、このウニ!重層(北海道人は「みょうばん」と言う)で締めてない(箱詰めのは締めてあるんだって。それでもすっごく美味しいのに)ウニは地元でしか食べられないそうで、全然違~うこれで何万円分 これだけのウニを10人やそこらで食べちゃうのよ!なんて合宿だ!「肉林」がないだけで、ローマ帝国の貴族のようだぞ!(笑)

8月いっぱいがシーズンのウニ。あーもう思い残すことないほどいただきました!来年も8月に来ます!来年は腕治して伴奏ピアニストするから!

土地も広いし美味しい食べ物もどっさりあるし、これじゃ落ち着いた優しい人間にもなるわな。衣食足りて礼節を知る。という言葉はせちがらい東京人への当てつけかも。毎年来なくては!礼節を身につけるために!


シャブリを召し上がる文屋さま。セレブなショット。

幹事さま、みなさま大変お世話になりました!素晴らしい時間を過ごさせていただきました!

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北海道滞在記:1

2008年08月24日 | 日常
       
          Living well is the best revenge.
                     
                      George Herbert
   English clergyman & metaphysical poet (1593 - 1633)

だそうです!コメントありがとうございました。

冬はオーストラリア人のスキー客で賑わうというニセコ。ウィンター・スポーツはしない(できない)ヤザワ。やっぱ山は夏だって!



札響のチェリスト、文屋治実さんの生徒のチェロ合宿にバニラと参加させていただきました。(先週)文屋さんと12年ぶりくらいでお会いしました!

その昔、シューマンでヤザワが展開部に進む前の繰り返しで和音を練習でいつも間違えて、文屋さんに直されたこと。結局本番で1回目は直って繰り返してやっぱり間違えたこと。などがフラッシュ・バックしました。(笑)

文屋さんには:「ピアソラのピアノ譜の1ページ目を送ってくれなかったから本番で『えっ!?』と分からなくなって落ちた」と言われました。 
ひょえ~・・そうだっけ??我らはまだピアソラが世界的なブームになる以前にいち早く名演を北海道で繰り広げた!という思い出にヤザワ的にはなってるんですが。

演奏家とはこのようにマジメなのですよ。演奏家やスポーツ選手は怪我や病気からの復帰が一般人に比べておそろしく早い、と(医者に)言われるのは:言われたリハビリをその通り実行するから。どうも一般のヒトは「痛いからさぼっちゃおー・・」とちゃんとやらないヒトが多いらしいね。それで体育会系は就職に有利だ、とか言われるのか。根性あると思われて。演奏家も何十年も毎日練習して上達しよう!と思ってる人種だからネー

ヤザワとの北海道初演!(だったのかな?)のグランド・タンゴ(by ピアソラ)で落ちた後、文屋さんは何十回もこの曲をコンサートで弾かれてるんだそうだ。曲を気に入られたのとムカついた(ヤザワのせいで!落ちた!でもヤザワも気がつかなかったゾ?ピアソラだし即興してもいんじゃない?)せいで、ものすごい素晴らしいことになっているに違いない

もーしばらく北海道にいるので、機会がありましたら是非拝聴させて勉強させてください。今回、弾けないのは残念なんですが。


温泉に行って夕食を終えたら先生と生徒のアンサンブル。その後は盛大な飲み会!飲めば飲むほどみんな弾きだすという。(笑)


集合写真。さー今日もはりきって飲もー(先週です・・)


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ピアノの練習室の環境

2008年08月10日 | 音楽
引き続きQ&Aコーナー

>練習室は、響きはどのくらいに設定されているのですか?

質問に遠回しな回答に思われるかもしれませんが:

年間を通して24時間、部屋の湿度45~55度にしています。55度で限界。それ以上の湿度になると、音の伸びが悪くて変な節回しがついて、まるで演歌のように弾いてたりするのでね。50度以下が理想ですが、風邪気味の時にそんな乾燥した部屋で練習すると風邪が悪化するので55度までは許容範囲にしてます。調律の「持ち」も違いますよ。結局、光熱費をケチると調律代が倍以上かかるのでね。

もし練習室が密閉性の高い造りであれば、部屋の大小に関わらず、まずは湿度(空気)をヨーロッパの湿度に合わせることをお勧めします。

それで響きを聞いて、頭痛がするほど響いて練習にならないようであれば、壁にカーテンを付けてみたり、床にマットを敷いてみたりして、気持ちよく練習できる音量に調整してみてはどうでしょうか。

「気持ちいい」「上手になった気がする」という感覚は罪でもないし悪い事でもないんです。大事なことなんですよ。


Q> 狭くて響きの良い部屋で練習していると、耳が悪くなってしまうのではないか、弾くと簡単に響いてしまうので、上手くなった気に(音がよくなった様に)なってしまうのではないか、又はペダル使いが広い場所で弾く時とは大きく変わってきてしまうのではないか???


A: 電子ピアノでヘッドフォンで長時間、練習しているわけでもなければ、まず難聴になることはないですよ。
「耳が悪い」というのは、私は「キレイな音が出せないこと」だと思います。

ヨーロッパの教会はすごくよく響きますよね?もともとそういう土壌で生まれた音楽なんだということを考えた方がいいと思います。

ペダル使いは:だから!大きい場所で弾くときとあまり変わらないように、よく響く練習室で練習した方が本番の時「家と違う!」とパニックにならずにすみます。


Q>これからコンクールで入賞したいと思っているのでとても気になっているんです

A: 慢性の腱鞘炎の方が気になります。まずは環境と体調と奏法を整えることが先決でしょう?コンクールで入賞したらコンサートの依頼も来るでしょうから、もっともっと練習することになりますよ?
そうなったら・・・


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腱鞘炎(外上果炎):その2

2008年08月09日 | 美容、健康

知る人ぞ知る炎症の特効薬、キウレイコン。高校受験の時に腕が痛くなった時、当時英語の家庭教師をしていてくれたイシダミワコ先生が買ってきてくれました。それ以来、常備してます。10年ぶりで使おうと思ったら古くて固まっていたので新たに購入。ちょっと痛い(←実はかなりヤバい)、腕がだるい、くらいだったら1、2回の塗布で完治してしまうほどの効き目。肺炎にも乳腺炎にも効くようです。症状が重いほど火炎地獄のようになります。水で練って皮膚に貼った薬が乾くまで7~8時間。あまりの辛さに剥がしてしまう人も多いと漢方薬局で聞きました。良薬口に苦し以上。


『いかなる問題も、それをつくりだした同じ意識によって解決することはできない』(アルバート・アインシュタイン)


好んで病気になったり失敗したりする人はいないのですが、その原因となったことを直視するというのは、それまでの自分の考え方や方法を変えなければならないということ。それが一番大変なことだったり辛いことだったりします。それまでの自分の努力や工夫を否定するような感じが自分を傷つけるので、同じやり方を繰り返し、同じ失敗を繰り返すということになりがちです。

(ピアニストの)腱鞘炎が不治の病(?)と言われるのはそんなところに起因すると思う。炎症を起こした弾き方を変える、というのが結局は根本治療。時間はかかるけれど、それしかない。変えないまま、また弾くから本当にダメにするのよ。

弾くときのフォームが悪くて手首に力が入っていたり、「ハイ・フィンガー奏法」と呼ばれる卵を握ったような形にして指を鍵盤から離して打鍵する弾き方で長年弾いていたり。打鍵後の脱力が出来ていなかったり。椅子が高すぎたり低すぎたり。

この「ハイ・フィンガー奏法」は日本がまだ貧しく、響きのいいホールがなかった時代に「いかに大きい音で聞かせるか」という目的で日本においてのみ一時期発展したという日本独自の「コロッケ」のような奏法です。

今や桐朋や芸大の先生でなくてもこの奏法でレッスンをしている先生は少ないはず(と思いたい)ですが、幼い生徒(ピアノは4~5歳で始めるので)は指の力も腕力も足りないため、幼少の頃に限り、この奏法でレッスンをするということはあります。ピアノにはハープやヴァイオリンのように子ども用の楽器がないので、本当に気をつけないと腕を壊すのです。

ある程度育ったら(女子だったら身長が止まったあたり)、このハイ・フィンガーからは卒業しなくてはなりません。そうはいっても、ハイ・フィンガーを教えた先生が色んな奏法が出来るというわけでもないので、それ以上、上達したい場合にはその先生から離れるということになります。それが一番辛いことなんですね。

音楽の楽しさ、ピアノの楽しさを教えてくれた大好きな先生とのお別れ。毎週、先生に会うのが楽しくて、先生に褒められたくて必死で言われた通り練習して、何年も通った先生の家。

本当に生徒の未来を考えている先生だったら、生徒の上達と才能(!酷だけど。。)に見合った他の先生を、ふさわしい時期に紹介してくれるものです。「この生徒は生涯、私の金ヅルよ!」とまでは思ってないにしても、「他の先生とのレッスンを比べられるから、絶対に他の先生は紹介しない」という先生もいるかもしれません。先生も人間なのでね。

かつての同門で(高校以前)桐朋を目指していた仲間6人のうち、3人は小学生と中学生の時点で腕を壊し、ピアノをあきらめました。小学生で拒食症になるほど精神的にもダメージを受けたようですが、誰もその先生を恨むどころか今でも懐かしくて好きだったり親交もあるようです。ピアノは個人レッスンなので、先生のことが好きでないと続かない、ということがあるのでしょう。音大を目指したり、プロになるのでなければ、こういう先生に巡り会うのが一番なんですけどね。

なんでこんなこと書いてるかというと、先日のブログにコメントで質問をいただきました。「あー・・コレは危険だ。この考え方は腕を壊す」と思ったので、腕を壊す要因、考え方なども書きます。桐朋の音校に入ってからも、腱鞘炎でピアノを辞めざるを得なかった同級生がいます。なんでもそうですが、上級者ほど大事故、大怪我になるということを忘れてはいけませんね。あとは自己流。(←あー今回、私はひじょーに耳が痛い

ご質問にもコメントで応えましたが:

>デッドの方が大きな音を出す訓練
出来てよいかなと

とピアノを練習されているそうです。住環境で防音のために響かないようにピアノを調整するということもありますが:


今は響きのいいホールが多いしピアノも状態がいいので、それに近い環境で練習しないと:「うるさいだけ」の演奏になってしまいます。私は大きい音よりキレイな音、小さい音でも通る音になるように練習してます。たとえメシアンとかでもホールなら大きい音は苦労しないので。

鳴らない箱で鳴らす努力ほど空しいことはないです。音楽以前の問題ですし。「頑張ってデカい音で弾く」というのは日本人が好きそうな精神論です。腕も壊します。デカい音!は脱力が素早く出来た時に発生する音量なんです。もともと乾燥した空気で生まれた西洋音楽なので、そういったこと(大きい音を出すということ)に神経を取られるということ自体、本来の本筋からズレていくと思います。「ハイ・フィンガー奏法」のようにね。



えー友人たちには:「あまりに痛がっていて気の毒なので『バカ』とも言えない」と哀れまれているヤザワです。

次回はヤザワが腕を故障するまでの暮らしぶり、その後の治療法などをお話します。


つづく

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腱鞘炎(外上果炎)

2008年08月05日 | 美容、健康

             いだ~い
            あづ~い
       もうこの腕要らな~い

と眠れない日々を2ヶ月近く丸まる過ごしてました。
復活は9月か10月になりそうです。

今回、右手は外上も内上も肩までやられました。こんなにひどい外上(内上も)果炎は実に10年ぶりです。10年前は絨毯の敷き詰められた京都会議所でクセナキスのミスツを7分、PAをリハなしの本番で弾いて2日後、やはり服も着れない、歯も磨けない、お尻も拭けない、箸で里芋を突き刺すと絶叫する、痛くて眠れない、という日々を丸1ヶ月過ごしたのでした。

本来は労災モノでしたが、「これまでの練習の疲れが出たのじゃないんですか?」とコーディネーターに徹底抗戦の姿勢を見せられ、寝不足で泣く力もなく、1ヶ月は1日おきに整体、シャンプーは美容院、お風呂は存命だった母親に体を洗ってもらい、3ヶ月はピアノが弾けませんでした。

コンディションの悪い環境(絨毯が敷いてある、響きの少ない場所、湿気が多い場所、調律と調整のされていないピアノ)でピアノを弾けば、外上果炎には5分でもなる、ということを知らない様子の事務所(又は知らないということにしていた可能性もある)と仕事をする危険さを痛感しました。結局、ギャラの10倍近くの損失となったのですが、裁判にすればさらに時間を取られて損失がかさむので、泣き寝入りしました。その後は弾く場所、環境、調律を必ず聞くようになりました。高い勉強代となりました。ずいぶん仕事もいただいて、精一杯私も応えたつもりの事務所でしたが、お見舞いの言葉一つありませんでした。もう(腕は)使えないだろうから用はないと思ったんでしょうね。

「ここはデッドだからPAを入れてください」と頼んだら、その事務所のアマチュアの合唱団!の指揮をしていたことがある!という人が:「でもピアノ・ソロだからピアノのサウンドが鳴ったほうがいいと思うんですよね。PAとかかけないで」と言ったのです。

ヤザワの前にリハをして、すでに「・・痛い・・」と腕を押さえている打楽器奏者の人を見て、本当に危険だと思ったヤザワは:「これでは腕を壊してしまします!絶対にPAを入れてください!」「・・・分かりました・・」で結局、PAは入らなかったのです。

ち~せ~音で弾くから、みんな耳そばだててお聞き。

という知恵と勇気もその時に身に付きました。無理は禁物。コンディションの悪いところでも精一杯頑張ります!というのは建前だけでいいんです。自分の頑張りと精神論だけではどうにもならないことって沢山あるから。

4~5歳の時から専門教育としてのピアノを始め、何十年もピアノに人生を捧げているのがピアニストというものです。それが、7分の本番1つ、全く演奏家の肉体というものを理解していない人種と仕事をすることで、それまでの全ての人生が壊されることがあるかもしれないのです。しかも演奏家は『商品』なのに、まったく商品価値、機能が分かっていない事務所の人間が多いという事実。

仕事相手が音楽好きの素人、といういことも多々あるので、ひどいピアノにひどい場所(という認識もない)なのに練習通りに弾こうとして腕を壊した、なんてことになったら相手も罪悪感に苛まれるだろうから、相手の立場も思いやって、客が満足する程度には弾く、というのがプロ。今日だけじゃなくて明日もあるんだから。

若くてまだそんなに仕事が入ってない時期とかだと:「私の実力はこんなもんじゃない!」とつい頑張って腕を壊したりするわけだけど。

左手は腱鞘炎。

一口に腱鞘炎や外上果炎(テニス肘)と言っても、ピアノは10本の指を使って「握る」だけではなく「開く」「開いたまま高速で動かす」という過酷なアスリートなため、炎症を起こすと重症になる可能性が高いのです。もともと人間の手にとって「開く」動作というのは、体に非常に負担なのです。

ピアノを弾く人はなるべく爪は短く切ること。1時間弾いたらお湯に腕を浸して5分休憩すること。長袖を着ること。

と気をつけていたのに、こんなにひどい故障となってしまったヤザワ。そのワケは

今回はもう全面的に自分のせい。自家中毒のようなものです。
こんなアホーな理由で腱鞘炎やらテニス肘になるピアニストが他にいるのか

もう1人いた! 案外他にもいたりして?

ということで、少しはお役に立つかもしれないのでお話します。

つづく

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