<新・とりがら時事放談> 旅・映画・音楽・演芸・書籍・雑誌・グルメなど、エンタメに的を絞った自由奔放コラム
宇宙エンタメ前哨基地



空港へ行くと必ず言う言葉。

「よーあんなでかい物体が空飛ぶなぁ」

B777やA300なんていう大型の旅客機が飛び立ちあるいは着陸する様を見ていると、本当にどうやってああいう大きな期待が宙に浮かんでいるのか、理屈はわかっていても不思議に思ってしまうことが今もある。

きっとヒューストンへ行ってスペースシャトルの打ち上げを生で見たら、その何倍もの不思議さを感じることになるだろう。

先月「絶対帰還」という本を読んでから、スペースシャトルの事故についての詳しい話を知りたくなってきた。
あの巨大な宇宙船が離陸時にどうして爆発したのか(チャレンジャー号)。
そして、どうして帰還時、バラバラに空中分解してしまったのか(コロンビア号)。
中災防新書「衝撃のスペースシャトル事故報告書」はそんな疑問に対する一つの回答を労働災害という立場から眺めたオも背負い一冊だった。

主旨はどうしてチャレンジャーの教訓がコロンビアに活かされなかったのか、ということ。

組織の馴れ合いや自分のご都合主義がどういう結末を招くことになるのか。
この二つの事故を通じてNASAという国家組織の性格的危険を指摘し、次の悲劇を招かないようにするにはどうればよいのか、ということを具体的に明記している。

技術者の忠告をどのように取り上げるのか。
より大きな上部組織からの指示に堪えつつ、決められた手順をどうやって守るのか。

ちょうど今、スペースシャトルが地球の周回軌道を飛行していて、本書を読んでいたからこそ面白いと思ったニュースが報道されていた。
日本人宇宙飛行士の若田さんがロボットアームを使って機体の耐熱タイルに致命的打撃が加わっている箇所はないのか、調べているニュースだった。
コロンビア号の空中分解は専門家から指摘されていたタイルの破損に関する忠告を無視した結果発生した。
私は本書を読むまで全く知らなかったのだが、あのとき、コロンビアの乗員を緊急に迎えに行くためエンデバー号の打ち上げ準備を急がしていたというのだ。

タイルの損傷は致命傷になる。
にもかかわらず、今回のロボットアームでの点検が、スペースシャトルの30年近い歴史の初めての点検なのだという。

ともかく、こういう世界が注目した事故を教訓に組織の性格的弱点を分析することは、自分の従事しているなんでもない普通の仕事にも通じる部分があるものだ、と感心した。

~「衝撃のスペースシャトル事故報告書」澤岡昭著 中災防新書~

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