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とつぜん対談 第34回 ある会社員との対談

 今日の対談相手には、相談に乗って欲しいといわれています。その人は、以前からそのことで悩んでいて、ずっともんもんと暮らしていたそうです。ところが、悩みが悩みだけに、相談する人がいなくて、今まで自分ひとり苦しんでいたそうです。ツテを頼って私のことを聞き、今日の対談相手となったのです。もうすぐ、来られるころです。あ、来ました。あのポルシェです。今日の対談相手、ある会社員さんです。

雫石
 ある会社員さんの車はポルシェですか。

ある会社員
 そうです。

雫石
 すごいなあ。ポルシェがマイカーだなんて。うらやましい。

ある会社員
 そうかな。ウチの会社には外車乗ってるやつ多いですよ。

雫石
 どんな車ですか。

ある会社員
 別にめずらしい車じゃないよ。フェラーリとかベンツとかランボルギーニとかに乗ってるよ。みんな。

雫石
 ランボルギーニで通勤ですか。

ある会社員
 そ。

雫石
 すごいなあ。お金持ちの社員ばっかりの会社ですね。

ある会社員
 そんなことはない。みんな普通の家の子だよ。

雫石
 普通の家の子がランボルギーニやポルシェは買えません。

ある会社員
 ぼくもそうだけど、みんな親の金じゃなくて自分の給料で買ってるよ。

雫石
 ええ!どんだけ給料もらってるんですか。

ある会社員
 そんなにもらってません。ぼくで手取り120万かな。

雫石
 信じられない。どんな会社ですか。

ある会社員
 普通の会社ですよ。製造業です。

雫石
 何を造っている会社ですか。

ある会社員
 雨合羽。

雫石
 雨合羽造ってる会社で、そんなに給料もらえるのですか。で、あなたは何をしてるのですか。

ある会社員
営業してるけど。

雫石
 営業でそれだけ給料ですから、ものすごいノルマを毎月クリアしてるんでしょ。

ある会社員
 ぼくの担当は、5軒のホームセンターやスーパーです。1日にその5軒を回って注文を聞いてくるだけです。

雫石
 それじゃ、たんなる御用聞きじゃないですか。それでたくさん売上げが上がるんですか。

ある会社員
 1日に1つも売れない時もあります。

雫石
 上司は厳しくないんですか。

ある会社員
 課長は優しいです。また、がんばればいい、と慰めてくれます。

雫石
 社長がおかしな人でしょう。カルト宗教にこって社員に入信を強要するとか。

ある会社員
 社長の趣味は天体観測です。超新星爆発とかを見つけるのが好きだそうで、会社が終ると毎晩山に観測に行きます。かといって、会社の仕事をおろそかにする人ではありません。毎日社員より1時間早く出社して仕事をしておられます。もちろん、ぼくたちに天体観測を強要したりしません。趣味と仕事を完全に分けておられます。そしてなにより、社員のことを考えています。人間として尊敬できる人です。

雫石
 課長が優しく、社長は尊敬できる。だったらものすごく嫌なヤツがいるとか。

ある会社員
 みんないい人です。ぼくのいとこが、先月手術したのです。緊急に輸血用の血液が必要になったのですが、深夜、病院に駆けつけてくれて、型があった人が血液を提供してくれました。

雫石
 で、私に相談とはなんですか?

ある会社員
 ぼく、これでいいんでしょうか。ぼくみたいな者がこの会社にいていいんでしょうか。

雫石
 会社はなんにもいってないんでしょう。

ある会社員
 ウチは定年がないんです。希望すれば死ぬまで働いてくれといってます。社長の方針で縁のできた社員を年齢が来たからといって、ムゲに会社を追い出すわけにはいかないと、おっしゃってます。80過ぎの社員もいます。

雫石
 何が悩みなんですか。

ある会社員
 こんなぬるま湯の人生でいいのでしょうか。

雫石
 で、どうしたいのですか。

ある会社員
 辞めて別の会社に行くとか。

雫石
 辞めなさい辞めなさい。あんたの代りに私がその会社に入ります。
 
 
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