平ねぎ数理工学研究所ブログ

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プロの眼から見た耐震偽装事件(11)

2008-04-17 23:40:03 | 耐震偽装
建築知識2006年4月号、「誤解にもとづく報道に正しい理解で臨む、[Qu/Qun<0.5=倒壊]に根拠はあるか」から抜粋引用。

引用ここから---

【異例な法9条、14条の適用を危惧】
これまで述べたように、「耐震強度指標値が0.5未満では倒壊の危険性が高い」とする判断基準は、その根拠が薄い。にも拘わらず、「0.5」という数値と「危険」というイメージが先行し、例外はあるものの、詳細な検証も行われないまま偽装マンションは法9条(違法建築物に対する措置)が適用されて使用禁止となり、住民は退去を求められ、一部の建物はすでに除去されている。
筆者の知る限り、これまで法9条の命令などの手続きは、かなり慎重に行われてきた。条文でも「違反是正措置を命じようとする者又はその代理人に対して、意見書又は自己に有利な証拠を提出する機会を与えられなければならない」と規定されている。ところが、今回は「危険であり、現に住民が生活している」という理由で、とにかくスピード重視での判断、処分が行われた。突然、被害者となった住民としては、マスコミと行政からの一方的な情報のまま恐怖を抱くことしかできず、まして「自己に有利な証拠提出」ができるはずもなく、ことは進んでしまったというのが大方の事情であろう。
また、建築行政において国が行政庁へ関与する権限を規定したものとして、法14条がある。勧告や命令などの実施者は行政庁であるが、国は必要な場合は行政庁に勧告、情報の提供、技術的助言などを行える、という内容になっている。
通常は今回のような情報は、まず行政庁に提供され、それを受けて行政庁が処分を行うことになる。しかし今回は、行政庁に対してとほとんど同時に情報がマスコミに公表され、それを追いかけるように行政庁が対応した。具体的な数値で「倒壊のおそれがある」と国に突きつけられたとき、住民はどのような感情をもつだろうか。ほとんどの住民は建築の専門家ではないのである。
さらに、マスコミ報道とこれに「驚いた」議会、国の判断基準などの強いプッシュに背中を押されるかたちで、各行政庁とも建物の使用禁止、退去命令、または除去などの処分を通例にない早さで行ったものと推察する。
以上のように、今回の行政庁・国の対応は、法9条の執行にせよ、法14条の使い方にせよ異例中の異例といえる。少なくとも、国をはじめ行政サイドは「何故、極めて異例な対応になったか」についての理由を、関係する個人・団体に説明する必要があると考える。

ここまで---

2年半経ちましたが、何の説明もありません。住民は泣き寝入りです。

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