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空港からヤンゴン市内へ続く道は、片側三車線の美しく整備された道であった。

さっきまでの雨で路面が濡れている。
反対車線を走っている対向車のヘッドライトの灯が路面に反射してキラキラしている。
とってもキレイだ。

ミャンマーは国際通貨基金にも認定された東南アジアの最貧国だと聞いていた。
だからミャンマーの人たちには失礼だと思いつつ、空港から市内へ通じる道が、こんなにも美しいとは、私にはまったくもって予想外なのであった。

タイを初めて訪れた時も「タイは発展途上国」だからということで、勝手に貧乏そうな砂利道や凸凹道を想像していたが、空港を出たら高速道路は通っているし、高層ビルは建っているし、なんじゃこれは、と思ったものだ。
ミャンマーの美しい空港から市内への幹線道路は、タイでの驚きほどではないにしろ、かなり驚かされるものがあったのだった。

「キレイでしょ。空港から市内への道は政府の偉い人たちがよく利用するから、キレイなんですよ。」

とガイドのTさん。
かなり謙遜した物言いだが、ヤンゴンに到着したばかりの私は、この道しか知らないので、

「そうですか。奇麗ですよ。」

と素直に答えたのだった。
もっとも路面はとてもよく整備されているようだが、街灯が殆どない。暗い道なのだ。

「日本人、みなさん暗いっておっしゃるんです。」

道路の周辺はジャングルか湿地帯で、人家もオフィスもないのかも知れない。
などと思っていたら、暗がりの中を多くの人が道路を横断したり、バス停らしき場所で、たむろしているのが、やみ夜のシルエットになって浮かび上がってきた。

それも二三人、ポツリポツリではなく、かなりの数の人たちだ。

暗がりの道路を人影の群れがドドドドド、と横切る。
アメリカならとっくの昔にズドンとやられていそうな真っ暗がりのバス停で若い女性たちがバスを待っている。
道路はアメリカ式の右側通行。
しかし乗っている自動車は右ハンドルの日本の中古車。
少々違和感がなくもない。

「このあたりはヤンゴン大学です。」

墨で塗りつぶしたような暗がりなので、まったく分からないが、今、ヤンゴン大学のキャンパス沿いを走っているらしい。
日本でも夜の大学といえば、そんなに明るくないが、ここまで真っ暗やみではない。

私の家の近くには大阪府立大学の超地味なキャンパスが広がっているが、校舎の廊下には照明がつき、夜間でもジョギングをしている人たちがいる。
ここヤンゴンではこの暗やみの中、学生や教授たちはどうやって研究や勉学に勤しんでいるのであろう。
このヤンゴン大学は創設百年を超える伝統あるミャンマーの国立大学だ。
日本で言えば知的犯罪者卒業率ナンバーワンの東京大学のようなものだ。
しかし百年前のミャンマーは英領インドではないのか。

「とすると.....。」
「そうです。植民地の時代に作られました。」

英国植民地時代に創建された大学だったのだ。

ガイドのTさんもヤンゴン大学ではないが、ヤンゴン市内の大学を卒業したそうで、専攻は英文学。
日本語は就職のことなどを考えて卒業してから勉強したという。

「でも日本語の勉強に凝り過ぎて、英語が喋れなくなってしまって。」

と笑いながら話すTさんであった。

大きな交差点にさしかかり、左側の窓から遠くを眺めると、遥か向こうにライトアップされたミャンマー一の名刹シュエダゴォンパゴダの巨大な仏塔が黄金色に輝いていた。

つづく

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