<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
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理想科学のプリントゴッコの消耗品の生産が終了する。
本体の販売はもう何年か以前に中止されていたので、これでプリントゴッコは製品としての寿命を終了するわけだ。
少し、寂しい。

思えば、プリントゴッコは偉大なシルクスクリーンキットなのであった。

学生時代。
作品発表会やイベントなどのポスター作成はシルクスクリーンを多用することがあった。
心斎橋のカワチか、あべの橋のナカニシ画材店で木枠とシルクと漆紙を買ってきて、枠組みしてシルクを張って、原稿に合わせて丁寧に漆紙をカットし、アイロンで溶着させる。
複数色を使用する時は、位置合わせが大変で、今となってみればシルク印刷屋さんというのは、本当に偉大だと思うことしきりだ。

それを「パタン!」と上げ下げできるプリント台に固定してインクを敷いて丁寧に印刷していく工程が、これまた面倒くさく、
「こんな役回り、もう、やらへんわい!」
と幾度となく思ったものであった。

プリントゴッコははがきサイズながら、この工程のかなりの部分を省略できる、優れもののグッズなのであった。
とりわけ原稿を直接シルクに焼き付ける工程は、精密な絵が描かれるだけではなく、カットしなくてもいい、アイロンで漆の溶けるクサイ匂いを嗅がなくてもいい、という超メリットがあって感動したものであった。

しかも位置合わせも簡単で、多色刷りの楽しみもあり、重宝したものであった。

以前務めていた会社で、試作品の布製の小物を作ったことがったのだが、それにロゴマークを刷るのにプリントゴッコを使用した。
「これ、どうやって印刷したんや」
と社長と上司が聞いてきたので、
「ひ・み・つ」
と言おうと思ったのだが、さすがに20代後半の大の男がもったいぶるのも何だったので、
「プリントゴッコで刷りました」
と正直に告白したら、大いに感動されたものなのであった。

1990年代の終わりごろから、パソコンのプリンタが飛躍的に進歩。
そのおかげでプリントゴッコの活躍する場所が少なくなってしまい、私も世紀が変わる頃に従姉の娘にくれてやってしまったのであった。

そんなこんなで、プリントゴッコの完全終了はある意味、自分のデザインを支えた小道具の消滅でもあり非常に寂しい。
尤もプリントゴッコで倒産寸前の会社が復活し、以後リソグラフや様々なプリンタを開発している理想科学の人達にとっては、もっと寂しいものに違いない。

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