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8月10日(金) 快挙 完全養殖マグロ2世誕生

 近畿大学水産研究所が完全養殖マグロの第2世代誕生に成功した。新聞記事ではあまり大きく取り上げていなかったが、これは大きなニュースだ。暗雲たちこめる将来の食糧事情、特に日本の食料事情に大きな希望をもたらす。
 人類の食料は、大きく分けて農業、牧畜、水産によって賄われている。このうち農業、牧畜はほぼ100パーセント人間の手でコントロールできる。ところが水産だけは、まだまだ自然が頼り。野生の魚を漁獲して消費者に供給している。人口はどんどん増加するが魚は無限にいるわけではない。従って魚の捕りすぎて魚の数がどんどん減少している。
 この問題に対処するために「栽培漁業」という考えが水産業に取り入れられ、冒頭の近大をはじめ、各水産試験場、漁業関係者の努力で、各地で各種の魚の養殖が盛んに行われている。確かに味などは、天然物に比べて養殖の魚は手放しでOKとはいいかねる点はあるが、安く、安定した量を市場に魚を提供できるのは養殖技術の進歩のおかげといえよう。
 一口に魚の養殖といっても色々ある。現代、盛んに行われている養殖は、天然の稚魚を捕獲して、大きく育てて出荷するもの。ウナギなどはシラスウナギといって、小さな半透明の天然の稚魚を捕獲して、養殖池で大きく育てている。このシラスウナギ、日本では大幅に減少。今のウナギの養殖はヨーロッパウナギの稚魚を輸入して行われている。このヨーロッパウナギも減少。ワシントン条約で保護しようという動きが出てきている。このままではウナ丼が食えなくなる。
 次に完全養殖。これは腹に卵を持っている天然のメスと精子を持っているオスを捕獲して、人間の手で受精させ有性卵の状態から稚魚成魚と大きくしていく。つまり魚の全生涯にわたって人間の手でコントロールするから「完全養殖」という。
 いずれの場合も最初は天然の魚が必要。ところがこのたびの近大の快挙は完全養殖したマグロが大きくなって卵を産み、その卵が稚魚に孵化したというもの。これが3世4世と世代交代が続いていくと、近大の熊井先生がおっしゃる通り、天然のマグロにまったく手をつけずにマグロが食べられるようになる。極端なことをいえば天然のマグロが例え絶滅したとしても、種としてのマグロは存続できるというわけである。この技術が他の魚にも応用できるならば、水産資源の無限の可能性が広がる。
 ともあれ、大変な快挙だ。近畿大学水産研究所に大きな拍手を贈ろう。
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