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とつぜん対談 第95回 クワイとの対談

 きょうの対談の相手はなかなかの美人です。とっても美しい方ですが、なぜか私は正月しかお会いしたことがありません。実はツマにはナイショですが、私、彼女が大好きなんです。古風な美人で、ひかえめなんですが、あんがいぽくぽくした性格です。ほんというと、しょっちゅうお会いしたのですが、彼女、寒い時期しか出てきません。きょうの対談のあいてはクワイさんです。

雫石
 クワイさんひさしぶりですね。

クワイ
 ごぶさたしてます。

雫石
 去年のお正月以来ですね。

クワイ
 はい。そのことで、相談したいのですが。

雫石
 はい。あなたのいうことならなんでも聞きますよ。

クワイ
 ありがとうございます。わたし、夏はお休みをいただいておりますが、寒い時期になると出てきます。11月から2月ごろまでわたしは起きてますが、なぜかお正月にしかお呼びがかかりません。なぜでしょう。

雫石
 あなたはおせち料理に欠かせない食材だからでしょう。

クワイ
 わたし、おせちしか働き場所がないんでしょうか。わたし、まずいから呼ばれないんでしょうか。

雫石
 そんなことはありません。あなたはおいしいですよ。

クワイ
 そうですか。でしたら、わたし、あなたとお正月以外でもお会いしとうございます。

雫石
 うう、私もあなたとは年中お会いしたい。

クワイ
 そんなことをいってくださるのは雫石さまだけですわ。わたしなんか地味で苦味もあるし、おせちだけの野菜ですわ。

雫石
 それは、あなたが冬の野菜だからです。

クワイ
 大根やにんじんは冬の根菜なのに年中いてるじゃないですか。トマトやナスは夏のもんなのに冬でもいるじゃない。やっぱり、わたし、まずいんだわ。

雫石
 たしかに、きみをあまり食べない人は多いことはほんとだ。

クワイ
 わたし、嫌われ者ですわ。よよよよよ。

雫石 
 ああ、そんなに泣かなくても。きみみたいなきれいな人が泣くと。うううう。

クワイ
 どうしたの。

雫石 
 つい、クラクラと。ああ、そんな色っぽい目でみつめられると。

クワイ
 いいじゃないの。もっと近づいて。

雫石
 うう。

クワイ
 さ、さ、どうぞ。わたしに恥をかかせるつもり。

雫石
 は、いかん。きみの料理法だ。

クワイ
 だから、わたし、あなたにいかようにも料理されますわ。好きにしていいのよ。

雫石
 そうか。だったら、まずここへ入れ。

クワイ
 なによ。

雫石
 油だ。きみはまず油で揚げてから煮るとおいしいんだ。

クワイ
 そうかしら。でしたら。

雫石
 ほうら、こうするとポクポクしておいしいだろ。

クワイ
 あら、ほんとね。

雫石 
 きみは、ほんとはおいしいんだ。きみのおいしさが判るとみんなきみのファンになるよ。

クワイ
 でも、わたし、どうしたらいいんですか。

雫石
 昔、「全日本冷し中華愛好会」というのがあった。なぜ冬に冷し中華が食えんのだと立腹した山下洋輔さんたちが始めたんだ、タモリ、赤塚不二夫、筒井康隆なんて濃い人たちが巻き起こした一大ムーブメントなんだ。
 で、私はそれに習って「全日本クワイ愛好会」というのをつくってみようかな。なぜおせち以外ではクワイが食えんのだ。という趣旨で。

かずのこ
 だったら、ぼくもおせち以外でも食べてもらいたいよ。

春の七草
 七草がゆすぎたら、あたし、どうなるんだろ。七草すぎのあたしもめんどうみてよ。

巻き寿司
 オレ、毎日、節分だといいな。

チョコレート
 あら、毎日がバレンタインですわ。

クリスマスケーキ
 わたしなんかクリスマスすぎたら、それ考えると心配で心配で。

クワイ
 こんなにたくさん出てきたら、地味なわたしはダメだわ。

雫石
 そんなことないよ。きみだけだよ。ほんとに好きなのは。

かずこの 春の七草、巻き寿司、チョコレート、クリスマスケーキ
 雫石さん、私たちにも同じことをいったじゃない。

雫石
 いかん。ばれた。
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コロンビア・ゼロ


 谷甲州        早川書房

「航空宇宙軍史」22年ぶりの新刊である。さすが甲州、二昔以上待たせたかいがあった。なかなかけっこうな作品集に仕上がっている。作品集とはいいつつも、甲州の航空宇宙軍史は短編集ではない。彼がヒマラヤの山奥でSFを書き始めてから(いや、ひょっとすると大阪工大SF研の時代からかも)、現代に到るまで、ずっと書き続けている大長編と見たほうが正鵠を得ているだろう。たぶん、この大長編は甲州が死ぬまで書き続けていかれるのではないか。
 甲州は小松左京の後継者とみなされ「日本沈没第2部」を書いているが、光瀬龍の後継者でもあるといってもいいのではないか。星群の会ホームページで「SFマガジン思い出帳」を連載している。いま、1970年代のSFマガジンを紹介しているのだが、ちょうど、いま、光瀬の「派遣軍還る」を連載中のところだ。これを読むと甲州と光瀬のよく似ていると思ったしだい。
 地球、月といった太陽系の内側を勢力圏とする航空宇宙軍と、木星、土星圏の衛星群の外惑星連合とが衝突した第1次外惑星動乱から40年。航空宇宙軍側の勝利に終わったが、敗戦側の外惑星連合も捲土重来を期して、着々と軍備を整備していく。いずれ第2次外惑星動乱の勃発はさけられない。本書はその第1と第2次の外惑星動乱の間を描いたもの。
 開戦直前ではあるが、戦争を回避しようという動きは書かれない。そいう政治向きの話はこのシリーズには出て来ない。甲州の作品には政治家は不向きだ。現場。甲州は徹底的に現場を描く作家なのだ。本書もそうである。軍人はたくさん出てくるが、将官クラスは出て来ない。尉官、佐官が甲州作品の登場人物である。
「航空宇宙軍史」これからも楽しみである。甲州より長生きしくなては。




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どういうつもりなんやろ

 小生は神戸市民ではあるが、生まれは西宮だ。母が根っからの西宮人なので、西宮には親戚が多い。それに西宮は、わが愛する阪神タイガースの本拠地でもある。(阪神タイガースというと大阪というイメージが強いが、阪神タイガースの本拠地阪神甲子園球場の所在地は兵庫県西宮市である。タイガースは大阪の球団ではない)
 そのわが西宮の市長がなかなか面白いご仁なのである。この市長閣下、先月あるイベントで中高生相手に、ご自分の中高生のころのことを、ご自慢なすったとか、
「面白くない授業を抜け出し、タバコを吸って麻雀をしてた」
 これ、どういうつもりなんだろう。中高生に「キミたちも、私と同じことをしたまえ。さすれば大人になったら、私みたいなエライ市長になれるんだ」ということなのだろうか。そんなに良いことなら選挙中にいえばいいのに。
 この西宮の市長閣下、以前からなかなかユニークな発言をなすっておられる。以前、記者会見での号泣という珍芸を披露して楽しませてくれた元兵庫県議も西宮選出だった。さすが、わがふるさと西宮。面白い人材を輩出するな。
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こういう所にお住みになればどうですか

 師走である。もうすぐ大晦日。大晦日といえば除夜の鐘。小生の住まいおる神戸は東灘のこのあたりはお寺がないから除夜の鐘は聞こえないが、年越しの船のボーという汽笛の音は聞こえる。だから、除夜の鐘の音は、もっぱらテレビの「行く年来る年」で聞いて年越しの風情を味わっている。
 最近、この除夜の鐘の音が、うるさいと近隣から文句をいわれ、鐘をつかないお寺があるそうだ。また、これは夏の話だが、盆踊りがうるさいといわれ、ヘッドフォンをかぶってワイヤレスで音楽を聞きながら踊るところもあるとか。シーンと無音の盆踊り会場、ヘッドフォンをかぶった人たちが輪になって踊っている。なんともシュールな風景である。
 待機児童を解消しなくてはならない。で、新設の保育園をつくろうとすると、子供の声がうるさいと、近隣住民の反対で計画中止になるとか。
 なにもない虚空。星も星雲もない。質量も素粒子も時間もエネルギーもダークマターすらない。ほんとになにもない。そんな虚空に岩盤がひとつポカリと浮かんでいる。片面が平で、町が一つ入るぐらいの面積がある。そこには、なぜか地球と同じ大気があり、地球と同じ重力もある。そして、その平面には生命が生息しているようだ。人類も生息可能と思われる。なにもない虚空に人類が生息可能な所がポツンとある。
 かような文句をいう人たちは、こういう所に住めばいいのではないのかな。
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特攻大作戦


監督 ロバート・アルドリッチ
出演 リー・マービン、チャールス・ブロンソン、アーネスト・ボーグナイン、テリー・サバラス、ジョージ・ケネディ
 
上記のようになんとも濃い俳優さんがどっさり出ている映画だ。で、監督がかのロバート・アルドリッチ。さぞや痛快爽快な戦争映画かと思うが、期待したほど爽快感はなかった。それどころが後味の悪さの残る映画であった。
戦争映画といっても2種類に分類できるのではないか。「史上最大の作戦」「バルジ大作戦」「パットン大戦車軍団」などのような戦争そのものを描いた映画。また、「ナバロンの要塞」「荒鷲の要塞」「ミケランジェロ・プロジェクト」など、戦争という状況になかで、困難な使命を果たす男たちを描いたもの。いわば戦争映画というより冒険活劇といった方がいいだろう。
 で、この「特攻大作戦」は典型的な後者だ。かような冒険活劇戦争映画の場合、少人数のチームで困難なミッションに挑むわけだが、どういう男どもでチームを組むかが興味深いわけ。「ミケランジェロ・プロジェクト」の場合、戦争は素人の芸術美術といった、およそ荒事とは縁遠いインテリたちが銃をもって戦う。この映画は陸軍刑務所から選ばれた12人の重罪人ども。中には重労働なん十年というのもいるが、ほとんどが絞首刑。チームで事を成すには、絶対に無理と思われる連中が仕事を成す。
 このならず者どもをきたえあげて、まとめて、いっちょうまえの軍事チームの育てるのがリー・マービンふんするライズマン少佐。こういう設定を見ればいかにも小生好みのようだが、少々期待外れであった。
まず、俳優の使い方が気にくわない。アーネスト・ボーグナインはエライさん将軍の役だが、なぜ彼を12人の中にいれない。後年「北国の帝王」でマービンと男臭さプンプンの名勝負を繰り広げたボーグナインはぜひマービンとからめてもらいたかった。それにテリー・サバラス。狂信者の役だが、サバラスはかような役ではなく、ギラギラした豪快な悪党をやってもらいたかった。で、結局、ブロンソンがええかっこのもうけ役であったが、ブロンソンの役はこれでいいのでは。
 と、いうわけで連中のミッションというのが、夜ごとナチスの将校たちが集まってパーティーを開いている館を襲撃して、ナチスの幹部をできるだけ多く殺害すること。なんともアホな任務である。で、地下室にナチスの将校どもを閉じ込め上からガソリンをまいて燃やす。女もいるのに、いくら戦争とはいえ、これはひどい。
 
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焼きカレー


 焼きカレーだ。北九州は門司あたりが発祥とのこと。カレー味のドリアといえばいいか。メシの上にカレーをかけ、チーズをのせてオーブンで焼いたもの。
 カレーは小麦粉をバターで炒め、スープを注いでカレー粉で味つけした具のないプレーンなカレーソースを作った。かんじんのカレー粉は、ワシはインデアンのカレー粉を愛用しておる。エスビーのモノより香りが高い。それとワシ特性のカレー粉を調合した。クミン、カルダモン、オールスパイス、コリアンダー、などを乳鉢でゴリゴリ。これらのスパイス粉モノもあるが、粒のモノを自分で砕いて調合したほうが香りがいいぞ。
 さて、玉ねぎを炒めてメシを入れる。あと、冷凍のミックスベジタブルも入れよう。メシにもカレー粉で軽く味と香りをつける。
 グラタン用の耐熱皿のバターを塗ってメシを盛る。エビを焼いたモノを並べる。ピザ用チーズを乗っけて200度のオーブンで加熱。そうさな。15分ほど焼けばいいだろう。
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チキンキャセロール


 鶏肉のキャセロールです。キャセロールは耐熱容器に調理した食材を入れて、オーブンで焼いたものですが、今回はせっかくですから、お米も使って炊き込みご飯風にしました。日本人ですから、やっぱり米のメシを食べたいですからね。南蛮風の炊き込みご飯です。
 まず、米は洗米して30分以上置きます。さて、肝心の鶏肉ですが、ぜひ骨付き肉が欲しいですね。骨付きの肉はおいしいダシがでます。ここは骨付きのもも肉を用意しました。なければ手羽先や手羽元でもいいでしょう。
 鶏肉に下味をつけましょう。塩とスパイスを使います。スパイスはオールスパイスを使いました。こしょうでもいいでしょう。白ワインをふり、小麦粉をまぶしてフライパンで焼きます。
 玉ねぎとマッシュルームをみじん切りにします。ここでオーブンに入れられる炊き込み用の鍋を用意しましょう。私はパエリアパンを使いました。
 パエリアパンにバターを溶かし玉ねぎを炒めます。米、マッシュルームも加えて炒め合わせます。スープを注ぎましょう。チキンスープです。
 鶏肉を並べて、パエリアパンごとオーブンに入れます。200度で20分ほど焼きます。オーブンから出したら、香りづけにワインを振って5分ほど蒸らせばできあがりです。
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くやしくないのか

 北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手がアメリカのプロ野球へ行く意向を持っていて、球団もそれを了承してるとのこと。また、日本のプロ野球のスター選手が海外へ流出する。こまったもんだ。
 しかし、アメリカのプロ野球をどうして日本では(他の国のことは知らないが)メジャーとか大リーグとかいうのだろう。だったら日本のプロ野球はマイナーで小リーグなのか。それにアメリカ1を決めるシリーズをどうしてワールドシリーズというのだろう。連中がアメリカこそ世界1だアメリカ1が世界1なんだと思うのは勝手だが、それを日本までいうことなないだろう。日本ではそれをちゃんと日本シリーズといってるではないか。
 しかし、これじゃ日本のプロ野球はアメリカのプロ野球の下請けではないか。日本のプロ野球関係者はくやしくないのだろうか。こういう傾向に対して異を唱える関係者はいないのだろうか。せいぜい「サンデー・モーニング」の張本勲さんが日本人選手のアメリカ行きをこころよく思っていないぐらいだ。
 アメリカのスター選手が、日本のプロ野球にあこがれて来たがる。日本のプロ野球をそういうふうに育てる。そういう気概を持った人物は日本のプロ野球関係者にはいないのか。
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酒粕を買う

 
 会社帰りに桜正宗に立ち寄って酒粕を買う。毎年、吉例。桜正宗は、灘の酒では一番好きな酒。小生の酒ローテーションに入っている。
 阪神の魚崎の駅を降りて、43号線の下をくぐり、少し南に行ったところに桜正宗の記念館がある。毎年、ここで買う。例年なら、ついでに桜正宗の新酒を1本買うのだが、今年は残念ながら禁酒中。酒は手術あけの楽しみに置いておこう。
 この桜正宗の酒粕は板粕ではなく、練り粕だから、粕汁などをする時に便利だ。こうして蔵元から買う新酒のしぼりたての酒粕は香りがぜんぜん違う。さて、これで今年も酒粕料理が楽しめる。
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一か月おくれのホワイトクリスマス

「有罪」
「最終決定ですか」
「そうだ」
 基地は月面上空35000メートル上空。地球の孫衛星ということになる。常に地球と反対側に常駐する。そのため地球からこの基地は見えない。
「ただちに『処置』にかかる。『処置』がすみしだい、この基地は撤収。われわれは次の任地におもむく」
 会議室には12人の男がいる。ひとりだけ11人と対面している男。この基地の司令官だ。議長を務めている。その司令官から一番遠い席の男が発言した。
「なぜ有罪なんですか」
「あのまま連中を生かせておくと、あの星の全生命の大絶滅を引き起こす」
「『指導』すればいいのではありませんか」
「昔、『指導』したこともあった。ムダだったのは君も判っているだろう」
「なんとかなりませんか」
 遠い席の男はくいさがった。
「君は『監視員』としては、連中に感情移入が過ぎる」
「申しわけありません。私が接していたのは主に幼生でしたので」
「ともかく結論をくつがえすことはできない。本国政府の意向には逆らえない」
 司令官はそういうと、かたわらから箱を出した。赤いリボンがかかった箱だ。
「さっき、これが届いた。倉庫に120箱ある」
「それが例の試作品ですか」
「そうだ、いままでのやり方では建造物が壊れたり、他の生命も絶滅のおそれがある。しかも連中を生き残らせている」
「では、それは『B』ですか」
「そうだ。連中だけを一人残らず『処置』することができる」
「どういう形で散布するのですか」
「白い粉となって地上に散布する」
 司令官が席のボタンを押した。ロボットが10個ずつパレットに乗せた箱を持ってきた。
「君は東の弧状列島の担当だったな。そこのパレットが君のぶんだ」
「司令。例年通りのことを行ってはダメですか」
「許可しない。荷物が積めないだろう」
「判りました」
 11人の男たちは赤い服を着て基地を出発した。

「おかあさん。去年はサンタさん来なかったね」
「そうねサンタさんも地震にあったのかな」
 1995年1月24日午前5時46分。神戸。日本列島は冬型の気圧配置で、いちだんと冷え込んでいる。冬の冴えた空気を通して空の高いところまで見える。強い風ではないが六甲おろしが寒い。一週間前、神戸は大きな災厄に襲われた。
「寒いよ」
「早く目が覚めたのね」
「この時間になると、またゆれるかと思うと怖くって」最近は車が通っただけでも目を覚ます。
 公園に張られたテントから、母と子が早朝の空を見上げている。
「あ、サンタさんだ」
「もう1月よ。サンタさんなんか来ないわ」
「でも、空に赤い服着た人がソリに乗って飛んでいたよ」
「サンタさんには地震のない街を下さいってお願いしようね」
 白いものがチラチラしてきた。神戸にはあまり雪は降らない。これだけ寒いとさすがに神戸にも雪が降るのだろう。
 白いパウダー状の雪が降り続いた。地面が白くなった。壊れた街を白一色に染めた。
「1ヶ月遅れのホワイトクリスマスね」
「ぼく雪だるま作ろう」

 その年に流行ったインフルエンザは新型だった。感染率100パーセント。致死率100パーセント。地球上から人類だけがいなくなった。
 その1ヶ月遅れのホワイトクリスマスは、人々が最後に見たホワイトクリスマスだった。
 
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とつぜんコラム №182 選挙という手段

 今年いちばんのびっくりは、アメリカの次期大統領に、トランプたらいう不動産屋のオヤジがなることに決まったことだろう。ヒラリー・クリントンがもう少し庶民的でしおらしい所があれば、たぶんクリントンが当選していただろう。決して上品とはいえないトランプのオヤジを選んだのはアメリカの国民である。また、おおかたの予想を裏切ってEU離脱を決めたのもイギリスの国民だ。
 現代の世界において、おおかたの国は民主主義を実行あるいは標榜している。かの北の金王国でも民主主義人民共和国といっているぐらいだから民主主義は人類普遍の主義といえよう。
民主主義、民の意向が政治に直接反映されるわけ。で、不特定多数の国民の意向をどうしてくみとるか。これは、もう、選挙という手段を採用しているわけで、黒か白かを決する時、民の投票によって、1票でも多い方に決するわけである。
で、選挙である。はたして選挙という手段がベストなのか。正直、ベストとはいいかねる。不動産屋の暴言オヤジに核のボタンを持たすことがベストであろうか。イギリスのEU離脱はイギリスにとって、世界の経済にとって良かったのか。問答無用で犯罪者を撃ち殺す殺人検事を大統領にしたフィリピン国民は正しい選択をしたのか。憲法改正一直線の安倍晋三に総理をやらす自民党を与党に据えた日本人の選択は正解なのか。これは、もう、だれにも判らない。近視眼的には「?」でも、長い目で見ればこれらの選択は良かったのか悪かったのか。
ただ、これだけはいえる。選挙という方法がベストではない。選挙という手段しかないから、民主主義を実行するのに選挙をしょうことなしに行っているのが現実だろう。
3人寄れば文殊の知恵というが、1億人寄れば文殊の知恵であろうか。残念ながらそうではない。3人で文殊なみの知恵なのだから、1億人なら文殊菩薩3000万分の知恵となろうか。もし、そうであれば、理想の世の中はとっくにきているはずである。
選挙。偉い人も、エライ人も、愚かな人も、賢い人も、ぼくもわたしも、あなたも、みんな一人1票もっているのである。それらの総和が、その国の意思となるのである。その国民の総和、これがはたして聡明な意思となるであろうか。ナチスを政権与党としヒットラーを指導者に選んだのは、戦前のドイツ国民である。思うに、国民大衆とはたぶんに感情的なモノではないだろうか。いまの韓国の様子を見ると、パク・クネしゃくにさわる、憎たらしい、いささか感情的になっているのではあるまいか。小泉純一郎は、国民の感情を操るのが上手い首相であった。「郵政民営化賛成か反対か」と、白か黒かの選択を国民にせまり、いきおいで郵政を民営にしてしまった。白、黒だけではなく、灰色も選択肢に入れて、論理的に国民に考えさせようはしなかった。これを契機になんでも規制緩和、民営化。そのつけが出て、格差が拡大あちこちにひずみが出てきてるのだ。あの時、もっと冷静に理性的に考えて投票すべきだったのでないか。
かように選挙という手段は、時として大いなる過ちを引き起こすことがある。では、どうする。感情的な国民が感情で選んだ為政者に国を任せるのではなく、理性的の極地、感情を一切交えず純粋に論理だけで政治を司る。コンピュータに為政を任せるか。はたまた、無私無欲神のごとく指導者が善き独裁者に政治を任せるのか。どれもピンとこない。しかたがない。アホやカシコがいしょくたのなって国の左右を決める選挙をしばらくやるしかあるない。
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海よりもまだ深く


監督 是枝裕和
出演 阿部寛、樹木希林、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー

 メキシコとの国境で繰り広げられる麻薬組織との死闘。遙か昔、銀河帝国での反乱軍と帝国軍の戦争。ドイツ軍の巨大な要塞を爆破する。かようなおよそ日常からかけ離れた映画も面白いが、日常にべったりと密着して、派手なドラマは一切ない映画。このような映画も手練れの監督と俳優の手にかかると、めっぽう面白い映画となるのである。是枝監督と樹木希林。この二人の組み合わせが、この映画を面白いモノとしたのだろう。
この映画、主たる舞台は団地である。その団地に老婆が一人で暮らしている。息子がやってくる。息子といってもいい年で40をこえた大人。息子良多はカルピスを凍らせたシャーベットを食べながら老母と語らう。彼は親孝行しにここに来たわけではない。金をせびりに来た。老母のへそくりをパクって行く。
 良多は作家。「自称」のつく作家といっていいだろう。だいぶん前に純文学で新人賞を取ったが、その後さっぱり。「取材」と称して探偵をやっている。金にだらしなくギャンブルですってしまう。離婚した元妻に養育費を請求されるがとどこうりがち。元妻には未練があるし、子供もかわいい。
 台風が来た。台風の夜、老母の団地に、良多、元妻、息子、久しぶりに一家3人が集まった。良多は、老母と、元妻と、息子とじっくり話し合う。
 台風の夜が明けた。台風一過の空の下、元家族3人は団地を去っていく。何かが変わったのだろうか。たぶん、何も変わらない。甘い老母は甘いまま。気が強い元妻は気が強いまま。ダメ男はダメなまま。何も変わらない。そういうものだ。
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牛肉ときのこのオイスターソース炒め


 私はきのこが大好きです。中華料理は料理するのも食べるのも大好きです。そんなわけで今夜はきのこを使った中華です。肉ときのこの中華です。肉は牛肉を使いました。牛もも肉です。中華の肉というと豚肉ですが、牛肉の中華もなかなかおいしいですよ。きのこはエリンギとしめじを用意しました。
 牛肉は軽く炒めます。塩コショウします。そこにエリンギとしめじを加えて炒め合わせます。さて、味付けです。醤油、酒、砂糖、それにオイスターソースを忘れてはいけません。さっと炒め合わせます。ちゃちゃと作りましょう。中華はもたもたしていてはいけません。
 
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木の実の炒飯


 炒飯はときに無性に食べたくなる時がある。と、こんなことをいってるが、ラーメンやカレーでも同じようなことをいってたりして。ようするに食いしんぼうなだけだ。
 などといいつつ炒飯を調理するのである。で、モンダイは炒飯にナニを入れるかだ。卵と長ネギだけのシンプルなのもいいが、こんかいは、ひとつかわったモノを入れるぞ。木の実だ。炒飯の具に木の実を入れるぞ。くるみ、アーモンド、カシューナッツを用意した。これらの木の実を砕いて、炒飯に混ぜ込みのである。木の実がコツコツと歯に当たって、なかなか心地よい炒飯となった。
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神樂坂隧道


 西秋生       西秋生作品集刊行委員会

 出色の短編幻想小説集である。昨年、早世した西秋生の初めての作品集。西は神戸を題材とした著作は「ハイカラ神戸幻視行」があるが、小説集が世に出たのは初めてだ。
 西秋生はもともとはSFを出発点とした作家。大学のクラブはSF研究会だった。眉村卓がパーソナリティを務めた深夜ラジオ番組「チャチャヤング」の常連投稿者となり、その後、筒井康隆主宰の同人誌「NULL」に入会。同誌にショートショートを投稿、あの筒井さんをして「完璧」といわしめた。今まで、「知る人ぞ知る」的な作家だった西秋生の作品が、こうしてまとめて読めるわけだ。
 内容は、西のエッセイと9編の短編小説。それに、眉村卓、高井信、かんべむさし、江坂遊、井上雅彦、森下一仁、堀晃、大町聡、西ゆかりの八氏の追悼エッセイ。あとがきは夫人の妹尾凛が書いている。
「1001の光の物語」12段の文章の光の点の集合体。一つ一つがハイカラモダン。タルホ的文章のルミナリエ。
「マネキン」兄貴は壊れたマネキン。筒井康隆が完璧といった作品。
「走る」バイクで走る。走り続ける。
「いたい」幻肢痛。姉さんは何を失ったのだ。
「星の飛ぶ村」村にUFO。村人は気にしない。それより神かくしの方が気にかかる。
「チャップリンの幽霊」実はチャップリンは神戸で死んだ。その神戸は新開地に新聚楽館ができる。西秋生ならではの摩訶不思議玄妙な架空歴史モノ。
「神樂坂隧道」神樂坂の隧道に招き入れられた主人公。隧道の中は妖しげな見世物小屋がある不思議な世界。旧かなづかひで書かれた傑作ホラー。
「翳りのそしてまぼろしの黄泉」大事件が続いている。夜見湖で見つかった不思議な二体の死体。それをネタに3人の作家が競作する。
「5:46」5:46とは1995年1月17日午前5時46分のこと。阪神大震災の瞬間を濃密に描写。
 かえすがえすも西秋生の早すぎる死が惜しまれる。年とって年季を経た西がどんな素晴らしいモノを書いていたことか。
 この本はオンデマンド出版。ご注文はこちらからどうぞ。

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