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大鹿村騒動記


監督 阪本順治
出演 原田芳雄、大楠道代、岸部一徳、松たか子、佐藤浩市、三国連太郎

 先般亡くなった原田芳雄の遺作である。小生は、原田芳雄というと、ヤクザや素浪人といった印象の強い俳優だったが、本作は、そういった原田のイメージとはちょっと違う。お人よしで、周辺の隣人とのつながりを大切にする温厚な人物となっている。本作の企画立案者はその原田芳雄だ。
 長野県の山村大鹿村。その村で鹿料理店を営む風祭善は300年続く、村伝統の「大鹿歌舞伎」の役者。歌舞伎公演まであと5日。その大鹿村にリニア新幹線の駅ができるかも知れないとの話が来る。賛成反対、村民の意見はまとまらず、歌舞伎の役柄にリニア駅の話をからめる者もいたりして、村はバラバラ。
 善はこのたび、男か女か判らないアルバイトを雇ったが、長い間一人暮らし。妻は駆け落ちして18年前、村を出た。その妻が、駆け落ち相手の治とともに帰ってきた。善と治はかって親友でもあった。妻貴子は認知症を患っていた。
 大鹿歌舞伎で主役を張る善の心に大きな動揺が。女形のバスの運転手は事故でケガ。リニア問題で村民はまとまらない。こんなことで歌舞伎ができるか。
 結末は判っている。歌舞伎は立派に公演され、主役の善の相手役の女形の代りもできた。それは善が最も息があった人。公演はおひねりが乱れ飛ぶ大盛況のうちに終る。
 遺作というと、原田を兄と慕った松田雄作の遺作「ブラックレイン」は松田の凄まじい演技が印象に残っている。松田本人も死期を覚っていたとか。またヒース・レジャーも遺作「ダークナイト」でのジョーカー役は圧倒された。ところが原田は、遺作の本作では、とても癌を患っている俳優には見えなかった。まったく健康そのものに見えた。原田芳雄すごい俳優さんだ。

 原田芳雄さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
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