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イスラム教というと、どうしても厳しい戒律、日本人の感覚からは理解しがたい宗教的の強さ、狂信者、テロリスト、といった負のイメージがつきまとうことが多い。
これはイスラム教が日本では日常生活でほとんど接することのない宗教文化だからであり、普段はテレビや新聞などで伝えられる「事件」ばかりが目に止まり、プラスのイメージをなかなか持つ機会が無いからに違いない。

ドイツの冒険小説家カール・マイの作品「砂漠への挑戦」では、主人公のカラ・ベン・ネムジの従者にオマールと言う名のアラビア人がいる。
このオマールは魅力的な男で、勇気と知恵に優れたカラをも凌駕してしまうような、頭の回転が早く機転を効かせられる有能な従者なのだ。
このオマールが熱心なイスラム教徒なのだ。
だからキリスト教徒である主人、からをイスラム教徒へと改宗させようというのが、彼の密かな目標でもある。
目標である、といってもネチッコく執拗な、という感じはまったくない。
むしろアッラーの神を敬い、誠実そのもの。
その真面目さが彼の魅力でもある。

実は私はこの物語を今から30年ほど前にFM大阪のラジオドラマ「音の本棚」で初めて知り、その魅力にとりつかれたのだが、私のイスラム教徒に対するイメージは長い間、このオマールが代表していた。
だから「変わった宗教だな」というイメージと共に、プラスのイメージを抱いていたのであった。

このイスラム教に対するイメージは度重なる原理主義者たちのテロ行為や、アフガニスタンの仏像破壊などで壊されてしまっている。
私も9.11からさほど経っていない頃、電車の中でコーランを読んでいる人をみかけて、少しビビってしまったことを記憶している。
しかし、実際にモスクを訪れると、異教徒である私にもにこやかで親切にしてくれる人々がいるのも事実であって、やはり千四百年もの長きにわたって多くの人々に信仰されている宗教であるわけだ。

そのイスラム教の戒律に従って運営される金融機関が、ここ十数年世界に大きな影響を及ぼし始めているという。
その最大の特徴は「利息を取らないこと」。
一般常識からすると利息をとらないでどうやって営業をするのか、はなだは疑問だが、そこはイスラムルールを適応して遠まわしに利益を確保する。
その方法が、なかなかわかりにくい。

「イスラム金融入門ー世界マネーの新潮流」門倉貴史著(幻冬舎刊)はそういうイスラム金融について、一般の人にもわかりやすく書かれた解説書だ。
実際、イスラムという日本人にとって関わりの薄い文化を基礎に動く金融について、その概要を知ることができるのが最大の魅力だ。

とはいうものの、やはり理解しにくい部分がたくさんあるのもこれまた事実。

21世紀は欧米、日本以外の様々な文明が世界の表舞台に次々に登場していく100年なのかもわからない。

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